匣舟
2025-07-05 22:37:15
3335文字
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溺れていくの

ワードパレットリクエストの兵乱です。ちょっとえちちな仕上がりになってしまいました。
夏のマラソン実習でうなじが見えている乱を見てやきもきする兵の話です。
リクエストくださった方、ありがとうございました🫶

溺れていくの

*(些細な・目を奪われ・うなじ)*

 今日の最後の授業は山田先生による実技で、しかもこんなに暑いというのに裏裏山までマラソン実習というほとんど苦行に近い内容だった。
 こんなに暑いのにマラソンはない!それなら手裏剣の練習がしたい!とか組手の練習の方がまだマシだ!とは組のよい子たちの不満が一斉に飛ぶも、山田先生はお前たちに今、必要なのはこんな暑い夏にバテないよな体力と暑さを耐え凌ぐ忍耐力だと断言し、準備体操が終わるとすぐにマラソンをするように指示を出した。
 山田先生の鬼畜ーっ!わからずやーっ!とよい子たちの叫び声やいやだーっ!という悲鳴が飛び交う中、そんなよい子達の声に耳も貸すことなく山田先生はよーい、どん!の合図とともに笛を吹いた。
「あーっ、また乱太郎に負けたぁっ!」
「あともうちょっとだったのにね〜。」
 山田先生の合図とともに韋駄天の異名を持つ乱太郎がスタートダッシュを決め、それに乱太郎の永遠のライバルである三治郎、三年前に卒業した小平太のいけどんマラソンで培われた体力を発揮し始めた金吾と同じく鍛錬組である団蔵、虎若が一位と二位を争う二人の後を追っていくいつもの展開で、それ以外のは組のよい子は自分のペースをキープしたり追いつこうとするもバテたりと様々だ。
 その日の裏裏山マラソンも結局、乱太郎が韋駄天の走りで一位をもぎ取り、三治郎は僅差で二位だったという。
「三年間一度も勝てないなんてっ!本当に乱太郎って凄いよねえ。」
 僕だって乱太郎に勝つために色んなことしてるのに。と肩をガックリと落とす三治郎をいつも慰めてやるのは、ずっと同室であり彼のことをよく理解している兵太夫の役目である。
「まあねぇ、乱太郎も色んなことしてるからね。」
 乱太郎色んなことをしてるのを私は知っているし、頑張っていることも知っていますよ。という無意識な兵太夫の遠回しなアピールに三治郎はうげえ。と顔を少しだけ顰めて、そんなところで恋人アピールしなくていいよ。と呟いた。
「なな、なにもアピールなんてしてないじゃん!」
あー、はいはい無意識惚気ごちそうさまでしたぁ。」
 兵ちゃんなんかもう僕知らなあい〜。あっち行こ〜っと!とスタスタと学園に向けて歩いていく三治郎に待ってよぉ〜、三ちゃあ〜ん。と後をつけていく兵太夫をは組のよい子たちがあ、なんか喧嘩してる〜!茶化しにいこうぜ〜っ!と言いながら一緒に駆けて行ったのだった。
ってことがあって。」
「ふふ、そういうことだったの。」
 めちゃくちゃ酷くない!?僕なにも惚気けてないのにさ!と寝間着姿の乱太郎に抱きついているのは、恋人である兵太夫だ。
 今日は三治郎が僕はきり丸としんベヱの部屋で寝るから!乱太郎と僕と交換ね!と言われてしまったので、乱太郎が兵太夫の部屋に寝ることになっている。
 あれから三治郎の機嫌取りに奔走した彼はだいぶ疲れたらしく裏裏山マラソンのときより窶れているように見えた。
 もう、本当に苦労したよ。と兵太夫がぶすくれた顔で乱太郎に文句を言うも、乱太郎はそんなことよりも兵太夫が拗ねてる顔を見れたのが嬉しくてつい笑ってしまう。なんで笑ってるの!?と兵太夫が問えば乱太郎は兵ちゃんが可愛いから。と答える。
可愛いって何がぁ?」
「ふふ、だってぇ、拗ねてる兵ちゃんが可愛いんだもん。」
「もうっ、意味わかんない。」
 というか元はと言えば乱太郎のせいなんだからね!という兵太夫の言葉に私は何もしてないけど……?と乱太郎が首を傾げれば兵太夫はそうやって無自覚で皆を惑わせてるんだから!と乱太郎のことを指差しながら言う。
惑わせてるって何が?」
「やっぱり知らないんだぁ例えば、そのうなじ!」
うなじぃ……?」
 兵太夫に指された場所に手を当てて乱太郎は首を傾げる。うなじがどうしたと言うのだろうか。私のうなじは特に異常はなさそうだと思いながら乱太郎は兵太夫を見れば、兵太夫は呆れたようにため息をつく。
「乱太郎ってタカ丸さんの入念なお手入れのお陰で髪を上で結えるようになったじゃない。」
 それでうなじが見えるようになって、夏場に汗が垂れると余計に色っぽく見えるから団蔵とかがめちゃめちゃそそるなぁ。って言ってたの!だから団蔵のことは蹴り上げておいたんだけど!あの変態旦那め!と興奮気味に兵太夫がそこまで言うと乱太郎はへぇ、そうだったんだ。だから、団蔵があんなに私の事見てたんだね。と頷いて兵太夫の話を聞いていた。
「そうだったんだって……。もっと危機感を持って欲しいんだけど!!」
「危機感って言われても。私自身特に変わったことはしてないし。」
っ、そういうところが無自覚なんだってば!!」
そんな些細なことで怒らなくていいじゃん。」
「些細なことじゃないの〜っ!!」
 もっと自覚をもってよね!僕は乱太郎の恋人としてめちゃくちゃ心配してるんだから!と兵太夫が乱太郎の胸元にグリグリと頭を擦り付けてくるので乱太郎はそんな彼の頭を優しく撫でてあげる。
「ねえ、兵ちゃん。」
……なに。」
 乱太郎の胸元にグリグリ押し付けていた頭を上げると、兵太夫のことを見つめる乱太郎が艶やかな目を向けていて思わず目を奪われてしまい、ドキッとした。そんな兵太夫にクスッと笑った乱太郎は兵太夫の首に手を巻き付ける。そして耳元で囁いた。
「そんなに心配ならさ、私のうなじに兵ちゃんのものだって印を残したらいいじゃない。」
……っ!」
「ここに。兵ちゃんのものだって皆にわかるようにね?」
 ほら。と乱太郎が寝間着をはだけさせて首筋を見せるので兵太夫はゴクリと唾を飲む。本当にいいのかという目線を送れば乱太郎は早くとでも言うようにうなじを兵太夫の方に突き出してせがんできた。
「もう……っ!乱太郎が悪いんだからねっ!」
 顔を赤くさせながらそう言った兵太夫は乱太郎のうなじに顔を近づけると口を開けてそのまま噛み付いた。ぎゅっと力を込めれば乱太郎が小さく声を漏らす。
「ん、あっ……へいちゃ……っ。」
……っ、らんたろっ。」
 ジュッと吸い上げれば真っ赤な印が出来上がった。それを乱太郎は愛おしそうに撫でる。
「ふふっ……ちゃんとついてるね。」
……これでもう誰にも触らせたり見せたりしちゃダメだよ?」
見せるのは仕方ないじゃない。」
「だーめ!あんまり見せないで!」
 僕のものだって印を付けたら?って言ったのは乱太郎なんだからね!と言う兵太夫に、乱太郎はもう、分かったよ。と少し苦笑いしながら答えた。
「ん!」
 約束だよ!と兵太夫が指切りげんまんをしようとすれば、乱太郎もその小指に指を絡めてふたりでゆびきりげんまーんと歌を歌ったあと、乱太郎の世界は反転する。いつの間にか乱太郎は兵太夫に布団へと押し倒されていた。
流石にこれで終わりだとは思わないよね?」
 兵太夫の瞳を見ると、その瞳は熱を帯びているように見えた。きっと自分も同じような目をしているのだろうと乱太郎は思うと同時に兵太夫の首に手を伸ばし微笑む。乱太郎の微笑みは妖艶なものであった。
ふふ、そんな事思ってないよ。」
 だって、煽ったの私だもの。と言ってまた微笑んだ乱太郎は兵太夫の首に腕を回し引き寄せると耳元で囁く。
「早く兵ちゃんのものでいっぱいにして。」
 なんて兵太夫にしか聞こえない声で乱太郎が言えば、兵太夫は返事代わりに乱太郎の唇に噛み付くような口づけをした。
どうなっても知らないからね。」
お手柔らかに?」
「それは保証できないかも……。」
 だってああやって乱太郎から煽られたら応えないと男の沽券に関わるでしょ?と兵太夫がニヤリと笑って呟くと乱太郎はそれもそうだね。とクスリと笑う。そのままふたりはこつんと額をくっつけて微笑んでから、二人はお互いを求め合うように口づけを交わしていくのだった。そして、そのままふたりは快楽へと溺れてゆく。乱太郎と兵太夫の熱い夜はまだまだ始まったばかりである。

ワード:些細な・目を奪われ・うなじ