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tonami
2025-07-03 23:34:05
2129文字
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手のかかる男ほど、
酔って様子のおかしい🐯とそれを可愛いなって眺めてる⚔️と逃げ遅れた🤥
ダン! とジョッキがテーブルに叩きつけられる。その音が合図だったように、ハートのクルー達が蜘蛛の子を散らすかのごとく距離を取る。その光景を視界に捉えながら、ウソップは咄嗟に逃げ遅れたことを悟った。
「ゾロ屋、お前には前々から言いたいことがある」
赤く染まった顔で、そのくせ目つきだけは凶悪にローは目の前の男を睨む。意外にもハートの船長はそこまで酒に強くないらしい。それでも普通に比べれば十分強い部類に入るだろう。ローの目の前にいる男が規格外なだけで。ナミもたいがいだが、一味随一の酒豪はウソップでさえ酔ったところを見たことがない。
睨まれた男ことゾロは、顔色を変えずに悠々と、何杯目かもわからないジョッキを傾けている。
「てめェはもう少し、警戒心というもんを覚えろ」
──そこにいるのは警戒心の塊のような男なんですがトラ男くん。
下手に口を挟むと面倒な気がしたので、ツッコミを内心だけですませる。周りをちら、と見れば、フランキーとロビンも、ウソップと似たような不可解な顔をしていた。
「行く先々で妙な輩引っかけやがって。おれの苦労をちったァ考えやがれ」
なるほどそっちの警戒心ね、と今度はローが言っている意味を理解した。
確かに一味が誇る剣士様はそちら方面の警戒心が薄い。自分や仲間に向けられる敵意や害意には驚くほど、それこそ魔獣の二つ名通りに敏感に反応する。そのくせ、好意には疎い。というより、興味がないのだろうとウソップは思っている。関心が向かないから警戒しない。現にいままで出会った人間からの恋愛感情には気づいている節があった。相手が憎からず思っていることを知ってはいるが、それでゾロから相手への気持ちが変わるわけではない。その奥に下卑た欲望があれば別だけれど、好意が純粋であればあるほど、ゾロの関心はなくなる。自分が好かれていようが嫌われていようが、いっさいを気にしない。基本的に他人からの感情の影響を受けない人間だ。
だから、──そう、だから、いまのゾロには、心底驚いている。
「誰彼構わず引っかけてる覚えはねェがなあ」
閉じていない片目を緩めて、ゾロは困ったように笑った。それが迷惑を被っているゆえの笑顔なら、ウソップを始め麦わらはローを諫めただろう。けれど、あまりにも柔らかな笑みだったから、何も言えなかった。
(ゾロお前、そんな顔できたんだな)
仕方のないやつだ、と手のかかる恋人ほど可愛いと言わんばかりの微笑み。こんな笑い方をするゾロは見たことがない。外野のはずのこちらが恥ずかしくなってしまうほど、愛おしげな笑みだった。
「ぐぅ
……
ッ」
真正面から見ることになってしまったローが左胸を押さえて上半身を屈める。ついにはそのままテーブルに突っ伏してしまった。
──ほら見ろ、大ダメージじゃねェか。トラ男の気持ちを考えてあげなさい。普段酒を呑む時くらいしか満面の笑みを浮かべないやつからの、恋人専用の笑顔だぞ。そりゃ心臓が止まってもおかしくない。トラ男が医者で、なおかつオペオペの実の能力者でよかったな。ここにサンジやナミがいたらそのまま昇天していたかもしれない。
……
遠くのテーブルでフランキーがロビンを呼ぶ声が聞こえる。一味過激派には刺激が強かったか。
「
……
とにかく、てめェは一人で酒場に行くのをやめろ。行きたい時には必ずおれを呼べ。警戒心を持て。無防備にすんのをやめろ」
さすが一海賊団の船長。さすが最悪の世代。立ち直りが早い。顔は真っ赤なままだが、据わっていた目は多少正気に戻っている。さきほどのダメージのおかげだろうか。
「だから、おれは引っかけてる覚えはねェ。あっちが勝手に引っかかってんだろ」
「それが厄介な奴ばっかりだから言ってんだろうが。筆頭はおれだぞ!?」
「お前厄介な自覚あったのか
……
」
ゾロが感心したように、しみじみ溢した言葉に食堂の隅から噴き出した声がした。視線だけをそちらへ向けるも、船員達は何食わぬ顔で食事を続けている。幸い船長の耳には入らなかったようで、ローの目はゾロから逸らされない。命拾いしたな、ペンギン。
ゾロはふむ、と考え込むように首を傾げ、それからジョッキの中身をすべて飲み干した。空になってもおかわりは要求されない。
「引っかけようと思ってやってるつもりはねェし、これからもねェが」
ゾロはテーブルに頬杖をつくと、ゆったりと隻眼を細め、口角を上げた。
「少なくとも、おれが引っかけようと思って引っかけた奴は、トラ男しかいねェよ」
「────!!」
その時のROOMからのシャンブルズは、ウソップが知る限り最速だった。本当にシャンブルズまで言ってたか? と確認したくなったくらいだ。
あっという間に姿を消した二人は、間違いなく朝までここには戻ってこない。それをわかっていて、ゾロは酒を飲み干したのだろうし。
同盟ではルフィに振り回され、恋人としてはゾロに翻弄され。ウソップは少しだけ、他船の船長に同情した。ほんの少し、ルフィに振り回されるぶんだけだ。ゾロは麦わらの一味のめちゃくちゃ強くて格好いい剣士様で、とんでもなく頼りになる長男なので。
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