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ぽふむん
2025-06-24 08:00:00
6268文字
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鬼化if
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異聞 爪痕を消さないで
童しの記念日2025
鬼化if
爪痕を消さないで のボツにした部分の供養です
鬼化したあと、無限城を二人で出勤中です
こちらも無配コピー本にする予定でした
あれから一体どれくらい時が過ぎただろう。
確かにかつては憎んでいた。
そのはずだ。
この身を毒と染めるまでに。
なのに
いかに虜囚だったとはいえ、介抱され、回復後もそれは懇切丁寧に飼育され
いつしか、なんとも説明しがたい想いを抱くようになった。
この感情はなんだろう?
絆されたのか、それとも?
童磨はしのぶをそれはそれは大切に扱ってくれた。
「目の中に入れても痛くない」という表現を具現化したように、今でも大切に扱ってくれる。
それはとても心地よい。
ただ一つだけ、不満がある
……
それは、いまだに手すら繋いでくれないこと。
指一本触れようとしない。
それは、この男なりの不器用な配慮なのだろう。
今も、スタスタと前を行く。
体格による歩幅の違いを気遣い、かなりゆっくり歩いてくれてはいるようだ。
だと言うのに、自然に三歩後を歩く形になってしまう。
一生懸命その背中を追うのに、追いつけない。
しのぶは思わず、目の前を行くビロードのオペラクロークを掴んだ。
「ん?なんだい?」
童磨が振り返ると、俯いてしのぶは呟いた。
「迷子になりそうなので
……
あんまりスタスタ行かないでください」
「あぁ、歩くのが早かったね。
ごめんごめん。君はち
……
あ、いや 、まだ新参だし、ここは広い。何より変幻自在だからねぇ」
童磨は、ちょこちょこと自分の背中に追いつくことに必死なしのぶをからかいかけ、言い直した。
しのぶを怒らせてしまうに違いないと理解しているからだ。
そうしたら拗ねてしばらく口を聞いてくれないだろう。
そしたら
……
これが寂しいという感覚なのだろう。
心が空っぽになるような気分になる
……
以前だったらなんとも思わなかった虚しさ、寂しさがやってくるだろう。
そしたら耐えられないほど胸が痛いから。
欠けていた心の部品をやっと手に入れた。
それが無くなるのは辛いことだと気づいてしまったからに他ならない。
その時
……
───ならば、手ぐらい引いてやらぬか。この不調法者が───
聞き覚えのある声が、二人の脳内に響いた。
意外に世話焼きなんだろうか。鬼舞辻無惨は。
脳内通信に、童磨はモジモジしながら受け答えした。
「えぇ!無惨様!しかしぃ
……
そのぉ、俺はしのぶちゃんから嫌われておりますゆえ、触るとたいそういやがりまして。
それに
……
手なんか握ったら孕んで
……
孕む?いや〜ん」
───そんな事ぐらいで孕まんわ!───
「あ、そうか。
でもぉ
……
お話してくれるだけで
……
そのぉ
……
十分
……
いや、そのぉ
……
そりゃあ
……
いやいやいや」
童磨は、人差し指と人差し指をつんつん突き合わせ出した。
困っている。
素振りではなく、本当に困っている。
そのようにした張本人はしのぶ。
だけど、しのぶはわかっていない。
ただ首を傾げるだけ。
この鈍感娘を前にして、童磨はゆでダコのように真っ赤になっている。
しのぶより長く生きている。
だけど、実際の経験はそんなにはない。
本気になった存在などしのぶが初めてだから、どうしていいのか分からない。
完全に脳が処理落ちし、おかしな言動をしている。
そんな童磨の様子に、さも愉快げな、悪巧みしているような鬼舞辻の含み笑いが聞こえた。
───くく
……
なるほど。では、黒死牟をそこに向かわせるとしよう。
かつては妻子がいたと言うからな。お前よりその辺は如才なかろう───
無惨の提案に童磨の顔色がさぁっと赤から青に変わる。
上位の鬼とは言え、他の男に触れさせるという言葉に拒否感を起こした。
以前の童磨なら、無惨のこの程度の戯れなら気づいていただろうに、まんまと乗せられた 。
「ダメ
……
ダメです
……
あ〜、し
……
しのぶちゃん。い
……
嫌
……
だろうけど
……
あ~、その~、ま~ま・ま・ま迷子になるよりマシだと思って
……
ね」
童磨は赤くなりながらも恭しく、それはそれは恭しく、しのぶに手を差し出した。
「あぁ、はい」
しのぶは、素直にその親指をきゅっと握る。
すると「うわぁ」とも「ひゃぁ」ともつかない悲鳴を上げ、童磨は再び首まで真っ赤になった。
「わぁ
……
しのぶちゃんの手、ちっちゃくて柔らかくて温か
……
ねぇ
……
あ、ああ
……
俺、気持ち悪いねえ」
───く
……
ククク
……
う
……
くくくく
……
童
……
て───
鬼舞辻と、もう一人誰かが笑っている声がする。
それと、何やらカリカリとペンを走らせるような音が脳内に響く。
この音はなんだろうと怪訝に思いながら、挙動不審な童磨をしのぶはきょとんとした顔で見上げた。
「そうでしょうか?細身の軽量な物とは言え、私は刀を手に取って戦っていた者です。女にしてはゴツゴツしているかと思いますが(この鬼どうしたんでしょう?身体検査が必要かも)」
童磨の返事はない。
顔を片手で覆って天を仰いでいる。
わぁ
…………
うわぁ
そんな吐息だけが聞こえる。
が、しのぶは気にしない。
「あのぉ、握り返してくれないんですか?あなたの手が大きくてつかみきれないんです」
きょとんと、小首を傾げて童磨の顔を見上げた。
「ほぁ?
……
え、あ、あぁ、そう。じゃ、お言葉に甘えて
……
うわぁ
……
あ
……
そのぉ
……
痛く
……
ない?」
まるで包み込むように。
大きな手で、優しく強く握り返してくれた。
しのぶは思わず恍惚とした。
人の手としては酷く冷たい、体温を感じられない手なのに、安心感が強くなだれ込んでくるのを感じたから。
「痛くはありません。
大きな手ですね。冷たくて気持ちいいです」
幼い頃の思い出が蘇り、面映ゆい。
そうだ、こうしておんぶしてくれたり、手を繋いでくれたっけ。
童女の頃のあの日を思い起こし、しのぶは童磨を見上げにこりと微笑んでみせた。
あの頃のことを童磨は覚えていない。
と言うより、あの時は全く意識していなかった。不要な情報の一部としか思っていなかった。
これは童磨にとって新しい情報だ 。
しのぶの笑顔を見た童磨の瞳孔が見開き、さらに頬が染まる。
火を噴きそうだ。
「わぁ
……
なにこれ
……
なにこれ、何これ、なにこれぇ?」
童磨はもじもじもじもじしている。
「あなた、もしかして照れてます?」
「え、こ
……
こ、こ、こ、これ照れてるっていうの?なんか
……
あー、その~なにこれ?心臓が
……
脳が
……
そのぉ
……
ね」
冷たく青白かった顔が赤い。
童磨のそんな様に、しのぶは妙な高揚感を感じた。
(わぁ、面白い♡ちょっとからかっちゃいましょう)
いつもからかってくる意趣返しだ。
人差し指をのばし、掌をこちょこちょ擽ってみた。
「いやん♡しのぶちゃん、それくすぐったい」
「逢い引きみたい」
戯れに言ってみる。上目遣いに童磨の顔をうかがい、腕を絡めてみた。
「へ
……
??は
……
あ
……
あーあいび??」
「逢い引きってしたことがないのですが、こういう時は口付けとか」
「ぁぁああ!!!しの
……
しのぶちゃん、だ
……
ダメだよ町方の素人娘がそんなこと軽々しく口にしちゃ!遊び女と間違われたらどうするの!ほんとにもう。最近の若い子はぁ」
しのぶからしたら、ちょっとからかってみただけなのだが、予想以上の愉快な反応。
本気で叱ってきた。その様が滑稽だった。
思わず久方ぶりに声を出して笑ってしまった。
「あはははは、やだぁ、うふふふ」
童磨はしのぶが笑うのを、ぽかぁんと見つめている。
そのポカンとした間の抜けた表情が面白く、しのぶはさらにころころころ鈴を転がすような笑い声を上げた。
その表情が童磨には眩しい。
「うわぁ
……
うわ
……
うわぁ、なにこれ
……
なにこれぇ。わぁ」
感嘆の言葉しか上げなくなってきている童磨。
しのぶはたまらなく愉快になった。
「やだぁ、なに間の抜けた声出してるんですか
……
こちょこちょ♡」
さらに手のひらをこしょこしょくすぐれば、照れた童磨がさらに腰をくねらせる。
「だ
……
だって心臓が脈打つんだもん。しょうがないじゃない」
「あら?どこか体の具合でも?」
しのぶは童磨の見事な左胸に手を当て、耳を当ててみた。
「う
……
ひゃぁ。や、鬼は体調不良なんて
……
は~は、腹は減ってないし」
「あら、ではどうして?唇を奪い、お抱きになったくせに手を握ったくらいで」
「へ???はあぁああ?
俺しのぶちゃんのくちび
……
抱い
……
そんなこと
……
俺そんな不届きなことは」
「あら、じゃあ信者の方でしょうか。
衰弱した私に、おもゆを口移しでくださいました。寒いと言えば温めてくださいました。だから私は今こうして」
「あ
……
あああ、あれ
…
介抱じゃ
……
そんな下心は
……
ああ、そ・そ・そ・それもそうか」
───小悪魔───
どこからか、くくくっと言うふたつの忍び笑いが聞こえた。
それともう一つ。
ペンを走らせる音。
※
真っ直ぐ歩いていたら行き止まりになる。
しのぶとの手繋ぎで高まった鼓動を落ち着かせるため、童磨は4、5回深呼吸をすると真顔になった。
「ここから飛び降りるよ。しっかり手を握って、せーので行くよ。いちにーの
…
」
(たかい!)
一度経験はあるが、改めてその高さにしのぶの脚がすくむ。
その時
───抱き上げてやらぬか。怯えておるぞ。
おなごにこのような高さを飛ばせる気か───
また、脳に直接声が響く。
「えぇ!?無惨様 、そんな事したらこの子が
……
嫌がりますぅ」
(あぁ、なるほど。
こいつなりの気遣いで、好いた惚れた、腫れたと言いながら、この身に触れもせずに居たんですね。
女ばかりに手を出していると思っていたのに)
意外だと思った。
意外に思いながら、しのぶは童磨を見上げる。
「構いませんよ。私はこの城内は不案内ですので、あなたに身を委ねる他ありません。さぁ、どうぞ」
両手を広げ「存分に抱っこせい」ポーズを取るしのぶに、童磨は仰け反った。
「わわっ
……
なにこれ尊いっていうの?かわい
……
かんわいぃよぉ」
「さぁ 早く」
しのぶは、さらに腕を大きく広げ、抱っこせいアピールする。
ごくんと、童磨の喉が鳴るのが聞こえた。
「し
…………
失礼します。ごめんね」
意を決した童磨は、しのぶの脇に右腕を回し、おしりの下を左腕で支え抱き上げた。
「軽っ!!ちっちゃっ!!もっと食べさせなきゃ
……
いや、食事の配合もうちょっと変えなきゃね。さ、しっかり掴まって」
そう言いながら、ぴょんっと体格の割に軽やかに飛び降りた。
内臓がぐぅっと持ち上がる感覚が気持ち悪い。
しのぶはぎゅうっと太い首にしがみつく。
先程までの慌てふためいた、オロオロした顔でも、軽薄な薄ら笑いでもない。
自分一体ならどうということもないだろう、飛び出してくるトラップからしのぶを守ろうと真剣な凛々しい横顔。
しのぶは目がそらせなくなっていた。
たすんと床に着地した感覚がした。
ほっと一息つくと、男の肩に頭を持たせかけた。
童磨から普段より高い声の悲鳴が上がった。
「わ、わわわ、落とすといけないから。ねぇ、あの」
頬を染め、再びしどもどあたふたしだす大男。
あの摩訶不思議な、からくり仕掛けの空間を移動していた時の凛々しい表情とは違う。
人では無くなったという時の、二十歳くらいの青年の姿。
いやもう少し幼く見える。
首筋から甘いいい匂いがする。
その芳香がたまらない。
しのぶは思わず首筋に顔を埋め匂いを嗅いでいた。
この匂いはなんだろう。
思わずかぷりと軽く噛み、出てきた血を舐める。
んぁ♡と甘い悲鳴が耳に心地よい。
鼻を埋めてみた。
「美味しい♡あまい♡
なにかつけてますか?いい匂いします」
「えっ・・・そこには何も・・・塗香なんて掌になするだけだし、香木焚いてるのなんか~いつも嗅いでるから~知らない匂いじゃ~ないよね?」
男の声が上ずってくる。
頭を預けた厚い胸からは、ドックンドックン、早鐘のような心音が聞こえてくる。
「鬼ってこんなに心拍数早いんですね。人だったら何らかの病変を疑うレベルです」
鬼の表情を間近で見ると、目が泳いでいる。
かなり動揺しているようだ。
「し
……
知らない、普段こんなに高鳴ってないんだよ」
「今日は何かありましたか?」
「わ
……
わ、わ、わ、わ、わ、わかんない」
体調のせいでは無い。
だって鬼だから。
どうやら、しのぶの顔を見て、肌が触れるとこうなるようだ。
しのぶの検証という名のイタズラ心が火を噴いた。
「鬼って、意外に温かいんですね。少し肌寒いのでこうしていて良いですか」
さらにぎゅうっと童磨の首筋に抱きついた。
胸板をつつく。
さする
「ひゃ!!!さ
……
寒いのなら俺のマント貸
…………
うわぁ
……
や、やわら
……
きもちい
……
なんか心臓が
……
なにこれぇ?なんか、下腹部が
……
いた
……
むじゃんしゃまぁ
……
なんですかぁ?これぇ?」
くくくと脳内に忍び笑いが聞こえてきた。
───さあな
……
ククク。
その男、存外に初
…
いや、遊び女の相手は手慣れていても素人娘の相手は慣れておらぬか───
脳内に響く声の内容にしのぶはピクりと反応し、じっとりと童磨をねめつけた。
遊び女
その言葉に胸がざわめいた。
なんだか面白くない
そんなしのぶの想いを見透かしたように、様子がおかしくなる童磨をからかうように、脳内通信で鬼舞辻は爆弾を落とした。
───そうだ。よく遊び女と戯れておったわ。お主のよう小娘とは違う、妖艶な女と───
(へぇ
……
私みたいな乳臭い女とではなく
……
ねぇ)
「へぇー、やっぱり?
噂通り。今まで女の人といーっぱい遊んだんですねぇ」
しのぶは妬いているが、童磨は気づかない。
「へ?あ
……
うん、遊んだよ?
……
金毘羅船船とか、五重の塔とかうさぎさんたぬきさんとか投扇興とか」
正直に返す言葉に、しのぶの顔がきょとんとしたものになる。
遊びと言っても色々ある。
「あぁ、あはは投扇興って言うのはね、蝶と呼ばれる的に向けて扇を投げる。上手く当てれば的が飛び散るよね。その形で点数をきそう遊びだよ」
「へ
……
ぇ」
しのぶの想像した遊びとは違う。いや、それも一般であそぶ遊びではないが
遊郭で遊ぶが性行為とは限らない。
───童磨
……
普通の娘は芸子遊びなど知らぬぞ。遊里で遊ぶと聞いたら色ごとを想像するものだ───
また脳内に声が響く
言われている意味の分からない童磨の長考タイムが入る。
「ん~まぁ、だいたい負けた子は一杯飲むのが決まりだから、酔ってじゃれついて来る子はいたかなぁ」
童磨が、本当に不思議そうに、理解出来ないというように首を傾げていたが
……
───そうだ。妖艶で手練な女とその後も戯れておったわ(目隠し鬼だがな)───
(むっかぁ
……
やっぱり。このバカ)
ばちーん
しのぶは思いっきり童磨の頬を張った。
他にどんなことをしたのだろう。
触れさせただけで許せない。
我慢できない。
(これは私のものだ)
しのぶは頬を膨らませそっぽを向いた。
「えー??なんでぇ??なんでしのぶちゃん怒ったの?ねぇ?ねぇーーー」
「知りません」
「だからなんで怒るの?ねぇ?」
無限城内を童磨の絶叫が響き渡る。
鬼舞辻の笑い声が脳内に響く
しのぶの機嫌と誤解が解けるのにひと月を要した
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