つぐころね
1637文字
Public √Eden 🤝
 

珈琲の香りは和やかな昼下がりの代名詞

🤝槍蛇さんと

 
 ガリガリ、と音をたてて削られていくコーヒー豆は、削られる度に美味しそうな香りを重ねていく。その隣ではお湯が沸きはじめ、しゅんしゅんと音を立てていて。その合間、奏でる本人が気付いてなさそうな鼻歌もほんのり混ざる。それが少し楽しくて、何度目かになる喫茶店『群青』のカウンター席に座り、届かない爪先を揺らし、唯一の店員である咲くんの横顔を見ながら、のんびり過ごしていると。
 カラリ、とグラスの中で氷が音を鳴らし。その音で思い出したように咲くんが顔をあげて。

 「藍花、今日もカフェオレでいいのか? 他のも出来るぞ」

 そう聞いてくる。それにボクが右手の親指と人差し指で丸をつくって「おっけー」と軽く笑うと、「了解」とという声と笑顔が返って来て。(咲くんの笑顔は爽やかだなぁ)と思う。
 良く考えてみると、ボクの周りにあまりいないタイプなんだよね、咲くん。スタンダードにお兄ちゃんっぽいヒト。いそうでいなかった気がする。

 「そういえば皿、ありがとうな?」

 丁寧に挽きたての豆で珈琲を淹れる合間。咲くんはそう言いながら食器棚の方を指で指す。そこにはこの間売ったばかりの食器達が置いてあって。嗚呼、と頷きボクも目を細めて笑う。

 「此方こそその子達に良きご縁を繋げられて満足だよ~?」
 「良き縁、か。なるほどな」

 二人で笑って、白地に青で彩られた食器を見る。
 初めて此処に来た時に話した食器購入が有言実行されたのは、つい先日の事。丁度仕入れた子達を整理していた時に顔を出してくれたのだけど。空気も読めるとは流石咲くん(?)と感心したのを覚えている。

 正直、気に入って買ってもらえたのは勿論だけど。行き場のなかった新古品だった子達が、無事に食器として使ってもらえるようになった事がとても嬉しい。ボクらは使わられる為に生まれてきたのだから。きっと、あの子達も喜んでいるに違いない――と、思う。

 「そういえば、酒器の方は使った?」
 「まだだな。次の休みにでも使わせてもらう」
 「ふふ、感想お待ちしてます~」

 そうして連なるように思い出した、もう一つの購入品の事を聞く。それは夏らしい色味のびいどろのぐい飲み。自分用にもと幾つか仕入れたものの一組で。咲くんのお眼鏡に叶ったその子達もお買い上げとなった。うちの食器棚にも色違いの子達がいるけど、手に馴染んで良い感じだったから、彼にとってもそうであれば良いまぁと思っていると。

 「やっぱりガラスの酒器は夏らしくて良いな。最近、暑い日が続いてるし、梅雨が終わる前に使い始める事にしたよ」

 咲くんはお天道様が頑張っている窓の外を見ながら、苦笑い。それにつられるように、ボクも外を見て苦笑い。梅雨の合間が暑すぎるからね、今年。梅雨前線って消えるものなんだねと家族と話したくらいだったし。

 「今年の梅雨はこう、メリハリ凄いよね」
 「本当にそれな。天気にもあるんだな、メリハリって」

 しみじみと二人で天気の話をして、その後は夏酒が楽しみだという話もして、咲くんが淹れてくれたカフェオレも堪能する。冷え冷えとした室内で飲む温かいカフェオレ。これはこれでオツだと思う。でも、店に来た時に話した氷コーヒーも飲みたいし、プリンアラモードも、パンケーキも食べたいし。(暫くは平日のお昼のお店には困らないねぇ)なんて一人笑って。

 会話が途切れ、使った道具を洗う水音を聞きながら、そんな事を思う商売っ気のない雇われ店主の昼下がり。(次はいつ来ようかなぁ)と、仕入れだなんだの予定を思い出しながらカフェオレのカップを傾けた。


~終?~
独り言 『カフェ・群青』の店員さん、咲くんとの【1:1】で話した藍苺堂での食器購入を記念しての小噺的な。こう、爽やかですよね、咲くん。藍花さん、胃袋掴まれまり。羨ましい。咲くんの卵焼きサンド、背後も食べたい( ๑´•ω•)ショボン



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√Eden 藍花 / 藍苺堂