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草枕
2025-07-04 18:38:33
1281文字
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syzygy
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syzygy_overweight+004.シメイズ
シメイズちゃん(ゆずまきさん太郎さん:@sakusaku_nights)について
長期任務にばかり就いていたシルーが青年隊員と関わりを持ったのは、今回の任務が初めてのことだった。少しくらいルクスに帰らないでいることは苦ではない。昇格して権力を得るためなら過酷な戦地に行くのも苦ではない。むしろ、少し安心さえ覚えることもあった。給金は貯めておけば、権力と合わせて使う時が来る。
とはいえ、これまでアステロイドへ向かえなかったことは若干の誤算でもあった。権力と金で青年隊員を蘇生した技術を使うことを検討しているのなら、技術に欠陥がないか確かめなくてはならない。
シルーが不得意なコミニュケーションをしてまで青年隊員と交流を持ったのは単に、『観察』の為だった。
あの人たちに、もう痛い思いはしてほしくなかった。
あの人たちが、帰還して見る筈だった景色を楽しんでほしかった。
肉体的・精神的な不都合の出る肉体ではいけない。自由が許され、個人の意思が尊重される環境に置かれなくては意味がない。
そのための観察対象の一人が、シメイズだった。
端的で明快な言葉は分かりやすく、シルーにとっては会話がしやすい。冷静で、感情の起伏に乏しいような印象もあったが、それが肉体の構成に起因するものではなく、彼女の境遇に由来するのでは、と思ったのは何がきっかけだったか。今は亡き、顔さえ知らぬ両親の背を追ってsyzygyに入隊したのだと聞いて、共感できなかった。そうまでして、己が何者であるかを希求する心が理解できず、シルーはうっかりと本音を漏らした。
「共感しがたいな」
「
…
別に共感してもらいたくて話している訳ではありません。
……
私だけが分かればいい」
そして、その言葉を聞いて、今度こそ共感したのだ。自分だけが満たされるための努力だって、存在して良い。
「分かる奴が居なくても、お前のモリモリ努力を知っている奴は居るべきだ」
シルーが嫌いな言葉を使うなら、これは憐れみだった。
いつかシメイズが、青年隊員は蘇生された存在であると知った時。もし彼女が、自分自身を正真正銘両親の子供であると認められなかったら。彼女はここまでに至った努力まで、無かったことのように思ってしまうのではないか。シメイズの努力は、シメイズのものだ。十年前に死んだシメイズにだって奪う権利はないのに。
そんな危惧が頭を過った。誰かの都合で生き返ることを強要された命が、弄ばれ消耗される未来はシルーの忌避するものだった。そうでなければ、シルーはシルーの都合で彼らを呼び戻せない。
シメイズの長い髪が、風に煽られて揺れた。確か、姉妹が居る──のだったか。もしくは誰か面倒見の良い成人隊員が、彼女の努力を誰でもない『シメイズ』のものとして
……
、
「
……
じゃあ、貴方が知っていてください。私の努力を」
鍛えられた軍人の反応速度を以て、一拍。不意を突かれたその無防備に、まだ若い青年隊員は気付いただろうか。
「じゃあ」で選ばれるには重い責任が、いっそ清々しくてシルーは笑った。表情には、出なかったが。了解、と返した声はわずかに揺れていたかもしれない。
そんな、約束があった。
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