三毛田
2025-06-28 22:27:03
1071文字
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37 037. 手を広げて、指を伸ばした先に

37日目
君がいて、触れられる

「丹恒!」
 手を広げると、飛び込んできてくれたのでそのまま抱きしめる。
 指を伸ばした先に、触れる距離にいるけれど。それだけじゃ足りない。そんなわがまま。
 口にしない。してしまえば、彼は気にしてしまうから。
 優しく、何だかんだで面倒見がよくて。懐に入れた相手には、甘い人。
「丹恒、今日もいい匂い。それに、柔らかい」
「柔らかいと思うのはお前だけだ。だが、これはいい匂いだろう」
「うん。どうしたんだ?」
「霊砂に相談があって、その時についでに安眠効果の高い香を調合してもらった」
「俺が貰った物に匂いが近いな」
……俺は、お前といると落ち着く。それに」
「それに?」
「よく、眠れるんだ」
 俺の手を取って、すっと頬ずりして。気持ちよさそうに目を細める。
 胸がきゅっとなると同時に、ムラムラもしてくるのでものすごく大変だ。
「で、霊砂とどんな話してたんだ?」
「元同郷で、医学の心得のある人だからな。その関連だ。朱明でしか取り扱っていない薬があるかどうかの確認や、俺でも作れそうなもの、携帯しても大丈夫なものはあるかだ」
「ふうん」
「夢獏の研究資料も、コピーでよければ貰えることになった。今度は、お前も一緒に行かないか? 心配なんだろう?」
「まあ、それは」
 心配なのは、お前に危害を加えるやつらがいないかどうかだけど。
 浮気は心配していない。
 二人は同志の部分もあるし。
 俺一筋の丹恒が、そんなことするわけない。
 俺も彼一筋だから、絶対浮気しない。断言できる。
「丹恒、抱きしめて」
「ああ」
 手から頬を離し、広げて。まず指が触れ合う。
 それから、背中に腕が回って。
「丹恒、大好き」
「俺も、穹が好きだ」
 好きだと告げれば、嬉しそうに好きだと返してくれる。
「あんまり、俺以外の人と二人きりになるのはやめて」
「列車のみんなも、か?」
「ギリギリ。特に女の意図と、二人きりにならないで」
「それなら、お前にも言えることだ」
……善処する。でも、俺だって好きで二人きりになってるわけじゃないし」
 拗ねたように告げれば、耳元で優しく笑う声。
 なんか釈然としない。
 指先が触れ合っても、ドキドキするのは彼だけだ。
 もっと触れたいと思うのも。
「何を考えているんだ?」
「丹恒のこと。開拓の時とか、依頼を受けたとき以外は、いつでも丹恒のこと考えてる。嫌?」
 体を離して、頬を撫でる。
 ちょっと、胸がドキドキしていて。
「お前のその真っ直ぐな言葉と態度が、俺を夢中にさせるんだな」
 嬉しいことを。