いしえ
2025-06-27 17:02:51
1116文字
Public 幽白腐
 

それは魔法のように思えた/仙樹(画像SS+本文のみ版)

短い仙樹。白あんのはなし。







「ああ、白あんと言えば、子どものころ、不思議な店があったよ。俺は白あんが苦手だったが、何故か、その店の白あん最中だけは食べられたんだ。店主が、まるで魔法使いに見えたものさ」
 話の流れで忍のした昔話に、樹はこれまでの人間界での知識から大まかに二説、検討をつけながら、その絞り込みをするのだった。
「ほうちなみに、どこの店だ?」
「ほら、商店街に、クリーニング屋があったろう。あの隣だ」
 それは樹が二つ想定した可能性のうち、やはり一方に、当てはまるものだった。的中した予感は、ビンゴゲームであるならば、樹に挙手をさせていたことだろう。
「ふふ、やはりそうか」
「? どういう意味だ?」
 忍が高校生だったころ、そのクリーニング屋は衣替えの折などによく利用した。隣にあった和洋菓子店にも立ち寄ることが多かった。言われてみれば、忍は少し特別そうな顔をしながら白あん最中を見つめ、それにしたり、違うものにしたり、していた。だが、樹がその店だろうと思ったのは、単純にその記憶からだけではなかったのだ。
――魔法を、解くのは無粋だろう。だが、いつまでもキャベツ畑の住人で居られるでもなし。頃合いか。
あの店の白あんは、白小豆を使っていた。白いんげんの白あんと違い、普通の小豆の赤あんに、比較的近い味がするんだ。だから、お前にも食べられたのだろう」
 樹がそう解説すれば、忍は、情報を吞み込むのになんとも言えぬ顔をして、樹にはそれが少し愉快だった。
……? 白い、小豆があるのか?」
「ああ。もっとも、白小豆の白あんは、少々高級だがな。赤い小豆とは皮の風味が異なるぶん、多少の差はあるが白いんげんの白あんが苦手でも、比較的食べやすいと感じる人間が多いようだな」
 樹が情報を付け加えると、忍の凛々しい眉がぎゅっと難し気に寄った。それを、その店に通っていたあのころのあどけなさに思った。
……おまえは、人間界慣れしすぎている」
「ふふ。ご不満か?」
 揶揄するよう言う樹に、忍は自身の手を額に添え、一度目をつむり、はあ、と、ため息を深くついて、それからあいまいに、笑むのだった。
――先ほど、あの和洋菓子店の店主が魔法使いに見えていたと言ったが今となっては、俺の知らない人間界を幾らでも知っているお前のほうが、よほど、魔法使いに見えるよ」
 ああ、そのあいまいな笑みに木漏れ日のちらつきを錯覚して、ちらめくほしぼしを錯覚して、樹はこんじき光るまなこをふたつぱちぱちりとまたたかせ、それからふわり、くちもとにゆびを添え、にこつくのだった。
……俺から見れば、お前のほうが、よほど魔法じみているよ」








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