匣舟
2025-06-30 18:54:26
3842文字
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唇であなたの熱を教えて

乱がひとりで寝るのを聞いた仙が一緒に寝ようと誘う話
ワードパレットお借りしました〜!
⚠️えちちです 嫌な方は見ないでください!!

唇であなたの熱を教えて

 きり丸としんベヱがいない夜、一人で風呂に入った乱太郎は気持ちいい湯だったなあ。と体をほかほかさせながら自室へと帰っていた。
 いつも一緒にいるきり丸は土井先生と家の側溝掃除の為に帰省していて、もう一人いつも一緒にいるしんベヱも家の用事があるらしく堺へと今日の朝方に帰省した。
 そうか、今日はひとりで寝ないといけないのか。とふと考えるとほかほかしていた体が急に冷えたようにひんやりとした感覚になった。それに伴って自室へと帰る足取りも重たくなってきたような気がしてくる。
 でも、湯冷めをしてしまっては風呂に入った意味が無くなってしまうし、風邪を引いてしまったら健康第一の保健委員として失格だと思った乱太郎は、とぼとぼと肩を落としながら自室へと向かった。乱太郎の後ろから近づいてきている人影を知らずに。
乱太郎。」
ひゃあ!」
 背後から突然声をかけられて、乱太郎は飛び上がるように体をびくつかせる。その拍子に湯冷めしそうだった体がまたほかほかと温まってきたような気がした。
 乱太郎の後ろから声をかけてきたのは、六年い組の作法委員会委員長であり、乱太郎と恋仲である立花仙蔵だった。
ふふ、驚かせてしまったか?」
 仙蔵は驚いたように飛び上がった乱太郎をみて、小さく笑った。
「立花先輩、心臓に悪いですよっ……!」
 乱太郎はいかにも怒っています!という風に頬を膨らませて仙蔵を軽く睨む。そんな乱太郎の頬をつついて空気を抜きながら仙蔵は口を開いた。
「なんだ、乱太郎がひとりで寝るのが寂しいと思ってわざわざここまで足を運んだというのに。」
 その元気じゃあ、必要なさそうだな。という仙蔵の言葉にきょとんとした顔をする。なんで、先輩がそんなことを知っているんだろう?と思っていると伊作がな、心配そうに言っていたよ。と仙蔵がにこりと笑った。
もぅ、私の考えを読まないでくださいよ!」
「ふふ、お前は分かりやすいからなぁ。」
 乱太郎は仙蔵に自分の考えが読まれていたのが恥ずかしくて、ぷぅ、と頬をふくらませる。そんな乱太郎をかわいいなあ。と微笑みながら、仙蔵は乱太郎を抱き上げた。急に体が宙に浮いた乱太郎は、わ!と驚いた声を上げる。
「せ、先輩?」
「なんだ?」
「な、なんで私は今抱っこされているのでしょうか……?」
 乱太郎は六年生の中でも華奢で、しなやかな仙蔵に軽々と持ち上げられてお姫様抱っこをされていることに心臓をばくばくさせる。
 しかし、その質問に答えてくれる様子もなく、仙蔵は乱太郎を抱えたまますたすたと歩きだした。乱太郎はどこへ行くのですか?と仙蔵に問いかける。
「お前の部屋だが?」
 さも当たり前だろう?と言わんばかりの態度で返される言葉に、乱太郎はさらに心臓をばくばくさせた。自分の部屋に行けばきり丸もしんベヱもいない。つまり二人っきりということだ。
 この状況で部屋に戻ってしまえばどうなるかなど想像に難くない。きゅっと仙蔵の寝間着を握りしめながら、乱太郎はそんなことを想像してしまい、仙蔵に真っ赤に染った顔を見られたくなくて下を向いた。
「なんだ?期待してるのか?」
「ち!違いますっ……!」
 そんな乱太郎を目敏く見つけた仙蔵が、下を向いたことを肯定だと捉え、意地悪そうに言うと、乱太郎は赤い顔をしながらぶんぶんと横に振った。それを見てふふっと仙蔵は小さく笑う。
「冗談だ。ただ今日は一緒に寝てやろうと思ったんだ。」
……ほんとに?」
 仙蔵の言葉を半信半疑で受け止めながら乱太郎は仙蔵に問いかけた。その言葉にふふ、本当に今日は何もしないよ。と笑って答えながら仙蔵は乱太郎を抱えたまま歩き出す。そして乱太郎の部屋に着くとそのまま中に入った。
 がらり。と戸を開けるとそこは誰もいない静かな空間だった。乱太郎は仙蔵に抱えられたまま部屋を見渡して寂しさを感じる。きり丸としんベヱがいない部屋はこんなに広いんだ……と感じて少し落ち込んでしまった。
 そんな乱太郎の心情を察してか仙蔵は何も言わずに布団まで連れて行きゆっくりと乱太郎を下ろしてくれた。そして自分も隣に座る。
乱太郎。」
 仙蔵に名前を呼ばれそちらを見る。すると仙蔵がおいで。と手招きをしていたので乱太郎は大人しく仙蔵に近づいていった。すると不意にぐいっと腕を引かれ仙蔵の腕の中に引き寄せられる。わっ!と声をあげて仙蔵の胸の中に飛び込むとそのままぎゅっと抱きしめられた。
 仙蔵の体温を感じてどきどきと心臓が鳴る。その鼓動を落ち着けようと深呼吸をしたところで頭上から声が降ってきた。
今日は私がそばにいるから。」
 寂しくなんかないさ。そうだろう?と言って仙蔵は乱太郎の髪を優しく撫でる。それがとても心地よくて乱太郎は思わず目を細めた。そしてそのまま仙蔵に体を預けたまま瞳を伏せた。しばらくそうしていると仙蔵が乱太郎の顎を持ち上げてきた。何をするんだろうと思いながら見つめているとふわりとしたものが唇に触れる。
んっ、」
 それが何か分からなくてぱちぱちと目を瞬かせると仙蔵は小さく笑った後にまた同じ行為を繰り返した。そしてその行為が終わったあとに唇を離されてからようやく自分が何をされたか理解することができた。途端に顔が真っ赤に染まる。そんな乱太郎の反応を楽しむかのように仙蔵はもう一度触れるだけのキスを落とした。
そういうことしないって言ったのにぃ……。」
「はは、お前が可愛かったから仕方なかったんだ。」
 許してくれないか?と仙蔵は首を傾げながら言ってくる。そんな仙蔵に乱太郎は頬を膨らませて不満を訴えた。しかし仙蔵には全く響かなかったようで笑顔のままだった。
 その笑顔に乱太郎は悔しくなりながらも諦めたようにため息をついた。そんな乱太郎を楽しそうに見つめる仙蔵。そして再び顔を近づけてきたかと思うと乱太郎の鼻先に軽く口付けをした。
 乱太郎は驚いたように目を見開くと、仙蔵はふっと笑ってもう一度触れるだけのキスを落とした。
もう、せんぱいっ!」
「ふふっ。」
 先ほどよりも強い口調で乱太郎が抗議する。それでもなお余裕そうな態度を崩さない仙蔵に乱太郎はむぅと口を尖らせる。そんな表情ですら可愛らしいと思ってしまう自分に内心呆れながらも仙蔵は乱太郎を抱き寄せて耳元で囁いた。
……次はどうしてほしい?」
「ううっ、先輩のいじわる……っ!」
 乱太郎は仙蔵の言葉に困ったような声をあげる。仙蔵はそんな乱太郎を愛おしそうに見つめながら再び頬に口付けを落とした。その行動に乱太郎はぴくりと反応するが抵抗することなく受け入れる。そして最後に額に軽く口付けを落とすと満足したように離れていった。
「これ以上はまた次の機会で、な?」
 次は絶対、唇にキスをしてくるかと思ったのに。と思っていた乱太郎は不完全燃焼に陥っていた。あれほど乱太郎のことをキスで煽ってきたのに、離れようとする仙蔵に少し不満を覚えた乱太郎は仙蔵の腕を掴んで引き止める。
 そしてじっと見つめてみると仙蔵は少し驚いたような顔をしたあとすぐに優しく笑った。その笑顔を見た瞬間胸の奥底から何かが込み上げてくるような感覚に襲われる。これが何なのか分からないまま乱太郎は仙蔵を引き寄せると自分から彼の唇を奪った。
 突然のことに仙蔵は目を見開いて固まってしまうが乱太郎はお構いなしにちゅっちゅっと啄むように何度もキスをする。そして最後にぺろりと舐めるとゆっくりと唇を離した。
「おまえは……。」
「先輩が意地悪するからですもん。」
 乱太郎は何度目か分からない、頬を膨らませながら仙蔵に言った。その言葉に苦笑しながらも仙蔵は乱太郎の頭を撫でると再び抱き寄せた。今度は乱太郎からではなく仙蔵の方から触れ合うような優しいキスを送る。そしてゆっくりと離すと乱太郎は潤んだ瞳で仙蔵を見つめた。
「ねぇ、せんぱい。」
─先輩がすぐ布団に入れてくれなかったせいで湯冷めしちゃったから、先輩が私のこと温めてくれますか?と潤んだ瞳で乱太郎が殺し文句を放ってくるものだから、さっきまであった仙蔵の理性はぐらぐらとぐらついている。
 仙蔵の理性がぐらついているのを見透かしたように乱太郎がはやく、とでも言うように小さく微笑むと、仙蔵は降参だといった様子で両手を上げた。
「まったく……お前には敵わないな。」
 そう言いながらも嬉しそうな表情を浮かべて仙蔵は乱太郎の頬に口付けをした後そのまま布団へと押し倒した。そして覆い被さるようにして見下ろしてくる仙蔵を乱太郎はうっとりと見つめ返す。
 仙蔵の髪がさらりと垂れてきてそれがまるでカーテンのようで閉じ込められているような気分になる乱太郎。その閉塞感に身を委ねながら乱太郎はそっと瞳を閉じた。すると瞼に柔らかな感触を感じて乱太郎は薄く瞳を開く。そこには愛おしげに見つめてくる仙蔵がいた。
「煽ったのはお前だからな。」
─覚悟しろよ?と熱を帯びた瞳を宿しながら、再び顔を近づけてくる仙蔵に乱太郎は瞳を細めた。乱太郎が目を細めたのを合図に仙蔵は乱太郎に深く口付けを落としたのだった。それと同時に乱太郎は仙蔵の背に腕を回し身体を密着させていく。互いの体温を感じながら二人はゆっくりと溶け合うようにして一つになってゆくのだった。