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溶けかけ。
2025-07-15 22:46:53
969文字
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ほぼ日刊
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静寂
純水精霊になったフリーナと泡で会話するヌヴィレットのお話。
読みは「しじま」でも「せいじゃく」でも。
ぷくぷくと泡が生まれる。小さな泡は同じような小さな泡と集まって大きな泡になった。
「ぬゔぃれっと?」
声の代わりに泡が言葉を形作る。僕にはただの泡にしか見えないけれど、ヌヴィレットや原海アベラントには言葉として見えているらしい。
──
……
僕もいつか、見えるようになるのだろうか?
自分が作った泡に触れれば泡はたちまち小さな泡になっていく。僕の作った言葉の泡を黒い革のグローブが優しく包み込んだ。
「まっていたよ」
言葉を含んだ泡を吐き出せば、薄い唇が綻んだ。死んで、巡って、また死んで──そうして僕が辿り着いたのは純水精霊の姿だった。エゲリアの涙から生まれた純水精霊は本来ならば、もう生まれないと言われていたはずだった。それなのに、僕は長い時間をかけてもう一度、純水精霊の姿で彼と再会を果たした。
「あいたかった」
長い鰭でヌヴィレットの体を包み込む。僅かに空いた距離に「あの頃は隙間なんてなかったのに」なんて苦い気持ちが込み上げてくる。
「フリーナ」
「なんだい? ぬゔぃれっと」
ぷくぷくぷく。また泡が生まれる。
生まれたばかりで上手く声帯器官が作れない僕のために彼が考えてくれたのがこの方法であった。声帯器官を作るよりは水から生まれ落ちる泡に想いを込める方が純水精霊である僕にとってはよほど簡単だったというわけだ。
「どうかしたのかい?」
この方法に問題があるとすれば、複雑な感情を込め難いというところだろうか。もしかしたら、僕がもっとこの体への理解が深まれば可能になるかもしれないけれど。
「ぬゔぃれっと?」
「君は変わらないな」
懐かしむように言われて、僕の中で泡が弾けるような感覚を憶える。人の頃で言うならば羞恥、だろうか?
「ぼく、こんなにかわったよ」
姿形は勿論、今の僕は小さな子どものようなものだ。流れる水のように溢れていた美辞麗句は一つだって浮かばないのだから。
「変わらない。私にとって、君はいつまでも唯一無二の存在なのだから」
ヌヴィレットがフリーナを抱き寄せる。体を溶かすような熱ではなく、水らしい、ひんやりとした熱がヌヴィレットの服越しに伝わってくる。
「ふふっ
……
ぬゔぃれっとはあまえんぼうだね」
ぷくぷくぷく。
拙い言葉を内包した泡がヌヴィレットの頬を撫でた。
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