その日は実に晴れやかな目覚めだった。スマホのアラームよりも先に自然と目が開き、爽やかさすら感じるほどだった。起きたところがラブホテルだという事実も忘れそうになるくらいには、ローの精神はスッキリとしていて満ちたりている。良質な睡眠を得られたことは、おそらくドフラミンゴを抱いたおかげだろうとローは思っていた。ベッドで身動ぎして、隣でまだ眠るドフラミンゴを眺める。サングラスで隠されない目元は長い睫毛が露わになっていて、その影を頬に落としていた。髪の色と同じ金色の睫毛が縁取る空色の眸を思い返してローはどうしてかたまらない気持ちになる。欲に塗れて蕩けて潤んだ眸がローだけを映していたことに、言いようのない恍惚感が湧いていた。すこしだけ目元が赤くなってしまっているのを見ると、無理をさせたかも知れない、と言う気にもなるのだが、そうさせたのはドフラミンゴ自身でもあると言い訳がましく思ってしまった。あれだけ乱れて善がって啼いてローを欲しがったドフラミンゴの痴態は、脳裏に焼き付いて離れる気配がなかった。
「……ドフラミンゴ」
そろりとその名前を口にのせ、ローはしずかにドフラミンゴの目元を撫でつける。やわらかくあたたかなぬくもりが指先に触れて、心が満たされていく感覚がした。こんなにも多幸感にあふれたセックスは、初めてで、胸がくすぐられるような、甘い痺れにも似たしあわせにずぷんと沈んでいる気がする。そしてそれもまた、ローにとってはあまりない経験だった。
「…………ん、ぅ……ろー?」
「悪い。起こすつもりじゃなかった」
「……目が覚めた、だけだ」
ぴくりと動いた瞼がゆるやかに開かれ、空色の眸が明らかになる。まだどこかとろんとしたドフラミンゴが幼気にローを呼ぶのに、やりすぎだった、とローは思った。けれどもドフラミンゴが気にした様子はなく、おだやかにローへと返してくる。その声が掠れていることへの罪悪感が湧いて、ローは眉を寄せた。
「無理も、させて、悪かった」
「フッフッフッ!それも、気にしなくて良い。ローにとって良い夜だったら、何よりだ」
バツが悪く呟くローに対して、ドフラミンゴがぱちりと目を瞬かせる。そして笑い声をあげてから、なんの問題もないと鷹揚に応じてみせた。ドフラミンゴにとってはローを気遣うものだったはずのその言葉が、ローには引っかかる。この夜の出来事が、一夜で終わって切れてしまうことに、焦燥感にも似たものが込み上げてローは狼狽えた。ラブホテルを出て、ドフラミンゴと別れてしまえばもう会えないのだという事実に動揺する。
「……あんなに良かったのは、初めてだった」
「奇遇だな、俺もそうだ」
どうにか絞り出した言葉に意味がなさそうで頭を抱えたくなっていたローに、まさかの同意が返されてローは驚きに目を見開いた。ローの視線を受けたドフラミンゴが艶やかに微笑み、それが嘘偽りでないと告げてくる。そのことに、ローは幸いとばかりに飛び付いた。
「なら、これからも、会えたりしねェか?」
「ロー?」
「後腐れない関係がいいんだろ、アンタ。それに、相性がこう良い相手ってものなかなかいるもんじゃない。最適だろ」
不思議そうに首を傾げるドフラミンゴの幼さに胸を突かれながら、ローは考える間を与えないように言葉を連ねた。言っていることは間違っていないしある程度筋は通っている、はずなのだ。それをドフラミンゴがどう捉えるのか、はわからなかったものの、悪い方向にはいかないだろうと踏んでローはドフラミンゴの返事を待った。
「……そう、だな。ローとやるのはかなり良かったし、お互い割り切れそうだ」
「あァ、ちゃんと割り切った関係でいい」
ドフラミンゴとの繋がりがなくなるよりは、よほどそのほうが良かった。とにかく、このまま別れるということをローは考えられもしなかった。それは本能的な何かで、手を離すなと警鐘が鳴っているようだった。
「セフレになるのには問題ないが、すこし良いか?」
「なんだよ」
「ちゃんと好きなやつができたら、言ってくれ」
「なんの確認なんだそれ」
ドフラミンゴがローとの関係を繋げようと頷いたのに歓喜したところで続けられた話にローは身構えた。そしてどんな提案あるいは条件でもあるのかと思っていたのだが、ドフラミンゴが口にしたのはそんな単純なことだった。確認するまでもない常識的な話をされてやや呆れていれば、ドフラミンゴが真摯にローを見つめ返してくる。
「大事なことだろう。それと、セックスの時にキスはしない」
「……は?」
「キスってのは愛情に結びつきやすいからなァ……そういうのは止めておきたいんだ」
「……」
キスをしない、というドフラミンゴのやわらかな拒絶は、ローの胸にぐさりと突き刺さった。ドフラミンゴとキスが出来ない。あのやわらかく弾力があり噛み応えのある果実のように甘い唇に触れられない、という事実に大きなショックを受けてローは狼狽えた。夢中になってしゃぶりつきたいほどのドフラミンゴの唇を堪能できないのだと思うだけでご褒美を取り上げられた犬のような気持ちになる。
「ロー?」
「…………わかった」
思わぬことに絶句したローをドフラミンゴが不思議そうな声が呼び戻す。ドフラミンゴにとってはそう大したことではなく、お互いが深入りしないようにという線引きだったに違いない。それを理解して、ローは頷くより他なかった。
「キスがなくてもセックスはできるしな」
「まァ、そうだな……」
それは確かにそうだった。キスというのは愛撫であるとともに前戯でもある。けれどもそれが必須なのかと言われれば、絶対にいるもの、ではないのも事実だった。ときおり、キスが好きではない、という者にも出会うことがあるので、必須でもないという考えもわかる。けれどもそれと同時に、愛情を伝えるには相応しいのは確かなので、セックスにおけるキスというのは愛情の最たるものなのかも知れない、とローはぼんやり思った。
「ロー、今日は休みなのか?」
「そうだ、けど、なんだよ」
「それなら、コーヒーだけでも付き合ってくれ」
ついでに連絡先も知りたいしな、と続けて言われるのに、胸が騒ぎ出す。ドフラミンゴへ直接繋がる手段ができることに沈んでいた気分が持ち上がり、晴れやかになった。ドフラミンゴとまた会う機会が作られるのだから、キスのことはこの際どうでも良いと思おうとローは決める。そんなふうに自分に言い聞かせてローはひとまず着替えをしようとベッドから出ることにした。それにならうようにドフラミンゴがベッドで身動ぎをして、ふと眉を寄せる。
「ドフラミンゴ?」
「…………腰が、痛い」
「っ、悪かった」
「べつに、ローが悪いわけじゃない。気にするな」
「いやでも、おれのせい、だろ」
「フフフッ……やさしいなァ、お前は。振られる理由がわからねェ」
「やさしくもねェよ。冷たいって振られたとこだぞ」
腰を押さえてベッドで丸くなるドフラミンゴに申し訳なさが湧いてローはついベッドに戻ってしまった。そんなローにドフラミンゴがぱちりと目を丸めて、やわらかくこぼす。ローをやさしいと捉えるドフラミンゴに首を振り、ローは事実を返すより他なかった。冷たいと何度言われたか知れず、人でなしと振られたのはつい先日のことだ。そもそもこれだけ誰かを執拗に抱いたことが、きっと初めてだった。だから実のところ労り方もローにはよくわからない。
「ふぅん……なら、そいつは見る目がなかったんだな」
「…………」
まだ納得のいかない顔をしたドフラミンゴがぽつりとこぼして、ローは呆気に取られた。ローに問題があるというよりも相手に問題がある、とでもいうドフラミンゴの言葉はひどく新鮮なものだった。ローには縁がなさそうなそれを、ドフラミンゴがひどく自然に口にしていて、ローは何と言っていいかわからない。言葉を喉の奥にしまい込んだローを気にすることもなく、ドフラミンゴがのそのそとベッドから出て立ち上がる。その時にふらつく身体を慌てて支えれば、ドフラミンゴの裸体に浮かぶ無数の淫らな痕が目に付き、ローは目を瞠った。自分がこれだけ痕を残したのだということにも驚きが湧いて、ローはドフラミンゴを思わず凝視してしまう。
「そんなに熱っぽく見られたら穴が開く」
「っ、悪い、そんなつもりじゃ……!」
「フッフッフッ、冗談に決まってる。けど、また抱かれたくなるから控えてくれ」
「〜〜ッ」
ローの不躾な眼差しを受けたドフラミンゴに悪戯に言われて、ハッとしてローは視線を逸らした。ただの比喩でもさすがに見つめすぎだと猛省してれば、ドフラミンゴの甘く煽る声がして息が詰まった。昨日散々出し尽くしたはずだというのに身体の奥から欲が湧いてきそうでローは目眩がする。そんなローに色のある笑みをのせ、ドフラミンゴがそっとローの頬を撫であげてバスルームへと向かっていく。ひとりきりにされると途端に身体から力が抜けて、ローはベッドに座り込んだ。ドフラミンゴに撫でられた頬がやけに熱くてたまらなくなる。こんなにも劣情を揺さぶられたのは、本当に初めてだった。落ち着かない気持ちを持て余し、ガシガシと頭を掻いて、服を着ることにする。自分の服を手にとって身に付けて今度は雑に脱がれたドフラミンゴの服をまとめて拾い、ソファにかけてふと目を上げてローはこの部屋の作りを心底恨んだ。
ラブホテルによくある、バスルームが丸見えの構造は、すなわちドフラミンゴがシャワーを浴びるところもすっかり見えてしまっている。まだすこし覚束ない足取りでゆっくりとバスルームに入るドフラミンゴは当たり前のことながら裸で、その美しい体躯を晒していた。長い手足と無駄なく引き締まった肢体はまるで芸術そのもので神聖さすら感じるほどなのに、その身体に残る噛み跡やキスマークがドフラミンゴを淫靡に仕立てあげている。シャワーを浴びて濡れるドフラミンゴの姿が、ベッドの上で汗と白濁に塗れていた時と重なり、ローは思い切り視線を逸らした。もう既にほとんど全て暴いたというのに、見てはいけないもののような気がしてバスルームに背を向ける。沈んでいたはずの劣情をまた刺激されそうでローはぎゅぅと手のひらを握り締めていた。こんなふうに心が乱されるのに困惑しかわかず、首を振って聞こえてくるシャワーの音を気にしないふりをした。
「ローはいいのか?」
「っ、……おれは、いい」
「そうか」
いつの間にかバスルームから出たらしいドフラミンゴに不意に声をかけられて反射でそう返す。ドフラミンゴが今までいたバスルームに足を向ける気にはどうしてもなれなかった。そんなローの内心など知るはずもないドフラミンゴが身支度を整えていく。バスローブを脱ぎ捨ててひとつずつ衣服を身に纏いその裸体が覆い隠されるのを横目で見ながら、改めて美しい男だとローは惚れ惚れする。それは体格だけでなく、骨のつくりですら黄金比が当てはまる気さえした。
ホテルを訪れた時と同じスーツを身に付けたドフラミンゴをどこか夢見心地のまま眺めて、その禁欲的な色気に目が回りそうになる。隙のない佇まいをするドフラミンゴが、夜が明ける前まではあれだけ淫らに啼いていたことがあまりのギャップに繋がってたまらなくなった。今までにないほど欲が振り切れていて気を抜くと抑え込んだはずの熱がぶり返しそうだった。それでもなんとか欲情するのを押し殺して部屋を出ようとするドフラミンゴに続く。チェックアウトと支払いを済ませてホテルから出ると、朝の静かでどこか清涼な空気が肌を撫でた。けばけばしくきらびやかなネオンはもう沈んでいて、辺りは自然の光に照らされている。これから眠るのだろう誰かがあくびをひとつしてどこかに向かうのを見遣り、ローはドフラミンゴの隣を歩いた。
朝の静けさの中で見るドフラミンゴという男は、凛とした佇まいでいて、まるで昨日の夜とは別人のようだった。清潔で性の匂いのうすい、端正な男が朝陽を浴びる様はじつに健全で、ローはベッドの中での出来事が夢にも思えてしまう。清廉潔白で淫らなところはひとつもないような顔をしていて、けれども耳の下あたりにつけた痕が確かに情事のにおいを漂わせていた。それをうっかり目にしてしまうと、また欲に触れそうになり、ローは舌を打ちたくなった。そんなローの内心を知る由もないドフラミンゴが大通りへ出て少し歩き、ひとつの店の前で足を止めた。
ここだ、と短く言われて誘われた店はちいさなベーカリーカフェだった。木目調の壁に赤い扉が印象的なそこは店内で食べられるようにもなっているらしく、ドリンクのメニューもそこそこ揃っているようだった。パンがそれほど好きというわけではないローだったものの、空腹には代えられず店内に並ぶ品物を眺めた。パンを食べない、ということではないのだが、どちらかと言えばローは米の方が好きなのだった。
オーソドックスなメロンパンやサンドイッチやクロワッサンといったものを素通りして、どれにしようかと悩む。甘いものは好まないため、デニッシュ系のものも避けていき、割と定番の明太子がのったフランスパンと照り焼きチキンのパンを選んだ。飲み物はコーヒーでいいなと思いつつトレイをレジまで持っていけば、既に会計を済ませたドフラミンゴがローを静かに待っていた。ドフラミンゴの手にするトレイには、クロックムッシュとマフィンとアイスティーが載せられていて、それを手にしている様すら絵になっていることにローはうっかり見惚れてしまう。
「ロー?」
「なんでもねェ」
どうかしたのかと名前を呼ぶドフラミンゴにハッとして首を振り、ローはドフラミンゴと共に席に着いた。ちいさなベーカリーカフェは時間帯のせいかほとんど席がいっぱいだったものの、ちょうどよく空いたテーブルがあり腰を落ち着けることができた。行儀良く手を合わせるドフラミンゴにつられてローも手を合わせ、照り焼きチキンのパンへ齧り付く。やわらかさよりももっちりとした食感は噛みごたえがあった。上に乗った照り焼きチキンも甘辛いタレが鳥とよく合っていて食欲がまた刺激される。アクセントに散らされた海苔も良い味を出していて、ローは黙々とパンを口にすることになっていた。そして気付けばひとつのパンはすっかりローの腹へと納まっている。
「フッフッフッ……美味いだろう?」
「……美味い。まァ、米の方が好きだけどな」
そのまま次の明太子に手を伸ばしていたローの隣からやわらかく笑う声がして、ローは視線を逸らしつつ手を止めた。笑みを含んだドフラミンゴの問いかけに素直に返して明太子が塗られたフランスパンへ齧り付く。取り繕うこともなく返した答えに、ドフラミンゴがまた笑みをのせた。
「ローの口に合って何よりだ。それなら今度は米が美味い店でも考えておく」
「は?」
「そういうリサーチは得意な方だ。任せておけ」
「……そうする」
するりとドフラミンゴから口にされた次を約束する言葉にローは呆気に取られた。確かにセックスフレンドとしてドフラミンゴと関係を持ちたいとは思っていたし、そうなれば会う機会も必然的にやってくる。けれどもそんなふうに食事の話をされるとは思ってはいなかった。ローの間の抜けた反応を多少の不審とでもとったのか、おだやかにドフラミンゴが言葉を重ねてくる。それにローは曖昧に頷くしかできなかった。そのローの様子を特に気にするでもなくドフラミンゴが自らの食事をはじめていく。対面に座るドフラミンゴの所作は驚くほど品が良く、ローは思わず呆気に取られた。丁寧に一口大に切られるクロックムッシュがドフラミンゴの口へと入れられる。その一連の動きはひどく静かで雑なところがひとつもなかった。ロー自身、両親のしつけのおかげで食べ方については汚いほうではないものの、目の前にいるドフラミンゴほど優雅に食事ができているかと言われれば否だった。
「ひとくち食べるか?」
「いや、べつに、そういうんじゃ……」
「フフッ、遠慮するな。こっちも美味いぞ」
ついじっと凝視してしまっていたのをクロックムッシュの催促だと勘違いされ首を振ったのだが、ドフラミンゴが笑ってフォークに刺したひとくちを差し出してくる。それを口元まで近付けられると拒むということが難しく、ローは大人しく口を開いた。焼き目のついたホワイトソースはなめらかで舌に残る旨みを出していて、パンに挟まれたハムとチーズは塩気が絶妙だった。少し甘みのあるホワイトソースとのバランスも非常に良いもので、じっくりと味わうことになってしまった。
「……確かに美味い」
「だろう?」
考える間もなくするりと落ちた言葉にドフラミンゴが嬉しそうにやわらかく微笑む。その顔にううっかり見惚れながら、ローはもうひとくち強請ろうとする口をそっと閉じた。ドフラミンゴから与えられるものが嬉しい、とも思いそうになるのには気付かないふりをして、コーヒーに口をつける。調和された苦みと酸味の中にあるかすかな甘みが舌の上でころがり、コクのある香りが鼻から抜けていく。後味が実にすっきりしていて飲みやいコーヒーは驚くほどローの好みにも合っていて、今後も通いたくなるほどのものだった。
「コーヒーがいちばん美味い」
「ここのコーヒーを飲むと他を飲めなくなるらしい」
「ほんとにそうなりそうだ」
「……なら、ローとここで会えたりするかも知れねェな」
からかいを含んだドフラミンゴの言葉に真面目に返せば、ドフラミンゴがわずかに驚きを見せ、はにかむように目を細めた。おだやかに緩む顔には素直な喜色がにじんでいて、とくりと胸が鳴る。不意にこぼれたドフラミンゴの幼さを目にして、どことなく落ち着かなくなるのをローはどうにか抑え込んだ。
「そんなんじゃなく、ちゃんと会いたいから連絡先教えてくれ」
「あァ、そうだったな」
ローからの言葉を受けたドフラミンゴがそういえばと思い出したようにスマートフォンを手にしてメッセージアプリを開く。デートアプリを通してでもやりとりは出来るのだが、直接ドフラミンゴに繋がるという気がして、じわじわと喜びが湧いてくる。ローもドフラミンゴと同じメッセージアプリを開いて連絡先の交換をすると、それがひどく特別なもののように思えた。おそらくもう使うことがないだろうデートアプリは削除してしまう。なんの未練も名残惜しさもなくアプリを長押ししてアンインストールをしていれば、ドフラミンゴからやわらかく呼びかけられてローは顔を上げた。
「ロー」
「なんだ?」
「ヤりたくなったら、連絡してくれ」
「っ、そんな、身も蓋もねェこと言うなよ……!」
あけすけもなく直球で言われるのに口にしていたものをこぼしそうになり、ローは思わず叫んだ。連絡をするなら当然そうなるとはいえ、なんの恥じらいもなく口にされる言葉にはじわりと頬が熱くなる。声を上げてみせたローに一瞬、瞠目してドフラミンゴが屈託なく笑みを見せた。自然にこぼれるどことなく幼い表情に、またぐらりと理性が揺れる。
「フッフッフッ!そうだなァ……それなら、会いたくなったら呼んでくれ。都合はつける」
「……わかった」
会いたくなったら、の言外にセックスが含まれているとわかっていても、ただ会うだけでも連絡して良いのだという気がして、ローは胸を押さえたくなった。ローの声に耳を傾けて会う時間をつくってくれるのだろうドフラミンゴのやさしさが、たとえ快楽の波に溺れるためのものだとしても、嬉しくて仕方ない。
「ローとならこれからも楽しくやれそうだ」
「そうだな」
本当に楽しそうにドフラミンゴが言って、ローの心臓はますますうるさくなって落ち着きをなくしつつ肯定してみせた。ドフラミンゴとなら、どんな時間でも喜びに結びついていく気がする。この先もドフラミンゴという男と繋がっていられるという事実を改めて認識して、胸が躍った。今からすでに次の予定に思いを馳せそうになりながら、ローは穏やかな顔で食事を取るドフラミンゴの顔に見惚れ続けていた。
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