レプ葬 出会う前だったり出会いの小ネタ。

げんみ× シナリオ終わるまで相方も×。

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シナリオ終わったらべったープラスの一覧にも載せます。


 

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レプリカントの葬列、怪盗秘匿取得済み前提とした小ネタ。
むしろそれだけ。
今しか書けないので勢いのみ。

贋作師相方はシナリオ終わるまで❌。ごめんね。

あくまで秘匿もらったうえでの二次創作です。
 
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怪盗の秘匿ネタバレありだよ~~。
 
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ネタバレ

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小汚いアジトにどっちが最初に住み始めたかはわからないけど、怪盗が先に活動してたなら
怪盗側が「じゃあアジト兼アトリエってことでここに住めば? 汚いけど」って感じで誘ってそうなので……
銀狐が最初に住んでて、後から真美ちゃん呼んだかな~という気でいます。



 
 
+ + + + +


 
 
「お疲れ~、シルバーフォックスくん♪」

ルン、としたお気楽な声色を発しながら、サングラスをクイと手直ししながら黄杜は汚れたソファでダラける銀狐に言葉を投げかける。

「今日も大盛況の大盛り上がりだったね」
「刑事さんはめちゃくちゃ鬼みたいな顔で迫ってきたけどね~」

怪盗として活動するようになって一か月ほど。
最初に起こした盗みがドえらい目立ち方をしたか、あるいは平和に生きる世の人の刺激を煽ったか。
どちらにせよ、銀狐はたった一か月で「怪盗シルバーフォックス」としてメディアに名を躍らせるに至っていた。
妙なファンが増えれば、当然こちらを敵視する人間も増える。
こと、依高という刑事は恐ろしいほどの熱量でこちらをとっ捕まえようと必死になっているのだ。
正直なところ、銀狐はあの視線の敵意が強すぎて「捕まったら殺されんじゃない?」と思っているので、けっこう一生懸命逃げているのであるが。

「あー怖や怖や。捕まったらオレ様、皮剥がされてはく製にでもされちゃうんじゃない?」
「そりゃボクが困るから勘弁してほしいな~。頑張って逃げて☆」
「買う側ってだけは気楽でいいよねぇ」

やれやれとため息を吐いて前髪をかき上げつつ、銀狐は部屋の隅に置いておいた絵画を指さす。

「はい、頼まれてたのはあっちにあるよ。確認よろ~~」
「ありがと~~、それじゃさっそく……

銀狐に促され、黄杜は部屋の隅にまとめておかれていた絵画たちに手を伸ばす。

「おぉ~すごいすごい。やっぱり銀狐くん、盗みの才能あるね~」
「なにそれ、褒めてる?」
「褒めてる褒めてる♪ もしかして前も同じことしてたんじゃない?」
「オレ様が記憶なくす前も怪盗だったって?」
「そ」
「怪盗……怪盗かぁ~、まぁ悪くはないけど」

んふふ、と少しだけ楽し気に唇を釣り上げて銀狐は笑う。
何も覚えていない自分が、唯一握りしめていた「生きる絵画」という頼りの糸。
それを探し当てるため、日々こうして手を組んだ黄杜に言われるがままに盗みを繰り返しているが、多少なりとも罪悪感はあるものの刺激的な日々は味を占めてしまえば麻薬のようなもの。

「もし盗みをしていたのなら、オレ様の過去についてなにかつながるものも出るかもしれないし一石二鳥なんだけどねぇ」
「ま、世の中そんなに簡単じゃないよねぇ~」

ガタガタと絵画を見定めいた黄杜は銀狐の言葉にアハハと笑い、そして最後の絵画を手にしたところで首をコキリと傾げた。

……あれ?」
「ん? どったの」
…………これ…………うーーーん…………

黄杜の珍しいリアクションに、いったいどうしたんだと銀狐はソファから体を起こしてその方に顔を向ける。
銀狐が見た黄杜は、何度も何度も首を傾げながら一枚の絵をじぃっと見つめてばかりだ。

「もしかしてどこか破けたりした? 大事に運んだつもりだけど……
「いや、そーじゃなくて。この絵さ」

一呼吸を置き、黄杜は絵画を銀狐にお披露目するかのように両手で支えて見せつける。

「それがどうしたん?」
「これ、偽物。贋作だよ」
………………はっ!?」

黄杜が発した一言に、思わず銀狐は大声を張り上げてソファから飛び上がる。

「え、え!? うそでしょ、ちゃんとあそこから盗んできたよ!? ずっとオレ様が持ってたから誰かにすり替えられてもいないはずだけど……
「ってことはそこにあった時点で贋作だった、てことじゃない?」
「まじで?? え、だって誰も気づいてなさそうだったよ……
「それだけ精巧ってことじゃない? ボクだって一瞬わからなかったもん」
「えぇ~……オレ様は今の今までわからなかったけどぉ?」

黄杜の話を聞いて、銀狐はその絵画の前へと近寄ってマジマジと眺める。
正直なところ、絵画の良しあしは銀狐には分からない。
分からない、が、この絵画はなんとなく「好きだな」と思ってはいた。
ただ、それは何か明確な理由があるわけでも、芸術的な観点からそう言っているわけでもない。
単なる「感覚」の話だ。
なんとなく、他より気に入った。
だから好き。
それだけなのだが。

「贋作、贋作ねぇ~……
「悔しい?」
「いや、そういうことは別に思わないけど。贋作作るにはもったいないほどの画家さんだと思うし、なにより……
「なにより?」
「画風とかタッチ、っていうの? そういうのかどうかわからないけどなんか好きなんだよね」
「この絵が?」
「うーん、この絵というか絵の描き方的な?」
「ってことは『この画家』がってことかな」
「あぁそうなる……のかなぁ……

生まれてこの方……いや、路地裏で何もわからない状態で目を覚ましてから今まで、絵を盗んできたがそんな画家には出会ったことがない。
絵がきれい~、だとかカッコイイ~、というのは思ったりしたことはあった。
だが、この感覚は初めてだった。

「よくわかんないけど、なんかこう惹き込まれるというか?」
「ふ~ん」

首をぐにぃっと歪めながら言う銀狐に、しかし黄杜はそんなこと興味ないとでもいうような雰囲気で再び絵画に目をやって、

「あ、いいこと思いついた」

何でもないことのようにそう、指をパチリと鳴らしてきた。

「なに、良いことって?」
「この贋作を描いた人と手を組まない?」
……はい?」

急に何を言い出すんだと片眉を歪ませる。

「手を組んでどうすんの?」
「この人に盗む絵の贋作を作ってもらうんだよ~」
……そんで?」
「で、贋作と本物をすり替える!」
……で?」
「そうすると、持ち主や警察は気付くのが遅れたり、場合によっては獲られてない!って思ったりするかも」
……なるほど?」

つまり盗みがしやすくなる、逃げるのもしやすくなる。
そういうことにつながると黄杜は言いたいのだろう。

「へぇ~、黄杜良いこと思いつくじゃん」
「でしょでしょ~」
「でも「多分」贋作師が描いてる、なんでしょ? 画家が名乗り出るとも思えないんだけど……
「まぁその辺はボクに任せておいてよ~」

胸をトントンと叩き、サングラスの奥でいつもの胡散臭そうな笑顔を浮かべて黄杜は笑う。

「超絶腕利きの贋作師だもの、ぜひとも協力を仰ぎたいからね!」
「自信ありげじゃん? じゃあ任せちゃおうかな~」
「おっけ~だよ~、良い報告を期待してて。あ、今回の報酬はこれね」

忘れてた、と黄杜はアタッシュケースを一つ、銀狐の前に差し出す。

「まいど、どーも」
「こちらこそ~。じゃあ今日はひとまずこれでお暇するよ~。贋作師のこととか次の獲物とか見つけたらまた連絡するから~」

絵画たちを綺麗にしまい込み、ひらひらと黄杜は薄汚れたビルの一室を出ていく。

……贋作師、かぁ」

それを見送り、一人になったところで銀狐は再びソファに寝転んで天井を見上げる。
黄杜が「贋作だ」と判別した絵画。
あの絵が偽物であるか、本物であるか、そんなことは銀狐自身には大した問題ではなくて。

「あの絵が描いた人に会える、ってことだよねぇ」

黄杜がしようとしていることはそういうことだ。
あの贋作を作成した画家を見つけてくる、と言ったのだ。
あまつさえ、協力してもらえないか頼もうともしている。
妙に目についたあの絵画。
どうして気になるのか、気に入ったのか、好きだなと思ったのか。
理由なんて何一つわかりはしないのだが。

「少なくとも、オレ様の過去に何か関係があるといいんだけど……

『生きる絵画』
たった一言の単語が、何も持たない自分の唯一の所持品だ。
それを見つけられる可能性が上がるなら、何が何でも縋りたいのは本音だ。

……どんな画家さんなんだろう、楽しみだな~」

ウキウキしながら両手足を猫のように伸ばし、銀狐は代り映えのしない灰色のコンクリートを見つめた。


+ + + + +


数日の後、アジトを訪れた黄杜が開口一番にこう述べた。

「やっほー、贋作師さん見つかったよ」
「え、まじ!?」

ゴロンと寝転がっていたソファから体を起こし、銀狐はワクワクとした視線を黄杜に向ける。

「で、で! どんな人、男? 女?」
「あ、ごめん。顔とか性別はわかんない」
「はぁ?」

思っていたのとは違う反応に思わず銀狐は肩を竦ませる。

「つまんな~。じゃあ見つかったってどういうことさ」
「名前といる場所が分かった」
「ほーん、なるほど?」

まぁ顔等が分からなくても居住場所が判明しているのなら見つかったといっても良いのかもしれない。
というか自分では探すこともできないのだから、こればっかりは黄杜の功績を称える他ない。

「じゃあコンタクト取れたんだ?」
「まぁね。銀狐のお仕事を手伝ってほしいってのと、今度お邪魔するってのを伝手を頼って伝えてもらってる」
「ふーん。で、名前はわかってるんだっけ?」
「そうそう、えーっとねぇ」

懐から小さなメモを取り出し、人差し指を揺らしながら黄杜は得意げに口を開く。

「『ムジナ マミ』っていうんだ」
「むじな……まみ……
「そう。あ、どうやら漢字は「六科 真美」って書くらしい」
「ふーん……真美……まみ……真美ちゃん、なんだ」
「おやぁ、ちゃん付け? いきなり?」
「だって女の子でしょ? 急に変なことお願いしに行くわけだし仲良くしたいって意思表示はしておかないと!」
「まぁ確かに? 盗みに付き合わせるわけだし?」
「そそ! ちゃーんとキミはオレ様が守りますよっていうね」

動かせる右目の瞼を下ろし、ウィンクをして銀狐は笑顔を浮かべる。

「女の子じゃあケガをさせちゃいけないだろうし、大事にしなきゃ!」
「やだぁギンコにもそんな紳士な心が……!」
「ありますとも~! 怪盗ですから! カッコよくスマートでいなきゃ!」

よくわからない矜持を掲げながら胸を張り、銀狐はふふんと鼻を鳴らす。

「で、いつ行けばいいの?」
「明後日は空いてる?」
「もちろん」
「じゃあボク、車用意するから連れてくよ」
「さんきゅ~。じゃあ第一印象大事にするためにカッコいい服用意しとこ!」
「いつもの怪盗服でいいじゃん?」
「いやいや、さすがに堂々と世間様をそれで移動はできないでしょ」
「おやぁギンコにしちゃまともな回答」
「ひどいなぁ。なんにしても明後日、よろしくね」
「はいはーい」

要件はそれだけだったのか、仕事の依頼もなく立ち去った黄杜の背を見送って銀狐は一人大きく息を吐きだす。

「女の子か~~~まさかの~~~。えらいことに巻き込んじゃったかなぁ」

男である自分と同じ性別ならある程度、気負わずにいられるとおもったのだが。
銀狐は腕を組み、天井を見上げてウンウンと呻きながら部屋を歩き回る。

「でもなぁ、あの絵は好きだし……絵を描くところを見れるならさらに嬉しいし……

妙に惹かれる画風を思い浮かべ、歩き回っていた足を止めてから「うん!」と一つ、頷いて。

「うん、やっぱオレ様が頑張って守るしかないな! 頑張るぞ、おー!」

などと腕を突き上げて気合を入れていたのだが――



……おい、今なんつった?」
…………え?」

――ガヅンッ!!!

挨拶と、名前を呼んでの交流。
朗らかな会話を予想していたのに、銀狐の目の前で起こったのは「飛んできた絵筆が壁に突き刺さる」という現実だ。

贋作師と会う当日、黄杜に案内されるがままに連れていかれたのは郊外のあまり綺麗とは言えないコンクリート作りの粗末な一軒家だった。

『その子、ここに住んでるの?』
『違う、ここは合流場所。先方は伝手が連れてきてくれてるはずだよ』
『ふーん』

黄杜が歩くあとを続き、その家の玄関から中へと進んでいく。
だだっ広い、倉庫のようなコンクリート張りの何もない室内。
薄暗い部屋の奥にはさらに一室続いているようで、ドアの壊れた部分から部屋の一部が覗き見えた。

『あそこ』
『おっけー』

奥にいるよ。
そんなジェスチャーに片手をあげ、銀狐は前髪を払っていざと奥の部屋へと足を一歩踏み入れた。

『どーも、こんにちわ』

明るい声かけだったと思う。
少なくとも、悪い印象はなかったと思う。

『まみちゃん、だっけ? わざわざこんなところまで来てくれてありがとね』

唯一、銀狐の想定とは違う出会いになった原因はそこにいた『贋作師』のことを勘違いしていたことだろう。
暗い室内、わずかに崩れた壁から入る光。
それを頼りに、小さなイーゼルを立てて絵を描いている青年がそこにいた。
そう、青年だ。
後ろから見てもはっきりとわかるその体格は、明らかに『男』だった。

……あれ?』

ほのかに赤に染まった襟足。
ざっくばらんに切られた黒髪を揺らして振り返った彼は、こちらを見やるなりギラリと目を細めてにらみつけてきた。

――それからは、上の通りである。

ドスの利いた声と同時に、絵筆が銀狐の頬を掠めてコンクリートの壁に突き刺さったのだ。

「え、ぇ……えぇぇぇえええぇぇぇぇぇぇえええ!?」
「うるせぇな」
「いや、怖ッ!!! 絵筆が壁に!? やだなにそれ怖い!! 凶器じゃん!!」
「黙れ!!」

――ガン!!

「ひぃ!」

次に飛んできたのは様々な色彩を混ぜ込んでいるパレットだった。
ピチャ、と赤い絵の具が鼻に飛び散るも、そんなことは銀狐にとってどうでもいいことだ。
何せ、想像していたのとは全然違う「画家」がそこにいるのだから。

「ちょちょちょ!!! 乱暴すぎない!?」
「うるせぇ。お前が俺が一番腹立つ呼び方したからだろうが」
「腹立つって……?」
「ちゃん付けしやがった」
「だって女の子かと思ったから……ッばぁ!?」

そんな言葉を言っている途中で、今度はペインティングナイフが飛んでくる。

「危ないってば! んもう、ちょっと短気すぎない? 画家って静かなもんじゃないの?」

ガン、と音を立ててコンクリートで跳ね返ったペインティングナイフを広い、銀狐はやれやれとため息をこぼす。

「知るか。芸術家をお前の枠の中に当て嵌めんじゃねぇ」
「いやまぁそれはそうなんだけどね……
「分かってるなら謝罪しろ」
「えぇオレ様そこまで悪いことしてなくない?」

今時のヤクザですらやらなそうな要求に思わず肩を落とす。
罵声がやんだところで、銀狐はやっとこ落ち着いて件の画材道具投球選手の顔を見つめる。
乱雑な黒髪は襟足が赤に染まったウルフカットに染まっている。
鋭い目つきと睨むような青い瞳、きゅっと一文字に締められた唇は銀狐が想像する画家というより、その辺りで荒む若者という印象のほうが強い。
そんな人物が、こちらの話を受けたというのは本当だろうか。

「あの~、改めて確認なんだけど。黄杜からオレ様の話は聞いてるんだよね?」
「あぁ、絵を盗んでるんだろ? 怪盗シルバーフォックス、だっけ。だせぇ、マーベルかよ」
「うわひっど……まぁいいや。で、それを贋作を作ることで手伝ってほしいんだけど」
「知ってる。やってやるよ」
……本気?」
「盗みしてるお前がこっちの正気を疑うのか」
「そういう意味じゃないんだけどなぁ」

気難しそうなそっちが、どういう経緯と気持ちで話を受けたのか聞きたかったのだが。
ぽりぽりと頭を掻いていると、言いたいことは分かっているとばかりに鼻を鳴らされた。

「俺の利点がわかんねぇってことだろ? 気にすんな、利益がなきゃ受けない」
「それならいいんだけど」
「んじゃ、交渉成立だ。アジトあるんだろ。場所教えろ。私財運ぶ」
……あぁ、はい」

銀狐が手にしていたペインティングナイフを奪い取り、床に落ちたパレットを拾い上げてから青年、真美は壁に突き刺さった絵筆を握る。

「よっ…………ん? かてぇな」
「えぇ、やだどんな勢いで投げたわけ?」
「お前を殺す気で」
「初手から殺意高くない!?」
「お前が俺の地雷踏み抜くからだろ……くっ……

ぐぎぎ、と絵筆を握りしめる様子にため息を吐き、銀狐はその手の隣に己のを添えて引くのを手伝う。

「ふっ……うおおかてぇ~~!!」
「余計なことすんなボケぇ……!」
「ボケじゃないですぅ、オレ様銀狐って名前あるんですぅ!」
「じゃあバカ狐だな……!」
「罵声の総合デパートなの!? それならオレ様だって「真美ちゃん」って呼ぶからな!」

その言葉に、真美のこめかみから「ピキリ」とした音が聞こえた気がして。
しかし同時に壁から絵筆がスポンと良い音を立てて引っこ抜けた。

「あ、やった!」
……………………
「真美ちゃん?」
「殺す」
「はい?」
「覚悟はできてんだろうなぁ、あぁん?」

声とともに銀狐に延ばされたその手は銀髪の頭部へ触れ、そのままガッチリと、まるでUFOキャッチャーのアームのように頭蓋骨をすっぽりと鷲塚む。

「か、かく……か、がぁあああがががっがが!!!」

覚悟とはなんぞや。
そう問おうとした銀狐の喉は、急に頭から沸き上がった痛みに世紀末漫画よろしい呻きを溢れさせた。

「ごぁああああいだだだだだだ!?!?」
「ちゃん呼びしたらこうだ」
「おぉおおお人間の頭からしちゃいけない音が響くぅううううう」
「分かったのかてめぇ!」
「あばばばばばば、あ、メキメキが激しい……!!!」
「くそが」

痛みからぺちぺちと銀狐の手が頭を握る真美の手を軽くたたく。
パッと手の平から解放された銀狐の頭は、そのまま重力に逆らうことなく落下して崩れ落ちた胴体と首に支えられて天を仰いだ。

「いっだぁ……仲良くするにしてもアピール激しくない?」
「そう捉えるお前の脳みそどうなってんだよ」

コキコキと首を回して額を擦る銀狐に真美はあきれた視線を向ける。

「真美ちゃんは利益があるから話を受けた。つまりオレ様が利益を供給できる限り殺されることはないんでしょ?」
……変に良い勘しやがって」
「腐っても怪盗ですから♪ ま、どうしてなのかって理由は気になるところだけど」
「話す気はない」
「だよね~」
「お前の話にも興味ない」
「ですよね~」
……が、なんで俺に話を持ってきたのかは気になる」

思いもよらなかった言葉に銀狐はぱちくりと目を瞬かせて真美を見上げる。

「気になるの?」
「なるだろ。贋作作るやつなんざ少なくはないからな」
「うーん、まぁオレ様が盗んだ絵の中に真美ちゃんが描いたものがあったっていうのが正直なところなんだけど」
「偶然か」
「言うなれば。でもね、オレ様はいくつか贋作があったとしても真美ちゃんにお願いしたと思う」
「なぜ」
「絵が好きだから」
「は?」
「真美ちゃんの描いた絵が好きだから、なんとなくだけど」
「なんだそりゃ。世辞にもならねぇぞ」
「でも感性に響くってそういうものじゃない? 理由じゃなくて感情。なんとなくこれだって思った。そゆこと」
……気持ち悪ぃ」
「まぁこんな罵詈雑言で暴力的な人だとは思わなかったけど」
「ほう?」
「あ、躾けるなら頭じゃないところでお願いしますまだ響いてるんで」

頭に手が伸びそうになったのを目にし、銀狐は思わず両手で頭部を庇う。

「まぁ好きだってのは本当だけど。純粋に贋作の精度もすごかったからね、黄杜が見るまで誰も気づかなかったもん」
……はん、そうかよ」

思いのすべてを簡単にではあるが述べたが、真美はそれすら『どうでもよい』というような雰囲気だ。
そんな真美の様子に首を傾げつつも「とにかく」と銀狐は立ち上がって真美を見つめる。

「これにてオレ様たちはコンビということになりました! 改めて、オレ様は銀狐。よろしくね」

にっこり笑って手を差し出すも、思った通り腕を組んだままの真美はこちらを一瞥して「ふん」と顔をそらすのみだ。
だがそんなリアクションは、このわずかな時間で『真美』という人間性の一部をぶつけられた銀狐には想像しえたものだ。

「はいはい、こういうのは最初が肝心だからね! 第一印象すごかったから、これからは仲良くしましょう!」

そう楽し気に声を張り上げ、腕から手を引きはがして無理やり自分とつなげてブンブンと振り回す。

「はい握手握手~!」
「勝手にすんな、離せ」

腕がちぎれそうな勢いで振り回す銀狐を睨み、真美は手を払って握手を強制的に終わらせる。

……ったく、お前みたいな緩い奴がどうして絵なんか狙ってんだか」
「えぇ? 気になる気になるぅ~?」
「気にならねぇよ」
「やだもう真美ちゃんったら……でも残念ながらオレ様も内緒。語れない孤高の孤独を抱えているのさ……
「うっっっっっっっざ」
「辛辣すぎでは? あ、そうだ」

ポン、と掌を叩き、名案だとでも言いたげに銀狐は人差し指を立てる。

「お互いに話す気はないけど、一応明文化しよう。それぞれ過去の詮索はしないこと!」
「しねーよ。興味ないっつってんだろ」
「そうだけど! こういうのはちゃんとしておくのが大事でしょ。契約条件みたいなものだしなぁなぁはよくない」
「くだらねぇ。はいはい分かった、これでいいのか?」
「おっけおっけ! それじゃ、オレ様たちは以後この約束を元に一緒に頑張るということで!」
「ま、主に盗むのはお前だから頑張るのはそっちだな」
「贋作作る真美ちゃんも頑張るんですが?」
「ハッ、分からせてやるよ。俺の腕がどれほどか」
「すごい自信だ……んじゃ、新作楽しみにしとこ~っと」

にこりと笑う銀狐とは相反して、真美はケッと唾でも吐き出しそうな表情で唇を釣り上げて笑う。
こうして、しばらく後に世間を騒がせる怪盗コンビがここに誕生した。

――なお、後々にコンビ名や真美のコードネームをどうするかで再び大揉めするのだがそれはまた別の話である。






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