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雪成はす子
2025-06-28 22:08:52
5428文字
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💛関連
スワロー島の七不思議
ハートのワンロドワンライ、お題「7」
スワロー島時代に旗揚げ組がスワロー島の七不思議を探しに行く話
ロさん視点で、スワロー島をわいわい冒険する旗揚げ組が書きたかった話です
無断転載・AI学習・コピペ・自作発言禁止Repost is prohibited
「スワロー島の七不思議?」
「何それ、そんなのがあるの?」
シャチが放った言葉に、俺もベポも首を傾げる。一方のシャチとペンギンは、いかにも「わくわく」と言った表現が相応しいような顔をしながらこちらを真っすぐに見つめていた。
「そうそう、今の時期だけに見られる特別な七不思議があるんだ!」
「だからさ、今度の休みって全員が休みじゃん? だから今度の休み、その七不思議ってのを見つけに行こうぜ!!」
そう言ってキラキラとした瞳でこちらを見つめてくる顔は、まさしく未知の冒険にわくわくしている顔だ。二人のその表情を見ていると、たまにこの二人が俺より年上なのは本当なんだろうかと疑問に思えてくる。隣で二人の話を聞いているベポは俺より四つも年下だが、精神年齢はベポと大体同じなんじゃないかってたまに思う事もある。
閑話休題。
「次の休み
……
か。まあいいか。ベポは
……
聞くまでもないな」
「うん! おれ、島の冒険楽しみ!!」
わぁいとはしゃぐベポに、だろ⁉ と肩を叩くシャチ。そんな二人を尻目にその日の計画やルートを確認すべく島の地図を取り出すペンギン。
わいわいと計画を立てる彼らの様子に、俺も釣られるように地図を見つめる。
楽しそうに計画を語るペンギンの言葉に、次第に心が弾んでいくのを感じていた。
――
そして三日後、全員が休みだったその日に七不思議探しが始まった。
「と言ってもうち一つはあの海中を飛ぶツバメの話なんだよな
……
あれはランダムというか遭遇出来たらラッキーぐらいの心持ちでいいかなって思うけど」
「じゃあ最初はプレジャータウンの神殿の像の目が光るって奴にするか」
「あれって夜に光るんじゃなかったっけ?」
「そうだった
……
じゃあ、一株だけ真っ赤な花が咲く鈴蘭を見に行く?」
「鈴蘭ってもう咲いてないんじゃない?」
「そっか
……
じゃあ」
「って、グッダグダじゃねえかお前ら」
地図を見ながらうーんと唸る二人に、俺は思わず背後から突っ込む。
「そうは言ってもローさん、鈴蘭とか季節限定のイベントは厳しいって」
「あと神殿って確か夜は施錠されてるし、多分不法侵入とかしたら後でラッドにめちゃくちゃ怒られそう」
「ねー、じゃあ他におれらが見れそうな不思議ってのはないの?」
ベポに首を傾げられ、ペンギンとシャチは二人揃って腕を組み、うーんと唸る。
「向日葵
……
は咲いてると思う?」
「ああ、月見の向日葵!! あれは確かプレジャータウンからも近かった!!」
「あと森の中の数珠つなぎの梅」
「あ、そういやそれもそろそろだった!! ついでに収穫して梅シロップと梅ジャム作りたいかも!!」
「オイ、俺は食わねえぞソレ」
「分かってるってローさん!! じゃ、まずは月見の向日葵から行こうか!!」
そう言ってプレジャータウンから少し離れた所の向日葵畑を目指して出発した。
向日葵畑の真ん中に、果たして一株だけ銀色の花を咲かせる個体があった。他の花が金色の大輪の花を咲かせているのに対し、一株だけ確かに銀色の個体が存在している。他の個体が太陽の方角である南を向いているのに対し、銀色の個体は太陽から目を背けるように北側をじっと見つめていた。
「じゃーん!! これが月見の向日葵!!」
「なるほどな
……
因みに、この向日葵は他の向日葵と同じ品種なのか?」
「うん、この畑の管理人さんによるとね、どういう訳か毎年同じ種を植えてもこの場所に咲く向日葵だけ銀色になるんだって。で、この銀色の花の種を植えても普通の向日葵の花が咲くらしい。あくまでこの場所に咲く一株だけが銀色になるって言ってた」
「因みにこの向日葵から採取される油はとても高品質でさ、うちのレストランでも扱ってるんだ。勿論、プレジャータウンの商店でも取り扱ってるよ」
「うちのキッチンにもあったよな、そう言えば」
「そうそう! 揚げ物が軽く仕上がって美味しくなるんだよな!!」
なんて事を騒ぎながら、今度は森へと歩いていく。まだ雪も解け切っていない頃、ここには枝垂れの珍しい梅の花が咲いていた。まだ凍えるほど寒かった春先にここで花見をしたな、とは思ったが。
「で、これが数珠つなぎの梅!! 良かったまだ残ってた!!」
春には見事な枝垂れの花が咲いていたその木は、それは重そうなほどに大きな実を付けて揺れていた。枝に沿って実を付けるその様はまさに数珠つなぎと言うに相応しい姿で、確かに通常の梅の実の付き方とはちょっと違う。
確かに、この実の付き方は見ごたえがあると言えるのかもしれない
――
が、シャチはそんな事お構いなしに持っていたカバンを開け、数珠つなぎに実った果実を丁寧に収穫していた。
「シャチ、この実はどうするの?」
「梅干し用の実はヴォルフの所で採れるから、これはシロップとジャムにしようかなって思ってさ。でもこの実は競争率高いから残ってて良かったー!!」
「ホントだよな。俺も忘れてたし、残ってたのはホント奇跡だったなって思うよ」
「
……
俺は食わねえぞ」
「分かってるって。それじゃ、次はえーっと
……
緑色の太陽が見れるのっていつ頃だったっけ?」
「それ、確か氷点下とか行かないと無理じゃなかった?」
「そうだった。じゃ、森の中の八本角のヘラジカ探すか」
「
……
そんなに角がある鹿とか、骨粗鬆症が心配だな」
「ってローさん、視点が完全に医者じゃん!」
「悪いか? 俺は医者だからな。そういう視点で見ちまうのは仕方がねえだろ」
「そういやそうでした!!」
なんて語りながら森を歩く。程なくして、ヘラジカの群れの中にひときわ大きな個体がいるのを見つけた。
それは堂々とした体躯の、まさに森の王に相応しい姿をしたヘラジカだった。
頭上には大きな八本の角を頂き、ゆったりとした動きで群れをじっと見回している。まだ小さな子供に寄り添い、泉の水を飲む雌のヘラジカを守るようにゆったりと動き、顔を上げてふるりと辺りを見回した。
俺たちは、誰も、何も言葉を発することもできなかった。
群れの王者たる堂々たる姿のヘラジカの姿に、軽い気持ちで七不思議を探していた俺たちの心が一瞬にして襟を正されたような、そんな気分だった。仮にこの群れを乱すような事をしたら、あのヘラジカは一瞬にして俺たちに牙を剥き、その八本の角で俺たちを刺し貫くだろう。何故だか分からないが、俺はそう確信していた。
八本角のヘラジカがその長い首をもたげ、俺たちの方へと首を向ける。目が合った、と何故かそう思った。それはペンギン達も同様だったようで、皆一様に緊張した顔でびくりと身を震わせ、そのままぴくりとも動かなくなった。
やがてヘラジカは俺たちから顔を背け、踵を返して俺たちとは反対側へと歩いていく。すると群れのヘラジカも彼に倣い、ゆっくりと森の奥へと進んでいった。
群れがいなくなると、俺たちは一斉に息を吐き出した。
「
……
ぶはぁ! すげー、なんだあれ!! 凄ェカッコ良かった!!」
「分かる!! あんなの、俺たちを倒したイノシシよりヤバかったな!!」
「だよなぁ!!」
ヘラジカの姿が見えなくなった途端にはしゃぎ始めたペンギンとシャチの横で、ベポだけが今もなお口をあわあわとさせて震えていた。心なしか
――
真っ白な体毛に覆われているので何となく、ではあるが
――
顔が酷く青ざめているようにも見える。
「
……
ベポ、大丈夫か?」
「うん
……
あのね、あのヘラジカ、俺たちが動いてたら危なかったかも」
「危なかった、って」
「『お前たちはまだ子供だ。我らの群れに害をなすものではないから赦してやる』みたいな事を言ってたんだ
……
もし、狩りをするための猟銃とか持ってたら危なかったかも」
「そうか
……
あいつらには言わない方がいいだろうな。でも、今までも何度かヘラジカは獲って食ってたし、この島の住民はヘラジカを狩って食う事はよくあるんだが
……
それは大丈夫なのか?」
「そこまでは分からないけど
……
でも、この島の住民が食べる為に獲る事自体はそこまでじゃないんだろうと思う。この島には熊とか他の肉食獣もいるし、そもそもこの島自体が極寒の島で生き延びるのも大変な土地だから、許容範囲を超えなければ問題はないって認識なんじゃないかな」
「そうか
……
それにしても、思った以上に大変な存在に出会っちまったんだな、俺たち」
「うん。あのヘラジカは凄かった。イヌアラシ公爵とかネコマムシの旦那とかとはまた違う凄さだった」
「でも、あんな美しいヘラジカは初めてだった。会えて良かったな」
「うん、おれもそう思う!!」
にぱっと笑ったベポを見て、俺もようやく少しだけ緊張が解れた。
美しい自然をそのまま体現したようなヘラジカ。あの出会いはきっと、生涯忘れたりはしないだろう。
「
……
さて、これで七不思議のうちの六つを見た訳だが、もう一つの不思議ってのは何なんだ?」
「見たと言っても、期間限定だったり見ようにも夜は封鎖されてたりで見れないのも結構あったような気がするけどねえ」
俺とベポの言葉に、ペンギンたちはくるりと振り返ってニカッと笑った。
それはさも悪戯が成功したと言わんばかりの、悪童の笑みだった。
「七不思議探しはこれで終わりだよ」
「
……
は?」
「七不思議の最後の一つはね、ローさん。『六つしかないのに七不思議って言われている事』なんだよねえ」
「なんだそれ、詐欺じゃねえか」
「詐欺って言うなよー!! プレジャータウンの他の人にも聞いてみれば分かるって!! 『六つしかないのに七不思議って呼ばれているのが一番の不思議』ってさ!!」
「あー
……
そういう事かよ。分かった」
はあ、と俺はため息を吐く。どうやら、俺とベポはこの二人にしてやられたらしい。
「でも、スワロー島を皆で冒険できたのは楽しかったなー!!」
「だねー、おれ、またやりたい!! 今度は違う島とか行った時とかにやってみたいなあ」
「それいいな!! その時はその島までちゃんと連れてってくれよ、ベポ!!」
「任せて!! おれは立派な航海士になるんだから!!
……
その、立派な航海士になれなかったらすみません
……
」
「そこでネガるなって! 頼りにしてるんだから!!」
とわいわい話す三人に、やれやれと肩を竦める。
何だかんだ言ってしまったが、皆で冒険するのは心躍ったし、正直とても楽しかった。
この三人とならきっと、何処まで行っても楽しく過ごせるのだろう
――
何故だか分からないが、俺はそう予感していた。
この三人と、俺はずっと共にいたい。
この三人となら、きっと何処までも行ける。
――
そう、この三人となら。
「キャプテン、あと二時間ほどで次の島に到着します」
「そうか」
あれから時が経ち、俺たちは海賊となった。
海賊、と言ってもひとつの艦の船長となった以上、あの時のように四人で艦を空ける訳にもいかず、あの時のような冒険は中々できなくなった。無論、無理を言って四人で艦を空ける事もあるが、それは至極まれである。大体は俺が一人で勝手に出歩く事も多い
――
が。
「ペンギン、その島に他の船はいそうか?」
「いいえ、先程確認しましたが他の船はなさそうです。あと、事前情報によれば海軍にも世界政府にもあまり干渉されない島みたいで。まあ、一応世界政府には加入しているようですが」
「そうか。
……
なら、久々にお前らと共に島を歩きたい。いいか?」
「いいも何も、ローさんの頼みなら断れませんよ」
クスリとペンギンが笑う。その笑みに、かつての悪戯っ子の笑みが重なり、俺はふと脳裏に浮かんだ疑問を口にした。
「そういや、昔スワロー島の七不思議ってのを探しに行った時があったよな」
「ありましたねえ。懐かしいな」
「あの時、お前らは『六つしかないのに七不思議なのが七つ目の不思議』って言っていたけど、本当にそうなのか?」
「なんの事です?」
「だから、本当は七つ目の不思議ってのはちゃんと存在するんじゃねえかって思ったんだが
――
どうなんだ?」
俺の問いに、ペンギンはしばし沈黙し
――
やがて、ニヤリと口角を上げた。
「教えません」
「
――
は」
「だから、教えません。そもそも七つ目の不思議に関しては、島外の人に教えちゃいけない事になっているんです。シャチと、ヴォルフも恐らく知っていたでしょうが、ヴォルフはともかくシャチに聞いても教えてはくれないと思いますよ?」
「
……
俺が聞いても駄目って事か」
「そういう事です。でも安心して下さい。気付いてないだけで、ローさんもベポもちゃんと七つ目の不思議を見つけていますから」
くつくつと愉快そうに笑い、ペンギンは踵を返す。
「それじゃ、ベポとシャチにも話を付けてきますから、ローさんも上陸の準備進めて下さいね。そういう事で、俺は失礼します」
そう言って、ペンギンは扉を閉める。後には呆然としたまま動けなくなった俺だけが残されていた。
かつて四人で探したスワロー島の七不思議。
その最後のひとつを、結局俺は知らないままだ。
――
それなのに。
――
ローさんもベポもちゃんと七つ目の不思議を見つけていますから。
ペンギンの言葉に、俺はますます深くなった疑問に首を傾げるばかりだった。
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