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みずあめ
2025-07-08 00:54:26
2852文字
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rkrn
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久々綾
何も分からないで好き勝手書いてます。
「ああそうだ、お土産よろしくね」
「ただ実家に帰るだけでどうして土産を持ってこなくては行けないのだ。どうせ暇を持て余すのだろう、街にでも遊びに行けばいいじゃないか」
「ケチ〜。あ、久々知先輩だ。せんぱぁい、お土産待ってますね」
「こら、先輩になんてことを。すみません久々知先輩、喜八郎のことは気にせずに」
「
……
えっと、お土産って、なんの?」
「先輩もお休みは家に帰るのでしょう? 僕は今回は帰らないので、ぜひお土産を」
両手を差し出して乞う喜八郎を滝夜叉丸がパシンと叩いた。痛いと文句を言いながら喜八郎は楽しそうだ。相変わらず、この二人は仲が良い。
ただ前を通りがかっただけだったけれど二人とも急いでいるようには見えなかったから、俺は彼らの部屋の前の廊下に腰を下ろし「喜八郎、帰らないの?」と言って部屋にいる喜八郎を見上げた。喜八郎はわざわざ廊下へ出てきて俺の隣に腰掛け、滝夜叉丸もその後をついてきた。これは俺が部屋に入った方がよかったかな?と思いつつ、気持ちのいい天気だからいいか、と改めて隣に座る喜八郎を見た。
「両親がちょうど旅行に行ってまして。帰っても一人なので別に帰らなくてもいいかと、今回は忍術学園でのんびり過ごす予定なんです」
「私の家に来るかと誘ったんですが、飽きたからいい、と。全く失礼なヤツです。そもそも私がいるのに飽きることなどあり得るわけがない」
「あ、飽きたのは滝夜叉丸の家じゃなくて滝夜叉丸だよ」
「は!?」
「ふ、ふふ、そっか、じゃあお留守番なんだね。お土産かぁ、俺の家の近くは何もないしなぁ」
周りには山しかない実家を思い出してうーんと考えていると、いつも通り楽しそうに会話を続けていた滝夜叉丸と喜八郎は、どう話が転がったのか「久々知先輩の家に行ったら楽しいかな?」と言って二人してこちらを向いてきた。「え?」と反射的に返し、俺は目を丸くする。
「喜八郎が俺の家に?」
「図々しいにもほどがある! 先輩だぞ!?」
「一つしか違わないよ? あ、でも久々知先輩、家でもお豆腐作ってます? 休みの間豆腐地獄は嫌だな
……
」
「い、家ではそんな、食堂ほど台所も広くないし、
……
え、え?」
「本当ですか? それならまあいっか。ついて行ってもいいですか?」
「
……
来るの? 本当に?」
「いえいえ久々知先輩、どうぞ容赦なく断ってください。コイツはマイペースが過ぎます。先輩を煩わせるのは同室として申し訳ない」
「ごろごろできたら一番良いですけど、ちょっとくらいお家のこと手伝いますよ。先輩の家、山守でしたよね?
……
え、もしかして山って穴堀りし放題ですか!?」
話しながら素晴らしいことに気がついた!と言うように表情を明るくした喜八郎が俺に顔を近づけてきた。目がキラキラと輝き、今にも穴を掘りたくて堪らない様子だ。喜八郎の向こうで滝夜叉丸は呆れた顔で肩を竦めている。喜八郎の穴掘り好きには同室の滝夜叉丸が一番苦労していることだろう。
俺は困ったような笑みを作り、顔の前で手を広げて見せた。身を引いて距離を取った分、ずいっと喜八郎が近付いてくる。
「待って、喜八郎、確かにうちは山守だけど、山を好き勝手できるわけじゃないよ。そりゃ管理のために伐採をしたり土地を整えたりは、するけど
……
、
……
喜八郎、やっぱりうちくる? 穴も掘れると思うよ」
「え、久々知先輩!?」
「本当ですか! 行きます!」
「そういえばこの前帰った時に、次の帰省で生い茂っていて手がつけられない山の木の伐採と土地整備をしようって話をしたんだった。喜八郎なら山も慣れてるしすごい戦力になるよ。って、あ、ごめん、ただのんびり休むだけのつもりだったらそれでも全然いいんだけど」
「お邪魔させてもらうんだからそれくらい手伝いますよ。ごろごろする時間もあれば嬉しいですけど」
「待ってください久々知先輩、いいんですか? 喜八郎は、
……
面倒くさい男ですよ!?」
「おまえに言われたくない」
「あはは
……
大丈夫だよ。心配してくれてありがとう、滝夜叉丸。家に手紙を出しておくから寝床も食事も準備できると思う。喜八郎も外泊届けと、あとお家の方にうちに来るってことを念のため伝えておいてね」
「了解です。ふふふ、楽しみだなぁ
……
。山、広いですか?」
「とっても」
「ふふふふ」
「
……
久々知先輩に迷惑をかけるなよ、喜八郎」
「任せてよ」
えっへんと胸を張って、すぐに楽しそうな笑みが溢れだす。可愛いな、とその頭を撫でたくなったところで俺ははたと気がついた。
休みの間、喜八郎がうちに? つまり朝から夜まで、夜から朝までも、同じ家にいるってこと? 今さらその事実に気がつき、俺は衝撃で固まってしまった。
「久々知先輩?」
喜八郎が俺を見てきょとんと首を傾げ、顔を覗き込んでくる。俺は滝夜叉丸に聞こえないように小さな声で彼の耳元に囁いた。
「
……
親に、なんて紹介したらいい
……
?」
「
……
後輩、しかないでしょう。委員会も同じじゃないしほとんど関わりはないですが。
……
僕のこと何か言ってるんですか?」
「言ってないよ、言ってないけど
……
」
付き合っている人がいるということどころか、好きな人の話だって親にしたことはなかった。もちろん将来そういう話は必要になるだろうけれど、今はまだ喜八郎のことは話せていない。男の子と付き合っているなんて、きっと驚くだろう。
「
……
僕、やっぱり行かない方がいいですか?」
「え。でも、
……
一緒にいたい」
「
……
とりあえず今回は、ただの後輩ということで。仕事の手伝いができるから連れてきたという体でいきましょう」
「うん。わかった。そのうちちゃんと紹介するね。嘘をつかせてごめん」
ふるふると首を振り、喜八郎はちょんと俺の手に触れた。日差しで温められた廊下の板張りの上で指先だけがそっと絡む。
「休みの日が楽しみです」
「
……
うん、俺も」
「喜八郎、先輩について行くのなら休みの前に部屋を片付けるぞ。休みの間に一人でやらせるのは不安だったからちょうどいい」
「え〜、滝夜叉丸が一人でやってよ」
「おまえのものが多いんだっ!」
「滝夜叉丸の紙クズだっていっぱいあるよ」
「私のブロマイドのことを言っているのか!?」
「それじゃ久々知先輩、また休みの日に。はいはいほら片付けするよ〜」
「あ、うん、じゃあ」
わいわいと騒ぎながら部屋に戻って行った二人を見届けて俺も立ち上がり、最初に向かおうとしていた方へ歩き出す。家に帰れるのはいつも楽しみだけれど、今回はもっと、特別に楽しみになった。好きな子と一緒に食事をして、一緒に仕事をして、一緒に眠れるんだ。忍術学園での日々だって似たようなものだしもちろん楽しいけれど、俺の生まれ育った場所に喜八郎が来るのは、全然違う。
いつかきちんと恋人だと話すから、今はまだただの後輩でいてね。でも手を繋いで抱きしめるくらいなら仲が良ければしないかな?と、浮かれた気持ちで考えた。
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