かん
2025-07-06 23:18:08
8701文字
Public
 

次の仕事で共演することになったのは、自分が推してるアイドルでした

田村保乃さん

カシャッ








「いいね」




カシャッ








「完璧」



カシャッ

カシャッ




「っしチェックしよ」





〇〇:



うん、オッケー」





「撮影以上です!お疲れ様でした!」



「お疲れ様でしたー!」



〇〇:お疲れ様でした



無事に仕事が終わった合図がした。


それを聞いた瞬間、控え室へ一直線する。




この仕事を始めて3年。

徐々に大きな仕事も貰えるようになって、前回遂に表紙を飾れた。






「〇〇くん、今日もよかったよ〜」



〇〇:ありがとうございます



「最近きてるんじゃない?ついこの前もさぁ



ストーカーみたいに粘着してくるカメラマン。


毎回こんな感じだが、いっつもおんなじ話。


思ってないだろ、そんなこと。


よくそんな、空っぽの会話ができるな



「どう?お給料、弾んでんの笑?」



〇〇:ははまぁ







今あなたと絡んでる場合じゃない。





「いやぁ〜これからどうなっていく



〇〇:すいません



〇〇:急いでいるので、失礼します



「あ、あぁ



この為にしばらく頑張ってきたんだ。


誰にも邪魔はさせない。




「〇〇ー、お疲れー」



〇〇:今何時!?



「昼前くらい?」



〇〇:間に合わないかも急ご!



ピコンッ




〇〇:






"田村保乃から着信が届いています"







〇〇:ふふふ
















保乃:ふふーんふーんふーん♪



松田:保乃ちゃ……



保乃:んふふふふーんふーん♪



鼻歌を歌いながらスマホを眺める保乃ちゃん。


めっちゃニヤニヤしてる。


この距離で気づかれてないってことは、相当釘付けだな



松田:保乃ちゃんお疲れ〜



保乃:あ、おつかれ〜



松田:あれ?なんかご機嫌?



保乃:え?なんで?



松田:鼻歌、漏れてたよ笑



保乃:え、気づかんかった



無自覚ってことは、相当いいことあったんだ。



松田:自分でも笑?めっちゃ歌ってたよー



保乃:





ニンマリしてる



松田:なんかいいことあった?





保乃:え〜えへへ



あ、笑った。


すごい幸せそう。



松田:なになに?教えて



保乃:今日、久しぶりにほののミーグリ来てくれる人がおって


保乃:その人からレターが来とってそれで


保乃:久しぶりやから緊張するし保乃のこと忘れとったらとかあとは



なんか、もじもじしてるなぁ


珍しいな



松田:じゃあ保乃ちゃんもその人知ってるんだ



保乃:もしかしたら、里奈ちゃんも知ってる人かも



松田:え、私のとこにも来てくれてる



保乃:そういうんじゃないんやけど



そういうんじゃない?


あら



松田:なるほど




保乃:大丈夫?ほの、変なとこない?



心配そうに、瞳を潤ませ聞いてくる保乃ちゃん。


破壊力抜群、女の子でも惚れちゃう可愛いさ。



松田:ない!今日も可愛い!



保乃:ほののこと褒めてくれるかな



松田:その人も絶対可愛いって言ってくれる!



保乃:ほんまに



松田:大丈夫!自信持って!



保乃:ありがとう、頑張る



「田村ー、ちょっといい?」



マネージャーさんが手招きしてる。



保乃:はーい




保乃:話聞いてくてれありがとう



松田:全然全然、頑張って!



保乃:ありがとう!



ガチャン






松田:私も知ってる人








_______________________________________







〇〇:やばい



「やばくないって」



〇〇:え何喋ったらいいの



「その紙に書いてるでしょ」



〇〇:大丈夫、俺変じゃない?



「変じゃない」






〇〇:やっぱ辞めようかな



「何を今更



呆れて机に向かい直すマネージャーさん。


そうなるのも仕方ない、この会話何回もしてる。



〇〇:俺のこと、覚えてないかも



「そりゃ人の名前たくさん覚えられないから」



〇〇:そんなこと言うなよ



「どっちだよ」







"つぎはあなたの番です"





〇〇:やばいっ来る



「じゃあ楽しんで、終わったら言って」




そのまま出て行ってしまった。



突如訪れる孤独と緊張。




〇〇:はぁぁぁぁ.




心臓がぎゅーっと縮まった気がする。


最近でいちばん緊張するかも




〇〇:この前のLIVE、すごく素敵でしたあの



念には念を、伝えたいことを復唱していく。


彼女の時間を奪ってる、無駄にはできない。




〇〇:大丈夫、大丈夫






3





〇〇:あっ





2






1



〇〇:



保乃:ん!〇〇くん!




〇〇:えっ!?お、覚えてくれてる





保乃:久しぶり〜





ち、近い




〇〇:お久しぶりです




保乃:レターありがとう!めっちゃ嬉しかった!




〇〇:あ、あのえっ


レターちゃんと読んでくれた




保乃:最近忙しいんやろ?すごいなぁ〜



〇〇:そ、そんなこと



保乃:この前の雑誌見たで〜



〇〇:えぇっ!?本当に!?



保乃:んふふ表紙おめでとう!



〇〇:あ、ありがとうございます



保乃:かっこよかった



〇〇:はっ!?



保乃:んふふ



〇〇:あ、えこの前の雑誌見ました



保乃:え〜ほんまに〜?



〇〇:めっちゃ、めっちゃかわいかったです



保乃:えへへ嬉しい





"まもなくお時間です"






〇〇:あ、あのっ



保乃:ん?



〇〇:いつも、すごく応援してます



〇〇:頑張ってください!



保乃:ありがとう



〇〇:ほのちゃんのこと大好きです





保乃:えへへ
  





保乃:ほのも〇〇く






フェードアウト






〇〇:あ


終わってしまった








〇〇:かわいかった


画面越しであのビジュ、やばい。


それに覚えてくれたし、雑誌も褒めてくれた


ずっとニコニコで癒される。


あれは女神、マザー。




ガチャッ



「終わったー?」
 


〇〇:素晴らしかった



「じゃ、次の仕事行きますか」



〇〇:いやちょっと待ってよ



「はい、移動ー」



〇〇:もうちょっと浸らせて



「無理矢理時間空けてるから、はい行くよ」



〇〇:



褒めてくれた?」



〇〇:この前の、見てくれたって



「なんて言ってた?」



〇〇:かっこよかった



仕事したら、また褒めてくれるかも」



〇〇:



また次会った時、褒められたいでしょ?」



〇〇:やります



〇〇:行きます、やります!



「はい、じゃあ行きましょー」



あっという間に移動を促すマネージャーさん。


こっちの機嫌取りのためだけの発言。


バレてるぞ





呆気なく引っかかってるけど。




「はい、早く乗ってー」



〇〇:ほのちゃんっ!



「うるさい」












保乃:えへへへへ



松田:保乃ちゃ………



保乃:えへ……ふへへ……






さっきよりも更に多幸感溢れてる保乃ちゃん。


この短時間で何があったの



松田:保乃ちゃん



保乃:あ!里奈ちゃんお疲れ〜



松田:お疲れ〜、で?どうだったあの人



保乃:えへへふふふ



松田:よかったね笑



保乃:まだなんも言うてへんよ笑



松田:だいたいわかるよ笑



保乃:んふふかわいいやって!



松田:うん笑



保乃:ほののこと、大好きやって!



松田:よかったね笑



保乃:えへへ
 


松田:あらら



「田村ー、ちょっといいかー?」



保乃:あ、はーい



「さっき言ってたやつ、どうする?」



保乃:受けます!やります!



「オッケー、じゃあまた連絡する」



松田:何のお仕事?



保乃:ん〜んふふ



松田:ん?



保乃:秘密







_______________________________________







〇〇:おはようございます



「おはようございまーす」


「はいざいまーす」






「お、〇〇くんじゃーん」



〇〇:あ、おはようございます



「最近どう?調子?」



〇〇:頑張ってます笑



「そっかそっか〜いや、俺なんてさー




推しというのは偉大なもので。


昨日は腹立たしかったはずのカメラマン。


今日はなんか、全然大丈夫。


むしろなんか、もっと聞きたいくらい。




〇〇:それ、大変ですね笑



「そうなの、マジでアイツって感じ笑」



〇〇:ですね笑






「〇〇ー、急げよー」






〇〇:あ、すいませんまた



「頑張れよ!俺も頑張るわ笑」



〇〇:ありがとうございます



颯爽と去っていくカメラマンさん。


意外と悪い人じゃない


と思ってしまうくらい、心が清らか。




「〇〇さん、おはようございます」



〇〇:あ、おはようございます



「メイク室こちらです



〇〇:ありがとうございます





〇〇:おはようございます



「おはようございます!」



メイクさんに挨拶して、荷物を置く。 


すると近づいてくるマネージャーさん。



「〇〇」



〇〇:ん?



「挨拶行こ」



〇〇:誰に?





「共演者さん」




〇〇:え?



「まだ行ってないでしょ、行こ」



〇〇:1人じゃないの?



「いや、言ったよ」



〇〇:誰?



とりあえず行こ笑」



〇〇:



何をニヤニヤして




「はい、行こ」



〇〇:なに?



半ば無理矢理連れて行かれる。



〇〇:ここ?



「そう笑、ここ」



〇〇:入るよ?



「どうぞ笑」



 

コンコンコン




"はーい"




可愛らしい声



まるで





〇〇:失礼します




ガチャッ





〇〇:●●〇〇と申します、本日はよろしくお願いします
 







保乃:田村保乃です、よろしくお願いします







〇〇:え?














「残り五分ほどで始めます」




ドアの向こうからスタッフさんが呼びかける。




〇〇:




「おーい」



〇〇:



「おいっ!」



〇〇:なんめすか?




「聞いてないし、噛んでるし」



〇〇:


挨拶してから、記憶が何処かへ飛んでいった。



〇〇:なんですか?




「あのぉ緊張してますよね笑?」 




こいつ




〇〇:何故、事前に言ってくれないの?




「だって、絶対嫌がると思ったから笑」




〇〇:嫌なわけないっ!




「あ、じゃあよかった」




〇〇:でもっ、絶対断ってた!




「え?なんで?」




〇〇:あのお方がいる




「ん?」




〇〇:俺の唯一神である推しが!




「誰?」




〇〇:あの、田村保乃がいるっ!




「あ、櫻坂のね!」




こいつわかって




〇〇:いつから知ってた?




「来た段階で」




〇〇:辞めよう




「もう無理だよ笑」




〇〇:申し訳ないよ、他の人に




「他の人?」




〇〇:ほのちゃんを推してる人に、申し訳ない




「仕事だから、それに相手がオッケーしてる」




〇〇:なんでオッケーしてるの?




「さぁ?聞いてみたら?」







「スタンバイお願いしまーす」






〇〇:は、はぁ……



「いってらっしゃい」



〇〇:仕事、これは仕事、金銭、上辺の関係



ぶつぶつ唱えながら、道を進む。




〇〇:よ、よろしくお願いします



「お願いしまーす」



保乃:






〇〇:



思いっきり合った目を速攻で離す。


昨日みたいに



「すいません、お2人こちらへ」



保乃:は〜い



置かれた椅子に、隣同士座る。


もうなんか、いい匂い



「今回お2人には、カップルコーデ



〇〇:カップル!?







〇〇:すみません



保乃:んふふ



で、色々なシチュエーションで撮らせていただきます」



保乃:はい!



〇〇:



●●さん?」



〇〇:はっはい



「では、少々お待ちください」



そう言って席を立つカメラマンさん。



2人っきり?


カップル?



保乃:



なんか、めっちゃ見られてる?



〇〇:



保乃:あのっ



〇〇:ははい



保乃:〇〇くんやんな?



〇〇:はい?



保乃:昨日、ありがとう



〇〇:なんのことですか?



ここは誤魔化して






保乃:なんで嘘つくん?



〇〇:



保乃:昨日言ったこと、嘘なん



〇〇:



保乃:ほののこと好きじゃないん



〇〇:嘘じゃないです



〇〇:あのアイドルなんでその、そういうじゃないんですけど



保乃:言って



〇〇:好き、です





保乃:んふふ







〇〇:田村さ




「それでは、スタンバイお願いしまーす」




保乃:は〜い




〇〇:



間近の田村保乃。



流石にかわいいが過ぎる。







_______________________________________






カシャッ






「可愛い」



カシャッ







「かっこいいよ」




カシャッ



カシャッ




撮影は順調だった。


特に何かするわけでもなく、シンプルに片方づつ撮影。


2人のときも特に何も起こらず。



正直安堵してた。





この時までは






「はい、じゃあ手繋いでもらって」




〇〇:……は?



「で、こっち見てもらって」



〇〇:いや、田村さんはアイドル



保乃:んっ!



差し出される綺麗な右手。



〇〇:これ、炎上する



保乃:大丈夫、ほのが守る



〇〇:守りきれないと思う



「〇〇くん?どうした?」



〇〇:ごめんなさい



誰にも届かない謝罪をして、その手を握った。



ごめんなさい、仕事なんで。




保乃:



〇〇:



保乃:カップルやんな



〇〇:ん?



保乃:ほのの、彼氏やんな



〇〇:はい?



保乃:



恥ずかしそうに、その手を恋人繋ぎに。



「いいですねー」



何が?



〇〇:田村さんっ



保乃:



〇〇:田村さんっ



保乃:



がっちり掴まれた手は全く離れない。



ついでに無視もされた。





「はい、オッケーです」




〇〇:ほっじゃあ






「じゃあ次は、お姫様抱っこしてもらって



〇〇:は?



「それで、にっこり笑顔でお願いします」




〇〇:やらない、やらないやらない



「すいません、上が決めたんで」



〇〇:ちょっと待って田村さんアイド



保乃:〇〇






呼び捨て。






保乃:彼氏、やろ?



〇〇:



保乃:ほのの夢、知ってるやんな?






プリンセス



〇〇:今日死ぬかも




保乃:え、誰に殺されるん?




冗談だし、あるとしたら貴方に。




〇〇:ちゃんと、落ちないように




保乃:えへへはーい




〇〇:
 


絶対離さないよう、大事に持ち上げる。






「いいねー」



どこが?





保乃:んふふ顔近いな



〇〇:で、ですです



こっそり耳打ちしてくる田村さん。




耳がくすぐったいし


なんかダメなことしてるみたい



です二回言ったし




もうダメだ







「はいオッケーです」



〇〇:は、はぁ



保乃:.



やっと降りれるのに、なんで残念そうなんだ。





〇〇:じゃあ、もう終わり






「最後に、お互いハグし合ってもらって」




〇〇:



保乃:




〇〇:いや、ダメでしょ



「すいません、お願いします」



〇〇:田村さんアイドル



「上がうるさいんで、すいません」



〇〇:田村さん、これは断った方が








保乃:



唇をきゅっと結んで、上目遣いで何か言いたげ。


 

〇〇:田村さん



保乃:田村さんちゃうし



〇〇:



保乃:名前、ある







ゆっくり、距離が縮まる。




〇〇:




保乃:言って?








〇〇:ほのちゃん



保乃:〇〇







お互い、求め合うように抱きしめる。







背中に回った手は優しい。




感じる体温は、暖かく落ち着く。




聞こえる鼓動は、激しくも心地がいい。











はいオッケーです!確認します」






〇〇:



保乃:まだ、まだいやや




何も言ってない。


けど、お互いの感情は一致してる。





〇〇:



保乃:終わったら、外で待ってて



〇〇:ちょっそれは



保乃:お願いっ



〇〇:



保乃:




「以上で終了です!お疲れ様でした」




「お疲れ様でした!」




その合図がすると、ゆっくり解かれるハグ。





保乃:



〇〇:



保乃:エントランス





「田村さーん」




保乃:あ、はーい








保乃:待ってる






そう言って出ていく。




わかってる。




ダメだってわかってるけど





自分の感情に、嘘をつける気がしない。








**********************








〇〇:



夕暮れに染まってるエントランス。



今日一日、人生の運全て使った気がする。



推しとの対面。



撮影、手繋いでお姫様抱っこして



ハグもして



名前を目の前で呼んでくれる。




もう、悔いはない。





ないないのに、思ってしまう。



独占とか嫉妬とか。



自分はただのファンなのに、思ってしまう。




〇〇:あー







保乃:〇〇!





〇〇:





保乃:〇〇!






本当に綺麗な笑顔。



大切な人を呼ぶみたいに、聞こえる声。






この気持ちに、もう嘘はつけなかった。





保乃:ごめんっ!待ったよな




〇〇:待ってない、今来た




保乃:優しい笑、ありがとう




〇〇:




保乃:行きたいとこあるから、着いて来てほしい




〇〇:大丈夫、身バレとか




保乃:大丈夫笑ほら、行こ?




再び、パッと出る彼女の右手。






誰の指示もない。





〇〇:いいの?



保乃:




〇〇:




保乃:ほのに言わせるん?








〇〇:手、繋いでいい?







保乃:んふふはい!







ぎゅっと、繋がれる自分の左手。



輝いてる笑顔は、まだ自分が知らない顔。





絶対離さないように。






恋人繋ぎにした。




FIN