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スサ
2025-06-29 18:39:51
1722文字
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【鬼水】かわいいあの子
ふわふわカチューシャとかを罰として付けられてスン…てしてるきたくんのことを話したので書きました
「なんだい、ありゃあ」
薄気味悪そうな声でねずみ男がひそひそ尋ねてくるのに、目玉のおやじは黙って首を振った。互いの視線の先では、泣く妖怪も黙るゲゲゲの鬼太郎そのひとが、無の顔で可愛らしい動物耳のカチューシャを付けられている。かと思うと、こっちがいいかな、とまた別のカチューシャとか、リボンとか、とにかく愛らしい髪飾りや被り物の類を取っ替え引っ替えされている。鬼太郎は何も言わずなすがままになっているので、いっそシュールな光景だった。
「鬼太郎はかわいいから似合うな!ウサギも似合うがクマもいいな」
うきうきした声が猫娘だとか、縁のある人間の友である少女であったならまた話は違うのだが、声の主は成人男性で、もっと言うなら妖怪の生に片足を突っ込んでいる鬼太郎の養父なので、ある種異様な光景だった。鬼太郎だってとっくに還暦だぜ
…
、と呟いて、ねずみ男は肩を震わせた。
「
…
あれは罰なのじゃ」
重々しく口を開いたおやじが潜めた声で教える。多分、鬼太郎には聞こえている。
「せがれがのぅ
…
、ちぃと無茶をしおって。それが水木の逆鱗に触れたんじゃ」
「はぁ
…
」
今度はふわふわの襟巻きを首に巻かれている親友(ねずみ男視点)に、ねずみ男は口元を袖で隠しながら震えた。
なすがままになっているのが怖い。ついでにこの後なにかに巻き込まれるのも怖い(面倒)。
そうかあ〜
…
、と濁して立ち去ろうとしたねずみ男だったが、怒れる水木(おやじ談)が笑顔で振り向き、ねずみ君、と声をかけてきたので、逃げるのは叶わなくなった。
「へ、へい、なんでがしょ、ニイサン」
「かわいいと思わないか?」
「へ、へえ
…
?」
「鬼太郎、かわいいと思わないか?」
笑顔が怖い。圧が強すぎる。キタ公、何しやがったんだ
…
、とねずみ男はちらりとお地蔵さん状態の鬼太郎を見る。
全てを達観した顔をしている。
「そ、そう
…
ですネェ〜、こっちのタヌキなんかも似合うんじゃあないですかね!?」
鬼太郎の目が一瞬光った。やめろと言われている。ねずみ男はちょっと面白くなり、あとはあの、メイド服なんかどうでがしょね?、と調子付いて揉み手で続けた。
「メイド」
水木が笑顔のまま修羅になった。あっ、やべ、と思ったが時既に遅し。
「おいおい先生、勘違いしてもらっちゃあ困る」
「は、ハイ」
「うちの鬼太郎はなぁ
…
俺にとっちゃかわいいかわいいひとり息子なんだよ。わかるよな?」
「は、はい、それはもう、よくよく
…
」
「君にも言っておかにゃならんな。ちょっとそこ座りなさい」
有無を言わさぬ雰囲気に呑まれ、ねずみ男は座り込む。
「正座」
「ハッ、ハイッ!」
短く指摘され、慌てて姿勢をただす。背中も伸ばした。ちらっと目玉のおやじを見るも、諦めろ、と言わんばかりに首を振る。
「いいか?人間だろうが妖怪だろうが、こいつを己の都合のいいように使うような奴が、俺は許せないんだよ。わかるか?」
反論を許さない淡々とした調子は、いかに水木が怒り心頭かということを告げていた。今なら地獄の獄卒さえも金棒を奪って伸してしまいそうな迫力がある。とても人間とは思えない。
「
……
水木さん」
それまで黙って水木の振る舞いを甘んじて受けていた鬼太郎が、そこで初めて口を開いた。
「なんだ」
「心配をかけてごめんなさい」
「
……
」
ねずみ男も固唾を飲んで見守った。絶対今、くだらない痴話喧嘩に巻き込まれている予感がしていた。
「僕のことをいつも気にかけてくれてありがとう」
「当たり前だ、そんなのは
…
」
「でもひとつ訂正してほしい」
「
……
?何を」
鬼太郎は頭にかわいい虎耳のふわふわカチューシャをつけ、やっぱりふわふわの襟巻きを付けた格好のまま、凛とした眼差しを水木に向けた。絵面がすごい。
「確かにあなたは僕の育て親ですが、今の関係を言うなら伴侶でしょう?夫の身を案じてと言っ
…
」
鬼太郎は最後まで言わせてもらえなかった。水木の拳骨が頭に落ちたので。
ねずみ男は天を仰ぎつつ、しばらくこいつに何か持ちかけるのはよそう、と固く心に誓った。本当に反省してんのか、という水木の怒鳴り声を聞きながら。
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