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ツミ
2025-07-03 08:15:17
1755文字
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越界
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パッションドリーム・シークレット(夏邱夏)
🏐 2話の夢に翻弄されている宇豪
子軒に襲われたがっている宇豪は攻めの方がおいしいかもしれない
彼が、息を荒くして身体を押し付けてくる。背中あるのはロッカーの冷たい壁だけで、もはや逃げ場はなかった。数回に渡り触れるだけのキスをして、焦らしたように彼が鼻先を噛んでくる。俺はその緩急をわずかな行動で答えるのに精一杯で、見つめることに忙しかった。触れたところからどくどくと温度が伝わってきて、俺は押し付けられた身体をびくりとこわばらせる。彼は半開きの唇から熱い息を吐いて、永遠のような欲望の目で俺を見た。性急な手つきが制服を引っ張り、インナーシャツの裾をたくし上げる。てのひらが素肌を滑る。どくどくと鼓動が膨れあがった。俺はいよいよだと思った。いよいよ、ここまで。
……
邱子軒にまだ言えていないことがある。
「夏宇豪」
部室で子軒と話しながら、彼の清涼な香りが鼻の先を撫でていったとき、宇豪はぼんやりまぶたのうちがわに残した煩悩の記憶を思い出した。まさにこの部屋、この状況の近さたるや。
……
その一瞬、囚われた記憶がぶわっと頭に雪崩れ込んできて、宇豪は顔から表情を削ぎ落とした。しばらくその感覚離れられずにフリーズした脳内の混沌を振り切って、宇豪は子軒の呼びかけに答えるように急いで笑顔を作る。
「え、っ?」
「
……
どうした、どこを見てる?」
心配そうな眼差しが近づいてくる。宇豪はちらっと後ろにあるロッカーを見て、耳のすぐしたでおとがいが若干強張る気がした。至近距離に迫る子軒の高い鼻梁に、どうしても喉がひりつく。
「い、いや!なんでもない」
そのあとになんでもない、を二回口にして、宇豪は頭のなかの煩悩を振り払おうと首を振った。
……
まずい、まずい!!
やけに生々しいロッカーの冷たい表面の温度を思い出す。子軒が宇豪を受け入れてから、かつて見た夢の幻影がひたすらに濃くなっていた。
逃げないと、ここから逃げないと、おれは。
宇豪はひりつく喉元を掻きむしりたかった。そうでもしないと妄想と現実の区別がつかなくなってしまいそうだったのだ。ロッカールームの生々しい夢は、あれ一度きりで終わらなかった。日に日に高まっていく欲求の矛先に、紛れもなく本物の子軒がいることはわかっている。今目の前で宇豪を心配そうな目で見つめる子軒に、どうしてこれを打ち明けられるだろう。右手に描いた夢の数ほど、俺の言えなさは高まっていく。
「宇豪、」
目をそらす宇豪を不思議に思ったのか、子軒の長い指先が宇豪の頬を撫でていく。指先の甲で触れられると、その熱が直に伝わってくる。とにかく、記憶と現実が重なっていよいよまずい事態になりそうだった。逃げないと逃げないと逃げないと!
「ごめん、!俺、」
宇豪は耳をほんのり赤く染めて、目を逸らしたまま背を向けようとした。駆け出していく勢いで立ち上がった宇豪を、強い力で子軒が引っ張った。
「え」
「具合が悪いなら言ってくれ」
すぐに両手が掴まれる。よろけた先には件のロッカーがある。
ドン、とぶつかって背中に冷たさがジーンと伝わってくる。全く同じ状況を知っている。夢の夢に見た彼と違うのは、眼鏡をかけたままなことくらいだろうか。どくどくと鼓動が動脈を駆け上がっていく。マグマの往来に熱ごと溶かされ、宇豪はたまらず甘さの滲んだ顔をした。
今すぐキスしたい。それだけしか考えられない。
ひりついた喉元が上下して、生唾を飲み込んだ。夢の中の積極的な彼が、ここで宇豪の鼻先を噛んだことを鮮明に思い出せる。
「どうした?」
「や、まっ、まって」
「ん?」
心臓の音がうるさい。熱が頭を覆ってしまうようで、顔から湯気が出そうだった。目の前にある子軒の顔がきらきらと輝いて見えた。脳裏を支配する欲求の根源を直接鷲掴みされるような、そんな情動にたまらなくなる。なんだか訳が分からないまま泣きそうになった。胸まで迫り来る情動と空気の圧に、耐えきれず宇豪は小さく呟いた。
「子軒
………………
」
「どうした?」
「俺、おれ、
……
ここで君に襲われる夢を見た」
「
…………
はあ!?」
驚いた子軒が手を離し、宇豪は結局顔を上げられないままずるずると床にへたり込む。膝に上気した顔を押し付けて、宇豪はくぐもった声を出した。
「もーー、勘弁して
……
」
夏宇豪は誠実な男である。
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