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景生
1265文字
Public
花足
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醒後
※R-15 ※花村成人後設定
ああ、そういえばこの男を抱いたのだったな、と。
午前三時の静けさの中で目覚めて、花村は頭を掻いた。
酒の抜け切らない視界では、物の輪郭が覚束無い。暗さも相まって一瞬、ここがどこだか分からなかった。
でも、この広いベッドと、使い捨てのような清潔感が揃えられた空間は、言うまでもなくあそこなのだろう。
暗闇に慣れた目を擦りながら、花村は溜め息を吐いた。
「おおい、足立さん」
隣に眠る男に声を掛ける。剥き出しの肩は青白く、カーテンからぼんやりと透ける街灯に照らされている。
「なあ。ちょっと起きて話さねえか」
そう言って彼の肩を揺すれば、小さく寝息を立てていた足立がもぞもぞと、唸るように身体を丸めた。
「おはよう。おはようって。おい、足立」
足立、と花村はしつこく名前を繰り返す。隣に寝ていたのがどこかの女性であればこんなことはしないのだが、今夜は相手が相手なだけに、目を瞑っていられなかった。
「うるさいなあ」
そうしてようやく彼が起きる。何やらむにゃむにゃ呟いてから、ゆっくりとこちらに寝相を変えた。
微睡む瞳と視線が合う。しかし、彼は彼で現状を理解しているのか、裸である花村と、同じく裸でいる自分を認識しても、そののんびりとした態度は変わらなかった。
「いま、なんじさ」足立が訊ねる。
「三時」と、花村。
「はあ。なに。ふざけてんの」
足立は欠伸を携えながら、呆れたように言った。明日も仕事なんだから、寝かせろよと怒っている。
「いや、俺も仕事だけど」
「なら、寝なよ。おやすみ」
おやすみ、おやすみ
——
と、繰り返して、彼はこちらをあしらうように、またベッドに沈んでしまう。小さく「クソガキが」と呟いたのを、花村は聞き逃さなかった。
その反応からするに、どうやら今夜のことは彼にとって、取るに足らない些細な出来事だったようだ。
少しでも心配した自分が馬鹿らしく思えてくるような、粗末で無下な態度である。最早、お茶を溢した程度だ。
「ああ、はい。そうかよ」
花村は吐き捨てて、頭をくしゃくしゃに掻くと、大きな溜め息を吐いた。舌打ちをして、髪を後ろに掻き上げて、また重く、はあと息を吐いてから、辺りを見回した。
周囲には情事の名残りがちらほらと落ちている。脱ぎ散らかした服、乱れたシーツ、ベッドの端には使用済みの避妊具が無造作に転がっていて、香水と体臭の入り混じった匂いが、まだ熱を帯びて部屋に残っていた。
冷静に眺めていると、それら全てが悪ふざけの残骸のように思えてくる。湧き上がってくる自分の何とも言えない感情が、酷くやりきれなかった。
「何だよ、くそ」
こんな状態でも眠らなければならないが、今の花村は眠気とは程遠い場所にいる。どうしようかと悩んでいれば、隣からはもう穏やかな寝息が聞こえてくるものなので、そのあまりにも暢気な様子に、花村は怒りを通り越して、ただただ呆れるばかりだった。
もう、この男と酒を飲むのは止めにしよう。
花村は顔を覆って自分を戒めるのだった。
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