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yuiazetsu
2025-07-13 21:14:38
2383文字
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この後ストーカー主体の話でスレ立てた
ちょっとした暴力描写あります
日が落ちて既に一時間は経っていた。
蔦の這うコンクリートの壁。芸術らしさの欠片もないスプレー缶の跡が這っている。
調子に乗った。いや、VIPPERなんて調子に乗ってなんぼかもしれないが。
好奇心はVIPPERをも殺す。つまりVIPPERは猫と言う事?
そんな事はどうでも良い。考えるべき本筋から外れた物事が勝手に頭を回してくる。
整理しよう。
此処は? 廃屋。周りは草だの砂埃だのがのさばっているが、ちらほら置かれたコンクリートブロック、転がるやけに新しく見える酒瓶やチューハイのロング缶、そして部屋の隅を始めとしてあちこちに煙草の吸殻が散らばっているのが嫌でも目に入る。
時間は? はっきりは分からない。もう夜な事は分かる。時計も何も見れたものではない。持っていた鞄は数m前方に転がっている。土だか砂だかで汚れているのが見える。払って落ちるのか? あれ。
自分は何をしていた? 日が傾いてから、ふらりと外に出た。偶然見えた廃屋が丁度良かったから、心霊スポットの実況スレを立てようと思った。だから近づいた。
スマホは? 盗られた。歩きながら、スレ立ての為にスマホを見ていたのがきっと油断だった。足音が聞こえてから、反応が遅れた。
目の前の男共は? 5人いたはず。知らない奴らだ。目の前にいるのは3人。残り2人はどこに行った? どうでも良い。
自分の後ろにあるのは? コンクリートの壁。無理矢理に背筋が伸ばされている。すぐ近くの瓦礫の上に置かれた電池式のランタンが眩しい。ホームセンター辺りで買えそうな無骨なデザイン。手入れも何もされていない。ちょっとは拭いてやれよ。
「そんなに乱暴に押さえなくとも良いじゃないか」
手首が痛い。
「そもそも二人がかりで抑える必要ないだろ。淑女に乱暴するなよ」
目の前の奴らは何も喋らない。イラついた顔だのニヤつく顔だのが見えるだけ。面白くない。
こいつらが怪異だか幽霊だかそう言う類のものだったら良いネタになったろうに。
そう言う類のものとして書き込む手もあるが、少なくとも今の自分にとってはこいつらはただの凡庸な人間で、乱暴で、倫理観もクソもない馬鹿共。
そんな奴らのテリトリーに安易に踏み込んでしまった自分は?
何だって良い。もうどうでも良い。特にそれに秀でている訳でも無かろうが、脳まで粗悪な筋肉が詰まっていそうな者達であっても、普段鞄程度の重さしか持たないような自分が力で勝てる訳が無い。
せめて殺されるなら、もっと面白い死に方が良かった。
そもそも素直にこのまま殺してくれるんだろうか? 折角だからあれこれ使われるんだろう。
ああ、もう少し。もう少しくらい面白く死にたかった。
そうか? もう何だって良くないか? 考えるのも面倒だ。
コンクリートと擦れて、簪がカリカリと音を立てる。傷がつくからやめてほしい。
何だかあれこれ男達が話しているようだが、耳を傾ける気にすらなれない。どこか遠くで吹く風の音くらいにしか思えない。
そのままどこかに吹き飛んで行ってくれ。
妙なにおいがした。
若干甘いような、苦いような。煙?
煙草か。周りに吸い殻が散らばっているのだから妙でも何でもないはずだが。
……
いや、妙だ。
散らばる煙草の銘柄はセブンスターやらラッキーストライクで、それに対して今一瞬鼻を掠めたのは。
「ああ」
そうかそうか。それならまだあり得る。
そして、もしそうだとしたら面白い。面白いがそれはそれとして気持ち悪い。
口角を上げた自分を見て、目の前の男達は気味の悪そうな顔をした。
「手を放す気は無いのか?」
もっと怯えたような、お手本のリアクションを求めていたのだろう。
先程からイラついた顔をしていた男の一人が、痺れを切らしたのか拳を振り上げた。
「
……
おい、異常者。いるんだろ。さっさと何とかしてくれ」
足音もしなかった。忍者か何かかあいつは。
「すみません、遅くなりました」
男が振り上げた右手の手首を掴みながら、見慣れた顔が笑っていた。
「うわやっぱりいたのか」
「いるに決まってるでしょ」
「決まっては無いだろ」
急に現れた水色の異常者に僅かに怯んだのか、手首を押さえる男の手が緩んだ。
力任せに手を引き抜いて、慌てて此方を捕えようと伸びた別の男の腕を掻い潜る。
「3人ですか」
「あと2人いたはずなんだよな」
「ああ
……
い、ましたね」
「
……
何したお前」
軽く肩を竦めながら、狂人は僅かに笑った。
「入口? っぽいとこにいて。近づいたら殴り掛かってきたので」
「殴りかかってきたので?」
「
……
殴り返しちゃった」
「暴行罪」
「正当防衛でしょ」
此方に襲い掛からんとした男の腹部を蹴りつけながら、いつも通りの口調で笑う異常者に溜め息をつく。
「ところで」
「何だ」
「喧嘩します? それとも逃げますか」
「喧嘩出来るとでも」
「武器ならありますよ」
ほら、と顎で空き瓶を示すそいつに、馬鹿を言うなと笑って返す。
「それより私がこんな場所にいるのをなんとも思わないのか?」
「それもそうですね。一刻も早く離れた方が良いこんなとこ」
でも折角なので、と狂人が転がっていた空き瓶を手に取った。
怒り心頭と言った様子で駆け寄ってくる男の肩へ向けて、何の躊躇いもなくその瓶が振り下ろされる。
「
……
あ、すみません」
「何だ」
「割るの忘れてました。瓶」
「良いよもう」
その隙に、落ちていた鞄を拾い上げた。土を払うのは後で良い。
「帰りますか」
「ああ。さっさとここを出よう」
「
……
そうだ、スマホ盗られてたんだ」
「ありますよ」
「は?」
「これ貴方のですよね」
「何で持ってんだ」
「あいつらが持ってたので
……
こう
……
えいって」
「怪盗か何かか?」
「貴方の心です」
「端折り過ぎだろ」
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