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nunn_1228
2025-07-08 17:10:24
3514文字
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居酒屋学パロPL
放課後の中途半端な都会の夜。
学校が終わるなり、友達に半ば強引に引っ張られ、ファストフードで腹を満たし、カラオケで時間を潰す。時間が経つほどに、友達のテンションは右肩上がり。店を出ると、ふわりと揚げ物の匂いが鼻をかすめた。ネオンの灯る通りには、酔っ払ったサラリーマンが肩を組んで歩き、居酒屋の軒先から笑い声が漏れている。赤提灯の下を抜けるたび、焼き鳥の煙が喉に絡みついてくる。
ポケットから取り出したスマホの画面には、ちょうど10時の数字が光っていた。
「なぁ〜次ゲーセン行こうぜ」
「いや、俺ぼちぼち家帰らんと
…
妹の面倒見なあかんし」
「一日くらいいーじゃん!たまには息抜きも必要だって」
「そんなん言われてもな
…
」
妹の面倒を言い訳にしようとしたが、友達には簡単に流された。その調子で誘惑され、気づけば俺はまた一歩、家から遠ざかっている。
断ったら、空気読めないヤツ扱いされるのが目に見えている。正直面倒だけど、今は仕方ない。
どうせ、卒業したらこんな付き合いも無くなるし、少しくらい嫌われたって構わないだろう。
「今日だけだって!」
「せやから俺は
……
え」
提灯が浮かぶ居酒屋の前で、酔っぱらったおじさんたちがふらふらと出てくる。その群れの中、ふと目に留まった横顔。
服装はいつもと違うけど、確信が持てた。
間違いない、あれは───
「何?どした?」
「すまん、ほんまに俺もう帰るわ!」
「は?!ちょ、待てって!」
帰るわと言っておきながら居酒屋に入った俺を見て、友達が何を思ったかは分からないが今はそんなこと気にしない。
賑やかな音が響く中、俺は目的の人物を探し始める。すぐに見つけたその人は、カウンター席で静かに飲んでいた。
「タカさん先生!」
「
…
は?」
なんとも間抜けな顔をして、こちらに目を向けた。
普段こんな表情を見られることは滅多にないから、妙な特別感を感じる。
校外だからだろうか、いつも着ている白衣は姿を消し、普段とは違う姿がそこにあった。
「え、なんでいるの?」
「外からチラッと中見たらタカさん先生っぽい人がいたんで、確かめたくて」
「はあ
…
?」
まだイマイチ状況を理解できていないような顔をされる。
普段より頬が赤いのは、きっと酒のせいだろう。なのに、一瞬照れているようにも見えてドキッとする。
バレないように、そっと空いている隣の席に腰を下ろした。
「タカさん先生ってお酒飲むんすね」
「嗜む程度だよ。なにちゃっかり隣座ってんの」
話す気満々で隣に座っても帰宅を促さないのは、酔って判断力が鈍っているからなのか、それとも
…
「バレました?てか、ほんまに嗜む程度の量なんすか?顔真っ赤っすけど」
「今日はトクベツ。先生だって飲まないとやってらんないときくらいあるよ」
「ほーん
…
」
所謂ヤケ酒みたいなものだろうか。
誰にでもそういう気分になることはあるだろうけど、タカさんにもそんな瞬間があるんだと思うと、妙に親近感が湧く。
学校でのタカさんは完璧で、無自覚なのか計算なのかわからない天然っぷりで、女子からも大人気。
どこか隙のない人だと思っていたけど、こうして人間臭い一面を見ると、誰も知らない姿を覗いた気がして、思わず笑みがこぼれた。
「というか、なんか一品くらい頼みなよ」
「あ、そっすね。とりまウーロンでええか。それ一個もらっていっすか?」
タカさんが頼んだらしい唐揚げを指さす。隣にはレモンだけが残ったお皿がもう一枚。二個目頼んだんやなぁ。ほんまに鶏肉好きなんや。もう少しお弁当に鶏肉増やそうかな。でもバランスがな
…
白米抜いたらほぼ鶏肉になりかねない。
「ヤダ」
意外な答えが返ってきた。案外子供っぽいなぁと思いながら、そこがまた可愛いんだろと自分に自分で突っ込む。酒が結構回ってきたのか、先程より顔が赤く染まり口調が少し幼くなったように思える。この姿を見れるのは俺だけであってほしい。
「なら俺も頼も。タカさん先生は何時までおるんすか?」
「分かんない、川上くんが帰るくらいに俺も帰ろっかな
…
」
「ほんなら一緒に帰れるっすね!」
タカさんを一人、この酔った状態で帰らせるのは少し心配だったのでちょうどいい。少しでもタカさんと一緒にいれる時間が増えるのは、俺にとって嬉しい以外の何物でもない。
そんなことを考えているうちに、唐揚げが目の前に置かれた。モクモクと湯気を立てるそれに、俺は迷わず大きなひと口でかぶりつく。熱っ、と舌をやけどしそうになりながらも、じゅわっと広がる旨みに思わず顔がほころんだ。
「うわうまっ
…
」
「ここの美味しいからよく来るんだよね。1個ちょうだい」
人にあげるのは嫌なのに自分はもらおうとするんだなぁ。まあ全然いいんだけど。寧ろ俺からあげにいくけど。
「いいっすよ全部食って」
「ほんと?やった」
嬉しそうに俺の注文した唐揚げを頬張る。熱さも気にせず幸せそうに食べるその顔を見て、この顔が毎日見れたら幸せだろうな、なんて考える。一緒に住めたら、唐揚げなんていくらでも作ってあげるのに。
「ごちそうさま」
タカさんはあっという間に唐揚げを平らげ、満足気な声で食べ終わった合図を知らせた。
食後もあれこれ話している内に、ウーロン茶の氷はすっかり形を崩し、溶けた水が静かに混ざっている。それなりの時間が過ぎた証拠だ。好きな人と話していると時間は一瞬にして過ぎていく。
「そろそろ出ようかな。こんな遅くまで未成年を外にいさせるのも良くないし」
「ガキちゃうし!俺もう18やで!」
「高校卒業するまでは子供で〜す」
いつものように子供扱いして揶揄ってくる。大人だ子供だと言い合いながらレジの前まで行き、ポケットからもう何年も使い古した財布を取り出そうとしたとき、タカさんに止められた。
「いいよ、俺払うから。殆ど俺が食べちゃったし」
「いやいいっす。そんくらい自分で
…
あっ」
言葉を最後まで言わせてもらえないまま、サラッと払われてしまった。こういうスマートさも、タカさんがモテる理由なんだろう。俺だって、タカさんに余裕で奢れるくらい格好良い男になりたい。
そのままスムーズに会計は進み、タカさんとレジの対応をしてくれたバイトらしきお姉さんにお礼を言って店を出た。
外はいつの間にか人が減り、疎らになっていた。並んだ店内から聞こえてくる笑い声が遠く感じるほどに、タカさんの声だけが鮮明に耳に残る。
「はぁ
…
飲みすぎたかも、明日に響いたら困るな」
「タカさん先生、明日も仕事なん?」
「そりゃね。休日も当たり前のように出勤だから年々教師って減っていくんだよ。俺も辞めちゃおうかな〜
…
」
タカさんの口からポロッと零れたその一言に驚きつつ、逃さないように必死で拾い上げる。
「せやったら俺タカさん先生と会えんくなるやん
…
!」
「いや、そんなすぐ辞めれるもんじゃないけどね。川上くんだってもう今年で卒業でしょ?もし辞めるならその後かな」
「ほんなら俺がタカさん養うっす」
「俺より稼げるようになってから言いなよ」
真剣な眼差しを向けても、タカさんには冗談としか取られないらしい。いつものように、軽く笑って俺の気持ちをそらす。それでも、まだ諦めたくなかった。普段とは違うこの空間だからこそ、違う反応が返ってくるかもしれない。
「その間に他のやつに取られたら嫌やもん。せやから今しかないねん。タカさん好きっす。ほんまに好き。俺と付き合ってほしい」
「
…
もしいいよって言ったら、どうすんの」
「へ
…
?」
微かに聞こえた言葉に、間抜けな声で返してしまう。
背後に遠ざかる街の光。暗がりの中、タカさんの表情が読み取れないのがもどかしい。
「付き合ったら川上くんのこと、多分一生離してあげられないよ」
「そんなん、俺もそやけど
…
」
「カワイイ子に告白されても振らないといけないし」
「タカさん以外と恋愛する気ないんで」
「川上くんの想像と違うかもしれないし
…
」
「そんなん付き合ってみんと分からんやん。もしそうやったとしても好きでいる自信あるで俺」
「
…
俺おじさんだし」
「タカさんはタカさんやもん。それだけすか?俺と付き合わん理由」
「未成年との恋愛はダメだし」
「せやったら卒業したら迎えに行くで。それでええ?ほんなら付き合うてくれるん?」
「それなら
…
いいかも
……
」
ぽつんと佇む街灯の光に照らされるタカさんの顔。赤みを帯びた頬が、酔いのせいなのか、それとも照れのせいなのか、俺には分からなかった。
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