ortensia
2025-06-24 13:45:06
649文字
Public 傭リ
 

傭リ


 起き抜けの傭兵が変な顔をして居た。リッパーからすれば傭兵はいつも変な顔をして居るので、これはいつもより変だと言う意味だ。
「どうしました変な顔して。」
 リッパーにとって自分の好奇心より優先されるべきものは、自分の生み出した規則くらいであり、それは今ここで適用されるものは無い。
 傭兵はリッパーに問われても、返事をするように見遣るだけで、返事をしない。リッパーは気にせず、朝のお茶を淹れる。勿論傭兵の分は無い。
 規則正しい生活を送って通常毎朝決まった時間に起きる傭兵と違って、リッパーの起床はまちまちだ。それどころお茶を飲みに起きたかと思えば、また寝床へ戻って一日を過ごすことがある。傭兵には考えられない生活である。病気かと逆に気を病んだ傭兵だったが、どうやらそうでは無いらしい。あるいはずっと病んでいるのだ、リッパーは。ところが、そのリッパーが以前、恋とは病んでいるようなものだ、とリッパーが口にした頃から、傭兵も、ずっと病んでいる。
「おまえの夢をみて。」
 傭兵がやっと答えた。
 傭兵の頭は、その良く動く肉体のように、忙しない。しかし稀に、何かを熟考してから言葉を発することがある。リッパーにしてみれば、杞憂なくらい面倒臭いと思うことだった。
「おやあ、それはそれは、おそろしい夢だったんでしょうね!」
……人によっては、そうかもな。」
 おやおやと茶化しながら、リッパーは新しいお茶を淹れた。傭兵の分も淹れた。
 二人分の朝の挨拶を溶かしたお茶を、傭兵とリッパーは嚥下した。


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