【序文】
本文章はFate/Grand Order に登場するキャラクター・サバージオスについて考察する文章である。
サバージオスは2025年6月実装イベント『落涙の翼』に登場する敵側のキャラクターであり、物語の主役であるエフェメロスと争う存在である。
最終的には自ら矛を納めてエフェメロスへ協力し、主人公の仲間によって救出され主人公陣営に迎えられる。
筆者はサバージオスの言動へ興味を持ち、また本編での言動の裏にどの様な考えがあったのかを推察したいが為に、筆を取った。
本考察はイベント本編でのサバージオスの言動を元に、様々な知識を撚り合わせて解釈をするのが目的である。
主観的でロマン溢れる表現をするならば。
筆者はサバージオスの言動、気高さ、そして夢への憧憬へ惚れ込んでいる。
読んでくださる方はどうぞお付き合いのほどよろしくお願い致します。
それでは以下より本文の論述を開始する。
---------------
キャラクター考察『FGOにおけるサバージオスの解釈-土着の神が思い描いた宙への旅路について-』
【目次】
【序文】
【前提】
【情報整理】
【筆者の所感】
【考察】
考察①:サバージオスの対人関係-世界に呪われて存在を許されなかった者たち-
・テュフォン・エフェメロス
・イプシロン
・テュフォン・ネオス
・オデュッセウス
・両儀式-「 」
考察②:サバージオスの夢が拒絶された理由-フリュギアの豊穣神と民の認識のすれ違い-
・仮説『宙への旅路』
【結論】
【あとがき】
【参考資料】
---------------
【前提】
本考察執筆時の筆者の履修範囲は以下の通りである。
・Fate/Grand Order本編奏章Ⅲまで
・Fate/Apocrypha
・ギリシャ神話体系
・オデュッセイア本編
・ネットで簡単に得られる範囲でのフリュギアについての知識
・オデュッセウスのボイス&バレンタインストーリー(誕生日ボイスを除く全て)
・サバージオスのボイス(全て)
・テュフォン・エフェメロスのボイス(誕生日ボイスを除く全て)
・イプシロンのボイス(誕生日ボイスを除く全て)
また、本考察に関係する作品で未履修の範囲は以下の通りである。
・ロード・エルメロイⅡ世の冒険
・空の境界
【情報整理】
サバージオスについて概略を述べると、以下の通りになる。
FGO期間限定イベント『落涙の翼』に登場する敵である。
準主役級の扱いであり、イベントの主役であるテュフォン・エフェメロスと戦った。
その目的は「宙を見る事」である。
最後にはエフェメロスとイプシロンの為に矛を納め、自らの持つ魔力リソースを2人へ渡し退場
…するかと思われたがオデュッセウスに救出されカルデアへ仲間入りした。
サバージオスの性質を、本編中の描写から以下へ列挙する。
・黒い手が神体の神
・数多の存在を奪ってきた存在と推察され、簒奪の権能を持つ
・フリュギア土着の神、騎乗の神、天上の父
・ゼウスに習合され自身を知る者がいなくなった結果、ゼウスの内側で永遠の眠りについていた
・ゼウス・サバージオスとしてサーヴァントとなっている
・ゼウスではなくサバージオスの意識が表へ出ている状態は不自然であり、世界の修正力によって掻き消される運命にある
また、サバージオスの伝承について現実世界の資料から得られる範囲で列挙すると次の通りである。
・豊穣神
・騎乗神としては他民族からの簒奪の伝承を持つ
・蛇が神獣で、蛇に変化する事もある
・紀元前12-8世紀のフリュギアで崇められローマ時代まで信仰があった
【筆者の所感】
サバージオスの言動へ対する筆者の印象を以下へ列挙する。
主観的な印象の羅列だが、物語を読解する上で必要な過程であると判断し記載させていただく。
筆者の主観の偏りに留意してお読みいただきたい。
・夢見る存在
・冷静沈着な頭脳派
・決して油断しない
・自らの敗北を勘定に入れて次の手を打てる存在
・己へ害をなさない相手ならば礼節を持って対等に話せる存在
・恩には恩を返す律儀な性格
・嘘が苦手
・負けて悔しがるが3ダウンまでは粘る(ジョーク混じりの発言)
・プライドが高い
・だが作戦の為ならばプライドを投げ捨てられる
・目的の為ならば、他者の願いを踏み躙る行いもできる程に冷静な方
・テュフォン・エフェメロスに酷い事をした点は許さない
・だが反省して自ら矛を納めている
そして己の夢を看取った相手の為に己の夢を手折って手渡せる
・人に忘れ去られて心残りなく宙を目指したが、己を知る人に出会い「見ていて欲しい」と思ってしまった隙の為に計画が潰えたいじらしい存在
・最後の最後に神としての人恋しい己を捨てきれなかった
・宙を目指した豊穣神は、しかし他者の祈りを叶える為に地へ舞い戻った
【考察】
さて、ではサバージオスに関するデータが出揃った所で考察へ入る。
この考察は2本立てである。
考察①:サバージオスの対人関係 -世界に呪われて存在を許されなかった者たち-
考察②:サバージオスの夢が拒絶された理由 -フリュギアの豊穣神と民の認識のすれ違い-
では以下へ論述する。
考察① :サバージオスの対人関係-世界に呪われて存在を許されなかった者たち-
まずこの項目ではサバージオスについて、特異点で縁の深かった5名との関わりから掘り下げを試みる。
現状ではイベント一回の敵役での登用なので、幕間は多々あったものの、更に深掘りするにも周囲の登場人物について語りたい。
Fate世界で言う所の魔術的繋がりの深い方々との関係性から推察するのが相応しいと筆者は考える。
以下の5名について考える。
・テュフォン・エフェメロス
・イプシロン
・テュフォン・ネオス
・オデュッセウス
・両儀式-「 」
この方々の共通点を筆者なりに考えるに、いずれもなんらかの理由で「世界に呪われて存在を許されなかった」方々である。
では以下へ順に掘り下げる。
・テュフォン・エフェメロス
世界に願いを持つ事を許されなかった存在。
反願望機。口にした願いが叶わない、自身が夢を持つ事を許されない存在。
ゼウスの天敵・太祖竜テュフォンを無力化する為に投げ込まれた供物。
サバージオスが所有する聖杯からカウンター召喚された存在①。
サバージオスがゼウスと習合されていた故に天敵として呼ばれたのだと思われる。
(注意:明確な召喚順は本編中では不明、詳細は後述の番外編にて)
性質・性格的にサバージオスと近い存在。
彼女の独白とニアミスする形でサバージオスの独白が幕間3で流された。
(一人称が「俺」なのでプレイヤーは途中でエフェメロスではない事に気がつく仕様)
共に願いが叶わない存在であり、それでも願いへ手を伸ばして吼えた存在である。
彼女の宿業の超越は数多の人と神の協力で叶えた行いであった。
それはイベント中、独りで戦い続けたサバージオスが辿り着かなかった境地であった。
サバージオスは最後の最後でエフェメロスとイプシロンの祈りを叶える事に希望を見出した。
・イプシロン
そもそも世界に存在する事が許されなかった夢。
エフェメロスの夢。エフェメロスは直接願いを口にする事が叶わないので、イプシロンという願いを口にしても問題のない同位体を生み出した。
サバージオスは彼女の持つテュフォン・ネオスを奪い己の力とした。
イプシロンは特異点が消失すれば消え去る定めだった。
彼女はサバージオスによって踏み躙られた
…己の野望を叶えんと冷徹に振る舞うサバージオスによって危害を加えられる。
だが純真な性格から気高く振る舞い、最期の時にサバージオスの夢を看取ってから消える事を選んだ。
サバージオスは彼女の行動へ心を動かされ「叶わない夢よりは覚えていてもらう方がいいだろう、使え
…」と己の夢を手折って手渡した。
宙へ飛び立ったサバージオスは彼女とエフェメロスの祈りを叶える為に地へ舞い戻った。
サバージオスとの共通点は「特異点でなければ存在できなかった」という点。
・テュフォン・ネオス
天空の父ゼウスによって封印された存在。
ギリシャ神話体系においては蛇の王であり、数多の怪物の父でもある。
ゼウスに因縁がある、蛇であると言う点で近しい存在。
頭脳体であるイプシロンの本体。
サバージオスと共に宇宙を目指して飛んだ。
テュフォン・ネオス自身も独立した意思を持ち、サバージオスの呼びかけへ答える様子があった。
サバージオスのカルデアにおける戦闘時ボイスのセリフの中には、敗北時に「テュフォン
…俺はあの向こう側に
…」というものがある。
愛機として、唯一の仲間として今もなお心を寄せている事が伺える。
・オデュッセウス
海の世界の主ポセイドンに嫌われ海上で数多の苦難と戦った海の男。
トロイアの戦争で10年、海の上で10年の放浪を乗り越えて、愛しい妻と我が子の待つ故郷へ辿り着いたガッツの持ち主。
ギリシャ神話世界は天空のゼウス・海原のポセイドン・冥府のハデスという3王によって3分割して支配されていたので、ポセイドンに嫌われるという事は実質世界に嫌われるという事である。
サバージオスが所有する聖杯からカウンター召喚された存在②。
サバージオスは特異点にて、彼の霊基と木馬を奪って己の力とした。
筆者は「なぜ彼が召喚されたのか?」と言う問いかけにいささか迷う。
カウンター召喚なので、サバージオスにトドメをさせる敵対者として呼ばれた筈である。
ギリシャ神話関係で事情に詳しくて
…アイギスの仕様に詳しくて
…アテナの加護を持つからだろうか?
アテナはゼウスの娘でオリュンポス十二神の中でも人気の高い神なので、主神ゼウスへ比肩する力の持ち主であるかと思う。
またFate作中でアテナがオデュッセウスへ貸与するアイギスの材料の一つは、蛇であるゴルゴーンの首である。
イベント本編では出てこなかったが、サバージオスには蛇を神獣として自らも蛇に変身した逸話があるので、もしかしたら蛇を支配する関係で特攻だったのかもしれない。
そして物語の最後に、欠片となって消滅する筈だったサバージオスを回収し「一緒に生きないか?」と問いかけた男である。
彼方に焦がれて宙へ渡った土着神。
故郷に焦がれて海を渡った冒険家。
その心が理解でき、放っておけなかった故にサバージオスを拾う事ができたお人好しな存在。
・両儀式-「 」
世界に出ず、永遠に他者の内側で眠っている筈だった多重人格者。
サバージオス最大の敗因。
筆者は未読なのでその事情は深く知らない。なんとなく「多重人格の当主を立てる戦いを生業とする一族で、根源と接続している人格があると耳にした」位の認識である。
飄々とした態度で「どっちの味方でもない」者として振る舞った為に、合理性を優先するサバージオスから攻撃を受けなかった。
その後、自由にされたがサバージオスの根城へ戻ってきて勝手に宿にしだす。
その過程で雑談を交わして、自然と仲良くなった。
サバージオスにとっては気楽に振る舞える相手であったらしく、冗談を飛ばしたり弱音を明かす事もあり会話を楽しんでいる様子だった。
サバージオスの話を聞いて真名を言い当てる程の知識を持つ人物。
サバージオスは最後の決戦を前に式を無限長の空間へ閉じ込めて無力化し、見届けて欲しいと語った。
おそらく、人に忘れ去られて心置きなく宙を目指した豊穣神サバージオスにとって、とても貴重な己を知る存在。
式の直死の魔眼を評して「お前の目は特別だ。終わりを視る、未来視だ。だからその目で視てほしかった。俺が飛び立つところを。こんなくだらない重力(かせ)を振り切るところを」と語った。
式のもう一つの人格「 」が無限長を脱出する力を持つ事も知らずに。
最終的には「 」にテュフォンとエフェメロスの封印を破られてカルデアの介入を許した。
サバージオスは最後の最後で他者を求めてしまった、きっと「俺を覚えている人間に俺が宙へ旅立つ所を見ていてほしい」と思ってしまった、だから負けた。
サバージオスの敗因は神としての人と共に歩んでいた頃の自分を、最後の最後で捨てきれなかった事にある。
・サバージオスの対人関係まとめ
さて、上記5名との関わりを述べたのでサバージオスの行動をもう一度振り返る。
願いを叶える為に世界へ抗って吼え。
祈りを叶える為に己の願いを手折り。
宙を目指した為に竜と共犯者となり。
焦がれる心の為に一意に宙を目指し。
人恋しい神である為に敗北を喫した。
筆者の認識としては上記がサバージオスの対人関係における振舞いである。
---------------
番外編:時系列の不明な点
テュフォン・エフェメロスとゼウス・サバージオスの召喚順について
(*読まなくても考察が成立するので読み飛ばしOK)
筆者は作中から召喚順が読み取れなかった為に、前後関係については以下へ2つの仮説を提唱する。
『仮説α』
最初に聖杯を手にしたのがサバージオスのパターン
サバージオスが聖杯入手→テュフォン・エフェメロスがカウンター召喚→エフェメロスがイプシロンとテュフォン・ネオスを生み出す→エフェメロスが眠りにつく→サバージオスがテュフォン・ネオスを簒奪
この場合の聖杯のカウンター召喚はエフェメロス&オデュッセウスとなる
『仮説β』
最初に聖杯を手にしたのがエフェメロスのパターン
テュフォン・エフェメロスが最初に聖杯を入手する→イプシロンとテュフォン・ネオスを生み出す→エフェメロスが眠りにつく→ゼウス・サバージオスがテュフォンの天敵としてカウンター召喚→サバージオスが聖杯を簒奪
この場合の聖杯のカウンター召喚はサバージオス&オデュッセウスとなる。
どちらがより近いかはわからないが、サバージオスの作中のセリフに「偶然となり行きだが、テュフォンなんて純血の竜はあまりにもふさわしすぎた。目をつむって、なかったことにできるほと、俺はできた神霊じゃないんだ」というセリフがある。
もしかしたら仮説βの方が近いのかもしれない。
ただ仮説αの方が「ゼウス・サバージオスの天敵としてテュフォンとアテナのアイギス(対蛇の逸話あり)が召喚された」という文脈になるので話の通りが良い。
本編中では明示されていないので、今回はわかりやすい仮説αへ立脚して記載を行った。
その点をご留意いただきたい。
---------------
考察②:サバージオスの夢が拒絶された理由-フリュギアの豊穣神と民の認識のすれ違い-
サバージオスの対人関係を理解した上で、次に発言の掘り下げに入る。
以下は『落涙の翼』幕間3のサバージオスの過去回想の引用である。
---------------
ーーその光を、夢見ていた。
いくら見つめても飽きない光だった。
いくら思っても褪せない光だった。
ーーなのに、誰もが、言っていた。
おまえには無理だ。
おまえにはできない。
おまえには届かない。
おまえには、許されない。
私たちは、そういうモノだ。
ここで生まれ、ここで育まれ、ここで潰える。
知っていたはずだ。生まれたその瞬間から、嫌と言うほどに、わかっていたはずだ。
そのようにあることだけが、私たちというモノだと、悟っていたはずだ。
『どうして、諦めねばならない!』
吼えた。
全身全霊で、抗った。
知っていたはず、と皆が言う。
誰もがバカみたいに口を揃える。
ふざけるな。
どうして、そんなものに納得できるだろう。
見ろ。
忘れられるものか。
諦められるものか。
いつだって星はそこにある。
我らの同胞(はらから)はそこにいる。
おまえたちは忘れたかもしれないが、
俺はあの輝きをずっとーー
---------------
引用終わり。
上記はOP・ED含めて全10節の物語の内、第5節と第6節の間に展開される番外編である。
第5節にてカルデアがサバージオスの正体に気付いた後に展開される。
この文章はサバージオスの夢「宙へ行きたい」についての掘り下げである。
さて、このフリュギア時代の出来事について。
サバージオスの語る夢に対する周囲の反応は冷ややかである。
なぜだろうか?
作中では明示はないが、その理由はギリシャ神話の知識から推測する事はできる。
当時のサバージオスの発言は簡略化すると次の様になる。
---------------
補完文①
サバージオス「宙へ行きたい」
↓
ギリシャの豊穣神「宙へ行きたい(土地を離れます)」
↓
>>豊穣神デメテルによる飢饉再来の危機<<
↓
周囲の民or神orニンフ
「お前には無理だ」「できない」「届かない」「許されない」
*国を巻き込んだ死活問題の為、必死に止める周囲の焦り
↓
サバージオス「どうして諦めねばならない!」
吼えた。
全身全霊で抗った。
---------------
こうしてみるとサバージオスが無理難題を話し出したので、周囲が止めに入っている図に映る。
豊穣神デメテルの加護の消失、それは愛娘ペルセポネが冥王ハデスに連れ去られた事に起因する。
悲しみに暮れた豊穣神は一切の仕事をやめて、地上には飢饉が訪れた。
これがギリシャ神話の冬の起源である。
この前例を考えれば周囲が
…人なのか神なのかニンフなのかはわからないが
…ともかく止めに入るのは当然である。
この解釈でも全く問題は生じないだろう。
だが筆者は違和感を覚える。
サバージオスは無責任な性格ではない。
何かがおかしい。
故に考察をする。
サバージオスが何も考えずにこの発言をしたとは筆者は考えない。
行間を読む余地がある。
なぜならばサバージオスは律儀な性格である為、己に尽くした人間たちを問題の渦中へ投げ込む様には思えないからである。
また、サバージオスは問題を無視して楽観的な行動をとるタイプではない。
本編ではテュフォン・ネオスの改修速度がカルデアに劣る事実を認め「もう勝ち目はあるまい」としている。
その上で「ただ、それだけのことだ」「この程度のこと、やりようはいくらでもあるさ。ああ、悪あがきなら
……」と続けている。
更に敗北が明確となり、カルデアにテュフォンを奪還された第8節の場面では敗北を宣言しながら「俺は、俺の目的を果たす」と、準備していた別の作戦へ切り替えてテュフォン・ネオスと共に宙へ向かった。
この様に、サバージオスは正面から戦えば負ける状況においては「では負けた上でどうやって目的を遂げるか?」という風に、自らの負けを冷静に勘定へ入れて計画を立て直せるタイプである。
それにこのデメテルの飢饉の再来については、サバージオスにとって簡単に思い至る環境にあった。
なぜならばサバージオスの第8節の回想にて「宙を夢見たのは図書館の様な場所でオリュンポス十二神が地球へ持ち込んだ記録を目にした事がきっかけである」という旨の情報が開示されるからである。
Fate世界のオリュンポス十二神は外宇宙より飛来したオーパーツ、宇宙船の人工知能が地球の神となって定着した存在として語られる。
つまり、時系列としては地上にオリュンポス十二神が既に存在し、サバージオスは既にゼウスに習合されていた。そして内部資料を閲覧できる立場にいた事を示唆する。
それ故に、サバージオスもデメテルの加護の喪失による飢饉を既に知っているものと推察できる。
というか、土着神なので実際に体験している可能性もある。
だからこそ、サバージオスも問題点を自覚していたと考えられる。
故に、サバージオスはこの問題点に対して既に手を打っていた、と筆者は仮説を提示する。
なぜならば、これは他の方の感想による情報だが。
小説『ロード・エルメロイⅡ世の冒険』中で本イベント著者である三田誠 氏が以下の様に描写していたいう。
「手は人間の進化の象徴であり、手は進化を促進してきた神なのである」
伝聞なのだが今回はこの情報が真であるとして仮説を立てる。
つまりこの前提で解釈をすると、フリュギア当時のサバージオスを取り巻く状況への筆者の仮説は以下の様になる。
---------------
仮説『宙への旅路』
サバージオスは進化の促進によって人と共に宇宙へ向かおうとしていた。
サバージオスは手の神として人間の進化を促進してきた。
なぜならばサバージオスは自らの願いを直接叶えた時に飢饉が起きるという問題を理解していて、対策を打っていたからである。
つまり人間の望みを満たす事によって、自分も宇宙へ一緒に行くならば問題がないという論法である。
だからサバージオスは存在の簒奪を繰り返し、情報と文化を吸収して人間へ与えて進化を促す神となった。
なので人間が宇宙へ向かわず、あまつさえ人理焼却によって滅んだ事へ怒りを覚えている。
よって作中での発言へ繋がる。
「ただ、やり残しを終わらせたいだけだ。」
「神だからって星(つち)に縛られる必要なんかない。
永遠に、ここに留まるべき理由なんかない。」
これが本来のサバージオスが思い描いた宙への旅路の正体である。
---------------
さて、ではなぜ人の進化=宇宙への進出になるかと言うと
…FGOの中では度々提示されるテーマだからである。
2部奏章Ⅲは「人が霊長を終えて次世代へ席を譲り、宇宙へ飛び立たせる」という物語だった。
この物語は宇宙を目指すという人類の進化をテーマに扱った物。
また、2部3章においては人類の進化が止まった中国異聞帯がテーマである。
始皇帝が「宇宙は目指さない、大気圏下は支配下へ置く、だが国土が大事なので宇宙へは手を広げない」という旨の発言をした記憶がある。
中国異聞帯は停滞した行き詰まりとして淘汰される。
この様にFate世界においては「人類の進化≒宇宙への進出」というテーマが度々登場する。
なのでサバージオスが最終目標として宙へ行くと設定するのは、大局的に見ればそれほど可笑しな事ではない。
これらの情報を踏まえた上で改めて。
サバージオスの宙へ行きたい発言に感想を述べる。
「そりゃ無理だよ
…」
まず、生活水準がサバージオスの理想に追いついていなかった。
生活の余裕がない。
当時の人々の余裕がどれ程あったのか推しはかる事は筆者には難しいが、21世紀今日よりも、今を生きる為に支払う労力は多かったものと考える。
飢饉で明日食べる食事が途絶える事もあった。
その状況で豊穣神が「宙へ行きたい」は死活問題。
サバージオスの発言に対する周囲の評価が後ろ向きなのはこの為である。
---------------
補完文②
「無理だ(神様がいないの無理、行かないで!)」
「できない(貴方は土地が滅ぶの見捨てられない性格だろう)」
「届かない(豊穣神が宇宙なんて届くわけないだろ?)」
「許されない(神としての役割を放棄するのは許されない)」
---------------
人々は星に物語を与えたが、それは農業と船旅の為。
星空への旅を思い描いた訳ではない。
サバージオスの発言は、たとえばもし「恩のある神のものだから叶えたい」と考える人がいたとしても
…
サバージオスの発言は故郷へ危機をもたらし家族を失う可能性のある恐ろしい発言であった。
害があった為に利害関係の対立が発生し、協力したとしても妨害が発生する、故に達成が極めて困難であったと考える。
だからサバージオスに誰も協力してくれなかったのである。
次に、人類の成長がゆっくりすぎた。
人類は20世紀に宇宙へ歩み出たので、サバージオスの望みはある意味では正当な報酬だったと言えよう。
人類が地球を出ることができたならば、サバージオスも一緒に宇宙へ行けるのである。
…サバージオスが現存すれば。
そう、作中のサバージオスはゼウスの中で永遠の眠りについている。
サバージオスを深く知り、信仰を持つ者が途絶えたからである。紀元前12-8世紀に存在したとされるフリュギアは国として消失、フリュギア語は後6世紀に話者が途絶え判別不可能の言語になった。
少なくとも1,400年の時が彼を世界から消し去った。
おそらくの推測だが、サバージオスは徐々に信仰を失って自我が眠りにつく様を認識していたと思われる。
だからこその「吼えた、全身全霊で抗った」の一文が意味を持つ。
きっとサバージオスは全身全霊で人間の望みを叶えようとしたし、己の最期を悟った時には吼えてでも抗った事だろう。
つまり、この文章の正体はサバージオスの断末魔なのである。
---------------
補完文③
『どうして諦めなくてはならない!!』(消失を前にした絶望)
吼えた。(もう消える)
全身全霊で抗った。(俺はできる事は全てやったのに人間は応えなかった!!どうしてなんだ!?)
---------------
そして、人間の心変わりによって夢は潰えた。
サバージオスが実際に「宙へ行きたい」という夢を叶える時は永遠に断絶したのである。
『落涙の翼』本編までは。
サバージオスは意識を取り戻したタイミングで偶然にも願望機である聖杯を入手した。
そこから先の展開はFGOマスターの方々には語る言葉は必要ないだろう。
さて、考察②の総括をすると。以下の通りになる。
本来のサバージオスが思い描いた宙への旅路は、神としての人間の成長と共にあった。
だがこの神は人間によって己の夢を砕かれ、己を滅ぼした人間への怒りで行動している。
この神は長い絶望の果てに消え去ったものの、偶然にも現代へ蘇った今、土着神としての頸木の一切から解き放たれて最後のチャンスへ必死になってしがみついている。
これが『落涙の翼』におけるサバージオスの言動の裏にある真意である。
【結論】
本考察を以って筆者は以下の様に結論づける。
・FGO内のサバージオスは敵である。
・サバージオスの夢は「宙へ行きたい」である。
・サバージオスは夢の為に人間の進化を促進した、それが簒奪の神としての定義となった。
・だが夢は人間の心変わりによって叶わなかった。だから怒っている。
・サバージオスは己の夢を叶える為に、世界へ抗って戦うガッツの持ち主である。
・サバージオスは例え孤独な戦いだったとしても愛機と共に戦う。
・しかしサバージオスは元来、他者との対話を好む性質の持ち主である。
・サバージオスはエフェメロス姉妹の為に己の夢を諦められる気高い精神性の持ち主だった。
・そしてサバージオスはオデュッセウスに救われて味方となった。
・だからFGOのサバージオスは魅力的な存在として描かれているのである。
・Fate/Grand Orderによる『サバジオスの右手』の解釈は、サバージオスという新たな魅力持つ存在へと昇華されている。
以上の結論を持って、本考察の締めとする。
【あとがき】
…………
え?いつの間に考察できたの?
あのね、1日で書き上がってました。
1ヶ月位行くあてもないメモをじわじわと書いてたから出力はしていたけどさ。
というかこれを考察と評して良いのだろうか?
ほぼ推し語り&燃え語りかもしれません。
普段、ゲーム考察をしているのですが、言葉のないゲームの考察をしているので、別ジャンルのあらすじのはっきりわかるゲームの考察は不慣れです。
がんばって客観的に説明し、ソースも参照しましたが大部分は自分の主観をモチーフにしています。
物語を読み解くには主観が材料になる故に、必要な過程ですが、視点に偏りがあるかもしれません。
ですが自分は自分にできる全力を尽くし、よく考えて書きました。
ここまで読んでくださった方々、長文へお付き合いくださりありがとうございました。
本文では暗い部分ばっかりの掘り下げになってしまいましたが。
最後、イプシロンちゃんに己の夢を看取られた後。エフェメロス姉妹の願いを叶える為に行動するシーンは胸熱でした。
その助けのお陰でエフェメロス姉妹は「口にした願いは叶わない」という縛りを超越して「ずっと共にいる」という願いを叶えたんですね。
サバージオスさんは戦いに負けて勝負に勝ってるんだよなぁ
…いい空気吸ってんなぁ
…
しかもその流れで救助されて自分も生きながらえ、その上カルデアというかつてのフリュギアに似た場所に居られる事になったんでしょう?
逆転ホームランじゃん。
どうか幸せになってね。
サバージオスはカルデアへ仲間入りした後にこう語っている。
「なるほど、これがカルデアか。騒々しいが悪くはない。我がフリュギアもかつてはこの様であったものさ」
天より零れ落ちた星よ。
貴方をこの手に受け止めてよかったと思うのです。
貴方の言葉と声音の柔らかさを知れてよかった。人と共にあった貴方を知れてよかった。
どうかこの賑やかさの中で共に旅を、人の輪の中で過ごしてください。その方がきっと似合う。
だからこれからよろしくお願い致します。
【参考資料】
『Fate/Grand Order 落涙の翼』2025年6月4日〜6月25日配信
『ホメーロスのオデュッセイア物語』上下巻、岩波少年文庫 バーバラ・レオニ・ピカード作 高杉一郎訳 2014年2月14日第1刷
【備考】児童書版
『ギリシャ神話物語百科』マーティン・J・ドハディ作 岡本千晶訳 2023年2月28日初版
『TYPE-MOON wiki』
https://typemoon.wiki.cre.jp/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8
ゲームさんぽ『古代ギリシャ研究家と見る『FGO』の英雄たち』シリーズ
Livedoor News マスダ作、藤村シシン協力
『【知勇兼備の名将】古代ギリシャ研究家と見る『FGO』の英雄たち ♯8オデュッセウス編』2022年7月29日 など多数