目の前から光が失われた。私は強敵ゼットンに敗れたのだ。地球の平和のために働きたい、この星のとある星人の、ハヤタの、その願いを、そして自分の贖罪を、遂げられずに途中で投げ出す形になってしまった。
これでは、ハヤタは、科特隊のみんなは、地球の平和は。
遠退く感覚の中、懸念と心配に支配されて意識の沈みに抗えないでいると、体が赤い球体に包まれた。
「……おい。」
あたたかい。少しだけ、感覚が戻って来た気がした。
「おい!しっかりしろ!」
自分を包み浮かぶ球体に、目覚めを促される声を聞いた。これは、自分と同じ光の国の気配だ。何者だろうかと、その気配と自分の記憶を探る。
まさか。
「貴方は……追放されたはずでは……。」
「チッ。後からこの星に来たのはお前の方だろう。俺様は今好きで光の国の人間にかかわってるわけじゃねえ。そんなことより今は、この現状のことを考えろ!」
そうだ。ハヤタは、宇宙恐竜は、地球人は。
「もう直ぐゾフィーが来る。上空まで運んでやるから、それまで持ち堪えろ。」
「どうして……?」
「俺様が追放されてるっつったのはお前だろう。ゾフィーにも見付かってたまるか。俺様は今は引っ込んで地上暮らしをしてんだよ、お前は俺様からさっさと遠去かりやがれ。」
なんて人だ。身勝手で追放されたと、聞いた話では有名だが、保身のために私だけをゾフィーに保護させようとするなんて。
そんな滅茶苦茶な言い訳が、通用すると思っているのだろうか。
思っているんだろう。本当に勝手な人だ。身に染みてそれが事実だと今まさに感じている。
「貴方は……戦わないのか?」
沈黙で返された。まるで舌を打つか溜め息をつくかで迷ったかのように。
「俺を追放したのはお前達光の国なのに、何勝手言ってやがる。ここは光の国でもねえしな、戦って遣る義理もねえ、滅ぶんなら別の星に行きゃ良いだけだ。俺はお前達とは違う。」
低く、重たい声だった。冷たい。この赤い球体は、こんなにもあたたかいのに。
「でも、地球人達は、私のことを、光の国の人間を、ウルトラマンと呼んでくれます。だから貴方も。」
「やめろ。」
身勝手で、どうやら頑固な人らしい。
「ではもし、私が去ってしまった後の地球人が、自分達の手で、ゼットンを倒せたら、貴方も。」
「ふん。さて、倒せるかな。」
私はハヤタと出会って、科特隊のみんなと出会って、地球人と出会った。だから。
「私は、地球人を信じている。」
どうやら私より先に地球に来ていた貴方よりも、この気持ちは強いらしい。だから。
「貴方は、ウルトラマンベリアルを名乗る人になる。」
あの人は立ち去ってしまった。きっと言っていた通り、地上に戻ったのだろう。宇宙恐竜の脅威に怯える地球人の中へと。けれど決して恐れるばかりではない地球人のもとへと。
私が告げた、最後の言葉が聞こえていたかは分からない。
けれどどちらにせよ、もしあの人が光の国の姿をこの星の友人達に晒すことになったのなら、そう呼ばれることに違いないのだ。
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