
──「私の意味って、何?」
そんなの、あなたが此処に居ることです。
医官として、であれば、あなたが処置しなければ死んだ筈の者を助けたことです、怪我で苦しむ者を救ったことです。
言えなかった。届かないとわかっていた。いや、『本当に届かないこと』を現実にしてしまったら、この、死が充満した空気の重さに、自分も何かを取り落としそうだった。
誰かに命を助けられた時、自身に意味と価値を求めるのは一種の防衛本能だとシルーは分かっている。生きていることに正当性を欲する、そんな精神状態でまともな判断などできないことも。自責の念に灼かれて、その炎に自ら薪を足し続けてしまうことも。よく知っている。
以前から、救えなかった人を思ってか、マリア・セシルが顔を曇らせるところをシルーは幾たびか見た。救えないことを嘆くなら、この人はいっそ町医者になって、軽症者の──救える人だけ救う立場になればいいのにとも思った。
でもそれは、戦地に立つことを選んだ彼女への侮辱である。やろうと思えばなんだって為せる強さへの否定である。それらを侵して、「あなたは存在しているだけで素敵なひとですよ」などと、
──言ってみればよかった。
レザを失って、多数の死体に囲まれて、自分の負傷などは忘れたように呆然とするマリアを見た時、やっとシルーはそう思った。
レザに、お前の言葉にどうしようもなく救われたことがあると伝えて、それを横目に澄ましているマリアに、医官にだって生かしてもらったんですよ、と続けて。ありがとうと伝えたらよかった。
そうしたら、この人は、ほんの少しだけでも、自分を許せただろうか。ただの、昔馴染みでしかないシルーに、あなたが生きていて良かったと言われて、
……言われたって、なにも、ならない。届かない。
望むものが違う。
信じるものが違う。
シルーの我欲をマリアは絶対に許さないし、シルーはマリアの許しなど求めない。
シルーがシルーでいる限り、この声が本当に届くことは、多分ないのだ。
今だって、シルーは■■■■■■■ことを考えている。
■■■■■■どれだけ恨まれようが、憎まれようが、ただ。
■■■■、■■■■と思う。それだけだ。
ひどく背中が重い。
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