しちろ
2025-06-24 20:09:36
2364文字
Public LOM・連載主人公の短編
 

主人公のあらすじ

ファ・ディールの世界観と簡単なあらすじ。

この世界の女神は、ファ・ディールの創世主であり、唯一神です。
ファ・ディールが生み出される前、彼女は一人で闇の中にいて、自分を見るために光を生み出しました。大地を創り、海を創り、空を創り、そこに生きるものを創り……女神は自らの生み出した世界をファ・ディールと名付けました。
創世を終えた後、女神は木となり、世界の行方を静かに見守りました。
はじめは、順調に思えました。
しかし、次第に人々は争い、奪い合い、世界は乱れていきました。
争乱の中で女神の宿るマナの木は焼け落ち、人々の記憶から消えていきます。
戦争が続くにつれマナは急速に減少し、ついには奪い合うものがなくなったことで、争いは自然と収束を迎えました。
もちろん、それは、前向きな解決ではありませんでした。
世界に再び、静寂が訪れます。
それまでと一見変わることはないけれど、何かが欠けている世界。
人々は争いの果てに疲弊し、歩むことを恐れ、他者を信じきれず……美しいけれど、どこか鬱屈していて閉塞している世界。
ファ・ディールの人々は、『あるもの』を失くしていました。
それは、世界になくても生きていけるもの。だけど、あれば、心豊かになれるもの。
聖域に再び、誰にも知られることなくひっそり根ざしていたマナの木は、世界中の人々に語りかけました。

私を思い出してください。
私を求めてください。
私は限りなく全てを与えます。
私は『愛』です。
私を見つけ、私へと歩いてください。

それは、小さな小さな、呼びかけでした。
あまりに幽かで、誰にも聞こえない、かぼそい声。
ファ・ディールの住民の中で、たった一人の人間だけが、女神の声を受け取りました。
大樹のある家に住んでいる、若い住人でした。


ここまでは私のLOM創作の共通設定で、私自身のゲーム解釈とも一致します。
ここからは二次創作。要するに、書きたくて書いてる妄想です。(なので、原作の解釈とは異なります)


世界には、たくさんのファ・ディールがありました。
この話は、その、たくさんあるファ・ディールのなかの、どこか隅っこにある世界のひとつのお話です。

ある日、大樹のある家に住む少年は女神の夢を見ました。
不思議な声に興味を持った彼は、はじめて自分の家を出て、旅に出ます。
声の主に会ってみたい、話をしてみたい。ただ、それだけの理由です。
冒険の中で喜び、悲しみ、多くの経験をし、やがて少年はマナの聖域へとたどり着きました。
はじめてまみえた女神は、他の英雄たちに言うように、彼に「闇に打ち勝ち英雄となれ」と呼びかけます。力で語りかけてくる女神に、力をもって応える。聖域の入り口でポキールが言うように、それが正解です。
しかし、少年の考えは違っていました。彼は、彼女との対話を望みました。
なぜならば、
「あなたの声が、寂しそうに聞こえたから」
だから、話をしてみたかった。そのために、ここまで会いに来たのでした。
「マナの女神。あなたはずっと泣いていた。世界の人々が愛を忘れてしまったことに。あなたの闇から目を背け、光のみを求めつづけることに。俺には、あなたの言う愛はわからない。こちらからも聞かせてほしい」
 
「これは、本当に『あなた』の望むことですか?」
 
「あなたは俺に、英雄になれと言う。力を示し、己の闇を倒すことで……それは本当にあなたの望みですか? あれほど自分を求めてほしいと、見つけてほしいと嘆き、訴えていたのに……。俺は、力を示すことがあなたの真に望む答えだとは思わない。光があなたであるように、闇もまた、あなただからだ。共にあるべきものに、力で打ち勝つ必要はないと俺は思う。だから……
AF使いは、モノの本質を見抜く目を持ちます。少年の目には、闇のマナの女神は、人々に忘却されて泣く、小さな少女のように映っていました。
女神は涙を流しました。光も闇も、自分のすべてをそのまま受け入れてくれた存在は彼が初めてだったから。
二人の、想い自体は、純粋なものでした。
けれど、女神は願ってしまいました。この子とこれからも、ずっと歩んでいたい。
願いは、歪んだ形で叶いました。
少年は何度でも同じ夢を見、同じ朝を迎え、たくさんの愛を集めては女神に会いに行くことになりました。
英雄の名を得たとて、少年はただの人間にすぎません。旅を重ねるうち彼は次第に疲弊し、心は摩耗していきました。
ついには世界をイメージする心も失って、少年は自分の世界を閉じることになりました。
長い時の中でどうしようもなく歪んでしまった理を、自分ではない誰かが変えてくれたらと、願いながら。


時が流れ、大樹のある家に住むある少女が、女神の夢を見ました。
陽気な彼女は、夢を気にかけませんでしたし、起きた途端に内容をほとんど忘れてしまいました。ただ、いつもよりとても楽しい気持ちになって、うきうき冒険に出かけて行きました。
訪れたドミナの町で、ふと、宿屋向かいの空き家が目に留まります。彼女は、以前教会の神父から聞かされた、おまじないを思い出しました。

「想いを込めて空き家のドアを叩くと、願いが叶うらしい」

なんてことない、子どものおまじないです。
友達が欲しいな、と少女は思いました。
彼女は社交的な性格で友達は多くいましたが、共に戦い、冒険できるような仲間はいませんでした。
いたらいいな。歳が近くて何でも相談できて、どこまでも自分と一緒に歩いていける、そんな友達。
やってみようと、思いました。
少女が想いを込めて空き家のドアを叩くと、そこから出てきたのは……


こうして、歩けなくなってしまった過去の英雄と、新たに走り出した未来の英雄は、旅のパートナーとして出会うことになりました。