茜色の空が、地球圏の西洋を思わせる石造りの街並みへ溶け込んでいく。まだ独自文化が色濃く残る紡績と服飾の街クロージュ。以前訪れた際に煌びやかに街を彩っていた繊細な刺繍を施された布は身を潜めていて落ち着いた飾りは空の色を受けて化粧を施されて完成するようだ。
タクシーの窓に映る見慣れない景色は、俺の心に微かな不安と、それ以上の期待を混ぜ合わせた。彼に会うのは、本当に久しぶりだ。彼が俺の元を訪れてくれることが多いから、こうして彼の街にいるのは新鮮で、少し気恥ずかしい。以前ホテルショーの仕事の場で顔を合わせ、一緒することはできたが状況が状況だった。じっくり話す時間はおろか、彼の魅力たっぷりの夏服を堪能する暇さえなかったので、余計に恋しさと欲求不満が募るばかりだったのは内緒だ。まあ、聡い人だからそんな俺の状態なんて気がついていたかも知れないけど。
昨夜はふらりとバーに立ち寄った。初老のバーテンダーが手慣れた手つきで逆三角形の小ぶりなグラスへ注いでくれたカクテルは華やかな色合いで、落ち着いた色合いのカウンターにぽつりと花が咲いたようだった。普段は賑やかな大衆居酒屋で飲むことが多いので、お洒落なカクテルには詳しくない。メニューに載っていた画像を頼りに選んだ一杯は、店員が気の利いた名前を教えてくれたけれど、もう忘れてしまった。お酒は好きだけど、詳しいわけじゃない。ただ、そのカクテルの色が、恋人である偉丈夫の瞳の色と同じだった、ただそれだけの理由で選んだのだ。
幸い、アルコールに強い体質だ。たとえ度数の高い酒だったとしても、たった一杯で意識が揺らぐことはない。グラスを傾けてカクテルの甘やかな香りと複雑な味わいをゆっくりと堪能しながら、彼のことを考える。あの雲間を裂いてのぞいた晴れ空のような色の瞳が、一度ゆっくりと伏せられるのを想像する。プラチナブロンドの体毛が、間接照明の温かい光を受けて、キラキラと橙色に輝く。なんて妖艶で、なんて美しい人だろう。そんなふうに、一人で彼を想いながら酒を飲む時間は至福だった。それでも彼との逢瀬を思い描けば会いたい気持ちが募るばかりで、翌日会えるというのに、夜の内からはしたない思いが加速した。こんな風に、アナタを想ってお酒を楽しんだんだ、なんて話したら、彼はどんな顔をするだろう。それを考えるだけで、不思議と口角が上がった。
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