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ぽふむん
2025-06-24 10:00:00
3686文字
Public
童しの
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ちるちる満ちる
童しの記念日2025
氷柱if
鬼化ifで妊娠ネタを書いたので、氷柱ifでも捻って見ました。
まだエコーとかない時代、内診で見てわかったらしいんですが……🤔
タイトルは……水タバコって「ちる」らしいので
序盤その「ちる」感じを表現したつもりです。
しのぶちゃんの奇行は……本当に極楽教に出入りしているヤカラ信者の嘘を吹き込まれ、真に受けてしまってやっているという、しょうもない裏ネタ
窓ガラスを激しく打ち鳴らす雨音がうるさい。
でも、これだけ強い雨は長くは続かない。じきに静かになるだろう。
湿気でじっとりとした空気が重い。
居室には、水煙草と焚きしめた香木の清涼な香りが漂う。
水煙草は独特な煙草だ。
いわゆる煙管や紙タバコのようなものとは違う。
それは 香りに酔いしれ、身を委ねるもの。
日頃楽しくも、面白くもないのに愛想笑いをうかべるのは非常に顔の筋肉が疲れるものだ。
だから、こういう休息時間が必要だ。
童磨はいつものように、一人広い部屋で表情筋を微動だにさせず、真顔で二時間弱過ごしていた。
失礼します
……
という声とともに静かにふすまが開いた。
「ああ、まだ交信中ですね」
「もう一時間半程経つので、多分もうそろそろ瞑想も終られると思われますが、如何なさいますか」
そんな男女の会話が耳に入るから視線だけそちらに流した。
神山が、童磨にとって水煙草以上に心から安らげる存在を連れてきてくれたようだ。
水煙草を吸う姿は、この世の者ならぬ何かと交信でもしているよう。
いや、魂の抜けたような雰囲気だとは常々言われてはいる。
それにしても、交信とは失礼極まりない。
かといって瞑想なんて、そんなご大層なものでもない。
話していることが聞こえてはいる。だから
「おいで」
童磨は無表情ながら、穏やかに手招きをした。
「聞こえてるんですね」といいながら、しのぶはちょこちょこと隣に来てくれた。
そこが定位置だからにほかならない。
童磨は左手に持ったガラスの管から出る煙を、決してしのぶにかけたりしないよう配慮しながら、しのぶを自分の右腕の中に包み込んだ。
右腕で、抱きしめた小柄な少女の頭を指先で擽るように撫で、上を向いて煙草の煙をゆっくり吐き出した。
良い香りのする水蒸気が広がり、上空に白い雲。
しのぶが喉仏の辺りを指先でそぉっと撫でてきた。
「くすぐったいよ」
広がって徐々に消えていく白い雲を眺めながら応える童磨は、相も変わらず無表情。
声にも一切感情がこもらない。
機嫌が悪い訳でも何でもない。
これは、いつだったかしのぶが言語化してくれた感情だ。
どうすることも出来ない、解決策も求めてない。
そんな単なる愚痴に適切な助言を返すのは神経を使う。
どんな返事を求めているのか考えながら相槌をうち、適度なところで締める。
これは思いのほか過酷だ
……
自分自身ではよく理解していなかった感情を、この女が理解させてくれた。
これは『精神的に疲れる』って言うんだって言語化してくれた。
『そんな事をひとりで背負い込まなきゃいけない義務でもあるんですか?』
そう言ったしのぶの問いに、いつか応えたことがある。
『別に義務なんかじゃないんだろうね。でも、やらなきゃいけないんだ』
あれ以来、しのぶはそれが童磨の意思だと理解し、呆れながらも見届けてくれている。
「もしも〜し。聞いてますかー
まだ完全には帰って来てないようですね」
脇腹をつついてくるから、聞こえてますよと言うように、童磨はしのぶの耳元をくすぐり返した。
ぼぉっと、真顔で香りに酔ってるだけで聞こえてはいる。
だからしのぶをここに招き寄せたし、手を握って来たから握り返してやるのだ。
「反応はしてくださるんですね」
しのぶが鈴を転がすように笑う声が耳に心地よい。
ぼぉっと魂が抜けたような顔で、童磨は、その声に酔いしれた。
しのぶが童磨の手のひらをくすぐってくる。
ふふ
……
ふふふ
童磨の喉から小さな笑い声が漏れだした。
やっと、童磨の瞳が少し幸せそうに緩んだ。
そしてしのぶを見つめ、また真顔になる。
「あらぁ
……
今日は重症のようですね」
そんな呆れたような、からかうようなしのぶの声がする。
ただいつものように頭をリセットしてるだけなんだけどな
……
と内心童磨は苦笑した。
普通なら、精神に異常をきたしてもおかしくはない環境なのだという。
別にどうとも思っていないのだが、そう言われるのであればそうなのだろう。
普通は片手で数えられる年頃で、親が健在なのに飾り物の教祖に祀りあげられたりしない。
そのお子様教祖を拝む大人と言うのもおかしい。
幼子の目の前で痴話喧嘩の果てに、両親が無理心中という惨劇を繰り広げられたりしない。
その両親はどちらとも我が子と些とも似ていなかったと言うじゃないか。
そう言われても、童磨にはイマイチピンと来ない。
普通の家庭って
普通の親子って
何だろう?
「普通の二十歳の男が、脳の切り替えと精神休息の為に二時間もぼぉっとしませんよ」
そういいながら、しのぶはぴょこぴょこと身を伸ばす。
童磨の吐き出した煙を浴びようとしている。
「しのぶちゃん
……
なにしてんの」
紙巻タバコやキセルの煙とは違うとは言え
「あまり体にいいとは思えないんだけどなぁ」
童磨は、しのぶの奇行にギョッとしたように瞳を見開き、直ぐに笑顔で膝に座らせる。
ググッとしのぶの腰はあぐらをかいた童磨の膝に押し付けられ、しのぶは立ち上がることすら出来ない。
「変なガセネタでも掴んできた?」
ふふっと、童磨は吐息のみで笑っている。
大して力なんて入れていないように見える。
腕を見ればわかる。
血管も浮かび上がらなければ、筋肉の硬直もそれほどではない。
だと言うのに、本気のしのぶが立ち上がることすら出来ない。
悔しさにしのぶは「きぃっ」と金切り声をあげるが、童磨は気にもとめない。
まだ少し香りには酔っているようだが、口数は増えてきた。
「はいはい、おすわり」
軽口を叩く気にもなってきたようだ
「で、何しようとしたの?」
半笑いで童磨に問われ、そこでやっとしのぶは我に返り
「はっ
……
な
……
なななんでも」
青くなったり赤くなったり
しのぶの様子に童磨は怪訝な顔をした。
「?
……
まぁいいや。それより、晩御飯は食べていくだろう食前酒に梅酒でも用意させよう」
振り子時計をチラリと見てそう言うと
「ああ、ご遠慮します。お医者様にしばらく控えるように言われましたので」
しのぶの返事に、やっと完全に意識がこちらに帰ってきたようで、慌てふためいて しのぶの小さな身体を観察しだした。
「え?しのぶちゃん?
……
どこか具合悪いの?痛い?」
「そう言うんじゃありません。至って元気です。今日は報告に来ました。
……
そのぉ」
そこでしのぶが何故かモジモジしだした。
身体の調子が悪い訳ではなく医者に診察を受け、酒を控えるように言われる。
なんだと言うのだろう。
メディカルチェックで何か引っかかったとしても、酒なんてたまに勧められ口に含む程度
「どうしたの?」
怪訝そうに童磨は問いかけた。
「あのぉ
……
来ないんです
………
で、三ヶ月めなんですが、やっぱり来なくてさすがにおかしいと」
そこで脇に控えていた神山が目を見開いた。
つまりはそういうこと。
神山は気づいたというのに 童磨はなんのことかちっともわかっていない
「?な
……
に」
何が?と問う声と、神山の
「祝膳の用意!赤飯!赤飯の用意」
と、料理人に大声で指示を出す声が覆い隠した。
「ろくさん?祝膳って
……
赤飯なんて俺は
……
」
相も変わらずきょとんとした童磨に、神山としのぶは童磨が全く気付いていないと悟る。
察しろとは言わない。
むしろ、順序立てて話したつもりだ。
話の途中とは言え、あまりにど定番の報告だと言うのに。
「お父様鈍いですねぇ」
まだ平たいお腹に擦りながら語りかけた
「おとう
……
は
……
ぁ?」
そこでようやく気がついた
しのぶの腹を指さし、山を作る
妊娠というジェスチャーだ
しのぶが頷けば、童磨は自分を指指した。
父親は俺?と聞いている。
それにはさすがにしのぶもきれた
「こぉら、それは私が誰とでも手を握ったり、抱きついたり股を開く商売女と思っていたということか」
「わ
……
わぁ
……
違
……
その
……
驚きすぎて」
言葉通り、童磨はただ驚いていただけ。
だが、驚いたあまりに失礼な手振をしてしまった事にさらに慌てふためいた。
これには流石に神山も弁護しない。
ただ額を抑えて首を振る。
「神山さん、童磨にはお赤飯の豆をたっぷり入れてください」
「承知しました。ついでに羊羹とおはぎと煮豆も用意させましょう」
「一週間豆でお願いします」
「一週間でよろしいので?私はてっきりひと月と」
完全に、しのぶの味方となり制裁の準備をしようとした。
「!?ろ
……
ろくさぁん??あ、あの
……
ごめんなさい
……
驚きすぎて
……
今晩だけで許してください
……
豆
……
やだよォ」
その7ヶ月後、生まれ出てたのは父親譲りの白橡色
母親譲りのくりっとした紫の瞳
黒髪に虹色の瞳の双子の女の子
「一人で抱え込もうとしないでください。神山さんと私。この子達も成長したら手伝ってくれますよ」
初乳を与えながら、しのぶは嫋やかに微笑む。
童磨はただ頷いた。
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