「丹恒」
名前を呼ぶと、無表情から微かな笑みを浮かべ。
まるで、先程まで蕾だった花が、ゆっくりと開いていくような。
柔らかさと、神秘さと、俺だけが感じ取れる仄かな甘さ。
「穹。どうした」
だけど、それらはすぐに消える。まあ、淡々としていて冷ややかさが前面に出ているわけじゃないから許そう。
あんた、何様? という、なののツッコミが聞こえた気がするけれど、無視だ、無視。
「丹恒にギュッてしてもらいたいなって」
腕を広げておねだりすると、やれやれと軽くため息。
それでも、拒絶しないのだから彼は俺に甘い。甘すぎるくらいだ。
「ほら」
ギュッ優しく抱きしめてくれて。
「ふふ」
「何笑ってるんだ」
「丹恒の体温が気持ちいいなって」
「そうか? 俺は、お前よりも低いぞ」
「それがいいんだよ~!」
と告げるけれど、納得いってない感じだ。
それもまたそれでいい。
「丹恒」
「なんだ」
「好き」
耳元で囁くように告げると、肩が跳ねて。
「ふふ。耳、弱いんだ」
可愛い。と言いながら息を吹きかけたら、突き飛ばされた。痛いってば。
「たんこ~?」
「み、耳はやめてくれ
……」
真っ赤になって、俺が息を吹きかけた側の耳を手で隠しながらボソボソと。
キュンです!
「可愛い。ねえ、このままベッドでイイコトしない?」
「お前のそれは、イイコトじゃないのはわかっているっ」
残念だと、肩をすくめるとぐるぐると唸り声。
丹恒をでろでろに甘やかして、とろっとろの意識混濁状態にしたかったのに。
こう言うと、なんか厭らしいな。まあ、そうしたいのはやまやまだけど、丹恒が嫌がるのならばしない方がいい。
「じゃあ、悪いことしようっか」
「
……」
「ふっふっふ。聞いて驚け! 業務用のアイスを買ったんだよ! もう夕飯もデザートも食べちゃったけど、これからパフェにして食べよう?」
「甘さ控えめなものはあるか」
「うん! 丹恒用に、甘さ控えめの味のジェラートも買ってあるんだ~」
そう告げたら、ほっと息を吐き出し。
「仕方ないな。三月も巻き込むか?」
「うーん
……怒られそう。『もう寝るんだから、そんなカロリーが高いのなんか食べられない!』ってさ」
「ふっ。三月ならそう言いそうだ」
「後で食べさせよう」
「それがいい。写真に収めておけば、後で再現できる」
「うん、そうだ」
深いグラスを用意し、フレーク、ヨーグルト、チョコソース、スポンジと少しずつ詰めていく。
そして、最後にアイスと生クリーム!
「う~ん。美味しい!」
「よかったな、穹」
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