cat_umbrella1
2025-07-16 17:23:04
1278文字
Public
 

花若(番外)

元ネタ・るるこさん
ド○キにアレを買いに来た話

 安いのはよいことだ。ついでにでかけりゃさらによい。驚安の殿堂を謳う総合ディスカウントストアは上記の二点に加え、生活雑貨から食品、美容グッズや家電製品までなんでも取り揃えている夢のような場所である。しかもコンビニに比べてその安さは段違いなので、若草は修羅場と見込んだ時期にはここで大量に食料品を買い込むことにしていた。もちろんスタッフらへの差し入れのためだ。
 この店はジャンルごとに数フロアに分かれている。一階は食料品、二階は生活雑貨、三階に美容グッズときて四階は家電製品、と、大まかにはこういった具合だろうか。
 若草は今、四階の隅っこにいた。男をひとり引き連れて。
「わ、色々あるなあ」
…………
 男は呑気にのれんをくぐり、すたすたとその中へ入っていった。少しして入口で立ち止まって入ってこない若草に気付いて、「若?」とわざわざのれんをめくって名前を呼ぶ。ちょいちょいと手招きされて、そこでやっと若草は重たい足取りでのれんをくぐった。のれんには18歳以下は立ち入り禁止、と描かれていた。
 通常のフロアと布一枚で仕切られているだけなのに、その品揃えは異様だった。サイズや厚さや肌触りに拘った各種メーカーごとに並べられたコンドーム、バイブ、ローター、プラグ、貞操帯に縄にキャンドルに鞭、エトセトラエトセトラ。とても陽の下では見られない、布一枚で仕切るには日常から隔たりすぎているそれらを、若草はいっそ睨みつけるように見上げた。
 花厳は左手に引っ掛けたカゴ――中には既に酒や弁当の類が入っている――を揺らしながらほけほけと笑っている。
「ね、わかが選んでよ」
「なんっで俺が……!」
「だってわかに使うものだし」
 ね、早く、と男が耳元でささやいた。ぐうと喉の奥で唸る。意志をもって睨みつけても、男はどこ吹く風で笑っているだけ。数秒睨み合いを続け、折れたのは若草だった。
…………これ」
「はい」
 力なく指さしたそれを、花厳は気軽にカゴに放り込む。手前側にあった、恐らく初心者用の小さめのプラグだ。ただバイブレーション機能がついていて云々、とシラフではあまり読みたくない文言が踊っている。いちばん小さそうに見えたから選んだけれども、もしや間違いだったかと早速後悔した。いやたぶん、何を選んでも後悔することにはなるけれど。
「他には?」
「いい。いらない」
「そう?」
 男はなんの気もなさそうに首を傾げた。明らかに早く出て行きたがっている若草を横目に、「蓄光のやつとかあるよ」と何かの箱を手に取る。蓄光だったとしてなんなのだ。若草は別に光り物を好んでなんかいない。
「いらない?」
「いらない」
「そう……
 男は残念そうに箱を戻した。一度カゴを揺らして、思わず視線を落とした若草に弁当の上に鎮座するそれを見せつけて。それからにま、と笑った。
「たのしみだね」
……〜〜〜ッ」
 若草は思い切り男を睨みつけ、ついでに肘鉄を食らわし、のしのしとのれんの外に出て行った。のんびりと追いかけてくる男の気配に、痛いほど奥歯を噛み締めながら。