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ひるね
2025-07-13 00:30:37
3897文字
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Kiss me honey(万指)
「飴と眠れない夜」の別バージョン。無性別指揮官を甘やかすバンジ君です。
「
……
疲れてる、でしょ?」
いつものようにバンジは、眠たげな目をしながら私を迎えてくれた。けれどその視線は、今日に限ってどこか鋭い。二徹後の私の肩の落ち具合や、わずかな足取りの乱れまで見逃さないような
……
。少し緊張しながら、ソファに腰を下ろすと彼は何も言わずにポケットから小さな包みを取り出した。
飴だった。半透明の薄い琥珀色。私が好きな蜂蜜レモン味。
「口、開けて」
不意の言葉に、反射的に視線が合った。飴を差し出すバンジの指は、いつもよりもずっと近かった。
「自分で舐めるより、僕があげたほうが、甘くなる気がするんだけど。
……
だめ?」
私が頷くより早く、彼の指が唇に触れた。冷たくて、けれど優しい感触。
「はい、あーんして?」
素直に口を開けると綺麗な黄色の飴が舌に乗せられた。ふわりと広がる甘さ。レモンの酸味。その一瞬に、バンジの親指が名残惜しそうに私の唇を撫でた。
「
……
君のそういう顔好きだよ。無防備で警戒心のかけらもない」
バンジは口端を上げて優しく笑った。けれど、私を見つめる視線は熱を帯びていた。
「美味しい?
――
……
ねぇ、次は僕も味見してもいいかな」
私が戸惑って口を開きかけると、彼はすっとその声を奪うように、耳元で囁いた。
「
……
僕以外に、そんな顔しないでね。君の“甘い顔”、全部僕のだから」
バンジの声音が低く落ちた。いつもよりもずっと、耳の奥に響く声色。それだけで、背筋がわずかに強張る。指先が、そっと唇に触れた。驚きに目を瞬かせると、彼は逃がさないように唇をなぞっていく。
「
……
君の舌が、どう動くのか見たいな」
小さく肩が揺れた。顔を逸らそうとするが、すぐに指先が顎を捕らえる。動きを封じられたまま、唇を押し開かれた。親指と人差し指がゆっくりと歯の隙間に滑り込む。わずかに息を呑み、瞼が震える。二本の指で舌先を刺激され、飴玉が、くすぐるように舌の上を転がった。喉がひくり、とわずかに動く。零れそうになる唾液を堪えるように、唇をきゅっと閉じる。けれど、指先は再びそれを優しく押し開いた。思わず、私の唇から浅い吐息が漏れる。
戸惑うように、ゆっくりと舌先を動かし、口内の飴玉に触れる。バンジの視線が、じっと絡みつくのを感じた。呼吸の間隔が狭まる。熱が滲んだ頬を隠すように、私は両手でバンジのジャケットをぎゅっと握りしめた。
「
……
ふふ、もう少しちゃんと舐めて。どう、美味しい?」
その言葉に、小さく首を振ろうとする
――
けれど、彼の指先は私の小さな抵抗ごと、優しく絡め取ってしまった。バンジは目を細めながら、私の唇から指を引き抜く。そのまま視線を逸らすでもなく、ゆっくりと
――
まるで見せつけるように、もうひとつ飴玉を取り出して自分の口に含んだ。
「
……
ねぇ、僕は、ずるいかな」
気だるげな声だった。けれど、その瞳は獲物を逃がさない狩人のように、鋭く、熱かった。飴が口の中でかすかに転がる音。バンジは、微かに潤んだ口端を上げ、手のひらで私の視線を覆う。
「君にも、分けてあげるね」
囁きと共に、顔が近づく。鼻先で頬をくすぐられてから、バンジのひんやりとした唇が重なった。飴越しに伝わる甘さと冷たさ。柔らかい唇の感触の下に、激しい情動がチリチリと見え隠れする。舌先が擦れ合い、飴が右に左に転がる。バンジは私の息継ぎのタイミングを見計らって一度唇を離し、悪戯っぽく囁いた。
「
……
ね、もっと欲しい?」
吐息が耳をくすぐる。ふっと首筋に触れた冷たい鼻先に、思わず身じろぎしかける。しかし、バンジの手が私の後頭部をそっと支え、退路を断たれてしまった。
「ほら。口、開けて」
指示されるより先に、もう喉が小さく鳴っていた。それでも、わずかに逡巡する。ほんの数ミリだけ首を横に振ると、バンジは唇を耳元に寄せ、低く笑った。
「
……
君のそういう顔が、いちばん可愛い」
まるで愛おしい獲物を弄ぶみたいに、彼はゆっくりと私の下唇に噛み付いた。味わうように食んだ後、唇を塞がれる。舌が飴玉を転がしながら、逃げ場のないほど深く絡み合う。呼吸を奪われて、指先がバンジの胸元を押し返す。だが、抗いきれない。身体ごと絡め取られていくようで。もう、どこにも逃げ道なんてなかった。
「
……
もっと、力を抜いて。甘いの、ちゃんと受け取って」
また、唇がそっと合わさる。今度は、私も負けじとバンジのやわらかい唇に、そっと甘噛みした。一瞬、驚いたように目を見開くバンジ。けれどすぐに、肩を震わせて小さく笑った。吸い返されるように舌先が絡まり、絡み合う甘さを分け合うように、ゆっくり、ゆっくりと舌が踊る。やがて、転がる最後のひとかけらが、そっと私の舌に落ちた。バンジは名残惜しそうに唇を離した
――
。いや、名残惜しさだけではなかった。微かに睫毛が震えて、その金色の瞳に『足りない』と書いてあるのが、痛いほどに分かった。
バンジは、ひとつ、静かに息を吐いた。彼の指が私の頬にかかる髪をそっと梳く。けれど、目は笑っていなかった。静かに、ただ私だけを映していた。
私が動かなければ、きっと、バンジももう来ない。そんな気配だけを残して、唇はすぐそばにあるのに
……
動かない。焦らされているのは、きっと私の方だった。思わず、息を呑む。それに気付いたバンジの指先が、私の唇をなぞった。
「ねぇ、指揮官」
囁きは、微かに掠れていた。指先が、喉元までゆっくりと滑り降りる。
「
……
君から、欲しがってみてよ」
静かに落ちる言葉。
私は動けなかった。喉の奥が、ひくり、と鳴る。目の前にあるその体温に手を伸ばしたいのに。呼吸だけが、微かに浅くなる。バンジは、何も言わずに私を見つめている。まるで、私の『一言』を待っているように。
――
もう、耐えきれなかった。
震える手が、バンジのジャケットをそっと掴んだ。それが、答え。私は静かに顔を伏せて、彼の胸元に額を預けた。もう、逃げられない。そう覚悟した瞬間、バンジが小さく笑う気配がした。
「やっと君から触れてくれたね」
低く落とされた囁きが、耳の奥を震わせる。指先が、脇腹から背中へとゆっくり滑る。制服越しに、優しく撫でるだけ。それだけで背筋が微かに震える。バンジはその反応に、喉の奥で笑った。
「
……
可愛いね。こんなふうに甘えてくれるの、僕だけだよね?」
囁きながら、バンジは私の腰をぐっと引き寄せる。身体と身体が、隙間なく触れ合う。
「ねぇ
……
もっと溶かしていい?」
琥珀色の瞳が、まっすぐに私を射抜く。そこにあるのは、ただ一途な欲望だけだった。バンジの手が、私の後ろ髪をそっとすくい上げる。今度は深く口付けされる。飴の甘さがまだ残っている。何度も、確かめるように、唇が合わさった。浅く、深く、また浅く
――
。そのたびに、バンジの指が背中を這い、私を抱きしめる力が増していく。
「
……
君が欲しい。全部、僕だけのものにしたい」
耳元で、甘く、熱を孕んだ声がした。私に拒む理由なんて、最初からないのに。バンジは唇を離したあとも、すぐには顔を上げなかった。額をそっと君の頬に押し当て、熱を確かめるように、静かに呼吸を重ねる。
「
……
君の温度、僕のよりずっとあったかいね」
低く甘い声が、耳の奥に流れ込む。バンジの指先は、私の背中をそっとなぞりながら、服の上からぬくもりを探している。バンジは私をそっとソファに横たえる。その動きに無駄はなく、でもどこまでも優しい。触れるたびに、私を壊さないように
――
でも確かに、独占するように。彼の身体が、私の上に重なった。ゆっくりと沈み込むように、体重が伝わる。それは、決して苦しいものではない。確かに“抱き留められている”と分かる、重みとぬくもりが、私を包んでいく。
「
……
君の心臓の音、よくわかるよ」
囁くように言いながら、バンジは胸元に耳を当ててきた。
その長い睫毛が震えるたび、吐息が肌にかかる。私の全部を確かめるみたいに、ぴったりと寄り添い目を細めた。ゆっくりと顔を上げたバンジの瞳にあったのは、深く激しい熱と、独占欲。
「
……
ねぇ、君も、僕の音
……
聴きたい?」
低く甘い囁きと共に、バンジは私の手を取る。導かれた先
――
彼の胸の奥から、確かに響く小さな振動。微かに震える、機械の鼓動。私だけに許された、無防備な音だった。
「
……
ほら、ね。もう、逃げられないよ?」
耳元でふっと微笑んだ彼は、再び私の唇に、今度はもっと深く口づけた。舌先を絡め、飴の甘さよりも濃い熱を分け合う。指先が、私の腰に絡みつく。バンジは、唇を重ねるたびに、わずかに息を震わせた。追いかけるように、また唇を重ねる。足を絡め、腰を引き寄せた。布越しに伝わる、彼の熱。吐息混じりの声が洩れるたび、喉がどうしようもなく鳴ってしまう。足りない、まだ足りない。名残惜しそうに、唇を離して
――
「君の全部、
……
欲しい」
バンジはキスの合間に、喉を震わせるように囁いた。さらに深く、さらに密に、唇と舌を重ねながら、私の息を、バンジは一滴も逃さずに吸い上げる。指先が、腰から背中へ、ゆっくりと這い上がる。震える吐息が、耳の奥まで痺れるほど甘く響く。
「
……
もっと。君が欲しい。ねぇ、指揮官。
――
僕に、溺れて?」
低く、甘く、誘う声。バンジは私を抱きしめる力を強めた。まるで私の全てを飲み込むように、再び深い口づけを落とす。身体も、心も、すべてが溶け合っていく夜。飴の甘さなんて、もうとっくに残っていなかった。
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