三毛田
2025-07-16 22:22:48
1071文字
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55 055. 肩先の香りに口づけ

55日目
一緒にキスしたい

 そっとお腹に腕を回し、首と肩の境目あたりに顔を埋める。
「なんか今日、いい匂いがする」
「三月が香水を自慢しにきて、間違えて俺にふりかけたからだな。端末や他の機械に異常がなくてよかった」
 己が香水をふりかけられたことよりも、アーカイブ端末のことを気にかけているのが丹恒らしい。
 そういうところは好きだけど、同時に嫌いでもあったりする。
 なかなかに複雑な恋心だ。
「丹恒に合ってる」
「そうか? 俺は、そこまでではないんだが」
「このまま食べちゃいたいくらい、好き」
「お前はまた……
 俺の言葉に、彼は呆れた表情をこちららへと向け。
「丹恒が好きだから。お前の匂い自体は、さっぱりしているっていうか、水に近いっていうのが正しいかな。それも好き。でも、こうして甘い匂いが絡まっていると最高」
 胸に手を添え、首元の匂いを思い切り吸う。
「ひっ」
 俺の息が首にでもかかったのか、悲鳴を上げて。
「ぐえっ」
 びっくりした瞬間に、俺の腹へと肘が。
 痛いじゃない。これ、死ぬ。
 丹恒のこういう攻撃は、痛い。痛すぎる。
 というか、ほぼ即死級だよ。
 即死しなかったのは、俺だからだと思ってる。
「丹恒、ひどいって~」
「知らない。お前が悪い」
 耳を真っ赤にし、プイっとそっぽを向いて。
 でも、罪悪感は多少あるのか、横顔は気まずそう。
「たんこ~」
 俺が拗ねたような声を出すと、渋々こちらを向き。それから、自分が肘を入れた場所をそっと撫でてくれる。
「悪かった」
「うん。丹恒は、力が強いんだから気を付けて」
 俺の腹を撫でている手を、そっと上から撫でると暫くその手を見てから俺を見て。
「気をつけよう」
「そうしてくれると嬉しい。キス、していいか?」
「どうしてそうなる」
 俺の言葉に、ぐいっとちょっと近づけた顔を押し返して。
「丹恒、首の骨折れるかと思った」
「今のはお前が全面的に悪い」
「悪かったって。でも、お前にキスしたいなぁって」
「俺とお前は恋人でも何でもない。何故?」
「お前が好きだから。恋人になりたいし、キスしたい」
 訳が分からない。そんな表情を浮かべ、俺からちょっと距離を取る。
 流石にそれはショック。
「お、俺と恋人になりたくない!? こんなに可愛いのに!?』
「可愛い可愛くないの問題じゃなく、そんな下心満載で恋人になりたいと言われてもはい、そうですか。と頷けるわけがない」
「そうかもしれないけれど~」
 だって、丹恒が好きなのは確かなのに。
 丹恒は、気づいてくれない。知ってもくれない。