かのまる
Public
 

伊剣ワンドロワンライ「水無月」

大大遅刻すみません。
気づいたらワンドロのお題を書いてました(?)
2.5時間ほど。
剣の性別は男です。男です。
少し性的な匂わせがあるので、こちらに投稿します。
たまたま前回の話と対になるお話になった気がしましたが、気のせいだと思います。

真っ黒い雲から大粒の雨が降ってきた。
イオリが珍しく、忌々しげに空を見上げる。
「今日はもう帰ろう。セイバー」
幸い浅草の大通りに居たからすぐ長屋に戻ってくることが出来た。
……ふう、降られてしまったな」
伊織は乱暴に髷を解き首を振ると、長い髪がバサバサと音を立て飛沫が舞う。
キモノは上半身の色が濃く染まり、早く着替えた方が良いのは明らかだ。
「風邪を引くぞ。衣を着替えると良い」
ん、とか、あぁと、どこか心ここに在らずといった調子で襦袢に着替えていく。今日はもう出かける気がないのだろう。
「イオリ、きみは疲れている様に見える」
……そうかもしれん。悪いが、布団を敷いてくれまいか?」
お安い御用だと、ぺちゃんこな布団を敷くと伊織は胡座をかき座り込む。
そのあちらこちらに乱れた髪が、様に見えて胸がきゅんと締め付けられた。
「ん?ん〜〜、どうしたのだイオリ?疲れたのなら私がぎゅーっとしてやるぞ。遠慮なく胸に飛び込んで来い!」
伊織が無言で胸に飛びついてきた。伊織の体躯は私より余程大きいから潰されそうになってしまう……が、私はサーヴァントだ。そんな失態は犯さぬ。
イオリの手がぐっとキツく背中に回る。この時イオリの顔は当然見えない。どんな顔をしてるのかな?ふふ、私には見せたくない大層恥ずかしい顔かも。

腕が動いた気配がして、背中にぞくりとした違和感を感じた。
たまたま手が触れただけ。……では無い様で、今度は背筋をなぞられる。ぞわぞわとするが不快では無く、寧ろ……
「あのだな、イオリ。今日は本当にぎゅーだけなのだぞ。その妄り みだに身体に触れるでない」
諌める声が余りにも小さく弱々しいのに、私自身が驚く。
イオリは聞こえてない振りをして、今度は腰をゆっくりと撫でてきた。時には敏感な脇腹を掠めたりしながら。ゾクゾクとしたものが尾てい骨に溜まる。
「あ、やだ、だッめ……違う。そう言うつもりではなくて、きみ、を、ただ癒したくて、ぇ……
「うん、癒してくれないか。俺を、温めてくれまいか、俺の身体をおまえの体で」
くっ、その言の葉は反則っ、反則だぞ!
イオリはどんどんと大胆になって、耳を甘く食んだり首に口付けを落としていく。私はその度にビクビクと自然に身体が反応してしまう。
黒い肌着の隙間に手を入れられ、布団に押し倒される。
「あっ」
イオリの疲労の滲む濁った瞳の中に、確かにチリチリとした熾火を感じた。熱を帯びた視線に焦がされて、私は絆されてしまう。

まただ。
雨の日にイオリは時たまこうなる。
酷く疲れてたり、納得のいかない戦いがあったり、まあ由は良くわからぬ。
初め ・・から私は拒まなかった。寧ろどこかでそうして欲しいと、精神 こころ以外にもっときみと繋がりたいと欲深く求めてしまった。
外はざあざあと雨が降っている。
……カヤが今はミナヅキと教えてくれた。何故雨ばかりなのに水の無い月なのかと云えば、確か田に水を引き育てるために、水を引くことが由来なのだとか。
……ッッんっ!こら、噛むな」
考え事をしてたら、首元を甘噛みされた。そのお詫びと云わんばかりに噛んだところをひと舐めされ、またずくんと下半身が重くなる。

「嫌か……?」
いつもこの言の葉だけは必ず私に問うてくるのだ。律儀にも。
その月夜を浮かべた瞳は、ロウソクの灯の様にゆらゆらと揺れ、私の心もぐらりと揺さぶってくる。
……好きにしろ」
ずるい。決定権があるのはきみなのに。
私からはイオリに抱いてほしいなんて、絶対、ぜーったいに口が裂けても云うものか!

それにしても、ミナヅキとは皮肉にすら感じる。
水を操る私が、水が無くとも私は簡単に流されしまい、イオリという男には抗えないのだから。
油断してたら、肌着もすっかり捲られていた。
片方の手首は縫い付けられ、イオリの大きな手が胸元に直で触れている。云われれば、確かに肌が冷えているかもしれない。否、情欲という熱を内に孕み、仮初の肉体が確かに昂る。

雨の音が煩い。でも雨が止まなければ、イオリは私に赤い跡をたくさん残すのだろう。
それでも良いや、とまたすっかりきみに流されてしまった愚かな私がいた。

ああ、雨の音が煩い。どうせならずっと止まないで欲しいのに。