三毛田
2025-07-09 22:42:40
1084文字
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48 048. 羽を広げる小鳥のように

48日目
飛べればいいのに

 人は単体で空を飛ぶことは、不可能に等しい。
「丹恒。お前って飲月の時には浮いてるけど、飛べるの?」
「考えたことはなかったな」
 羽を広げ、飛ぶ鳥のようなものを想像しているのだろう。
 パムが焼いたパンケーキに垂らした蜂蜜のような瞳は、好奇心で輝いていて。
「飛びたいのか?」
「少しだけ。あれは飛んだというよりも、落とされたに近いし、叩きつけられたようなものだからノーカン」
 何のことだろうか。それが伝わったようで、穹は苦笑しつつ何でもないと口にする。
「どうせ飛ぶなら、丹恒と二人で。って考えたんだ」
 俺の手を取り、ゆっくりと指を絡ませ。額をくっつけて目を瞑り。
「ゆっくり流れる雲に、抗うことなく。それこそ、時々二人で体を預けながら。風を感じて、空から地上を見て。自由に」
 彼の言葉に合わせ、真似するように目を瞑る。
 想像してみた。
 己の背に翼が生えて、それで自由に空を飛ぶところを。
 穹と二人、青空をデートする情景。
 なかなか悪くない。誰にも邪魔されなければ。というのが前提であるが。
「いいな。楽しそうだ」
「だろ? 青空の綺麗な星で、空中デート。出来たら、最高だ。まあ、丹恒と二人なら、どんな環境下でもデートだけどな」
 と、笑いながら。
「丹恒、好き」
 頬にキスをされ、耳元で優しくも腰にクる声色。
「っ」
「うわっ」
 ドンっと突き飛ばしてしまったが、仕方ないだろう。
「耳、真っ赤。可愛い」
 俺よりも体温の高い指が、耳に触れ。
「ちょっと耳が尖ってる? 少しだけ戻っちゃった?」
 ふーっと生温かい吐息が、耳にかかり。
「ひゃっ」
 驚きと、まさかそんなことをされるとは思わずにそんな悲鳴が口から出てしまった。
「丹恒、痛いって」
「お、まえっ」
 低い声が出てしまった。
「丹恒、えっちな気分になっちゃった?」
 離れようとすると、肩をぐいと引かれ。それから、腰を撫でられ。
「それは、お前だけだっ」
 何で空を飛ぶ鳥の話から、こんなことにっ。
「このまま、ベッドイン?」
「なん、でっ」
「その耳、期待してるってとってもいい?」
 またふーっと吐息が耳にかけられて。
 保てなくなり、視界の端に黒が映る。
「飲月の姿も、綺麗だよ」
 穹は俺の髪を手に取り、そこに口づけて。
 ああ、駄目だ。
 彼に翻弄されている。
 それが嫌なのかと聞かれるとよくわからない。
「丹恒、大好き」
 耳飾りの場所へ、舌が触れ。
 それから、根元から先端まで舐められる。
「丹恒、今日は耳が弱いんだ。可愛い」
 また可愛いと耳元で囁かれた。