もちこ
2025-07-08 01:13:25
2305文字
Public
 

米屋くん、いい加減にしてください。

♡愛の力は偉大♡

「大好き。付き合って♡」
「いやだ!」
「ガ〜ン」

 高1の時に米屋と知り合って4年。そして彼からの告白を断り続けて4年。高校生の頃、初めて彼に告白された時は2週間ほど悩んだりしてたけど、もうすっかり慣れて即答できるようにまで成長。それでも諦めない男米屋は忘れたような顔で何回もチャレンジしてくる。
 大学では『米屋が猛アタックしてる子』として認知されているため、彼氏を作るどころか米屋以外の男が誰一人として近付いてこない。もっと色んな子と話して自分の世界を広げたいのにな〜と悩んでいた時、友達からインカレサークルの新歓に誘われて参加してみることに。
 小さなクラブを貸し切りにして行われた新歓、他大学の人もいるから人数が多くて、幹部っぽい男の先輩がお酒渡してきたり、いきなり肩組んできたりと完全に距離感がおかしい。「なんかこのサークルってちょっとやばい系のやつですか?」近くにいた女子にこっそり聞いてみると「あ、もしかして今日初めて来る感じ?普通にヤリサーだよ」死ぬ。「か、かか、か帰ります!」脱兎の如く逃げようとしたら、入り口で男性二人組に「まだ始まったばっかりだし、もうちょっといなよ〜」やんわり阻止される。「か、かかかか監禁?」真っ青になって隅っこで震えてたら、さっきの女性が見兼ねて「今日女の子の人数少ないから、男女ペアじゃないと出してくれなさそうだね〜大丈夫、こういう日もあるさ」励ましてくれるけど全く励ましになってない。絶望を味わう。
 泣きそうになりながら、パパに電話するかお祖父ちゃんを呼ぶかいっそのこと警察呼ぶか迷って、でもこんなところに足を踏み入れたことが身内にバレたら一生ネタにされると恐れて、唯一LINEを交換してる男子、米屋に電話をかけてみる。LINEとかほとんどしたことないのに、いきなり電話かけて取ってくれるかなって不安はあるけど、藁にもすがる思いで待ってたら、5コール目で「もしもし?」と彼の声。まずは無事に繋がったことにほっとする。「え、どしたの?珍しくね?てか初めてじゃん」電話越しでも伝わる嬉しそうな声が、緊張してガチガチに強張った身体の力を少しだけ解いてくれる。声を潜めながら、「ああの、もし今、暇だったらでいいんだけど」おずおず話を切り出す。「うん、ヒマヒマ」「えっとその〜今ね、ヤリサーが運営してるクラブに知らずに行っちゃって」「ん?」「男の子と一緒じゃないと外に出れないって言われて、助けてほしくて」「どこ?」「位置情報、今、送った」「すぐ行くわ。通話絶対切るなよ」疑ったり迷ったりする間が一切無く、迅速に対応してくれる。雲間から地上に射した光をイメージしながら彼の救助を待つ。

 「ねぇ、さっきからずっとここにいるね。誰かと話したりしないの?」誰も声かけてくるなよ!と隅っこで怖い顔してたのに、知らない男の子に声掛けられて頭の中で警鐘が鳴り響く。「大丈夫、友達待ってるだけ!」と頑張って追い払おうとしても「じゃあ友達来るまで話さない?どこの大学?」会話続けられる。絶対に個人情報を教えたくないけど嘘つくの下手だから「ヒミツ〜」とか言って誤魔化してたら、なんかイケそうな女だと思われたのか、「え〜ちょっと気になってきた。二人でカフェでも行って話さない?友達には後で連絡したらいいし」手を掴まれそうになって大ピンチ!米屋戦で培われたお得意の拒否、「やだ!」を発動すると、相手がポカンとして固まる。声が大きかったせいか、周りの注目を集めてしまって、やばい空気になってるかもと全身冷や汗。恐ろしくて泣きたくなってたら、ぐいっと腕引かれて背後に抱き止められる。「な〜にしてんの」救世主米屋参上。「よ、米屋!帰りたい……」「はいはい、帰ろ帰ろ。スンマセーン、お邪魔しましたー」そのまま肩抱いてクラブから颯爽と連れ出してくれる。

 「死ぬかと思った」外出た瞬間、米屋は肩から手離していつも通りの自然な距離をとってくれる。「出されたもん、飲んだり食べたりしてない?」「してない」「良かったぁ〜。一回どっかで座るか?このまま帰るのしんどくねー?」「うん座りたい」「了解。駅のスタバでいーい?」「うん」まだありがとうも言えてないのに、嫌な顔ひとつせず優しく聞いてくれる。今まで外敵だと思ってた米屋は、もっと強大な悪に出会った後はなんだか心強い味方のように感じる。
 ラテ飲みながら、ほっと一息ついて落ち着いたところで、改めて彼に頭を下げ「巻き込んでごめんね。助けてくれてありがとう」謝罪とお礼を伝える。いつもの余裕そうな顔で「いや、逆に巻き込んでもらえて嬉しいわ。どーいたしまして?」と笑う米屋。なんであんなとこ行ったの?とか聞いてこない彼の気遣いレベル半端ないし、「これからもオレのこといっぱい頼ってくれたら嬉しい」さり気なく自分を売り込んでくるところも凄い。こんなに優しくされてるのに、自分は何も返さないのは違うよな!と強く感じて、「そんな風に言ってくれてありがとう。米屋も、私に何かできることあれば遠慮せず言ってほしい」と素直に伝えると、「え〜頼もし」いつもみたいにニヤニヤ笑って、やがて目を逸らしてちょっと黙る。会話も尽きたし、そろそろ帰る頃合いだなとラテ飲み干そうとしてたら、「ごめんこんなとこでこれ言うの頭おかしいと思うんだけどさぁ」急に緊張感のある真剣な顔でじっと見つめられる。「なに?」「結婚して」「ぶちのめすよ」「まだダメかー!」“まだ”ってなんですか?諦める気、ありますか?米屋くん、いい加減にしてください。