たくとろ
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ワンライ「アプリ」

フライング作成
1h30min
お題見て催眠ネタ書くか悩んだんですけど、色々考えてやめました笑

高層ビルが立ち並ぶ大都会。道路を自動車が走り、人とポケモンが連れ歩く様子とすれ違う。反対側の歩道ではサラリーマンが汗を流しながら走っている。そんな大都会をリコとロイは歩いていた。片手ずつビニール袋を持っている。ロイは二つ、リコは一つだ。

「買い出しこれで全部終わったかな」
「うん。後は帰るだけだね」
「お腹すいたなあ早くマードックのご飯食べたいね」
「うん。今日は確かピザ焼くって言ってたよ」
「ほんと?僕すっごく楽しみ!」

ロイは元気に声を上げて笑った。隣のリコも楽しみにしている様子だ。そうと決まれば早く帰ろうとロイが走り出した。リコが待って待ってと追いかけていく。五ブロックほど進んだところで、ロイの視界に何かが映った。気づいたロイは左を向き、路地に足を踏み入れる。一方リコはロイのスピードに置いていかれてまだ二ブロック前にいた。

「なんだろう、これ

地面に落ちている物体にロイは無警戒に近づいていく。角の丸い細長い直方体っぽい形の物体をロイは右手で拾い上げた。

「スマホ?」

そう、そこにあったのはスマートフォンだ。ロイ自身も毎日使っている、今や誰もが持ち歩くアイテム。しかしどうやら古い型らしい。背面のレンズは一つで、ロトムも入っていないようだ。

「誰かの落とし物かな交番に届けないとん?あれ僕今電源ボタンなんて押して

突如光ったスマホの画面。するとそれは眩い光を放ち出す。白く、そして青い強烈な輝き。

「な、なんだ!?」
『プログラム起動、取り込みます』
「え?なんだこれ吸い込まれうわあああ!!」

路地の影をも振り払うような鮮明な光はロイの身体を包み込んでいく。その過程で、彼の手にあったビニールとスマホが地面に落ちた。ロイの絶叫は光と共に消え、彼の姿もまたその場から消え失せた。しかしその声を、リコは確かに聞いていた。

「ロイ?今の、ロイの声

リコはさっきよりも速度を上げて走る。そしてすぐにロイが持っていた袋が路地に落ちていることに気づいた。しゃがみこんで中身を確認し、ロイが持っていた袋だと確信する。一体ロイはどこへ行ったのか。リコは周囲を見渡すが、ロイの姿は全く見当たらない。まさか、車やバイクで連れ去られたんじゃ嫌な考えが頭をよぎる。

「ロイどこ?ロイ!無事なら返事して!」
『リここ
!ロイの声!どこ!ロイ!!」
『リコーここだよー
「声が小さい遠いところ?」
『リコーちがうここだよお

確かに聞こえるロイの声。その音が妙に電話越しっぽく、それでいて下から響いていることにリコはやっと気づいた。彼女の目に止まるのは真っ黒なスマートフォン。しかしその画面は明るく光っている。リコはおそるおそるそれを手に取って画面を覗き込んだ。画面に映るものを見て、リコは驚愕の表情を見せた。

「ロ、ロイ!?」
『リコやっとみつけてくれた
「ロイだよね?なにがあったの?」
『それが僕もよく分からなくて落ちてたスマホを拾ったら急に光ってそれでこんな風に』
「スマホに吸い込まれちゃったってこと?」
『うん

とても信じられない話だ。しかし、この世界には不思議なことがいくつもある。なにより画面の中のロイの表情はいつも見ている彼の素顔そのままだ。ロイの顔が目の前の現象を事実だと示している。

「ロイ、そこから出られないの?」
『うんどこに出口があるのかもよく分かんなくて周りは真っ白だし
「ん?あれ、ロイなんかロイの上に文字が映ってるよ?」
『え?そんなの無いけど
「こっちからしか見えないのかな
『なんて書いてあるの?』
「えっとスーパーロイブラザーズだって。後、真ん中の少し下にスタートの文字がある。なんかのゲームアプリなのかな」
『そうなのかもじゃあ、とりあえずそのスタート押してみてくれる?』
「わかった」

リコは頷いて画面に触れている指を下へスライドする。その軌道はロイのお腹を通った。

『あはは。リコ、くすぐったいよ』
「あ、ごめん触ったら反応するんだ」
『みたいだね。じゃあ僕の体に触らないようにお願いしてもいい?』
「うん。スタートのボタン、ロイのお股にあるんだけど大丈夫かな
『ボタンだし多分

深呼吸をして、ゆっくりとリコはそのボタンに触れた。ロイに反応は無いが、画面が切り替わってロイの姿が見えなくなった。

「ロイ!?」

画面が真っ暗になり、しばらくロードが入って切り替わると、何やら映像が流れ始めた。横画面になっているのに気づき、リコは持ち方を変えた。画面に映っているのは草原。奥にはかわいらしいピンクのお城が見える。すると、左からロイと見知らぬ金髪のピンクのドレスの女性が歩いてきた。

「なにこれ?それにあの女の人なんかロイといい雰囲気

リコは目を細めてじっと映像を見つめる。ロイとその女性が歩いていくと、右からカジリガメによく似た二足の怪物が飛び出してきた。怪物は女性を掴んでどこかへ走り去っていく。ロイは表情を険しくして、その怪物を追いかけていき、ムービーは終わった。再び画面が切り替わるとすごろくのマス目のようなものがいくつもあるマップが表示された。そのうちの一つにロイが乗っている。

『あ、リコ!よかったやっと声出せた
楽しそうだったね」
?とりあえず、あの人助けに行かないと』
「そうだね。多分あの人助けたらクリアだしクリアしたらロイも出られるかも。あ、チュートリアルが出てるマス目を押したらコースが始まりますこうかな」

リコがマス目をタップすると再び画面が切り替わり、コースが始まった。画面の右にジャンプのボタン、左に移動用のスティックが表示されている。そしてロイがコース上にいる。簡単な2Dアクションらしい。

「私がロイのこと操作するってことだよね
『うん。僕は自分では動けないみたい。リコ、お願い。信じてるよ』
「任せて。絶対ロイをクリアまで導いてみせる」

リコがスティックを右にスワイプするとロイが右に向かって走っていく。敵が来たらジャンプ、空中にあるブロックを叩くとアイテムが出ることもあるようだ。ロイが敵に当たったり、穴に落ちないよう動かすのは緊張するものの、リコはロイを自在に動かせることに少し楽しさも覚えていた。

「ロイが私の思い通りふふ」
『リコがなんか怖い

そうして二人はコースを次々に攻略していく。草原、砂漠、海辺。その道中、着せ替え機能を発見した。冒険の途中で見つけたアイテムをロイに着せられるらしい。せっかくだからとリコはロイに色々着せてみる。

『あ、あのリコはやくクリアしようよ
「だってロイの服装いじる機会なんてあんまり無いから」
『うぅ今度リアルでやらせてあげるから!』
「ほんと?じゃあ約束ね」

さらに進めていくと、捕まっていた別の女性を助けた。すると女性はロイの両手を掴み、キラキラと目を輝かせている。ロイは作り笑いを浮かべているが、リコの目には嫉妬の炎がごうごうと燃えている。

ムービースキップできないのかな」

それからさらにしばらくして、雪原やジャングル、高い山や雲の上を攻略して火山地帯を突き進んでいき、ようやく最後のコースに辿り着いた。燃え盛るマグマとカジリガメみたいなボスが待ち構える城は厳かな雰囲気だ。

『いよいよだね』
「ロイ、絶対クリアしてその画面から戻ってこよう」
『ああ。絶対クリアする』

コースに入ると、マグマに落ちかけたり、設置されている大きなバーナーにぶつかりそうになったりというピンチがいくつかありつつも、なんとか乗り越えて大きな門の前に辿り着いた。

「行くよ、ロイ」
『オッケー』

扉に入ると、怪物が女性の入った檻を背にロイの前に立ちはだかった。檻の隣には大きなスイッチ。きっとあれを押すのがクリア条件だ。
すぐにでも踏みたいところだが、怪物はロイのジャンプで飛び越えられない高さだ。触れればダメージを負ってしまうし、リコはスティックを右へ左へと動かして機を待つ。すると、怪物が大きくジャンプした。

『リコ、今だ!』
「うん!行って!ロイ!」

リコはスティックを右に動かしてロイを一気に直進させる。怪物の下を通り抜けたところでリコはジャンプボタンを押した。ロイは大きく跳び、スイッチを押した。すると怪物がいた地面が崩れてマグマに落下していく。さらに檻が崩れて女性が解放された。二人が喜んでいたのも束の間だ。ピンクドレスの女性はロイの左頬に口付けをした。

「なっ!?」

ロイの真っ赤になった顔がアップになる。そうしてエンディングムービーが流れ出した。スタッフロールらしきものが流れていく中、画面が再びまばゆく光った。思わずリコが目を閉じる。光が消えたのを確認して再び目を開けると、真っ暗になったスマホの画面が割れていて、目の前にロイが倒れていた。

「ロイ!大丈夫!?ロイ!」
「あリコうん、平気だよ」
「よかったロイ、戻ってきてくれた
「ごめんね、心配かけて。ありがとうリコ、おかげさまで無事だよ」

手を握るリコにロイは優しく微笑みかけた。リコはその笑顔に安堵しながらロイの手を引っ張りながら立ち上がる。

「じゃあ帰ろっか」
「うん。あリコ、手
ゲームの女の子とは握ってたのに」
「え、いやあれは僕の意思じゃ
「キスまでして
「だ、だから!!」
とにかく今日は帰るまで握ってて。ダメ?」
いいよ」

すっかりと夕陽が空を赤くする時間帯。同じく赤い顔のリコとロイは不思議なスマホを置いて飛行船へと歩いていった。