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けろか
2025-07-05 19:24:00
3991文字
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つがいになってはじめて♡発情期でぐずぐずになる兵助の話
現パロ大学生竹くく、
タイトルの通りつがいになってはじめての発情期で体調不良起こして思うようにいかない話です!短めになる予定。
体調不良要素はあるけど軽めでメインは発情期えちです!
🌊📦→
https://wavebox.me/wave/6r44z335f7rhe3bn/
(ここが好き!とかあそこがえちとか死ぬほど励みになり今後の参考になってます!いつもありがとうございます)
「だからそれだけは嫌だって言ってるだろ!」
思わず声が大きくなった。俺は大きくかぶりを振って、熱の塊
――
もとい、恋人である竹谷八左ヱ門を引き剥がした。
七月の終わり。じりじり照りつける陽射しは容赦なく、キャンパスから自宅のある学生街までの徒歩十五分の道のりは俺たち以外誰もいない。
人生の夏休みと言われる、大学生の夏。
院進を控えた三年生という肩書きも手伝って、課題にも研究にも急かされることはない。目の前には自由に使える時間が贅沢に流れている。
モラトリアムの極みとも言える特別な夏休みが、いよいよ始まろうとしているというのに
――
俺はいま、恋人と揉めている。
つがいになってから初めて迎える、発情期のことについてだ。
「
――
俺、テスト頑張った」
「うん頑張ったな、だからお疲れさま会するだろ? 俺も腕をふるうよ、何が食べたい?」
「
……
ハンバーグ
……
じゃなくて! 兵助あの時! なんでも言うこと聞くって言っただろ!?」
「それは言ってない!」
あの時、とは先日のゼミの飲み会の日のこと。
差し入れに自作の豆腐おつまみを持っていく予定が、仕込みに手間取り気づけば集合時間が目前に迫っていた。これがないと場が持たない
――
なんてことはないが完成させなくては豆腐に失礼だ。
そんな時。現れたのが八左ヱ門だった。
俺を手伝い慣れた手際の良さで豆腐たちを綺麗に皿に盛り付け、「大丈夫! 俺だって実験優先してて遅刻確定だったんだから」という頼もしい言葉と笑顔で俺の腕を引っ張った。
――
端的に言って、あの時の彼は俺にとってのヒーローだった、王子様と称して差し支えなかった。かっこよくて素敵で、俺は確かに彼にありったけの感謝を込めて、礼をすると伝えたけれど。
「
――
俺ができることならなんでもする、って言ったんだ。なんでも言うこと聞くとは言ってない!」
「同じことだろ」
「同じじゃない」
「
――
っ! なんで! 俺そんな嫌なこと言ってないだろ?
……
はじめての発情期に始めからそばにいたいって、それだけじゃんか!」
精悍な顔立ちがくしゃっと歪み、その喉から発せられた声はいかにも悲しいですと言わんばかりだ。
いつの間にか肩に置かれていた手に力が籠もる。拍子、彼の匂いが濃くなって、俺の心臓は馬鹿みたいに跳ねた。この季節の人間の匂いなのに、どうしてこうも心惹かれるのか。それもこれも八左ヱ門がアルファだからなのか、それとも俺が彼を好きで好きでたまらないからなのか。
この世界には、男女の性とは別のもうひとつの性がある。
アルファ、ベータ、オメガ
――
第二の性と呼ばれるそれらは、生まれ持った体に備わっているものだが、すべての人間がそれを早くから自覚できるとは限らない。第二次性徴期を過ぎしばらくして初めて発覚する例もままある。俺も八左ヱ門も、そのパターンだった。
俺自身は、自分で言うのもなんだが
――
何に関してもそれなりの成績を収められる優等生で、血筋的にもアルファだろうと言われていた。
――
中学で出会った頃から彼のことが好きだった。
明るくて、まっすぐで、無神経なほど優しくて。彼の周りにはいつも人やら生き物やらがいて賑やかで、白い歯を見せたその笑顔が網膜に焼き付いて離れなかった。
彼自身はベータだと思うなんて言ったけれど、思えばその時から立ち振る舞いはアルファの気質を感じさせていた。
だから、叶わない恋だと思い込んでいたのだ。きっと傷つけるだろうから彼に伝える気もなくて、ただひっそりと想うだけだと決めていた。このあやふやな性のままでずっといられたらと願っていた。わからないままだったら友達でいられる、彼の隣にいるだけでいいと。
そんな虚しい望みを打ち砕くように、俺の性はある日発現した。発情期という、生々しいかたちを伴って。
――
自分の体がどうなっていたのかについて記憶は朧げだが、はっきり脳裏に焼きついているものがある。夕暮れの教室で俺を見下ろしていた彼の姿だ。苦しそうに見開いた目、額には汗が滲んでいて、食いしばった唇の端からは血が滲んでいた。荒い呼吸を繰り返すさまは、まるで手負いの獣のようだった。
――
それで、ようやく理解した。俺の性はオメガで、彼はアルファだったのだ、と。
つまりは結ばれる形の性だったのだが、俺はその事実を受け入れられなかった。だって、アルファとオメガの番関係なんてものは、ベータ同士の恋愛よりもよっぽど面倒で厄介だ。
本能に抗えない、理性ではどうしようもないものに、彼を引きずり込んでしまった。
――
事件の後、あろうことか彼は俺に告白してきたのだ。ずっと夢に見てきたはずの光景なのに、悪夢のようにしか思えなかった。結果的に俺は、彼を誑かしたことになる。
申し訳なさすぎて、惨めすぎて、とてもじゃないが向き合えなくて
――
だから、逃げた。ひたすらに。
しかし八左ヱ門は当たり前のような強引さで俺を追いかけた。逃げてすれ違ってぶつかって、それでも彼は飽かずに俺の手を握ろうとした。俺が好きだから一緒にいたいと。なんど度振り払っても、なんど突き放しても、俺が諦めるまでそうするのだと彼は言った。
――
結局。巻き込んだ友人たちの多大な協力もあり
――
彼の根気強さに折れる、のではなく俺だって彼のことが好きで好きでたまらなかったわけで、両者納得の上お付き合いをすることになった。
時々喧嘩しながらも俺と彼は今まで以上に仲を深め
――
俺はさらに彼のことを好きになり、彼もまた俺への愛を深めた、らしい。
そうして大学に進学した春、頸を噛んでもらい(巷で言われるように気持ち良くはなかった。痛かった)正式につがいになってお互いの親にも挨拶して、忙しいなりに大学生活を楽しみながら、ときどき慎ましくセックスをして
――
正直今でも夢なんじゃないかと思うくらい幸せだ。
そして。二人とも二十歳を過ぎた夏休み、初めて抑制剤をやめ発情期を起こしてみようということになった。
建前的には、生理的な現象をずっと止めてると体に悪いこと、抑制剤にも休薬期間を設けることが推奨されているから、だけど
――
発情期、番とするセックスはめちゃくちゃ気持ちいいらしい、という至極真っ当な興味が根底にないわけがない。
「なんだよ二、三日後に呼ぶからって
……
なんで」
「
……
なんでもなの! 大体俺だって準備することあるし」
「準備、って
……
いつも俺がしてるじゃん」
「そっちの準備じゃない! 部屋の掃除とかいろいろしたいの」
「兵助の部屋いつも綺麗だろ」
「おまえも自分ち掃除してこい、俺行ったときに足の踏み場ないとかやだからな」
薬をやめれば、個人差はあるものの、数日で発情期は来る。(らしい)
来たら呼ぶという俺と、最初から全部見たいという彼とで、真っ向から意見がぶつかった。
俺は正直、見られたくないのだ。徐々に体も心も乱れてぐずぐずになる過程、俺自身どうなるかもよくわからないのに、恋人だからこそ彼には見られたくないし、見せたくない。きちんと整った状態で彼を迎えたかった。発情期だろうと何だろうと、欲に振り回されない理性のある自分でいたかった。八左ヱ門に、少しでも綺麗だと思われたい。だから、準備期間が欲しかった。
――
が。彼はどうしても譲らないらしい。予想はできていたので、直前まで言わずにいた結果がこれだ。
――
真夏の道端、灼けたアスファルトの上で、こんな会話をする羽目になっている。暑いし熱いしすぐに決着がつくだろうと思ったが、なんだか妙にヒートアップしてしまっていた。
「
……
そんなに嫌? 心配なんだよ兵助が
……
それとも俺がヒートに当てられておかしくなること、心配してる?」
「っ、そうじゃない、そうじゃなくて! 八左ヱ門が俺に酷いことしないのは俺が一番知ってる」
「じゃあ、なんで」
コンクリートからの照り返しは視界が歪むような気さえするのに、彼は平気な顔をして俺の手首を強く握り込んだ。真剣さを
孕んだ瞳に見つめられて、目を逸らせない。
「う、うまく言えないけど嫌なんだよ、生理的に
……
? はだめだな言い方悪い、あの、
……
そう!
――
排泄を見られる? みたいな? そういうのがいやで
……
」
言ったそばから後悔した。暑さも手伝って、顔がますます火照る。八左ヱ門なら恥ずかしいことじゃないだろ、なんて真面目に取り合ってくれそうな気がして、余計に居た堪れない。どんな羞恥プレイだ。
「
――
わかったよ。でもなんかあったらすぐ呼べよ、兵助に言うこと聞いてもらう約束はまた別のにする」
「へ
……
いいのか、」
「んだよ、兵助がそんなに嫌がることする男に見える? 兵助が一番知ってるんじゃないの?」
返ってきたのは意外な言葉だった。なんだか拍子抜けして、半ば呆然としてしまう。
「そ
……
だけど、わぷっ! 何、」
「パーカー。
――
巣作るんだったら、使ってよ」
八左ヱ門はにいっと白い歯を見せて笑うなり、ふいに自分の上着を俺の頭に被せてきた。
ぶわっと彼の匂いが鼻腔を満たして、脳まで甘く痺れる。体温が一度上がる気がした。思わず縋るように見てしまう。
「
……
洗濯して返してやる」
蕩けそうな顔を押し留め、精一杯普通の顔を取り繕う。
――
できていたかはわからないけれど。
そんな俺を見た八左ヱ門は、ははっと気の抜けたように笑い、ふいにその顔を寄せてきた。ちゅ、と可愛らしい音。
「じゃな。早く部屋入れよ、のぼせそうだぞ」
言い残して、手をひらひらと振りながら炎天下の歩道を歩き出していく。
――
暑いし、熱い。体の内側も、外側も、焼かれそうだ。フライパンの上の焼き豆腐って、こんな感じなのかもしれない。
……
と、バカなことを思った。
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