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さとうみず
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【シャアム】ひとでなしのこい
クワトロ×CCA後アムロ(29)。短いしCP色ないかも。クワトロの立ち位置つらいな〜と思って書いた。クワトロは薬の幻覚でアムロ(29)を見ている。あとこのアムロ、CCA後なので自分達の最後を知っている。
アウドムラのシャアの部屋。ベッドに横になるシャアを見下ろした。男の顔は酷くやつれているように見える。
ブレックス准将が暗殺されてから、シャアの纏う空気は変わった。あまり近寄らなかったブリッジでブライトと話すようになり、休憩室でも難しい顔をすることが多くなったと思う。
准将の死の間際にエゥーゴを指揮するよう頼まれたと聞いた。この男の事だ。「准将に託された命だ。私がやらねばならぬ」と思い詰めていたのだろう。
エゥーゴは連邦に対抗するには小さく頼りないが、組織だ。シャアにすべてを負わせようとは誰も思っていなかったはずだ。しかし、あの頃の俺達の態度を振り返ると、シャアに過度な期待を負わせてしまったのかもしれなかった。
「
……
アムロ?」
「シャア、起きたか」
目を覚ましたシャアはベッドに腰掛ける俺をぼんやりと見つめていた。目に髪が入らないように、シャアの前髪を流すとぴくりと睫毛が震えた。眉間に皺が寄った顔が「信じられない」と言っている。
「アムロ、これは」
「身体、動かないだろ? あなた、休まないから一服盛ったんだよ。ああ、もちろん毒じゃない。
……
あんまり皆に心配かけるなよ」
「君は、アムロではないな」
〝一服〟のところでシャアは目を見開いたが、眠そうに瞬きを繰り返した。やっぱりバレているか。
「そうだね。あなたが知ってる俺じゃないよ」
「君は、何を言っている」
頬に手を当てて目元を擦ると、目の下に濃いクマが見える。
あの頃の俺達は自分のことで余裕がなく、シャアに無理をさせていたことに気づいていなかった。
「俺、今二十九歳って言ったら信じる?」
「
……
その顔で私より年上だと」
心底驚いた顔で俺を凝視するシャアに腹が立った。同時に可笑しかった。
「そう。七年後のあなたは貫禄があるよ」
「私は生きているのか」
「俺の人生であなたほど悪運の強いひとを知らないよ」
元気だよ、とても。そう頷くとシャアはつらそうに顔を歪めた。それを意味するところが分からないほど鈍くはない。
生きていることと幸せであることは同等の価値ではないのだ。他人の希求を拾ってしまうこの男では、苦しみの方が多いだろう。
それでもあなたはこの先も誰かのために生きていく。その先がたとえ行き止まりだとしても。
「俺と一緒に逃げないか」
「
…………
」
シャアは黙って俺を見上げて、言葉の真意を図っている。時計の秒針が沈黙を埋めるように、忙しなく駆けている。
シャアは悲痛な色を瞳に宿して俺の名前を呼んだ。
きっとシャアの一番欲しい言葉。
そして、シャアの中の俺が絶対に言わない言葉。
「
……
冗談だ」
シャアの目を覆って額の傷に口づけをする。
シャアとなら、今すぐ逃げてもいいと思った。
どこへでも行って無責任に暮らしたかった。軍からの脱走は死刑だが、俺達ならどうとでもできる自信があった。どちらも頑固だから喧嘩は絶えないだろう。でもとても楽しいだろう。
夢のような話だ。人殺しが語って良い話ではない。
そして、俺達の未来にはならない。
「ごめんな、シャア」
もう一度、謝ってこめかみに唇を落とした。
薬が効き始めたのか、シャアから静かな寝息が聞こえてくる。次に目が覚めたら、身体の自由は戻るし、幾分か身体が楽になっているだろう。
「おやすみ」
恨み言は七年後に聞くよ。
ただどうかそれまでは生き延びていてほしい。
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