ウルトラカプセルを盗んだストルム星人を追って、地球にウルトラマンベリアルがやって来た。まさかそこで、自分の息子と対面するとは思わなかった。レイブラッド星人の支配から抗う助けを、ウルトラマンノアが手を貸してくれた時以来の驚愕だった。
「ベリアル様!強大なレイブラッド星人とは言え、やはり貴方様はそれをも超えるお方!ですのでここに、新しい体を、ご用意しておきました!」
そう講釈を述べ、こうべを垂れるストルム星人の横で、倣うように頭を下げるウルトラ戦士、彼がベリアルの息子なのであろう。
「ストルム星人、お前はやり過ぎだ。」
ベリアルは確かにレイブラッド星人の力を危惧していた。ノアの力を借りたとは言え、完全に倒したわけではない。レイオニクスとなった上、体の形状や体表が変化したままだ。
そのため高い科学力を有していたストルム星に相談を持ち掛けていたのだが、その中の一人の研究者が、随分ベリアルに心酔し、暴走するまでに至った。光の国の科学技術局に盗みに入った挙句、地球を拠点に、人造ウルトラマンを鍛えるために、マッチポンプのようなことを行っているのだ。
そしてその人造ウルトラマンこそ、ベリアルがストルム星人に提供した自分の遺伝子が用いられた、ベリアルの息子だった。
「俺様の命令外だぞ、こんなのは。オイタが過ぎた。」
「しかしベリアル様!計画は順調です!これもベリアル様完全復活のため!」
「んなこと俺様は望んでねえっつってんだ。」
なおもストルム星人が追い縋ろうと口を開きかけた時。その場で笑い声が響いた。
「だってよ。ケイ先生?」
笑っていたのはベリアルの息子だった。
「初めまして、父さん。ジードと呼んでください、そう名乗っています。」
「貴様、出しゃ張るな!ただの人造体の器のくせに!ベリアル様の息子を名乗るなど!」
「だから分かってないんだよ、ケイ先生は。」
ベリアルの息子、ジードは、現状を、ストルム星人を、見下すように嘲笑っていた。
「唯一無二の故郷を守りたかっただけなのに、大戦でぼろぼろになって、力が必要なのに誰にも理解されなくて、その故郷まで追放されて、レイブラッド星人に誑かされて、神なんかと呼ばれるウルトラマンノアの手を借りるはめになって、結局光の国に戻されても、でも犯罪者扱いで、なのにウルトラカプセルが盗まれた、知り合いの犯行で、そりゃ余計に責められて責任を追求されるよね。ずっと孤独。」
ストルム星人は、ベリアルはそもそも光の国の連中とは一線を介した特別な存在だと主張するので、ベリアルが幾ら光の国での立場が悪くなろうと、それは光の国が理解力の低い連中だと、ストルム星人に思わせるばかりの事象だった。
そしてジードはそれを、歌でも歌うようにすらすらと誦じた。ベリアルは嘲っているのかと思ったが、何故かジードの眼差しは、どこかもどかしいような慈愛があった。
「もし父さんの意識が僕の体にお引越ししても、父さんの孤独は結局埋まらない。」
そこでジードはストルム星人を振り向く。
「だからケイ先生の計画じゃ全然ダメなんだよ。」
「なんだと……!」
くすくすと笑うジードに、ストルム星人は怒りでいっぱいだった。
「でも僕をこのまま父さんのそばに置いてくれれば、僕は父さんとずっと一緒。僕は父さんをこんなにも理解しているし、父さんを絶対にひとりにしない、それにある程度なら強くなったんだよ。その点に関しては、ケイ先生に感謝しても良いけど?でも父さんに一から鍛えて貰うのも、魅力的だよね。でもそれだと父さんは相手にしてくれないかな?」
おどけたように、笑いながら言うジードは、さも自分はベリアルに寄り添っているように言っているが、どこかズレている。ベリアルが現状発揮出来る強さのデータも組み込まれているのだろう、確かにやわじゃなさそうだ。
「僕、ケイ先生に、ただの器だ、駒の一つだ、って言われて育ったけど。父さんのためなら、って、ずっと頑張ってたんだよ?父さんのことなんでも知ろうとしたし、父さんとずっと一緒にいられるようにって願ってたし、今こうして父さんに会えてとっても幸せ。ケイ先生は偉そうに言うけど、父さんはケイ先生より僕のことを、必要としてくれるよね?」
滂沱のように流れ込んで来るジードの感情は、ベリアルを圧巻させた。
「……そのガキはここから連れて行く。」
「父さん!」
「ベリアル様!」
ベリアルはジードを真っ直ぐ見据えた。
「だが、俺に付いて来る必要はない、お前はお前の」
「どうして!」
ベリアルはジードを自分に縛り付けるつもりはなかった。寧ろベリアル以外のことにももっとよく目を向けるべきだと思った。
けれどジードは錯乱したように声を荒げた。
「父さんは僕を選んでくれる!ねえそうでしょう!」
「俺はお前を蔑ろにするつもりはない。」
ベリアルはジードを落ち着かせようとした、しかし、ジードはストルム星人を強く睨み付けた。
「ケイ先生がいるから?」
「待て、そうじゃない!」
ベリアルはジードの不穏な気配を感じ取ったが、ジードはストルム星人の方を向いて、手を翳している。
「ケイ先生はもう邪魔だね。」
「貴様!よせ!」
ストルム星人と光の国の人間の、力の差は歴然だ。
「ジード!」
ベリアルがその名を呼んだ。
動きはぴたりと止まり、澄んだ目が期待を込めて、己の父を見る。
「……息子よ、良い子だから反抗せず、言うことを聞け?分かったか?」
「分かったよ、父さん!」
ジードストルム星人に興味をなくしたかのように、ベリアルのそばへ一直線に走って行き、そのまま抱き付いた。ベリアルは抵抗もせず、しかし過度に受け入れることもしなかったが、好きにさせた。
後程ベリアルの連絡を受けた宇宙警備隊が地球に訪れ、ストルム星人を逮捕した。ジードはベリアルと共に、光の国に連れられることになった。
結果的に、ジードが望んだ通りになった。
しかしその後、孤独から解放された父の躾が、ジードにウルトラ戦士の心をいだかせられるかどうかは、ウルトラマンノアのみぞ知る。
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.