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ろころころ
2025-06-26 18:35:45
2283文字
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「正気の沙汰とは思えない」
「そうですか?」
グロリアは、剣の柄に手を添える。
そんなグロリアの様子を特に気に止めることもなく、リグはへらりと笑った。
「ザシアンさんがその身を削って、ガラル地方のために奔走しているのと大差ないと思いますけどねぇ」
「いいえ、全く別の話です。貴方の
それ
はガラルを守るためでは無い。
…
メフィストを殺すために」
「それって何か違いあります?」
「あるでしょう」
グロリアは、朽ちた剣を鋭く引き抜いた。
「貴方はメフィストを殺すためであれば、無関係な民間人を巻き込むことも厭わない」
「誰もが無関係だと思わないで欲しいものですね。このガラルという地に生まれてきた時点で、我々はあの悪魔共と対峙しなければならない宿命だった」
「よく言うわよ。貴方もその悪魔の一人でしょうに」
グロリアは剣先をリグの首元に押し付けた。
「ああこれ。実は二回目なんです」
「何が」
「ザシアンさん、貴方はご自身を棚に上げて私だけを
犯罪者
悪魔
と呼びますが
…
」
マントの裏から、リグは1つのペンダントを取り出す。
金色にキラリと光るそれを見て、グロリアは息を呑んだ。
「なぜ、それを」
「返しますね。貴方のお母上の遺品で─────」
ビュンっと音を立て、リグの首元を切り裂くための動きで剣先が風を斬る。
「危ないですねぇ、ザシアンさん。英雄の手癖が良くないのもどうかと思います」
「黙りなさい。やはりお前は殺しておくべきだった!」
「ああ、怒ったんですかザシアンさん。良いと思いますよ。英雄、守り人
…
そんな仮面は貴方には不要で
……………
ぐっ
…………
、
…………
ふふっ、
……
あはははははは!」
グロリアは不快だと言わんばかりに顔を顰めたが、リグはけらけらと笑い声を響かせた。
「首と胴が離れるのが惜しければ、知ってることを全て話しなさい」
「あははははっ
…
!あ痛っ、ふふっ
…
やめてくださいよザシアンさん
…
!そうやって真実を求める者から、この世に絶望して死んでいくんですから」
ポタポタ、と赤い血が地面に跡付ける。
それでいてこの男が嗤うのは、グロリアへの信頼か。それとも──────悪魔だからか。
「ねぇ?ザシアンさん」
「
…………………
」
「それでもまだ、貴方は真実を求めますか?」
「
………
言いなさい」
「良いでしょう」
グロリアは剣をリグの肩から勢いよく引き抜く。リグは一瞬よろめいたが、へらへらと笑いを浮かべたままグロリアの瞳を覗き込むように目を細めた。
「──────10年前の"最終兵器"の発動を望んだのは、メフィストじゃないんですよ」
「
……
どういうこと?」
「メフィストは我々、ファウストを襲撃した後に例の地域から離れようとしていました。そこで、貴方のお母上はメフィストと対峙した。彼らは何を見せたと思いますか?」
「
……
私達が捕獲されている、写真
…
?」
「惜しいですね。貴方のお父上の遺体の写真です。彼は拷問死を遂げていました。そしてもう1つ──────」
リグはグロリアの額に輝くティアラを指した。
「貴方達が身につけている、その遺物です」
「確かに、奪われた記憶はありますが
…
それを何故?」
「簡単ですよ。夫が死に、愛しい子供達のつけていたはずのアクセサリーまで見せつけられたら、彼女はどう思ったでしょうか?」
「──────まさか、私達が死んだと?」
「ご名答」
実際に、グロリアとアレルヤは爆発の騒動をきっかけに脱走に成功している。最も、そのことをかの爆発で死んだ母親に伝える術は無かった。
「さて、ザシアンさん。あとはお解りですね?」
「
……
待って、そんなの、
……………
じゃあ何
…
!?貴方は全て見ていたって言うの
…
!?」
「止めましたよ。止まりませんでしたけどねぇ?
その剣で
私を脅して、彼女は終焉を選びました。だから二回目だと」
「
………………
!」
ケタケタと笑っているのは、目の前の彼か、それとも母を信じて歩いてきた過去の己か。
英雄としてガラルを駆け回った母はいなかった。
真実は──────守り人ですらない、人殺しの母親。
「彼女は
…
いえ。貴方のお母上は、私が普段引いているものより何倍も重い引き金を、ご自身の感情を満たす為だけに引いたのです」
残酷な真実は、淡々と悪魔の口から紡がれる。
「貴方の信じてきた
正義
母親
が最終的に招いたのは、残酷で理不尽極まりない大虐殺だったんです。
──────ねぇザシアンさん、言ったでしょう?貴方は私を悪だと言いますが、貴方もまた、人殺しの血と正義を受け継いだ、悪魔なんですよ」
嗚呼、アレルヤ。私は貴方にこの真実を伝えるべきなのか。グロリアの葛藤など、今も尚、悪魔の影に怯えながらも見て見ぬふりをして生きるガラルの人々が知ることは一切無い。
「ああ、安心してください。決して貴方が人殺しを信じて突き進んできた馬鹿な犬だとしても、ファウストはザシアンさんの活動を応援していますから!」
「
……
ずっと嘲笑ってたの?協力するフリをして、人殺しの母親を正義と信じて戦う私達のことを、馬鹿にしていたの
…
!?」
「いいえ?共に地獄に落ちる予定の同胞のことを嘲笑うはずないでしょう」
「嘘つき」
「嘘じゃないですよ。酷いですねぇ。ああでも、」
─────仲間がいるって素晴らしいことですね。
そう囁いて、リグはマントの裾をふわりと掴み、一礼した。
「それではザシアンさん。地獄でお会いしましょう!」
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