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匣舟
2025-07-10 13:15:54
3291文字
Public
RKRN
欲張りな視線
ワードパレットリクエストの綾乱です。
夏祭りに行くふたりの話です。
リクエストくださった方ありがとうございました🫶
欲張りな視線
「せんぱーい!ほらほら早くぅ〜っ!」
「
…
おやまぁ、本当にきみは元気だねぇ。」
乱太郎に手を引かれながら彼の手を離さないようにと一生懸命掴んでいる喜八郎は現在、恋人である乱太郎と忍術学園から近い町の夏祭りに来ている最中であった。
忍術学園では忍務以外の夜間外出は基本的に却下されているのだが、この夏休み前の夏祭りの日だけは却下されている夜間外出も小松田さんに出門届を出せば良いということになっており、忍たまたちがこぞって夏祭りへと繰り出している。
けれど、そんな夏祭りへ行くのにもひとつ条件がある。
…
それは、直近の授業態度とテストの点がよい子だけがこの夏祭りに行けるという条件だ。喜八郎は言わずもがな成績優秀のい組なので授業態度はまだしもテストの点数はピカイチなので良いのだが、問題は乱太郎だ。
あほのは組と呼ばれ、そのは組の中でも落ちこぼれの部類に入る乱太郎は夏祭りへの参加がは組の中で最も危ぶまれていた中の一人だ。
けれど、どうしても喜八郎と一緒に夏祭りに行きたかった乱太郎は死に物狂いで授業も寝ずに頑張り、そして乱太郎と同じ保健委員会の委員長である伊作や、たまに勉強を教えて貰っている五年い組の勘右衛門にテスト勉強を見てもらい連日寝不足になりながら何とか自分を鼓舞してテストに望んだ結果、見事は組の頭脳と言われる庄左ヱ門に匹敵する満点に近い点数を叩き出し、夏祭りへの参加を承諾されたのである。
乱太郎のこの快挙には組はすごぉーい!やればできるじゃん!乱太郎!と沸き、乱太郎に勉強を教えた伊作と勘右衛門にはよく頑張ったな。と頭を撫でてもらった乱太郎。
特に乱太郎のこの快挙を喜んでいた一年は組の教科担当である土井半助は涙を流しながら、それならもっと日頃からこうしろ!と胃を押さえて叫んでいたそうである。そんなわけで無事に夏祭りへ参加することのできた乱太郎と喜八郎ははぐれないようにと手をしっかり繋ぎながら屋台で賑わう町中を歩いている。
「ねぇ、乱太郎。」
「はい?何ですか、先輩?」
「その浴衣、よく似合ってて可愛いね。」
「え、あ
……
ありがとうございます
……
。」
嫌いな勉強を頑張るほど今日という日を心待ちにしていた乱太郎は両親に頼んで浴衣の着付けを一から教えてもらい、時折喜八郎と同室である滝夜叉丸に手伝ってもらいながら一所懸命に自分の浴衣の着付けをしていた。
喜八郎が乱太郎が着ている浴衣を褒めれば、乱太郎は照れながら頬を赤く染める。そんな乱太郎の可愛らしい仕草に喜八郎はくすりと笑いを零せば、乱太郎の手を引いて屋台で賑わっている町中を歩いていく。
「
…
ありがとうございます、先輩。」
これ大切にしますね。と笑っている乱太郎の手にあるのは、さっき喜八郎が射的で当てた絵筆セットだ。乱太郎と喜八郎は途中で射的で遊んで喜八郎に乱太郎がほしいと言った絵筆セットを一発で取ってあげたり、焼きそばやたこ焼きなどの縁日ならではの料理を食べたりしながら夏祭りを満喫していたふたりだったが、とある屋台の前で乱太郎は足を止める。
「
…
かき氷?」
「あ!はい
…
!」
足を止めた乱太郎の視線の先にあるのはかき氷の屋台だった。そう返事をした乱太郎が見ている屋台の先にはかき氷の屋台が立ち並んでいる。
どれも果物のシロップをかけているかき氷がほとんどであったが、乱太郎はその中でもイチゴのシロップがかけられたかき氷が置かれている屋台にじっと視線を向けていた。
「買ってあげようか?」
「えっ!?い、いいんですか!?」
「うん。ぼくも暑いしね。」
だから恋人特権として特別に乱太郎に買ってあげるね。そう言いながら暑いのか照れてるのか分からないほど少し赤く染った顔の乱太郎の手を握りしめ、かき氷の屋台に向かって歩いていく喜八郎。
そうして乱太郎が食べるイチゴのシロップのかき氷と、喜八郎が食べるブルーハワイのかき氷をふたつ買った喜八郎はひとつを乱太郎に渡せば、店の近くにある河川敷にふたりで座った。
「ありがとうございます。先輩っ。」
「
…
ううん。ほら乱太郎、食べないと溶けちゃうよ。」
「はぁーい。」
いただきます。そう言いながら二人同時にかき氷を口へ運ぶ。キンッと冷たい感覚が喉の奥にまで刺激を与えて思わず二人は顔を歪ませる。
「
……
っ
…
冷たいですね
……
。」
「
…
そうだね。」
「でも甘くて美味しいですっ!」
そう言いながらスプーンで掬っては口の中へ入れてを繰り返している乱太郎。そのうちに乱太郎の舌はイチゴのシロップによって赤く染まっており、乱太郎の小さい舌から覗かせる赤い色に喜八郎は目を奪われる。
「ほら見てください、先輩。真っ赤ですよ。」
「
…
そうだねぇ。」
「ブルーハワイを食べてる先輩はやっぱり青いですね!」
「
…
乱太郎。」
「なんですか
……
っ!?」
そう言いながらかき氷を一口食べる喜八郎。その姿を見つめていた乱太郎だったが、喜八郎に名前を呼ばれて彼の方へ顔を向ければ、喜八郎が自分の唇を乱太郎の唇へ重ね合わせる。不意打ちのそれに思わず目を見開く乱太郎の唇を離せば、喜八郎は乱太郎に笑いかける。
「
…
うーん、やっぱりあまいねぇ、イチゴは。」
僕にはやっぱりイチゴはひとくち食べただけで十分かも。とまたブルーハワイのかき氷をザクザクと崩して食べている喜八郎に対して乱太郎は突然キスされたことをよく理解しておらず、放心状態だった。
「へぁ
……
?」
「ほら乱太郎、かき氷食べきらないと溶けちゃうよ?」
「
…
は、はい。」
まだ正常に頭が働かないまま、そう言いながら再びかき氷を口に含む乱太郎。けれど先程の喜八郎のキスで完全にかき氷の味を楽しむ余裕などない乱太郎は喜八郎の方をちらりと見る。すると喜八郎と目が合い、喜八郎が悪戯っぽく笑う。
「
…
先輩はなんで急にわたしにキスしたんですか?」
「ん〜?」
「だから、なんで急にっ
……
!」
「
…
ああ、だって。」
そう言いながら乱太郎の耳に顔を近づけ、ぼそりと呟く。
「ひとくちちょうだいって言うより、乱太郎にちゅーした方が早いかなって思って。」
「なっ
……
!?」
「ほら乱太郎、早くかき氷食べちゃいなよ。もうすぐ花火上がっちゃうよ?」
「
…
」
そう言ってニコニコと笑っている喜八郎に乱太郎は顔を真っ赤にさせながらかき氷を口に運んでいく。
けれどやっぱり乱太郎はかき氷の味は分からなかった。その後、乱太郎は慌てて自分の分のかき氷を平らげると喜八郎の手を取り、かき氷の屋台の近くにある河川敷から立ち上がる。
「ほら先輩!行きますよ〜っ!」
「はいはい。」
「はいは一回!」
「は〜い〜。」
「もうっ
……
!」
そんなやり取りをしながら二人は花火がよく見える穴場へと歩いていく。そんな二人の姿を照らす月と星が煌めく夜空に大きな音を立てながら花火が打ち上げられると、その美しい光景に乱太郎が目を輝かせる。
「わぁ
……
綺麗ですね!先輩!」
「うん。」
「ほら先輩!早くこっちに来てくださいよ!綺麗ですよ!」
「おやまぁ、きみは本当に忙しないねぇ。はいはい、行くよ〜。」
「もー!だからはいは一回ですってば!」
そう言いながら喜八郎の手を取って引っ張る乱太郎。そんな乱太郎の手を喜八郎は離すまいとぎゅっと握りしめる。しばらく手を繋いだまま空に打ち上がる花火を見つめていた二人だったが、花火の打ち上げが終わった頃合いを見計らって喜八郎が口を開く。
「
…
乱太郎。」
「なんですか?」
乱太郎が喜八郎の方を振り向けば、喜八郎は乱太郎を真っ直ぐ見つめて口を開く。
「また、来年も一緒に来ようね。」
「
……
もちろんっ!」
授業だってテストだってどんとこいです!と胸を張って笑う乱太郎に釣られて喜八郎も笑った。
「
…
約束だからね。」
「はいっ!約束です!」
そう言いながら小指を差し出す乱太郎の指に自分の小指を絡めて指切りをする。そうして指切りをしたふたりは手を繋いだまま帰路へついたのであった。
了
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