匣舟
2025-07-16 22:39:51
4442文字
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論より衝動

ワードパレットリクエストの伊乱の学パロです!
学パロを生かせているか微妙ですが…。
しゃっくりがとまらない乱とここぞとばかりにその乱にキスをする伊の話です。
リクエストくださってありがとうございました🫶

論より衝動


 朝から原因不明のしゃっくりに悩まされていつものように止まるだろうと楽観視していた乱太郎は、放課後なっても止まらないしゃっくりに少し泣きそうになっていた。
 いつもならしゃっくりをしている時点では組の誰かが驚かしてきてそれで止まっていたのに、誰に驚かされても止まらなかった。それで止まらないとなればは組のみんなが一斉にスマートフォンを手に持ち、しゃっくり 止まる方法 と検索エンジンに入力し検索をし始めた。
「息を止めるだって!」
「冷たい水をゆっくり飲むだって!」
「紙袋に口を当てて呼吸するって方法もあるみたいだよ〜。」
「舌を引っ張ってみるのは〜?」
「これは?硬いパンや砂糖を飲み込む方法!」
 検索をすればぞろぞろと止める方法がは組のよい子たちによって出てくるわ出てくるわで、乱太郎はよい子たちがみている中でひとつ、ひとつ出された方法を試してみたが
ごめぇん、とまらな、ヒック。」
 結局、何をしても乱太郎のしゃっくりは止まることがなかった。放課後になると、しゃっくりが止まらないのなら病院に行った方がいいんじゃない?というは組のよい子たちの考えに対して乱太郎は、委員会活動があるからそれだけやって帰るね。と言ってそそくさは組の教室を飛び出して行ってしまった。
「ねぇ、乱太郎、委員会がなかったらそのまま帰ってたよね。」
「あんなしゃっくりしてるならさ、委員会活動なんてできないんじゃない……?」
「でもさ、あの乱太郎が委員会の活動をサボるかな?」
……確かに。」
「でもまぁ、乱太郎は保健委員でしょ、それなら。」
 あの善法寺伊作先輩がいるし、隠し通すことなんてできないと思うけどなあ。善法寺先輩、結構乱太郎のこと気にかけてるでしょ。と庄左ヱ門が言うと、ワイワイ、ガヤガヤと喧しかった教室が一気に静まり返った。
しかも乱太郎、善法寺先輩のこと信頼してるからさ。」
 しゃっくりをし続けていることを伊作に知られてしまったら。とは組のよい子たちが脳内で思い浮かべているのは多分、ひとつしかないだろう。
「俺は何も聞いてない何も知らない。」
 いの一番にそれを想像した金吾が顔を真っ赤にさせながら呪文のように唱えている隣で、団蔵がボソッと呟く。
「なんか俺、乱太郎が善法寺先輩に食べられちゃわないか心配になってきたわ。」
シッ、それは言わない約束でしょうがっ!」
「いてぇっ!」
 母ちゃん、ぶたないでくれよ〜。という団蔵の言葉に伊助は耳を貸すことなく団蔵の頭目掛けて手刀を落とした。そんなは組のよい子たちの会話を知ることなく、乱太郎は委員会活動のある医務室へと足へ向けている。
 乱太郎が所属する保健委員会では、週に二度当番として医務室に在中していなければならないという決まりがある。当番は上級生と下級生が必ず同じになるように決められており、今日、乱太郎と当番なのは、大川学園の高等部に在学している乱太郎の保健委員会の委員長である善法寺伊作だ。
「失礼します。」
 医務室の扉を開けて中に入れば、いつもと変わらず伊作が医務室の中で薬棚の整理をしていた。
「乱太郎、来てくれたんだね。」
 いつもより早く来てくれたんだね。と笑った伊作に、乱太郎はしゃっくりを隠しながら会釈する。
「はい……。今日は当番ですから……。」
「そうか、ありがとう。じゃあ、僕は今やっている作業が終わったらそっちを手伝うから、先に包帯を巻いてくれ。」
ッ、分かりました。」
 伊作と入れ替わりのように乱太郎は机の上に用意されていた先月予算委員会で頼み込んで買ってもらった包帯巻き機を使ってせっせと包帯を巻いていく。しかし、その間にも乱太郎のしゃっくりは止まることは無かった。
乱太郎、どうしたの?」
「何がッ、ですか?」
「いつもより元気がないようだけど?」
ック、何もないですよ。」
 伊作の問いかけに対し、乱太郎は誤魔化すようにニコッと笑う。それでも伊作は乱太郎のことを心配しているのか、じっと見つめてくるのだった。
「そんなに見てこなくても、ほら元気ですよ〜。」
「そう?でも何かあったら言うんだよ。」
「はぁーい。」
 本当に大丈夫かなぁ。と心配そうな表情を浮かべながら伊作は乱太郎を見つめる。そんな伊作の視線から逃げるように乱太郎は目を背けた。
「(やっぱり止まらないなぁ)ック。」
 その後もずっとしゃっくりが続いている乱太郎。しゃっくりをするたびに胸を抑える仕草をするので、流石にやはり何か乱太郎が自分に隠していると勘づいた伊作はゆっくりと乱太郎の方に近づいて、膝を付く。
「やっぱり何か隠してるでしょ?」
 そう言って伊作が乱太郎の両肩に触れて問いかけると、乱太郎は困った顔をして俯いてしまった。だって、言えるわけが無いのだ。しゃっくりが今朝から止まらない。など。恥ずかしくて言えるものか。と乱太郎は口を噤んだ。
「ねぇ、教えてくれないかな?」
……っ、ック。」
 何も言わない乱太郎に痺れを切らしたのか、伊作が徐々に怒っているような雰囲気を感じ取った乱太郎は恐る恐る顔を上げると伊作はとても真剣な眼差しで乱太郎を見ていた。
しかし乱太郎と目があった瞬間には穏やかな瞳に戻っていてまた乱太郎は困惑してしまう。
「勘違いしないで欲しいんだけど、怒ってる訳じゃないんだ。」
「はい。」
「たださ、きみが困っていたら助けたいと思ってしまうんだよ。」
 困っている人を助けるのは僕の役目だと思っているからね。それはまるで自分自身に言い聞かせるように言った伊作の言葉を聞いて乱太郎は思わず涙ぐんでしまう。そして涙を堪えながらポツリ、ポツリと言葉を零した。
「今朝から、しゃっくりが止まらないんですっ。」
 少し涙声の乱太郎の話を聞いた瞬間、伊作は拍子抜けしたような声を出す。
「え?本当にそれだけなの……?」
「はい。」
……はぁ~。良かったぁ~……。」
 乱太郎の言葉を聞いた途端、なぁんだ、てっきりずっと深刻そうな顔をしてるから、重い病気なのか、委員会を辞めたいぐらいは言うんじゃないかと思って。と安心しきったように溜息を吐いた後でへたり込むように座り込んだ伊作を見て乱太郎は思わず、そんな!保健委員会を辞めることなんてないし、重い病気にもかかってませんよ〜。と言いながら笑ってしまう。
 しかしまたしゃっくりが出てしまうため、笑っていたのも束の間、すぐに乱太郎の眉間にはシワが刻まれていた。それを見た伊作は苦笑しながら立ち上がり、乱太郎の隣に移動するとそっと彼の頭を撫でてやる。
「ほら、無理して笑ったりしなくていいから……。」
「でも……ヒック。」
「そうだなぁ……。」
 僕が驚かせて止めれるかな。と伊作はしばらく悩んでいる様子を見せると何か閃いたようで手のひらに拳をポンッと乗せたあとで乱太郎の耳元に顔を寄せて小声で話し出した。
「しゃっくりは驚けば止まるっていうよね。」
「はい……。」
「でも乱太郎は色んな方法を試したり、何度も驚かされたけど、止まらなかったんだよね?」
「そうですック。」
「だったらさ、もっと強い刺激を与えたら止まるかもしれないじゃない?」
「ッ、強い刺激……?」
 伊作の提案の意味がよく分からなくて首を傾げる乱太郎だったが次の瞬間には全て理解することとなる。なぜなら急に伊作に抱き締められたかと思ったらいきなり伊作に唇を奪われる。
 突然の出来事で目を白黒させる乱太郎だったが、すぐに状況を把握すると慌てて離れようとするが、それを阻止するかのように腰と後頭部に回された腕の力が強くなるだけだった。
「んぅっ!」
 最初は触れ合う程度のキスだったものが次第に深いものになってゆき、苦しくて離して欲しいと伊作の胸板を押したりするもののビクともしなかった。ファーストキスもおろか、ディープキスも初めてである乱太郎は伊作という眩暈のようなものに飲み込まれないように必死になっていた。
 乱太郎の奥底からなにかが這い上がって気がする。なにかがよく分からないけれど、這い上がって来たらだめだ。と思った乱太郎は必死に伊作の舌から逃げようとしたが、結局絡め取られてしまい、更に深く交わされる。
っん……
ふっん、」
 かれこれ一分ほど伊作との攻防戦が続いているが一向に勝てる気がしなかった。でもそろそろ頭に酸素が回らなくなったので、解放して欲しいと乱太郎は必死に彼の服を掴んだり、胸板をポカポカと殴ったところでようやく解放して貰えたのだった。
「んぅ、っ、はっ、はぁっ、」
大丈夫かい?」
「な、なんでこんなこと……っ!!」
「これが一番効果があると思ってね。」
 ねぇ、どうだった?と悪びれもなく微笑んで答える伊作に対して乱太郎は顔を真っ赤にして抗議しようとするのだが上手く言葉が出てこなくて口をぱくつかせることしかできなかった。
 そんな乱太郎の反応を面白がるように微笑みながら伊作は乱太郎の目尻に溜まった涙を拭ってやる。
「ほら、乱太郎。気づかないかい?しゃっくりが止まったよ。」
「あ、あれ?本当だ。」
 言われてみれば確かに今朝から続いていたしゃっくりは止まっていた。しゃっくり止まって良かったね。と満足そうな表情を浮かべている伊作に乱太郎は照れ臭くなりつつもお礼を言うことにした。
「その……ありがとうございまふ。」
 お礼を言うつもりだったのに最後まで言い切れずに噛んでしまった恥ずかしさから再び俯いてしまった乱太郎に対して伊作は優しく語りかける。
「これからも、乱太郎のしゃっくりは僕が止めてあげるからね。」
「え?ちょっ!どういう意味ですか!?」
ふふ、また止まらなくなったら言ってよ。」
 そう言ってしれっと作業に戻ってしまった伊作をポカーンと乱太郎は見つめながら、無意識に唇を触ると先程までしていたキスの感触を思い出してしまって顔が真っ赤になった。
(先輩に、ファーストキス奪われちゃった。)
 そう心の中で考えてしまい、乱太郎は顔を更に赤くしてしまう。それを見た伊作が乱太郎を見て微笑みながら、こう言った。
「ほら、まだ当番の時間は残ってるんだから頑張ろうね。」
 集中できなくしたのは誰のせいですか!など恨み言を吐きたい気持ちもあったが今、それを言ってしまえばまた何かをされるかもしれないと危機感を持っていた乱太郎は、口答えすることなく黙々と作業へと戻って行ったのだった。
 翌日、しゃっくり止まったんだねー!とは組のよいこたちが乱太郎に駆け寄ると真っ赤な顔をした乱太郎がおり、それで大体のことを察したは組のよい子たちが伊作のいる高等部へと殴り込みに行ったのは有名な話である。

ワード:何も知らない・勘違い・眩暈