夢を見た。雲嵐が自分の側から離れていってしまう悪夢。「ごめんね、クレインちゃん」なんて言って、どうしてそんな泣きそうな顔で笑うんだ。そんな顔、絶対にさせたくないのに。
カーテンの隙間から朝日が差し込む。隣のぬくもりに手を伸ばそうとしてその手は虚空を掴んだ。いないのだ、隣で眠っていたはずの雲嵐が。昨夜の夢は何かの予兆だったのだろうか。嫌な予感がしてベッドから降り、裸足で部屋を飛び出す。どこに行ったんだ、どこに。その焦燥はホログラムにも表れていたが気にしなかった。
ふとキッチンの方から物音が聞こえ向かうと、当たり前のように雲嵐がそこに立っていた。自分に気づいたのか彼はくるりと振り向いた。いつもののんきな笑顔が視界に映る。
「あ、クレインちゃんおはよ~……って、どうしたの、ホログラム乱れてるけど……?」
「雲嵐っ、」
戸惑う彼の姿を見るなりたまらなくなって強く抱きしめた。
「な、なに!?」
「……よかった、ちゃんといて」
腕の力を緩め、その顔をしっかりと見る。ホッと安堵のため息を吐いた。
「……えっとぉ?」
神妙な面持ちで首を傾げる雲嵐に事情を説明する。嫌な夢を見て起きたらお前がいなくて焦った、と。すると彼は可笑しそうに笑う。
「そんなわけないじゃん~。ほら、ちょうど朝ご飯できたとこだから一緒に食べよ?」
「……あぁ」
ひとつに束ねられた彼の黒髪が揺れる。「はい、持ってって」と渡された皿を食卓に並べる。バターを塗ったトーストに目玉焼き、ヨーグルト。淹れたてのコーヒーからは良い香りがした。向かい合って席に着く。なんでもないいつもの朝食の味を噛みしめる。不安も焦りも、この目の前に広がる現実の光景が和らげてくれる。
顔をあげると不意に雲嵐と目が合う。彼は少し困ったように眉を下げて笑った。
「クレイン、そんな難しい顔しないでよ。俺はちゃ~んと側にいるからねぇ」
「そう、だな。俺は……幸せ者だな」
愛おしさが溢れて止まらず、ふっと微笑むと雲嵐もつられてはにかんだ。
休日の朝、こうして共に朝食をとり、一日を過ごし夜は寄り添い合って眠りにつく。自分の日常に当たり前のように雲嵐がいることが何よりも幸福に思えた。
「今日はせっかく休みだしどこか出かける? それとも~家でのんびりする?」
「どこでもいい」
そう即答すると雲嵐はくちびるを尖らせる。
「ちゃんと真面目に考えてよ~」
どうやら言葉足らずで真意が伝わっていなかったらしい。
「本当に、どこでもいいんだ。街でも家でも山でも海でも、お前と一緒ならどこだって楽しい」
自分は真面目だと、雲嵐を真っすぐ見据えてそう告げると、彼は一瞬きょとんとした後意味を理解したのかその顔はみるみるうちに赤くなっていった。
「もぉ~……」
話し合った結果、結局今日は家で二人きり、ゆっくり過ごすことにした。最低限の家事を済ませたら映画を観るのもいいかもしれない。午後は一緒に昼寝をしたっていい。どうせ休みが明ければまた忙しくなる。捜査官の束の間の休息、たまにはそんな時間も悪くないだろう。
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