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wawan78
2025-07-17 23:38:14
2732文字
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満月でもないので
ドルネド 💉主ED6からの全バレ
※シナリオ全制覇後を推奨
※ほんのりR15?
比較的静かな夜だった。並ぶ店はどこも繁盛していて、食事より酒の時間となってもあまり騒がしい人がいない。今日は特に表立った事件もないようで、治安維持部隊も怪しい人影もなりを潜めている。
……
いや、隣にいるか。一番怪しくて一番危険な人が。
「いつもここを通るのか?」
「はい、あの店に寄るときは
……
広くて明るいので」
「確かに、飲食店が多いな。深夜でも人通りがありそうだ」
「ここの通りなら、たまに客引きに絡まれる程度で、危ない思いをしたことはありませんよ」
隣を歩くドルネドは、興味深そうに忙しない店を眺めている。この町をそろそろ離れるらしいが、再び訪れるときにどの店に入るか、算段でもつけているのだろうか。
不思議な気分だった。たった数日相席しただけの人が、こんなにも近くを歩いている。歩幅は向こうのほうが広いだろうに、歩調まで合わせてくれるのが憎らしい。仕事と食事にしか興味がないと言っていたのは本当だろうか。実は女遊びもお手の物なのでは。そこまで考えてしまうと、実は今とても都合よく遊ばれているんじゃないか、と疑問が湧き上がる。
なにしろドルネドは「親しく話していた」だけで当局が話を聞きにくるような人物だ。何をどう利用するかなんてわかったものではない。
「警戒しているな」
「えっ?」
「それでいい。言ったと思うが、私のような者に簡単に気を許すな」
「
……
じゃあ、付いてこないでいただけます?」
「ハハ、お断りだ」
自分は安全だとでも言いたいのだろうか。たしかにそうかもしれない。今夜の帰り道が静かなのは、彼が隣にいるからかもしれない。視線を感じないし、敵意もない。
こんな人といれば良いのだろうか。
まだわからない。腹の中が。しかし、可能性を見てしまう。この人なら耐えられるかもしれない。この人なら救わなくていい、試さなくていいかもしれない。仮にいつもの「発作」が起きたところで、受け止めてくれるかもしれない。
壊さなくて済む? 恐れられず、崇められず、向けられる感情に親愛を。
「
……
この先は暗いな」
「ええ、でももうすぐ家なので」
「この入り組んだ住宅街か」
「昔はもう少し広かったのですけれど、いつの間にかマンションが並んでしまって」
「昔、か」
ちらりと隣を見る。視線が合った、気がした。
「どのくらい昔かは、聞かないでおこう」
「ええ、女性に年齢を聞くのは失礼ですよ」
「そういうものか? 生き長らえることはむしろ誇れることだろう」
「私が想像以上におばあちゃんだったらどうするのですか」
「私も若くはない」
楽しかった。純粋な気持ちだ。素直に楽しめている。加減しなくていいのはマスターぶりだ。隠していてもいずれバレるし、という不思議な諦めが心地良い。騙されているだけかもしれないけど、それでも、だからこそ、あと一歩踏み込んだらいけない危機感が、余計に今日の帰り道を魅力的にしているのだろうか。
住宅街に入ると、先程までの活気は消え失せて、しんと静まり返った夜の闇が包んでいる。古い街灯が点々と立っているが、最近予算が出ないのか、電球の交換が遅れていてチカチカと点滅していたり、消えていたりする箇所もあった。
「最後が一番危険なエリアだな。潜む場所などいくらでもある」
「まあ、なんとかなりますよ。なっていますから」
「例えば悲鳴を上げたとき、ここの住人は駆け付けてくれるほど親切なのか?」
「夜であれば、皆さんぐっすりお休みでしょうね」
火事が起きたときも、その他悲鳴や爆音が聞こえたときも、それほど騒ぎにならなかった気がする。自分のことで精一杯だったり、そもそも危ないから関わらないことが多かったりで、そういう事態には当局が到着するまでどうにもならないものなのだ。
「あの店主は送り迎えなどしないのか?」
「閉店までいるときは送ってくれることもありますよ。でも、泊まりのお客もいるので」
「よく今まで何もなかったな」
「この街の住人ですから。心得ているのです」
「ククク、そうでなければ」
「あ
……
ここです」
家の前まで来た。アパートの3階。まさか部屋までついてくるとは言わないだろう。外階段の前で立ち止まると、ドルネドは辺りを見回した。
古い家屋に、質素なアパートとマンション。ターミナルの近くとはまるで違う、家賃ばかりが高い住処。その夜の景色に、ドルネドのヘルメットに浮かぶ赤いライトが、急に異質で恐ろしいものに見えた。
ドルネドはアパートを見上げる。
「お医者先生様にしては随分と
……
趣味か?」
「引っ越す機会がないだけです」
「多忙だとスケジュールも組めないだろうな」
「片付けもしないといけないし。不便もないからこれでいいのですよ」
「そういうものか」
思惑はわからないけれど、お礼は言っておこう。今日何もなかったのは、同行してくれたからだ。頭を下げるとドルネドは笑った。
「何、半分は私の我儘だ。お前を置いて店を出るのが名残惜しかったのでな」
「
……
よく言うのですか、そういうこと」
「そうだな
……
仕事上、必要なら言うこともあるが」
「
……
」
視線を向けたドルネドは正面から、多分、笑っていなかった。
「これは仕事とは無関係だ」
あまりに真っ直ぐではないか。
疑うことすら罪に思えてくるほどに。
ああこんなことっていままでありましたかしら。これ程までに対峙してくる人なんて。
向けられた気持ちに戸惑いを隠せていないのはわかっていて、誤魔化すように足先を階段に向けた。
「そ、れでは。おやすみなさい」
「ああ。おやすみ」
階段を登り、部屋に入るまで、ドルネドは視線を外さなかった。
* * *
あのときのことをベッドの上で話すと、ドルネドは「そういえば」などと零すので、数時間前に縫った胸元を軽く叩いたら笑われた。
「人の油断に付け入るなんて本当にろくでもない人。私の気持ちを何だとお思い?」
「嘘はついていないし騙してもいない、言わなかっただけだ」
「この、」
「待て待て、さすがにベッドを血塗れにはしたくないだろう」
したことあるでしょう、とは言わないでおいた。縫った箇所は避けて古傷に八つ当たりする。びくともしないのが腹立たしい。
すり、と宥めるように背中を撫でられる。
「良いだろう? 結果として今、お前は私にすべてをさらけ出す関係になったのだから」
というわけで。うるさい口は塞いでしまえという魂胆なのだろうか。それに流される自分も自分、さて、2回戦目はどうしてやろうか?
(おあとがよろしいようで)
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