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くこ
2025-07-13 22:33:26
8963文字
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【R15くらい?】今馬×拓海(ハンドラ)
CP名わかんないし、今馬くんのキャラも拓海くんのキャラも掴みきれてない…けど…見たいの、双子CPが……
2周目のどこか 特定のルートは想定していない
ネタバレないのは嘘でした 1週目のネタバレはしています
恋慕の情ではない。
そのような軽薄で薄っぺらな感情と一緒にされては困る。この感情は、もっと敬虔で高尚な、誰にも侵すことのできない純粋なものだ。
今馬は、日課である額縁の清掃を一通り終えて、ひとつ息をついた。妹の写真を飾っているそれらを、ホコリまみれにすることは、今馬のプライドが許さない。だから、毎日磨いている。東京団地に居た頃からの習慣だ。
あの頃は、今よりももっと無我夢中で、とにかく自分たち以外を蹴落とし、騙し、出し抜くことだけを考えていた。事実、自分たち以外を信用なんて出来なかったし、今でもそれは正しかったと思っている。人間は、簡単に裏切る。どんなに甘い顔をしていても、どんなに絆されたように見せかけても、最終的に選ぶのは自分自身だ。今馬だってそうだから、そのこと自体を批判するつもりはない。ただ、そうなのだと考えているだけだ。そして、その前提で動いている。それだけのこと。
東京団地に比べれば、今の環境は、幾分かマシだ。まず、食事の心配をすることがない。貞操の心配をすることもない。特防隊のメンツは、同年代ばかりだし、それも分類すればお人好しの方に配置される人間ばかりだ。今までの十年以上と比べれば、ここは、戦いを強要されることを差し引いても、天国のような環境だと言える。
あとは、妹を、完璧に安全な状態に保てれば、それでいい。最悪、今馬は戦いに出てもいい。妹さえ無事であれば、それは今馬の本願であり、それ以外は些末なことだ。
だが、妹は、この特殊な環境において、自我を主張している。
役に立ちたい、そういった類いのことは、東京団地に居た頃からもこぼしていたことだ。それが、実現性を帯びてきたことで、我慢が利かなくなったのだろう。その向上心、献身は、さすが我が妹であり、褒め称えるべき素晴らしい精神性だ。しかし、このような危険に晒すことは、大変な問題である。
妹がひとつでも傷つけば、今馬は自分を許せない。妹がひとつも傷つかないためだけに今馬はこれまで身を粉にしてきたというのに、それを台無しにされては、いったい、今馬は何のために、この十数年間を生きてきたのか、わからなくなってしまう。
その今馬の心配は、あっさりと無下にされるのだけれど。
「妹ちゃん
……
どうしても心変わりはしないっすか?」
同情を引くように声を弱くしても、長年の付き合いであまり効果がない。妹は、ぷくりと可愛らしく頬を膨らませて、今馬を見上げた。
「しつこいよ、お兄ちゃん。もう自分は決めたの。自分も、みんなの役に立つんだって。みんなといっしょに、みんなと同じように戦うんだって」
基本的には今馬を尊重する妹だが、こうなっては梃子でも動かないことを、今馬は十分に知っている。これは、今馬を侮辱した同級生に謝罪を要求したときと同じ顔だ。ぜったいに、引き下がらないだろう。
わざとらしく、大きく溜息をついた。
「わかった、わかったっすよ
……
でも、約束してほしいっす。ぜったいに、無茶はしないって」
「
……
わかったよ、"今馬"」
今馬が、片眉を上げる。
彼女が故意に名前を呼んだということを、今馬は理解した。それに同調してやるか、否か。妹に甘い今馬が採る選択肢など、決まっている。
「頼んだよ、"過子"」
そうして対等な立場を確かめ合った双子であったが、まさか、「そういうこと」まで対等であるとは、さすがの今馬も、予想はしていなかった。
「澄野先輩! 早く来て!」
「わ、わかった、わかったから、過子
……
そんなに急ぐなよ、転ぶぞ」
まばゆい笑顔で、赤髪の男の手を引く妹の姿を見ながら、今馬はあからさまな不機嫌を隠そうともしていなかった。
何が妹の琴線に触れたのかは、正直、わからない。ただ、未来から戻ってきたとかいう胡散臭い訴えをしてきた澄野を、過子はいたく気に入っていた。善良な性質の特防隊のなかでも、取り分けお人好しな性分を、好ましく思っているのかもしれない。あるいは、双子が名前で呼び合う前から、過子を一個人として尊重してきたからなのかもしれない。
今馬だって別に、澄野のことを嫌っているわけではない。むしろ、分類であれば、好印象の方に入る。人畜無害で、扱いやすくて、戦闘時には頼りになる。嘘か誠かわからないが、未来を知っていることから、意見に筋が通っている。感情的ではあっても、それはみんなを守りたいという気持ちから来るものだとわかるので、嫌味がない。
だから、澄野自体が、悪いわけではない。それは、わかっている。
でも、最初から、過子のことを呼び捨てにしているのは、馴れ馴れしいのではないか、とも、思っている。
「ね? 自分の言ったとおりだったでしょ? 澄野先輩、自分、偉いよね?」
「あ、ああ
……
本当だな。ありがとう、過子。おかげで、今日の探索はすぐに済みそうだよ」
川奈が要求した素材の在り処を言い当てた過子は、得意げに胸を張る。きらきらとした、期待に溢れた視線に射抜かれて、澄野は、ふにゃりと破顔した。ぽん、と、過子の頭を優しく撫でるさまは酷く自然で、それを過子も嬉しそうに受け入れていた。じく、腹の底がうずく。
頬を赤く染める過子は、きっと、親愛の情以上のものを澄野に抱いている。
年頃だし、(今馬の影響もあるかもしれないが)もともとそういうことに人一倍興味はありそうだったし、そのこと自体に不自然さは無い。いずれ来ることだと、覚悟していたことでもある。だが、今、それを迎えて、何も思わないでいられるほどには、まだ達観していない。
澄野と、目が合った。咄嗟に顔を反らしてしまう。しまった、もっと悠然と構えているべきだった。これでは、妹を獲られて拗ねているように見えてしまう。実際にそうだったのだとしても、それを悟られることは、また別である。
すぐさま、目線を戻す。澄野の、少しぎこちない笑顔が、そこにあった。心臓が高鳴る。
「他の素材も結構溜まったし、今日は帰るか! 過子も今馬も、ありがとうな」
先ほど過子にしていたように、澄野は、今馬の頭も優しく撫でた。まるで、近所の気の良い兄貴分のような振る舞い。実際、そこまでの兄貴肌ではないだろうに。気を遣っているのだ。今馬にはわかる。おとなの、他者の機微を瞬時に読み取ることで、自分たちの良いように物事を推し進めてきた。たかだか高校生のそれらが、今馬にわからないはずがない。
でも、それでも。
温かな手を振り払えるほどには、今馬だって、冷酷なわけではない。
「澄野先輩」
声をかければ、必ず振り向いてくれる。
そのことが与える安心感の大きさを、きっと、本人は自覚していないに違いない。
どうした?と、笑う澄野は、きっと、次の日の食事を心配したことなんてないのに違いがない。
「過子との距離が近いっすよ。これ以上に距離を詰めたら、どうなるか、わかってるっすよね?」
澄野が、困ったように笑う。それはそうだ。距離を詰めているのは過子の方であり、澄野はむしろ、それを宥めている方である。
わかっているし、今馬がそれをわかって言っていることも、澄野はわかっているはずだ。そこまで鈍感ではない。
逆に、澄野は、この機会に距離感を定めようとしていた。今馬も、それを狙って口火を切ったので、願ったり叶ったりだ。言葉を交わさずとも意図が伝わるというのは、気が楽だ。
視線を絡めれば、また、澄野が眉を下げる。困ったときに頬を人差し指で掻くのは、彼の癖だった。その白い丘陵は柔らかいのだろうかと、関係のないことを考える。
今馬は、澄野の言葉を待った。そこに何か自分の恣意を介在させたくなかったから。
今馬が続きを紡がないことを認識した澄野は、おもむろに口を開く。
「今馬は
……
やっぱり、その、イヤか?」
今馬が唇を引き結ぶ。
それは、つまり、澄野も過子のことを憎からず思っていると自白しているに等しかった。
じんわりと、胸のあたりに靄が広がる。その色が何色か、今馬には認識することができない。
「本気なんすか?」
真正面から見据える。
これで怯むならば、一刀のもとに斬り伏せる。
「
……
今馬は、不満かもしれないけど」
ゆっくりとまばたきをした澄野の目が、今馬の瞳をまっすぐに見返す。少しもぶらされないそれは、意志を強く感じさせた。
「大切にしたいと思ってるよ」
は、と、今馬が笑った。
「甘い! 甘いっすよ! そんな簡単な言葉で許されるとでも? そんな、最低限の、アタリマエのことを宣言して、だから何だっていうんすか?」
畳み掛ければ、澄野はまた眉をハの字にして笑った。それが、今馬よりよっぽど余裕であると見せつけてきている気がして、腹が立つ。
本当なら、たじろいでほしかった。
今馬の迫力に、足を一歩、二歩下げて、情けない声を上げてほしかった。
尻込みして、頼りない姿を見て、そら見たことかと得意げに胸を指で突きたかった。
澄野はそれをしない。
わかっては、いた。
「オレはさ
……
今馬のことも、大切に思ってるよ」
「、っ!」
逆に喉を詰まらせさせられて、本当に、腹が立つ。憎らしい。
そうやって、簡単に、目をまっすぐに見て、視線を逸らさないで、実直に、告げる。
だから嫌なんだ。幸せに生きてきた人間と関わるのは。
「
……
うるさいっすよ」
地を這うような声を出したつもりなのに、思っていたよりも、か細い。腹が立つ。
「澄野先輩にはわかるんすか? 何日もまともな食べ物にありつけないで、そのへんに生えてる雑草で飢えをしのぐ気持ちが。プライドなんてかなぐり捨てて、とにかくおとなのご機嫌を取って、明日を生きることだけを考える気持ちが」
こんな、同情を引くような物言いは、格好が悪い。不本意だ。そんなことを、言いたいわけではない。
でも、何かしらの悪態をつきたい。
目の前のこの男を困らせて、なじって、悲しませたい。
今馬の狙い通りに、澄野は、苦しそうな表情をする。その表情を向けられて、望みが叶った今馬は、ただただ、息を詰まらせる。
何も、いいことがない。
「ごめん、な
……
たぶん、オレは、ほんとうの意味では、おまえたちの苦しさを、理解できないよ。おまえたちが味わったものを、軽々しく、わかるなんて、言えない」
「
……
」
「過去の
……
昔のことは
……
どうしようもない」
澄野の手が、今馬の指に触れた。
ところでここは、澄野の自室である。早朝、今馬がインターホンを何度も鳴らし、無理やり澄野を起こして、部屋に入れさせた。だからここには、今馬しか居ないし、当分は、誰かに乱入される心配もない。
身体的接触を、澄野がどう捉えているのかは、わからない。天然で人誑しの才があるから、きっと、何も考えていないのだろう。
だからこそ、それを後悔させることにした。
「ここで自分に近づいてくる意味、わかっててやってるんすよね?」
「え?」
きょとん、という擬音がふさわしい間抜け面を晒す澄野の、顎を掴んで唇を奪う。もしかしたらファーストキスかもしれない。関係がない。
驚いて身を引こうとするのを、腰を掴んで許さない。戦闘態勢にない澄野は、たいした力を持っていない。荒事慣れしている今馬のほうが余程、体の使い方を知っている。単純な腕力勝負であればともかく、そうでないならば、澄野に勝ち目などない。
じりじりと足を踏み出していって、ベッドの方に追いやる。先程までは入口の近くにいたというのに、あっというまにベッドへ押し倒せた。こんなに弱くて大丈夫か。自分がしたことながら、今馬は心配になる。世界の命運を背負うチームのリーダーが、こんなに隙だらけでよいものなのか。
舌を差し込むと、澄野の肩がびくりと震えた。
熱い。歯の裏を舐め、口内のさらに奥へと押し入る。上顎を撫でると、ひときわ大きく澄野の腰が動いた。確かめなくてもわかる。勃っている。
童貞だな、わかっていたことを確かめる。声に出して問えば、澄野は顔を真っ赤にして涙目になった。正否など、答えずともその姿が物語っている。
脅す程度に留めるつもりだったのだが、思いのほか澄野が従順なので、どうすべきか、はかりかねる。
現状で、過子にバラされるのは、まずい。
きっと澄野は言わないだろうが、彼は、絶望的に隠し事に向かない。謀にも向かない。何かを察した過子に問われれば、すぐさま、ぼろを出すだろう。で、あれば、どうすべきか。舌を絡ませながら、今馬は思案する。
このお人好しのことを、今馬は、きっと、どうとでもしてしまえる。
このまま優しく気持ちよく抱いて、骨抜きにして、言うことを聞かせることも出来る。このまま手酷くして、ぐちゃぐちゃに傷つけて、二度と自分たちへ近づかないようにわからせることも、できる。
そのどちらも、食指が動かない。まったくもって、魅力的ではない。
どうしてやろうか。どうすることが一番に自分たちの為になるか。熱を持った舌を噛みながら、今馬は、考える。
過子は怒るだろうか。過子の意思をねじ伏せて過子を守ろうとすることは、今日に始まったことではない。ならば許されるだろうか。許されなかったとしても、もう取り返しはつかないし、戻る気もさらさらないのだが。
「う
……
っ、ふ、
……
ぅ、あ、
……
ぃ、今馬っ
……
」
絶え絶えの息の合間に己の名を呼ぶ澄野を、可愛いと思ってしまう。その感情に、完全に蓋が出来るだろうか。
頼れる存在など居なかった。
頭を撫でられることなんて無かった。
頼られるのも、頭を撫でるのも、いつでも自分の役割だった。
それを不満に思ったことなんて、ない。むしろ、誇らしいとすら思っていた。思っていたけれど。
今馬が、目をすがめる。
今さら、キス程度で己の理性を飛ばすことなどあり得ないが、それでも、感じるものは感じるし、反応するものは反応する。
赤紫の瞳が、自分だけを見つめて、涙で濡れるさまは、想像より扇情的だ。
顔のいい女をいくらでも見てきたし、そいつらを悦ばせてもきた。だから今さら、男子高校生の欲情した顔なんて、大したことは、ない。
両手で澄野の顔を掴んで固定して、いっそう舌を奥へと差し入れる。舌を吸い、甘咬みすれば、とろけた声が漏れる。びくびくと、澄野の肩が揺れる。
――
馬鹿馬鹿しい。
たかだかこんなことで、征服欲が満たされて、気持ちが良くなってしまうだなんて。
認められない。
「澄野先輩
……
童貞すぎるっすよ」
「
……
っ、う、ぅる、さっ、
……
!」
嘲るように言えば、想像通りの反応を返す。あまりにも可愛らしすぎて、癪に障る。わざとらしく、足の間に入れて膝を動かせば、澄野の体がびくんと跳ねる。もしかしたら、すでに一回イッてしまっているかもしれない。そうだとしても、きっと、澄野は白状しないだろうが。
「過子を
……
なんだっけ?」
「
……
!」
下がりきっていた澄野の眉が、上がった。今馬を睨みつける。口の端からよだれをこぼして、頬を赤くして、息が上がっている様子では、何の迫力もないが。
「だ、からっ
……
オレはべつにっ
……
オレは
……
、オレは、おまえたちが、いちばんいいかたちを、って
……
」
「傲慢っすね」
言い訳を最後まで聞かず、口を塞ぐ。むう、と澄野から不満げな息が漏れるが、意に介さない。
澄野が、双子の境遇に同情し、慮り、心を砕いていることなんて、わかっている。
だから、まずその思い上がりを粉々にしてやらなければならない。
同情で過子に接することを、許すわけがないだろう。
手首を掴んで、ねじるように力を込める。体重が乗っているのと、抓るような角度によって、必要のない痛みが澄野を襲う。自罰的なところのある澄野は、今馬の怒りを感じて、理由に思い至らなくても甘んじてそれを受け入れるだろう。なんとも善良なことだ。
膝を股の上に乗せる。潰されるのではないかという恐怖に、澄野が目を見開いた。拍子に、目尻に溜まっていた涙がこぼれる。窓のない部屋はいつでも照明がついていて、人工の明かりに照らされた透明なしずくが光るのは少し綺麗だった。
潰しやしないのに、思うが、今馬はそれを声に出しては伝えない。戦々恐々としていればいい。恐れ、怯えた目でこちらを見上げてくればいい。
望み通りの瞳と目が合って、今馬は、笑った。
「そんなに期待した目をして、澄野先輩は、自分にどうされたいんすか?」
軽蔑の色を全面に押し出して、問いかける。
澄野の視線が泳ぐ。期待なんてしてない、慌てて否定する言葉は上滑りする。本人も自覚がある。
顎から耳にかけてを、人差し指で撫で上げる。澄野の喉が鳴った。フェザータッチに慣れていないのだろう、澄野は、少し指を動かすだけで、大袈裟なくらいに体を跳ねさせた。好きでもない人間に触られて、ここまでの反応をしてしまうのは、淫乱の素質がありすぎる。
「そんな調子で、過子に手を出そうとしてたんすか? 許せないっすね
……
」
「ち、がっ
……
あっ!?」
反論を、服の上から陰茎を掴むことで妨げる。
布越しでもわかる、張り詰めたそれに、今馬が嘲笑を落とす。何を笑われているか理解した澄野は、顔を赤らめてぎゅっと両目をつむった。まるで子どもだ。今馬よりも、よっぽど。純真無垢で、汚れない。
舌打ちをした。
「何が? 何が違うって言うんすか。言ってみろよ」
「
……
っ、
……
い、ま
……
っ、あ、んっ、なあ、これ、やめて、話をしようっ
……
」
ぐりぐりと下半身をいじめていることを、澄野が咎める。やめてと言って、やめてもらえる環境で育ってきたのだろうな、と思ったら、余計にやめたくなくなってしまった。爪で先端をがりりと引っ掻く。澄野が腰を引こうとするが、後ろはベッドなので、それ以上に下がれない。必然、刺激を逃がすことができず、そのまま受け入れることになる。
弱い、弱すぎる。そんなことで、自分たちを受け止めようなどと、思い上がりにも程がある。
鍛えてやらねばならない。
「澄野先輩
……
年下にこんなふうにいじられて、どろどろに感じて、泣いて縋って、恥ずかしくないんすか?」
耳元で、吐息を吹きかけるように、囁く。
だって、と言いながら、身を捩って今馬の与える刺激から逃れようとする澄野を、今馬が見過ごすはずがない。
「ねえ
……
澄野先輩。誰を、どうするって?」
耳の中に、舌を入れる。鼓膜の横で、ぐちゅりと濡れた音がする。澄野の手が、今馬の腕を掴んだ。制止するというよりも、しがみつくと言った方が正しかった。
そのまま耳の縁を舐めて、耳たぶを柔らかく噛む。舐めて噛んでを繰り返しながら、一番反応のいいところを探す。耳の縁、上の方を噛むのがいちばん好きそうだった。だから今度は、あえてそこを避け続けた。ぎりぎりのところを軽く舌でなぶっていると、そのうち、澄野の嬌声はひっきりなしに上がるようになっていった。
「こんなに、女の子みたく鳴いてる澄野先輩が
……
何かをどうにかできると?」
「ん、っ、ち、ちがっ
……
ぅあっ
……
あっ、あっ!」
嘘をついたので、罰として耳輪を強めに噛んだ。罰にはなっていないかもしれない、とても気持ちがよさそうだから。
やっぱりこのまま抱いてぐずぐずにして、女を抱けない体にしてやるのがいいか。仄暗い感情が、腹の底から湧き上がる。過子のことは、どうとでもなるだろう。どうとでもしてしまえばいい。今までもそうやってきた。最終的には、今馬の意見を押し通してきた。
「あっ、ぅ、
……
っ、ん
……
ぃ、っ、今馬ぁ
……
」
澄野が発する声のなかで、かろうじて意味のわかる単語は、今馬の名前だけだ。舌っ足らずの、甘えたの声。
正確な年齢を把握しているわけではないが、高校3年生という自称を信じるならば、少なくとも3歳は年上だ。それなのに、こんなにいいようにされて、情けないことこの上ない。もっといいようにしてやりたい。でも、それをしたらきっと、もう戻れない。
血が滲むほどに、強く、強く耳を噛んだ。澄野の両腕が今馬の背中に回って、ぎゅうと掴む。いちおう、潰さないように肘に力を入れていたのだが、引っ張られたので、澄野の寝転がるベッドの方に倒れ込んだ。それと同時に、膝が股間に乗り切ってしまいそうだったので、咄嗟に少し下へずらす。だが逆にそれが刺激になってしまったようで、澄野が甲高い声を上げた。
「やっ、あっ、あぁっ
……
!」
おそらく、擦り上げるようになったのだろう、やってしまったな、と思いながら、今馬は澄野の下半身を見下ろした。確実に、スラックスの中は酷いことになっている。先程とは違う、確信がある。なぜならば、じんわりと水分が滲んでいるのが見えている。
ぼろぼろぼろ、と、澄野の両目から涙があふれた。恥ずかしさと気持ちよさとよくわからない感情によって、涙腺が崩壊したのだろう。無言で、自らの痴態を呆然と眺めている。さすがに少し、不憫に思った。
「
……
お風呂、入るっすか」
なので、ずいぶん昔、お漏らしをしてしまった過子にもした提案を、目の前の男にもしてしまった。澄野は今馬の方を見ない。目を閉じているわけではなく、まだ、茫然自失の状態から戻ってきていない。
はあ、と溜め息をついて、今馬は体を起こした。ベッドが揺れる。
ベルトを外して濡れたズボンを掴んで、脱がす。ついでにもう、上半身も裸にする。それで澄野は素っ裸だ。
「
……
は!? えっ!?」
「ぼけっとしてるからっすよ。ほら、さっさと立つっす」
「え!?」
尻を蹴り上げる勢いで、裸の澄野を風呂場へ誘導する。別に自分は脱がなくてもいいだろう。濡れたとしても、あとで着替えればよいだけだ。
待ってくれ!と、ようやく我に返った澄野が何か叫んでいたが、今馬は無視をする。
ひとまず、自分の頭も、シャワーで冷やすべきであると思った。
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