ぽふむん
2025-07-12 21:13:36
680文字
Public ワンドロ
 

化粧という名の毒

#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負

「決戦前夜」
珠世さんが見たしのぶちゃんです。
大正時代にはその毒性が周知され始めたそうですが、昔の化粧って水銀が入っていて悲しいことも多かったそうですね。
童磨ママも、もしかして水銀中毒で幻覚を見たんじゃ……と思ったりする時もあります。

若いのに、随分化粧の濃い娘だ。
胡蝶しのぶに対しての第一印象はこういうものだった。

この娘からは鬼へのどうしようもない嫌悪感がぷんぷんと匂いたっていた。
炭治郎のような鼻は聞かない、ごく普通の嗅覚のはずなのに。
これは、我が身が少量の血で生きられる鬼だから感じられるものなのだろう。
自分に対しての敵意と嫌悪感だと思っていた。

誰でも、自分に向けられた敵意は本能的に感じとれるものだから。
それが生存本能というものだから。

でも、しばらくしてこの臭いは違うということに気づいた。

これは、女の勘と言うやつなのだろう。
この娘は自分と同類だ
たった一体の男の為に、激しい怒りの炎と怨念を燃やす

羅刹女だ

「今どきのお嬢さんが、随分と古風な白粉を使うのですね」
私は、朝早く起き化粧を施すしのぶに声をかけた。

当世風に使用方法は工夫しているようだが、今やその毒性が知られ始めた白粉。

この毒は、多くの女や、女を演ずる男の気を違わせたり死に至らしめたりした。
昔は胸元まで塗ったから……多くの赤子も成長することもなく死に至るか障碍を負わせた。

毒性を知らなかった故の悲劇。

やっと毒性が周知され、無害な白粉も普及した。
毒に詳しいこの娘ならよくわかっているはずなのに。
あの時感じた臭いはおそらく

「女は……たった一人の男のために装うとはよく言ったものですね」

しのぶの華奢な肩が震えた。
くるりと振り返った眼は紫に燃えていた。

「気色悪いこと……言わないでください……あの男は、私のもの。あの男だけは、あなたの毒で殺らせない」