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FF14の二次創作です。
CP要素あり。光の戦士(ヴィエラ♂)×アリゼー。
「instax™”チェキ“」コラボエモートにまつわる小話で、時系列は黄金のレガシー(7.0)クリア後を想定しています。
ゲーム内の技術レベルがよく分からないことになってきましたが、本作では開始時点まで写真技術が存在しなかったものとしてお読みいただけると幸いです。

 ある日のトライヨラ。
 陽光は頭上から降り注ぎ、微風に揺れる海面をきらきらと照らしている。
 チュチュチュチュと、どこからか聞こえてくるのは小鳥の歌。辺りにある木々の何処かにいるのだろう。可愛らしい姿が赤い花の横にちょこんと止まっている姿を思い描いた。
 ヴィエラ族の冒険者――アゼルは地元の人気店『タコスのチーちゃん』にいた。
 ベイサイド・べヴィーを通り抜けた先にあるこの一角は、眼下に碧い海を見渡すことはできるものの、港で荷の上げ下ろしをする様子もあちらこちらに目に入り、シャバーブチェのような絶好のロケーションとは言い難い。しかし「気軽に寄れる」「注文してから出てくるのが早い」「店主のノリが好きだ」などと港湾作業員やワチュメキメキ万貨街の者達からは大変好評で、特にランチタイムには手軽で美味しい昼食を求める人々で賑わうのが日常だった。
 今は昼のピークを過ぎた頃。客の波が引いたのを良いことに、アゼルは露天のテーブル席に腰を落ち着けて、遅めの昼食をとりながら鞄の中身を広げていた。
 手帳、瓶詰めの薬、携帯食料、装備品の補修材。色とりどりの交換用通貨。他にも宝の地図や、傍から見たら何に使うのか理解し難い石や木片といった物もある。自分なりに分類をしながら一つ一つテーブルの上に並べている。
 もしここに注意深く観察する者がいれば、机の上の総量と彼が抱える鞄の容量が釣り合っていないことに疑問を持つかもしれない。その大きさの鞄にそんなに物は入らないだろう、と。
 アゼルの鞄は不思議な鞄だった。
 一見すると、どこにでもある革製の肩掛け鞄。細かい擦り傷だらけ。革の色も褪せてきておりだいぶ草臥れて見える。
 旅の途中のとある依頼。予想外の大冒険の末に手に入れたこの鞄は、不思議なことに見た目の大きさ以上の収納力を備えていた。
 鞄の由来は不明。ただ、考察できそうな材料は一つある。
 それは終末の騒動の最中、エルピスでヒュトロダエウス本人と初めて出会った時のことだ。
 アゼルが肩に掛けた鞄を一瞥して、ヒュトロダエウスは独り言のようにこぼした。「おや、そのイデアは……
 そして何かに思い当たったのか、すぐに菫色の瞳を花咲くように綻ばせたのを憶えている。一方、隣の男の眉間の皺はいっそう深くなったような気がしたが。
 ともかく、アゼルはこれを『魔法の鞄』と呼び、たいそう重宝していた。なにしろ旅をしていると荷物が無限に増えていくのだから。
 しかし魔法の鞄といえど容量は無限ではない。こうしてたまに中身を整頓しなければ、すぐに溢れてしまうのだ。いらないものは売るなり処分しなければ。ああ、でも、あれもこれも、そのうち使う時が来るかもしれない!
 これは売ろう、これはまだ取っておこう。選別する間にチーちゃん特製ブリトーを齧る。米と煮豆とチーズ、カルネアサダがたっぷり詰まっている。トルティーヤもトラルコーンの風味豊かで美味い。サルサは少々辛めだ。
 最後の一口を食べ終わった頃。ふと、鞄の奥底を漁るアゼルの右手が奇妙な手触りのする何かに触れた。
 記憶にない質感。「何だ、これ?」と、疑問に思いながら取り出した。
 現れたのは、平らな箱のようなもの。大きさは顔よりひと回り小さいくらいか。ころんとした輪郭が妙に手に馴染む。軽い。金属ではないようだ。全体が艶消しの白で塗装されている。
 広い面の片方からは浅い筒のようなものがせり出している。筒の中央に嵌め込まれているのは……硝子だろうか?
 正面、裏、上下左右。矯めつ眇めつ眺めてみたが、
……何だ、これ?」としか言いようがない。
 こんなものは手に入れた覚えがない。それどころか見た覚えすら記憶の中には存在しなかった。知らない内に鞄の中に入っていた? そんな馬鹿な。
 これは何だ? どう使うものかはさっぱり見当がつかないが、おそらくは何かの装置の類。しかし、如何せん出所がこれだ。普通に考えれば怪しげなものとしか思えないところだが……
「たぶん違う」と、心のどこかから否定する声がした。
 怪しげな装置の代表格といえば、まず思い浮かぶのは古代アラグの遺物。最近ではアレクサンドリア製の機構もその分類に加わったが、白い装置の意匠はそれらが持つ特徴とは懸け離れている。
 ガーロンド社やガレマール帝国由来の機械の意匠とも違う。今この手の中にあるものから伝わってくるのは、実用品や軍需品が持つ硬質感ではなく……もっと遊び心を感じるもの。何とも説明し難いが、例えばゴールドソーサーで開催されていたブランダーヴィルで見た遊具が感覚として一番近いだろうか。
 つまり……そう、これはきっと心躍るもの。何か楽しいことが始まる予感。根拠はないが、己の直感がそう告げていた。
 ポジティブなイメージが定着すると、今度はこの装置をどのように使うのかを知りたくなる。そうして白い装置を捏ねくり回していたアゼルのところに、
「向かい側、お邪魔するわよ」
 すっかり聞き慣れたハスキーボイスが降ってきた。ちらと視線を上げた先には銀髪の少女の姿がひとつ。アゼルの返事を待たずしてアリゼーが向かいの席に着いていた。
 荷物でごった返しているテーブルにスペースを作ってから、彼女は持っていたプレートを置いた。プレートの上には3つのタコス。横目で見たチリソースとハラペーニョソースの量が明らかに多い。
「何してるの?」
「ああ、ちょっとな……
 装置の観察を続けながら上の空で返事を返すアゼル。その先の言葉は続かない。彼のいつになく夢中な様子に、アリゼーは何も言わずにタコスに齧り付き始めた。
 聞こえてくるのは波の音とチーソジャの呼び込み声。しばし無言の時間が続いた。
 小さな溜め息の音にも気付かずにアゼルは装置を弄り続けている。
 筒の付いた面を体の外側に向けて、装置の横を両手で掴むように持つとしっくりくる。持ち方はこれで合っているだろう。顔と同じ高さのところで構えると、右上に小さな覗き窓があることに気が付いた。片目を瞑り覗き込んでみる。なるほど、装置を通した向こう側の景色が見えるようだ。覗き込んだまま右を見れば海が、左上を見れば連王宮が。正面に戻るとサルサとチリソースがたっぷりかかったタコスに齧りつく直前の、大きく口を開けたアリゼーが。
 右手の人差し指が何かのボタンに触れた。
「ん?」好奇心がわき上がるのと同時にボタンを押し込んでいた。
 パシャ!
 小気味良い音と共に装置から放たれる閃光。
「っ!?」
 予想外の挙動に思わず装置を取り落とした。傷がついてしまったかもしれないが、今はそれどころではない。
「アリゼー!」
 椅子を蹴るようにして立ち上がる。すぐさま彼女の元に駆け寄り「大丈夫か!?」
 しかし反応はない。アリゼーはタコスに齧りついた状態のまま動かない。
 麻痺? 時間停止? それとも精神攻撃? あの装置は悪いもののようには思えなかったのだが……くそ、油断した!
 握りしめた拳に爪が食い込む。
「アリゼー!!」
 半ば叫ぶようにもう一度名前を呼んだ。
 すると、ビクッと身を震わせてから、アリゼーはゆるゆると顔を上げた。確認するように辺りを見回す。その目がアゼルを捉えたところで胸を撫で下ろした。
「よかった……」ほっと一息、彼女の無事に思わず安堵の声がこぼれたのだが……
「よかったじゃないわよ!!」
 雷一閃。
 至近からの大音声はヴィエラの耳に堪えたが、己の行動を省みれば甘んじて受けるしかない。彼女がビシッと指を突きつけるのにも。
「あ、な、た、ね〜! 声をかけても上の空だしなんかずっと変な機械を弄ってるしこっちのことを見もしないしおまけに……ケホッ、ゴホッ」
 まくし立てる内にサルサソースが気管にでも入ったのか、突如咳き込むアリゼー。すかさずテーブルの上にあったパインジュースを渡す。ひったくられた。
 彼女が落ち着くのを見計らってアゼルは口を開いた。
「体は、異常はないか?」
「まったくもう……ええ、変なところはないみたい。ただビックリしただけ。すっっごくね!」
 ジト目でアゼルのことを睨みつけながら「で、さっきのは何だったの?」
「ああ、あれは……
 これまでの経緯、鞄の奥底から見覚えのない装置が出てきた旨を説明する。それを聞いたアリゼーは呆れたように肩を竦めた。
「で、そんな得体の知れないものを迂闊に作動させたってわけ? 私に向けて」
「ハイ、タイヘンモウシワケゴザイマセンデシタ……
 彼女が怒るのも無理はない。悪いのは軽率なことをした自分だ。何事もなかったから良いものの、取り返しのつかないことになっていた可能性もある。途端に背筋に冷たいものが走った。
「あの装置は、そんなに悪いもののようには思えなかったんだ……って、言い訳だな。本当にすまなかった」
 体を彼女の正面に向けてアゼルは深く頭を下げた。
 しばらく無言を続けるアリゼーだったが、
……あなたのそういう勘のようなものは信頼してるから」仏頂面のまま一言。
 それから、ふっと表情を緩めて「もういいわよ」
 許されたことに感謝しながら頭を上げるアゼル。二人の視線が交差した。一瞬生まれた時間。その隙間を縫って、聞き覚えのない音が辺りに響いた。
 ジィィィ……
 唐突に聞こえてきたそれは、ゼンマイを巻き上げるような音に似ていた。
「何の音だ?」
 アゼルは耳慣れぬ音の発信源を探った。どうやら倒れた椅子の付近から発せられているようだ。
「アゼル、あれ!」
 アリゼーが指差した先。そこにあったのは、地面に取り落としたままの例の装置。ひっくり返った白い筐体の天面にあたる部分から、ゆっくりと、薄い板のような何かが吐き出されようとしている。音の発生源はこれのようだ。
 アリゼーが一歩足を踏み出そうとするのを片手で制して、アゼルはゆっくりと装置に近づいて行った。様子を注意深く伺う。右手は腰の魔導書に添えている。
 近くまで来ると、薄い板に見えたものは光沢のある厚手の紙片だということが分かった。
 音が止んだ。思わず身構えたが、しばらく経っても特段変化は起こらない。距離を詰め、装置を拾い上げる。紙片を慎重に引き抜いた。
……っ!?」
 紙片を見た途端、アゼルは息を呑んだ。
「なになに、どうしたのよ?」駆け寄ったアリゼーもそれを見て「……って、えええ?!」驚愕の声が響く。
「わ、私? 私がいる……? なにこれ?!」
 紙片にはあるものが描かれていた。
 タコスに齧りつく寸前のアリゼーの画。しかし驚くべきは、これが絵筆で描かれた絵画ではないことだ。限りなく写実的なそれは、まるで先ほど目の前にあった現実を切り取って、そのまま紙片に焼き付けたようだった。
 大きく口を開きつつも視線で正面を捉えているアリゼーの、なんとも愛嬌のある表情は見た者の微笑みを誘う。彼女が持つトルティーヤには野菜とカルニタスがたっぷり挟まれていて、赤々としたソースからは旨辛タコスの味が想像できて涎が出てしまいそうだ。
 アリゼーの背後には満ちた玄関の光景。突き抜けるような青。光る波間。停泊中の小船。
 手のひらサイズの紙片に収められた、色鮮やかで生き生きとした世界。
 こんなものは今まで見たことがない。
 いったいこれは何だ? この装置はどのような仕組みなのだろうか?
 アゼルはこれまでの旅で得た知識と経験を総動員して推論をたてようと試みた。
「絵ではないな、あまりにも描写が緻密すぎる……まるで切り取った現実をそのままこの紙に保存したような……現実の記録……そういえば、記録された姿を空間に投影する装置は前に見たことがある。その像を瞬間的に切り取って紙に出力する装置……みたいなものか?」
 原理や仕組みはさっぱりわからないが、古代の超文明や鏡像世界の技術、はたまた創造魔法といった奇跡なら実現可能なのではないだろうか。おそらく。
 考えていても始まらない。検証には試行数が必要だ。
 アゼルは再び白い装置を両手に構えた。
 裏面の覗き窓に左目を当て、装置越しに辺りを見回す。碧い海を視野に入れた。右手のボタンを押し込む。パシャ! 音と閃光。巻き上げ音が鳴り止むのをしばし待ち、装置上部から紙片を引き出した。
 空の青と海の碧。停泊中の船と作業員の姿。間違いなく眼前の光景が切り取られている。
「なるほど、この覗き窓から見えるものがこの紙に写る仕組みなのか」
「だとしたら、これってとんでもないシロモノじゃない?」紙片をアゼルの手から取り上げて陽に透かすアリゼー。
「誰が何のために作ったものなのかしら?」
 彼女の疑問に、アゼルは顎髭に手をやりながら考えを巡らせる。
 これを携帯式記録装置と仮定した場合、利用価値は計り知れない。誰もが持てるようになった時には世界のあり方が少し変わるかもしれない。それくらいの可能性を感じる。
 では、何のためかと考えて思い浮かんだのは――
「綺麗な景色や誰かとの想い出を、手元に残したいから……じゃないかな」
 対象をありのまま写す画。場所も、時間も、遠く離れていても。記憶の中の像が次第に薄れていったとしても、この紙片に保存されていれば、いつでもその姿に出会うことができる。
 思い出を残すための優しい機械。
 そうであって欲しいと思うのは、少し感傷的すぎるだろうか?
……ええ、きっとそう。そうだといいと、私も思うわ」
 アリゼーの目元が和らいだ。アゼルの言うことは綺麗事かもしれない。それでも自分もそう願いたいと言うように。
 だからアゼルもとっておきの笑顔を返す。
 薔薇色に染まる頰を隠す代わりに、アリゼーは残っていたタコスを手に取った。

「で、これどうするの?」
 しばらくして、タコスを平らげたアリゼーが装置を指して言った。
「そうだなぁ」と言いながら装置を手慰みにするアゼル。結局のところ出自も詳細も不明。何処かに調査研究を委ねるとしても「魔法の鞄から出てきました」なんて説明をすんなり受け入れてくれそうな心当たりは一つしかない。
 誰にも告げずにこの装置を自由に使い倒すというのにも心惹かれるが……
 装置の裏に刻まれた溝を無意識に指先でなぞる。「あ」と、あることに気がつき声が漏れた。
 溝のそばには数字が小さく表示されていた。エオルゼア文字だ。今は8が表示されているが、先ほど海に向けて使う前は9だったような気がする。あまり自信はないが、アリゼーに向ける前は10だったのかもしれない。
 これはつまり使用回数に制限があるということだろうか。見た目通りであれば残りは8回。
 だとしたら貴重な8回を何に使うべきか。
 思いつく用途は山のようにある。たとえばサンクレッドとリーン、アリゼーとハルリクのように、鏡像世界という名の壁で隔たれた家族や大切な者達へ、それぞれの記録画を渡すことができたらどんなに良いだろうか。
 しかしその用途に限ったとしても、誰を選ぶ? どんな基準で? 彼らの想いに優先順位をつけることなんてできはしない。
 どうするのが最善だろうか。
 ――決めた。
「やっぱり一度シド達に見てもらおう。構造を確かめてもらって、再現できるようなら同じ機構のものを作ってもらいたい。それで、安全に気兼ねなく使えるようになったら……
 アリゼーの記録画をハルリクへ。ハルリクの記録画をアリゼーへ。もちろんサンクレッドやヤ・シュトラ達も同様に。それから他にもいろんな人達へ会いに行こう。この手の中に残したい思い出は指の数では足りはしない。
「賛成よ。元々あなたのものだし、あなたがしたいようにするのが筋ってものだわ」
「まぁ俺のものかって言うとちょっと微妙なところだけどな」
 この装置も不思議極まりないが、真に不思議なのは魔法の鞄だ。入れた覚えのないものが出てくるなんて。どうなっているんだ、いったい。まぁいいか。今はあまり深く考えないでおこう。
 とにかく、今度エオルゼアに戻ったらこれをガーロンド社へ持ち込もう。それまではまた鞄の底で眠っていてもらおうか。
 ――でも、その前に。
 椅子から立ち上がったアゼルは装置を左手に持ちアリゼーの横に並んだ。
 それから彼女の横に顔を寄せ、装置を二人の斜め上の位置に掲げる。
「ちょっと、何をするのよ」と問う声に「いいから。ほら、ここを見て」いたずらそうに囁く声。装置正面、筒の横に付いているものを指さした。小さな鏡。下から見上げる二人の顔が映っている。
 予想通りなら、この状態のまま左手の親指で操作ボタンを押せば、きっと――
 だから「笑って、アリゼー」
 本日三度目のあの音が、トライヨラの青空高く吸い込まれていった。

 しばらくして、ガーロンド社へ持ち込まれたこの記録装置は、シド達によって機構が解明された後に写真機と名付けられた。複製にあたっては試作を幾世代も重ね、やがてオリジナルと遜色のない性能の写真機が世界中に普及するようになる。誰が最初に呼び始めたのか、これが「チェキ」という愛称で人々に親しまれるようになるのは、もう少し未来のことだ。
 写真機の複製にあたってガーロンド社が再現できなかった機能が一つだけある。それは、撮影した画像を記録する感光材料――フィルムの無限複製機能。オリジナルは10枚のフィルムを使い切った後も残数がリセットされ、リソースを補充することなく好きなだけ写真を撮り続けることができたのだ。その原理はガーロンド社の技術者達をしても遂に解明することはできなかった。
 オリジナルの写真機は、基礎研究が完了した後にアゼルに返却された。ガーロンド社に預けること数ヶ月。あまりの早さに、元々譲渡するつもりでいたアゼルは断ろうとしたのだが、
「こいつは写真を撮ってなんぼの機械だ。世界を股にかける冒険者の手元にあるのが、こいつにとって幸せってもんだろう?」
 シド・ガーロンドが半ば押し切る形でアゼルの手に捩じ込んだのだった。

 冒険者アゼル・アッシィが遺した写真は数知れない。
 人物、風景、各地の名産品などと被写体は様々だが、その多くは縁ある者の手に渡り、彼の旅の足跡と共に保管されている。
 ところで後年の歴史研究者によれば、彼が唯一手放さなかった写真があるらしい。
 愛用の手帳に大事に収められていたそれは、世界最初の一枚。
 きらめく海を背景に、タコスを頬張る少女の写真だったというが――それはまた別の話。


END