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なかみゑ
2025-07-12 19:45:30
2054文字
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【雑伏SS】抱きしめたいよね!?(旧題:腕の中の危機感)
とってもとっても可愛い後輩が心配になっちゃった伊先輩の話。短めです。
【抱きしめたいよね!?】
「伊作せんぱぁい」
伊作が医務室の障子を開けると、独特の弾んだ声と共に伏木蔵が駆け寄ってきた。たった数歩の距離すら急いでくれた後輩の姿に、自然と目が細まる。
伊作はゆるりと両手を広げると、同じように手を広げていた伏木蔵を抱きとめた。
軽くかがめば、まだ小さい伏木蔵の身体は気持ち良いほどすっぽりと腕の中におさまる。いや、ほどではない。実際に気持ち良い。腕に覚えている感覚は、確かに心地良いものだ。嬉しそうに肩口にすり寄せられた頭もあたたかく、心が穏やかになっていく。
……
可愛いなあ。
忍務で疲れた体までもが癒されていくようで、伊作はさらに笑顔になった。
一年生は毎年可愛いものだが、中でも伏木蔵は人懐っこいと思う。
しばらく忍務に出ると伝えておけば、戻った時にはこのように無事を喜んでくれるのだ。慕ってくれていることも後輩なりに心配してくれていたことも、素直に嬉しい。
喜びのままに頭を撫でていると、不意に伏木蔵がやや神妙そうな声を出した。
「
……
伊作先輩」
「なんだい?」
「
……
こういう風にぎゅっとするの、昆奈門さんはしてくださらないんです。お膝に乗せてくださったり、頭を撫でてくださったりはしますのに
……
」
どうしてなんでしょう。不安そうにも不満そうにも聴こえる伏木蔵の声に、伊作は目を見開いた。あたたまっていた心は一転し、冷たいものが背中を走る。
雑渡さんが? それだけはしない?
言われてみれば雑渡は伏木蔵を膝に座らせたり抱き上げたりはしても抱きしめることはなかった。今の伊作のように抱きつかれていたこともあったはずだが、雑渡からは頭を撫でるにとどめていたと思う。伏木蔵が言うなら、伊作の目がない時もずっとそうだったのだろう。
こんな風にされたら、抱きしめたくなるに決まってるのに。
親しくしている幼い知人が無事を祈っていてくれて、再会を喜んで飛びついてきたなら、普通は腕を回し返すものだ。だが雑渡はそうしないという。
抱きしめてはいけないと、思っておられる
……
?
伊作は自分の血の気がどんどん引いていくのを感じていた。
何かがあるのだ。雑渡には。伏木蔵を抱きしめてはならないと己を律する何かが。
それに
……
伏木蔵。君こそどうして気づけてしまったんだい?
人は想定していないものにはなかなか気づけない。伏木蔵は雑渡からも抱きしめてもらえると期待していたからこそ「ない」に気づくことができたのだろう。
ましてや相談するなんて。無邪気に「雑渡に抱きしめられたい」と言っているようなものだ。
伏木蔵を抱きしめはしない雑渡。
抱きしめられないことを気にしている伏木蔵。
どちらもすでに、ひどく危ういところにいるのではないだろうか。
……
止めなきゃ。
伊作は唇を引き結んだ。
今のところ雑渡は自制してくれているようだが、もしもその気になったなら?
言うまでもない。やすやすと忍術学園の深い所まで侵入できる忍組頭ならば、忍者のタマゴの一人くらいどのようにでもしてしまえるだろう。タマゴのほうが求めてしまったらなおさらだ。
伏木蔵が本気で雑渡さんを選ぶなら尊重してあげたいけど
……
さすがにまだ早すぎるよ。
伏木蔵はおそらく、自分がどんな関係を望んでいるのかを考えるには至っていない。だが、どうであったとしても今の伏木蔵では好意を利用され、雑渡の求める関係に持ち込まれてしまうだろう。
ぼくが何とかしなきゃ。
すでに一歩踏み込んでしまっているであろう愛しい後輩の頭を撫でながら、伊作は二人の接触をほどほどに抑えるべく頭をめぐらせはじめた。
雑渡昆奈門の前に、分厚く高く、今までの人生で当たった何よりも手ごわい壁が誕生した瞬間であった。
おしまい
あとがき
お読みいただきありがとうございます。過保護ぎみな伊作先輩が好きと言いますか
……
「雑伏の進展って伊作の許容範囲にかかっているのでは?」と思ってしまったので、過保護ルートに入る瞬間を書いてみました。
タイトルは『最強セ○ム誕生』と迷ったのですが、さすがにスラングが過ぎるかと思って自重しました。雑渡さんも伏木蔵の守護者ではありますし。
無数の世界の中には「本人たちがいいならいいんじゃないの」と気にもとめない伊作もいると思っています。
無限の可能性がある雑伏が大好きです。
ではでは。
もしよろしければリアクションなどいただけますと幸いです。
2025.7.13更新:
かなり加筆修正しました。このエピソードを天鬼排除成功if話に組み込んで、いつか書けたらいいなと思っています。
(しかし書き上げられるかどうかは
……
。できるかできないかわからない約束はしない主義でして。)
2025.8.24改題:抱きしめたいよね!?(旧題:腕の中の危機感)
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