アキリーズ死後、同人誌HANDSの裏側の話
アルタン39歳 モブに名前ついてます
アルタンの名前の意味について考えてたら皿洗いの最中突然降ってきたネタ
少しずつ登場キャラが増えていきます
◆出てくる人達
草原に点在する影が動く。それは広大な原野で鍛え抜かれた駿馬の残像、手綱を握るのはまつろわぬ民。彼らは今、一つの目的のためにある場所へと向かっている。広大なステップをひと纏めにするため、部族長であるアルタンは仲間を率いて野を駆けていた。
全身に浴びる風は昔日の面影を想起させる。
共に死線をくぐり抜けた皇帝は二年前に没した。戦友、という言葉が相応しいのだろうか。一言で言い表すにはあまりにも多くのものを内包しすぎていた。それほどに肝胆相照らす仲だった。
そんな男に代わり新皇帝となったのは自分の愛娘であるアズィーザ。今は遠く離れたアバロンで一国の主として邁進している。娘のために自分ができること、そして先帝と共にあった頃から心に決めていたことが、ステップの統治だった。
まだ国ですらないこの原野を纏め上げ、部族同盟を発足させる。それを経て最終的にカンバーランドと和平協定を結ぶ。それがアズィーザの功績になり、ステップにも盤石の秩序をもたらすことができる。何よりそれは自分を救ってくれた先帝の願いでもあったのだ。果たすのは残された己の役割だと信じ、こうして活動し続けている。
同盟発足までの足掛かりとして現地での土台作りが必要だ。兼ねてより交渉していた部族との同盟を進めるため、族長代理であるバツーと他数名で、ある集落を訪れていた。南方ノーマッドの中でも筆頭として名高いバルザイの部族だ。
地上戦艦撃破後、散り散りになっていたノーマッド達は再びかつての勢いを取り戻しつつあった。南の地域でもいくつかの部族が存在しているが、まずは最も勢力のある部族を同盟に引き入れたかった。バルザイが傘下に加わったと知れば、他の小さな部族も後に続いてくれるだろう。
集落に到着すると、事前に遣いを出していたこともあって快く迎えてくれた。歓迎の宴が催されるのはどこの集落でも同じらしいが、酔いつぶれてしまっては本題に入れないと、先に用向きを伝えて交渉の席に着いた。
和やかに交渉は進み、夜も更けた。バルザイはしばし考える時間が欲しいとのことだった。たびたび衝突していた他部族と同盟を結び、終いには憎き隣国との和平協定ときたのだから、彼の反応は当然のものだろう。
また日を改めて訪問すると約束を交わし、今日はこれでお開きになる予定だった。ところが去り際に少し込み入った話があると呼び止められ、アルタンは一人バルザイの幕屋に留まっていた。
「バルザイ殿、話とは何だろうか」
「個人的な事情で申し訳ない。あなたとこうして話せる機会はそうそうないので」
おそらくアルタンと同年代であるバルザイは髭を湛え、体格も大きくまさに族長と言わんばかりの風体だった。正面に座って向き合うと堂々とした風格があり、他の男であれば臆してしまうような迫力もあった。
だがアルタンも幾多の死線をくぐり抜けてきた自負がある。今はステップ平定のため各部族との交渉が主だが、そこでも培った経験と度胸が一役買っている。
「個人的な事情とは」
「ええ。私はね
……ずっとあなたを見ていたのですよ、あの戦艦を打ち破らんとするその背を。バラバラだった我々を取りまとめ、折れぬ志で立ち向かう姿を
……"黄金"と名付けられたあなたに、相応しい姿だった。神々しかった。ステップにも夜明けが来たのだと、打ち震えたものです。あなたの気高さに、憧れを抱いた」
思い出話だろうか。ただの称賛であればわざわざこうして時間を割くこともないだろうに。
男の目的が掴めずにアルタンは眉をしかめた。
「あれは帝国の作戦に乗ったまでだ。俺は皆を説得して回っただけに過ぎない」
「あなたならそう言われるでしょうな。ただそれだけでも、私にとってはこれまでにない感銘を受けた出来事だったのです。しかしその後、あなたはここを去った。私は我慢ならなかったのですよ
……我々の象徴となるはずだったあなたが、異国の皇帝に攫われたとね」
「
……俺は自分の意志でアバロンへ向かった。それにステップが受けた恩を、返さねばならなかった。妻も同じ気持ちだった」
「ええ、わかっています。筆頭勢力の族長であったあなたが皇帝の手元にあれば、帝国と友好関係も築ける。そしてその間はこちらに手出しはしてこないだろうと、私には分かっていましたよ。あの皇帝の考えることなど、手に取るようにわかる」
アルタンは目の前の男にそれまでなかった嫌悪感を抱いた。
――軽々しくあいつを理解したなど言うな。
「あなたはあの男の何も知らないはずだが」
「ええ、確かに知らない。知らないが、同じ男としてどのような情欲が渦巻いているのかは想像に容易い。皇帝は見つけてしまったのでしょう。ここで〝黄金〟と呼ばれる、宝を」
「
……何が言いたい」
含まれた意図を感じ取り、それまで取り繕っていた態度も霧散して眼光が鋭くなる。
「噂は立っていましたからね。色をもって営みをするお方だと」
「それ以上、あいつを汚すことは許さん」
「そんなにむきになられるとは。もしや本当のことでしたか? それにしても〝あいつ〟とは
……やはりかなり親しかったご様子で」
「
……側近のようなものだったからな。出撃の際は共にあった。他意はない」
「その他の場面では? 情痴に溺れることなど茶飯事だったのでは」
怒りが込み上げてくる。これ以上は抑えられない。
アルタンは言葉を遮るように席を立った。
「あなたに同盟を持ち掛けたのは無駄だったようだ。これ以上話すことはない。失礼する」
「これは失敬。しかし我らとの同盟を反故にしてよろしいのですか?」
バルザイの部族は戦艦撃破後、勢力を増やしアルタンの部族に匹敵するほどの力を得ていた。ステップを一つにまとめる以上、この男の協力は必要不可欠だろう。
「私はあなたにも皇帝にも敵意を持っている訳ではありません。現に、あなたの御息女であるアズィーザ様が即位された。これはステップにとって喜ばしいことです。しかし何故アズィーザ様が継承されたのか不思議でならないのですよ」
「皇帝は七英雄討伐のため、世界各地に遠征する。他国へ勢力を拡げたいのなら説明がつくだろう」
「果たしてそれだけでしょうか。それならカンバーランドでも、サバンナでも、メルーの者でも良い。大陸の玄関口とは言え、まだ街とも国とも呼べぬ我らの子供に皇位を譲るなど、正気の沙汰ではない」
「あいつはステップとカンバーランドの和平も望んでいたからな。どちらからか皇帝が出れば滑らかに平定が進むだろう」
「なるほど
……ではそれがたまたまあなたの御息女であったと。しかし今一つ腑に落ちない。この壮大なステップで、アズィーザ様である必要性が感じられないのです。他にも何か決め手になるものがあったのでは? 例えば
……あなたの存在など」
何を言わんとしているのか明らかだったが、ここで大人しく首肯する訳にはいかない。
「先帝にとって、あなたはやはり特別なものだった。そうでしょう?」
「伝承法のことは知らぬ。あいつの意志が関わっているのかどうかもな」
「他のことを聞いているのではない。私はあなたに問うているのです。あなたにとっても、恩義を別にしても特別な存在だったのでは?」
アルタンは立位のままバルザイを睨みつける。幾ばくかの沈黙の末、口を開いた。
「
……こんな話をしに来たのではない。手短に応えろ。あなたの望みは何だ」
「話が早くて助かる。破談になるのはこちらにも利がない。しかし始めに言ったはずです。あなたに憧れていたと」
「
……」
「今の私の部族なら、あなたのところにも引けを取らない戦いができるでしょう。そしてあなたの部族はこれまで頂点にいた驕りか、他部族への警戒が薄い。水場に毒でも混ぜれば制圧も容易でしょう」
「貴様
……!」
「氾愛兼利、という言葉が好きでしてな。私にも同じようにして頂ければ良いのですよ。かつて皇帝に身も心も捧げたように
……」
「っ
……!」
怒りで握りしめた拳が震える。アキリーズを侮辱されたこと、同盟の破談、部族への宣戦布告、村の者を人質に取られたこと、全てに。
そしてこの全てが、自分の肩にかかっている。ステップの代表としてカンバーランドと協定を結ぶアズィーザのためにも、ここで破談にさせるわけにはいかなかった。
瞼を閉じた。怒りを鎮めるように、静かに長く息を吐く。
「何を
……すればいい」
「ひとまず、私の言う通りにしていただけますかな? そして外にいるあなたの仲間に届かぬよう、声を荒げないで頂きたい。宴に水を差したくはありませんから」
言葉尻に添えられたのは即効性のある毒薬。ここで頭を振れば、共に来たバツー達にも危害が及ぶという警告だった。おそらく何等かの合図で、別の幕屋でもてなしを受けている彼らに毒水が振る舞われると。
どうやらバルザイの部下には根回しされているようだ。既に幕屋の周辺には見張り以外の気配が感じられなかった。
「
…………わかった」
「ありがとうございます。それでは
……服を全て脱いで頂けますか? ゆっくりと、一枚一枚丁寧に」
「
……」
アルタンは言われた通りに服を脱いでいく。一気に脱ぎ捨てるつもりだったが、それを阻止されて衝動を抑えつつ紐解いていく。その様子を満足げに目の前の男は眺めている。
上衣と腰巻を脱いだところでターバンを外そうとすると「それは最後に」と留められ、一瞥し他に取り掛かる。
布地が剥かれるごと、日にあたることのない白磁の肌が露わになっていく。全盛期は過ぎたというのに未だにその肌には瑞々しさがあったが、同時に幾多の傷も刻まれている。
ちょうど肝臓のあたりにある大きな傷にバルザイの目が留まった。これについての逸話はステップで語り継がれているのを聞いたことがある。七英雄ダンターグに受けた誇りある傷だと。
下着とターバン以外の全てを脱ぎ終えると、アルタンの手が止まった。
「何をしているのですか? 全てと言ったはずですが」
「
……っ」
意を決したように下着をとりはらった。恥ずかしげに俯くその姿に愉悦と征服感で満たされる。しばし全身を舐めまわすように視線を這わされるのをアルタンは肌で感じていた。恥辱と屈辱ゆえか、唇を噛み締めその手は戦慄いている。
「結構。それでは
……」
バルザイはおもむろに立ち上がってアルタンに歩み寄る。バルザイは上背があり、幕屋の中の灯りが伏せられたアルタンの顔ばせに影を落とした。
鮮やかな頭巾を束ねている二本の飾り紐に手を伸ばした。紐を解いて頭巾を丁寧に巻き取っていく。まるで花嫁のヴェールを捲るような手つきだった。
普段は隠されている淡い金の髪が露わになった。灯りを反射してキラキラと輝いているように見える。
これが、欲しかった。
バルザイの脳裏に走馬灯が走る。戦艦撃破の後、汚れと血を落とすため頭巾が取り払われた瞬間、現れた見慣れぬ金糸に目を奪われた。彼だけが、あの死体まみれの混沌とした場で輝いていた。若きバルザイの心は燃え上がった。
しかし風のように奪われた。他国の皇帝とやらに。バルザイはその後、皇帝に憎しみを抱き、それは次第にアルタンへの歪曲した淫欲へと姿を変えた。
あれから十年以上が経ち、やっと手に入れることができた。この宝を。
「
……美しい」
大人しくなっていた髪を愛でるように撫でてゆく。鼻先を押し付けて息を吸うと、裸体が身震いするのがわかった。
柔らかい感触を堪能すると、変わらず俯くその頬に両手を添え上向かせる。影が落ちていたその瞳に光が差し、鮮やかな空色の光彩に目を奪われた。まるでステップの大地を包み込む蒼穹のような。
だがその目に宿るのは嫌悪と、侮蔑。
それでもかまわない。この気高い魂が折れてしまっては困るのだから。
「あなたの全てを味わいたい。皇帝がそうしたように。口を、開いて頂けますか?」
僅かに震え、唇が薄く開かれる。
従順な傀儡と化した姿に無意識に笑みが溢れる。じっくり味わおうと、抵抗できないそれに舌を差し入れた。
続き※18禁
▶
創作ロマサガ2纏めへ戻る
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.