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syanpon
2025-07-08 18:42:59
5318文字
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私の唯一
オトスバ
何でも許せる人向け。
年齢操作、家庭環境の捏造、性暴力の示唆、同一カップリングとみえる描写があります
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「ねえあなた、恋とは愚かなものなのですよ」
その触れ合いは突然だった。
数年経ち、成長期を過ぎたオットーと男の背丈が並んだ高校1年生の冬、子供を諭す親のようにオットーの頬を挟んで吐息が触れそうな距離でそう囁かれた時、オットーは初めての出会いの時のようにパチパチと瞬きをすることしかできなかった。
「
……
恋、ですか」
「ええ、ええ、恋です。あなた、恋をしてはいけませんよ」
男の指がオットーの耳をくすぐる。この男に実体はなく、成長したオットーにはこれが所詮、自分の環境が作り出したイマジナリーフレンドなるものであることもわかっていた。そのためこれはきっと己の深層心理なのだろう。
実体のない細い指をなぞり返すように、触れるようにあそびながらオットーは口を開く。
「それは、僕が恋をしていると?」
目の前の青いビー玉ががさらに丸くなる。先ほどのオットーのようにパチパチと瞬きをしている姿を同じ見目をしているはずなのにどこか艶めかしく感じてしまうその一挙手一投足をぼうと眺めながら男の言葉を待つ。
「だってあなた、友人に恋しているでしょう」
***
「僕ってナツキさんのこと好きなんですかね」
帰り道、そう呟けば隣で大きく咳き込む音が響いた。足を止めてその背中をさすってやれば猫の目をした男は飲んでいたペットボトルを握りしめ、その手と口元を濡らしている。その手をハンカチで拭った後に口も拭いてやろうとすれば「は?」なんて言葉を連呼しながら自身の制服の袖で乱暴に口元を拭ってしまった。
「は?え、お前今なんて言ったの」
「僕ってナツキさんのこと好きなのかなって
……
」
「それって普通俺に聞くことじゃなくない?」
「でも僕、友達ナツキさんしかいませんし」
正確に言えば現実に存在している友人が、なんて話になるのだが。スバルは納得したような納得してないような声色で「あ〜」なんて呟きながら視線を右往左往させ、ペットボトルの蓋を閉め忘れていることに気がついたのか慌てて蓋を閉める。吊り上がった瞳がじっとりと細まりオットーを見つめた。
「たらればの話、お前が俺のこと好きならお前はどうしたいわけ?」
「どう
……
」
オットーは困ってしまった。答え合わせを頼んだ友人に新しく問いかけを出されてしまったのだ。オットーの下がった眉に気がついたのかスバルが両手でオットーの頬を挟む。子供体温でほんの少しあつくて、でもコーラのかかっていた左手だけがほんの少し冷たかった。
「どうよ」
「どうとは」
「俺にこうされてどう思うって話」
「
……
」
「嫌!とかキモい!とかあるかってこと」
「あんたに対してそんな感情を持ったことないですが」
頬を挟んでいた手がほんの少し後ろにずれ、スバルの指先がオットーの後頭部にかかる。そのままぐ、と顔を引き寄せられた。その力に逆らうことなく流されれば思ったよりも長いスバルのまつ毛がすぐ近くにまできている。
そのまま唇が重なった。
「
……
どうよ」
顔に触れられていた手が離れてスバルが一歩分オットーから距離をとる。スバルの唇が触れたところをそっと指先でなぞるが、離れていった体温はそこにはもうなく、ただほんの少しカサついたオットーの唇があるだけだった。
夕焼けに照らされて赤く染まるスバルがオットーの言葉を待っているから、オットーも口をそろりと開いた。
「
……
いやじゃ、なかったです」
「
……
そ」
もう一度、彼に触れて欲しいと思うのは強欲だろうか。
ほんの少し硬くて熱い指先の熱に、唇に、その他全てスバルを構成するものにオットーの全部で余すとこなく触れてみたいと、この一瞬のふれあいだけで望んでしまったのは。くるくると思考を巡らせるオットーを引き戻すのもまたスバルの声だった。
「俺たち付き合ってみたらいいんじゃないの」
「へ
……
」
「お前に好きなの?とか言われた時はビビったけどさ。別に俺も嫌じゃなかったし
……
。どうせお前しか俺も友達いないし。友達兼恋人お試しみたいな」
そう言ってスバルがオットーに手を差し出してくるからオットーは無意識にその手を握りしめてしまっていた。
だってその熱にもう一度触れたかったから。即答とも取れるオットーの行動にスバルはびっくりしたように目を見開いたあと、自らもその手を強く握り返してオットーに微笑み返した。
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