三毛田
2025-07-15 22:33:39
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54 054. その気持ちに理由なんてない

54日目
理由はないんだ

「理由がなくちゃ、いけないのか」
「俺としては、疎まれる理由はあれど、好かれる理由はないからな」
 それは、今までの俺に対しての態度からだろう。
 甘いな、丹恒。
 これまでの冷たいというか、塩対応とも呼べる態度は、いきなり列車に乗り込んだわけの分からない、いつ星核が爆ぜるかも分からない危険な相手に人見知りと警戒を発動していたのが、大半の理由であると分かっている。
 というか、なのが警戒心が薄すぎるんだよ。
 パムですら呆れるほど、警戒心が薄い。むしろ、無いと言われても納得できてしまう。
「好きだから、好き。丹恒のいいところも、好きなところもすぐに挙げられくらい、好きだ」
 じっと目をそらさず、口にするとそっとそらされてしまい。
 その動作は、まるで俺から逃げるかのようで。
「逃がさないから」
 そう告げれば、肩を跳ねさせ。
 今更逃がせるわけないだろう?
 それ以来、何度も何度も好きだと告げた。
 誰がいようと、構わず。
「穹、止めてくれ……
 俺の上着の紐を引っ張り、顔を真っ赤にして止めようと頑張っている。
 そんな普段ならば見られない姿は可愛らしいが、本音を言ってしまえば俺だけが観ていたい。
「丹恒、諦めなさい。穹は、あんたが思っているよりも執着がすごいわよ」
「わかっています。でも、俺には……
 姫子とはなしている丹恒。まーた自分を卑下してる。
 そういうところも嫌いじゃないけれど、もう少しだけ自信を持ってほしい。
「丹恒、今時間いい?」
 声をかければ、肩を跳ねさせ。それから、一歩、二歩と離れていく。
「ちゃんと話し合いなさい」
「ひ、姫子さんっ」
 まさか姫子が、俺に味方をするとは思っていなかったのだろう。
 焦った声を出して彼女にすがろうとする。でも、トンと背中を押されて、俺の方へ。
「う……
「俺の部屋でも、いい? あんまり他の人に訊かれたくないから」
「いや、だが……
 助けを求めるように、縋るような表情を浮かべている。
 けれど、誰も彼を助けてくれない。
 ラウンジでそんな会話を交わしていたけれど、俺たちには関わりたくないと言わんばかりに、そっと視線をそらし。
 そんな彼らに、丹恒は諦めたように俺の上着の紐を掴んで。
 なんとか丹恒を部屋に連れ込み、飲み物を提供してリラックスしてもらう。
「丹恒、好きだ」
「っ」
 マグカップを持つ手に力が入ったみたいで、嫌な音がした。
「理由はないから。好きだから、好き。いい加減、受け入れて」
 そっと彼の手を撫でた後、握りしめた。