ながひさありか
2025-06-23 23:50:58
15591文字
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星座のあとで/余談の日々 - 臨時モデル

アグライアの事務所で働いている男×雇われカフェ店長現パロ。
急遽モデルの代わりを務めることになったファイノンと、出来栄えにきゅん……としてるモーディスの話。勲功アイコンネタ。

このシリーズ(https://www.pixiv.net/novel/series/13350804)の6話目(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24249077)に出てきたやたらと喋るモブがちょっとでます。

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「ごめんトラブルで今夜は帰宅が遅くなりそうだから、先に寝てて……
 午後二時過ぎに店に現れたファイノンは六人分のコーヒーとチキンサンドをテイクアウトで注文したかと思うと、この世の終わりかと思うほどのため息を吐いた。表情こそ変えなかったが、モーディスは内心少しだけがっかりしながら「わかった。あまり遅くなるようなら事務所に泊まって来い」と口にし、注文を通す。
 キッチンから顔を覗かせていたバイトリーダーに「仕事をしろ」と言うかわりに一瞥を向けると、モーディスと視線が交差する直前に逃げて行く。
「せっかく今日は早めに上がれると思ったのに……
「トラブルは仕方がないだろう」
 会計を終えるまでの短い時間で個人的な会話を締めると、モーディスはホールをバイトに任せて、テイクアウト容器の準備をしにキッチン側へ行く。平日のランチタイム後は数時間キッチンを一人にしているため、六人分の準備は大変だろうと考えたからだ。
「なんかしょんぼりしてましたけど、店長もしかして喧嘩でもしたんですか?」
「違う。勝手な詮索をするな」
 喋りつつも物凄い速さでサンドイッチを作っているバイトリーダーを一応たしなめつつも、「仕事がトラブったそうだ。間食を買いに来たらしい」と結局答えてしまった。下手に隠すと、暇な時間に勝手に妄想を膨らませて、彼女の退勤時にいらないアドバイスをされてしまうからだ。
『今日は十九時には上がれそうだから、迎えに行くしそのまま外食に行こうよ』
 今朝方、ファイノンにそんな提案をされた。明日は久々にファイノンと休日が被っていたので、せっかくならいきつけのバルではなく、昨年オープンした評判の良いビストロに行こうと思っていたのだが、残念ながら次回に回すしかなさそうだった。
 モーディスは共有マップサービスにピン留めしているビストロのステータスを『 』から『重要』に変更しなければ、と思いながらテイクアウト容器を六人分セットし、コーヒーを淹れる。紙袋に什器をセットし、一旦ホールへ戻ると「車か?」とファイノンに尋ねた。
「うん、持ち帰りに支障はないから大丈夫」
 椅子に座ったファイノンは、難しい顔をしながら高速でメッセージのやり取りをしている様子だった。店外であれば電話をしているのだろう、と考え、「車で待っていろ。持って行ってやる」と口にした。
「いや、電話したくなくてここに居座ってるんだ」
 いよいよ眉間に皺を寄せたファイノンの珍しい表情に、モーディスは首を傾げる。
「? そうか。サンドイッチはもうしばらく待て」
「あんまり急がなくて大丈夫」
………………トラブルが起きているのではないのか?」
「起きてる。でも事務所に帰るのを引き伸ばしたい」
 真剣な様子で六人分のコーヒーの入った紙袋を受け取ったファイノンは、引き続き高速でメッセージを打ち返している。
 仕事の話は踏み込まないとお互いに決めているので、モーディスは「そうか」とだけ呟き、サンドイッチを受け取りにキッチンへ戻った。六人分のサンドイッチがちょうど容器に詰め終わっており、「ベストタイム更新です」と誇らしそうな顔でバイトリーダーが宣言した。
「ふむ……、盛り付けも重さも規定通りだな」
「当然ですよ、舐めてもらっちゃ困ります。
 鼻高々に宣言している彼女から容器を受け取って紙袋に詰め直すと、「その調子で仕込みも頼んだぞ」と言い残して再びホールへ戻った。お喋り癖以外は有能なんだが、と考えつつ相変わらずスマートフォンの画面を睨んでいるファイノンに声をかけ、紙袋を渡す。
「ありがとう。思ったより早くて残念だけど、これ以上逃げていられないみたいだから事務所に帰るよ」
「逃げる? お前が仕事から?」
 あまりに意外なファイノンの一言に、モーディスは訝しんだ。
 時々「アグライアって本当に人使いが荒くてさ……」とファイノンが自宅で愚痴を溢すことぐらいはあったが、仕事を投げ出すのを見たことはなかった。本当に大変なんだ、君が二時間ハグしてくれないと明日から頑張れない、とかなんとか、少しだけ面倒臭いおねだりをされることはあっても、逃げたいだのやめたいだのと口にしたことは一度もない。なので、「逃げていられない」と言う言い回しが少し気になった。
「気にしないで。ちょっと僕には荷が重いなと思ってるだけだから」
「そうか。なに、お前なら大丈夫だろう」
 モーディスはスマートフォンをジャケットの内ポケットにしまい、紙袋を両手で持ち上げたファイノンのかわりに店のドアを開けてやる。
 ファイノンが横を通り抜ける数秒の間に「車のドアを開けてやるのはやりすぎか」と考えていると、「なあ」とファイノンが声をかけてくる。
「両手が塞がってるから君からキスしてくれないか?」
…………………往来だぞ。甘えたことを抜かす暇があるなら、さっさと始末をつけて帰って来い」
 一瞬してやるべきか、と考えそうになった自分の思考を断ち切るために、モーディスはわざと吐き捨てるように口にした。本心を言えば別に道端で頬にキスをしてやるくらいは構わなかったのだが、流石に職場が近すぎる。
 モーディスの返答にちぇ、とファイノンがわざとらしく唇を尖らせたかと思うと、眉を下げた情けない顔でぶつぶつと呟き始める。
「始末がつけば良いんだけど、というか、アグライアが考え直してくれればな。……まあでも時間もないし、しょうがないか」
………………?」
 何だかよくわからない独り言だったが、帰宅したファイノンがもし話せるようなら聞いてやるか、とモーディスは思う。
 はぁ、と盛大なため息を吐いたファイノンが器用に助手席のドアを開けるの認め、モーディスは「夜食は冷蔵庫に入れておく」と声をかけて店へと戻った。

   *

 午後八時、バックヤードで食品や備品の発注処理をようやく終えたモーディスは、閉店作業を副店長に任せて退勤した。
 店外でスマートフォンを開き、ファイノンから「意外と早く終わったよ!」と言ったような連絡が入っていないかと期待したが、残念ながらそうはならなかった。休憩を取る暇もないのか、ファイノンからは泣き言ひとつ送られて来ておらず、お気に入りのカフェの季節メニューのお知らせや業界ニュース速報等のお知らせの通知があるだけだった。
 残念に思いながらもカフェメニューに一通り目を通し、今月は特に惹かれるものはないか、と自店の季節メニューの出来栄えに満足してアプリを閉じる。
 地下鉄に乗り、帰って何を作るかと考えはじめたところで、定期購読している料理雑誌の最新号が昨日配信されたことを思い出した。スマートフォンで見るには少し読みづらいが、写真を眺めるだけでもなにかピンとくるかもしれない。アプリを立ち上げると目次を確認し、数ページスライドする。
 料理系インフルエンサーの眩しい笑顔と華美な家庭料理に目を止め、工程が面倒すぎなければ明日はこれにするか、と思いながらさらに数ページスライドする。
 女性読者をターゲットにしている雑誌のため、途中に化粧品やスキンケア用品の広告も挟まっている。最近は男のモデルも増えたな、とそれ自体にはこれと言った感情もなく、リップを唇に当てた美男子がこちらに視線を向けている誌面をスライドしようとして、左下に「メイク&ヘア&スタイリスト:アグライア」と記載されていることに気がついた。
『スタッフがちょっと増えたから、最近はファッションデザインだけじゃなくて美容業界全体に手を広げてるんだ。だから余計に忙しくてね……
 数ヶ月前にファイノンがそんなことを言っていたが、その時のモーディスにはあまりピンと来ていなかった。美容に関心が全くないわけではないが、モーディスは基本的にこれと決めたものを使い続ける性分だ。
 反対にファイノンは仕事にしている割にはこだわりがあまりになく、アグライアに「もう少し気を遣いなさい」と定期的に様々なものを押し付けられている。こだわりがないのでありがたく使っている様子だったが、そんなファイノンから、「これは君にも合うかもしれない」と時々トレンドのスキンケア用品を貰うことがある。
 と言っても、なくなってしまえば基本的にリピートはせず、以前使用していたものに戻っている。だからトレンドには疎い。
 故に、意識しない形でファイノンの仕事を見ることもあるのか、となんだか感慨深く感じた。
 地下鉄を降りて帰宅すると、モーディスはさっとシャワーを浴び、タブレットで先ほどあたりをつけていた料理を見直した。
 材料と工程を確認し、冷蔵庫の残りや調味料の詰まった棚を見ながら買い物メモを作ると、栄養素だけを考えた色味の雑な夕飯を作って食事を終える。
 十時半を過ぎてもファイノンから連絡は来なかった。これは日付が変わるな、と思いながら雑誌の残りに目を通し、頭の中で夜食を組み立てると、髪を結び直してエプロンを付ける。
 間食か夕食にサンドイッチを食べただろうからパンはやめておくか、と思いながら牛もも肉の塊を取り出すと、下味をつけて置いておき、サラダに取り掛かる。
 トマトときゅうり、ピーマン、赤玉ねぎとフェタチーズをキューブ状に切り、塩胡椒とオレガノを振ってよく混ぜる。ドレッシングは好みでかけてもらうか、とガラス容器にサラダを移すと、マンゴーとザクロのビネガーにオリーブオイルを混ぜてドレッシングを作り、サラダと一緒に冷蔵庫にしまった。ファイノンは放っておくとプロテインバーの類の味気ない携帯食か肉ばかり食べる男なので、ビタミンが枯渇しがちだった。別に嫌いな食品が多いわけではないようなので、食べさせること自体に苦労はない。
 サラダをしまうとフライパンでオリーブオイルを熱し、先ほど下味をつけて放置していた塊肉の表面に軽く焼き後を付ける。
 モーディスはじゅわ、と肉の焼けて行く良い匂いに口角を持ち上げながら、蓋をして、片面を五分ずつ弱火で焼く。
 火を止めると、肉を取り出さず、蓋をしたままタイマーを四十分にセットする。
 余熱で放置している間にいちじくのジャムとオレンジジュースを混ぜ、レンジで少し温めた。出来上がったものにピンクペッパーを少し入れたソースを作っておく。
 メモをつけないと間違えそうだな、と気づき、「サラダ用」「肉用」と付箋に書き、容器に貼り付けて、冷蔵庫にソースをしまう。
 肉が仕上がるまであと二十分もあるな、と思いながら一度手を洗い、スマートフォンを確認する。通知音がなかった通り、ファイノンから連絡は入っていない。
 一応SNSも見てみるが、ファイノンのプライベートアカウントも、事務所の広報アカウントにも更新はなかった。
 この所、俺より働き詰めになっていないか? とモーディスは眉根を寄せる。コレクションの後ほど疲弊している姿はまだ見ていないが、残業が多い、と言うより勤務時間が少しずつ長くなっているような気がした。
……キスくらいしてやればよかったか」
 日中のやり取りを少しだけ後悔していると、タイマーがけたたましい音を立てた。モーディスはハッとしてタイマーを止めると、手を洗って調理手袋をつけ、もも肉をまな板に乗せる。
 はじの方を薄めにスライスし、少しだけ取り分けていたソースを垂らして味見する。
「悪くない」
 味と火入りの完璧さに満足すると、残りもすべてスライスし、皿に盛り付けてラップをかけ、サラダと同じように冷蔵庫にしまい、調理器具を全て片付けた。
 ファイノンがいれば今頃つまみのナッツでも出してやっている頃か、と思いながら寝支度を始め、「先に寝る」とメッセージを送り、ファイノンが普段眠っている方に自分の枕を移すと、広いベッドで目を閉じた。

   *

……そんなことがあるのか?」
 午前六時にモーディスが目を覚ますと、隣にファイノンの気配や熱の名残もなく、眠る前に送ったメッセージには「既読」の通知だけが残っていた。
 あの時間から今朝になっても解決しない「トラブル」とはなんだ? と思いながら、日課のワークアウトに出かけた。普段は走っている間に余計なことをなるべく考えずにいるが、今朝はあまり走ることに集中できなかった。
 ファイノンの徹夜業務はままあることだったが、トラブルで連絡が取れないパターンは今までになかったので、少し心配しすぎているのかもしれない。
……まあ、何かあればアグライアから連絡があるか」
 悪い想像をする前に考えるのを辞め、帰宅して汗を流す。
 肉は後で自分で食うか、とキッチンに立ちながら考え、いつファイノンが帰ってきても良いように、軽めの朝食の準備をしておく。
 もしかすると疲れ過ぎて食べないかもしれないな、とは思ったが、万が一腹を空かせていたら可哀想だったからだ。

 ——♪♪♪
 バナナをカットしている途中で、ようやくスマートフォンが鳴る。ナイフを置いて手早く手を洗うと、スマートフォンの待ち受け画面に表示されたアイコンをタップしてメッセージを呼び出す。

『おはよう。やっと帰れる』
>おはよう。長丁場だったな。運転するのか?
『いや、事故りそうだから事務所に置いてきた。地下鉄に乗ったから少し時間がかかるけど、二度寝しないで起きてて欲しいな』
>起きてる。昨日はお前にキスしてやらなかったからな。
『あのさ、なんで通話できない時にそんなことを言うんだ?』
>? 通話の有無で何か状況が変わるのか? 帰ったらしてやる。

 テンポよく返ってきていたファイノンの返事が一度途切れ、長い間「入力中」の文字が表示されている。
 モーディスがどうした? と入力しかけたところで、メッセージが表示される。

『やっぱり駅まで迎えに来てくれるかい? 一時間後には着くと思う』
>わかった。朝食はどうする?
『今は気分じゃないけど、君の顔を見たら食べたくなるかも』
>準備はしておく。

   *

 駅で出迎えたファイノンは当然のように疲れ切っていて、疲れたよ〜、と朝の通勤中の人目も憚らず抱きついてきたが、モーディスも今朝は許してやることにした。
 ファイノンは昨日店で別れた時とは違う服を着ていて、汗のにおいもしないので、どうやら事務所でシャワーを浴びてきたらしい。
 泊まり込み作業が発生するから仮眠室とシャワールームがあるんだ、と以前聞いたことがあったが、昨晩は仮眠を取ったのだろうか、と疑問が上る。
「少しは眠ったのか?」
「一時間くらいうとうとした記憶はあるけど、椅子に座ってたから体が痛い」
 大変だったな、とモーディスは素直に労いを口にし、キスしてやろうと唇を寄せる。
 しかし、メッセージではして欲しそうだったくせに、「帰ったら」と何故かきっぱりした顔で肩を押される。
 不思議に思いつつもとりあえずファイノンの頬にキスをし、ならさっさと帰るぞ、と踵を返す。
「おい、帰るんじゃないのか?」
「このまま帰りたい」
 背中から抱きついて腕ごと抱きしめてくるファイノンにため息をつきつつ、モーディスは簡単に拘束を外す。疲れすぎておかしくなっているのだろうと判断して、ファイノンの手を握り、半ば引きずるように自宅へ向かう。
「それで、トラブルとやらは解決したのか?」
「一応ね。僕としてはかなり不本意だったけど」
 はぁ、とため息が落ちる。
「でもまあ、君に見せてもいい出来にはなったかな」
 不思議な言い回しに、モーディスは少し遅れてついてきていたファイノンを振り返る。
 疲労の滲む顔には普段よりさらにしまりのないヘラヘラとした笑顔が浮かんでいて、まるで褒められるのを待つ犬のようだった。
「と言っても今は見せられないんだけどね。正式発表されたら教えるよ」
 どことなく誇らしそうに、けれどもへにゃりと笑ったファイノンの顔を見つめながら、モーディスは無意識に強く手を握り返していた。
 ファイノンがこんな風に屈託なく笑うと、モーディスの脳に少し処理落ちが発生し、見つめたまま数秒沈黙してしまうのだが、モーディス自身にはあまり自覚がない。
 ファイノンが「モーディス?」と不思議そうに首を傾げたところでハッとし、モーディスは「いや」と首を振る。思わずファイノンの手をさらにグッと引いて早歩きになると、「うわ」と情けない声を上げながら、ファイノンがよたよたとついて来る。
 その姿をチラリと振り返り、モーディスは「別にいつもと変わらないか」と一瞬走った(ような気がする)妙な感覚に眉を寄せた。

 眠いと疲れたを繰り返すファイノンを宥めながら帰宅すると、ファイノンからジャケットを預かってコート掛けにかけておく。そのまますぐにリビングへ向かおうとすると、モーディス、と背中に声をかけられた。
「なんだ」
 振り返ったモーディスの肩にファイノンの手が置かれ、青い瞳が真っ直ぐに視界に入り込んでくる。今朝の空の色と同じだ、と眩しい青さに瞬きをすると、壁にそっと背中が押し付けられた。
 見つめあったまま、ファイノンの視線の熱っぽさにモーディスは反射的に瞼を閉じ、重ねられた唇を受け入れた。
 触れるだけの優しいキスは望まれていないのか、ファイノンの唇がモーディスの唇を食むように押し付けられ、濡れた舌が性急に唇の隙間に入り込もうとする。
「ん…………、」
 抵抗する理由もなく、モーディスはねだられるままに唇を開き、ファイノンの髪をぐしゃ、と片手で撫でた。
 ぬるぬると舌先が触れ合い、ぱちっ、とモーディスの脳内で泡が弾けるような感覚がした。は、は、とキスの合間に息を吐き、体の中心に熱が落ちる感覚に肌を震わせる。
 ちゅく、ちゅ、ちゅう、と何度もファイノンが小さく音を立てながら舌を吸ってくる。水音に鼓動が速くなるの感じながらキスに応えていると、ゆっくりとファイノンが腰を撫でてくる。
 モーディスは下半身にきゅっと力を込めてしまい、思わず、中で締め付けるところを想像してしまった。何を考えているんだ、と唇を今度は自分からファイノンに押し付け、首に腕を回す。
 腹に擦り付けるように体を密着させ、絡ませあった舌の先端を強く吸い上げようとすると、唇が逃げていき、こら、と囁き声が漏れる。
「これ以上はしたくなっちゃうから、一眠りしてからにしよう」
……………………
「うわ、わかりやすく物足りなそうな顔してるな」
「していない」
「してるよ。君は自分の顔を見るのに鏡が必要だからわからないだろうけど」
 あはは、と笑ったファイノンの表情と声のトーンに、モーディスは身のうちで起こりかけた炎の存在を忘れることにした。
 こんなキス、、、、、がしたかったのは本当なのだろう。けれど、ファイノンの貼り付けたような笑顔に浮かんだ疲労も本物だったからだ。
「明日は仕事か?」
「んー、どうかな。アグライアから連絡が来なければ休みだけど、五分五分な気がする」
 ベッドに連れていくか、と手を引こうとすると、駅でしたがったように背中から抱きしめられて、触れ合った頬にキスが落ちる。
 寝たいんじゃなかったのか? と疑問に思ったが、これもきっと疲れすぎの奇行だろう、と決めつけて、ファイノンにしがみつかれたままずりずりと鈍足でベッドへ向かう。
 たどり着いたベッドで無慈悲にべりっとファイノンを剥がし、「寝ろ」とベッドに座らせると、靴を脱がせて靴下も回収する
 ファイノンがスラックスとシャツを脱いでいる音を聞きながら適当なTシャツを取り出し、ファイノンに渡して脱いだ服を受け取る。
「君は二度寝しないのかい?」
 Tシャツと下着姿のファイノンが洗濯物を持って行こうとするモーディスの腕を掴み、甘えるように上目遣いで見上げてくる。
 モーディスはそっと瞳を細め、その顔を見下ろした。
 わがままが通ると思っている時の表情だったが、甘えた顔をする男の表情に浮かぶ疲労に、ちくちくと胸が傷む。本来の予定であれば、昨晩は二人で外食をして、きっとこの時間はまだベッドで微睡んでいただろう。
 なので、その顔で何でも通そうとするな、と小言を言うのはやめてやる。
 モーディスは回収した服を洗濯機まで持っていくのを諦め、椅子に放り出すと、自分の履いていた靴と靴下も床に放り出し、ベッドに膝立ちになった。
 ファイノンの頬に手を添え、頬骨を親指の腹で優しく撫でてやる。
「さほど眠くはないが、お前の抱き枕にはなってやる」
「本当に? 嬉しいな。じゃあ一緒に寝よっか」
 ぎゅぅ、とファイノンに抱きしめられ、やや乱暴にベッドに体が倒される。
「早いな」
 ものの数秒でファイノンの寝息がモーディスの肌に触れ、ファイノンの高い体温がじわじわと肌に染み込んでくるような感覚がした。モーディスはファイノンに言った通りさほど眠くはなかったが、それでも瞼を下ろす。
 今日、急ぎでやらなければならないことは別になかった筈だが、と事前にファイノンと合意をとったスケジュールを思い出す。
……特になし)
 慣れたファイノンの体温がそばにあるからか、モーディスの意識もだんだんとほどけて行く。

   *

 二週間後の夜、先日行けなかったビストロで二人で食事をし、レバーパテが良かっただとか、あの鴨のコンフィは浴びるほど食べたかった、なんて会話をしながら帰宅した。先日の労働で休日が潰れた補填として、アグライアが好きな日を振替休日にしていいと言ってくれたとかで、モーディスの休みに合わせて、明日は揃っての休日だった。
 ビストロでもそれなりに飲んだはずのファイノンはまだ飲みたりないらしく、炭酸水でオレンジのジンを割っている。
 少しだけ顔が赤くなっているのを見ながら、「何かつまむか?」とモーディスは尋ねた。
「今夜は食べすぎちゃったからやめておくよ」
「一晩くらいいいだろう」
「君にしては珍しいな。でもどうせ『その分運動すればいい』とか言うんだろ?」
「当然だ」
 つまみがいらないのなら日記でもつけるか、とモーディスは後ろで結んでいた髪を解き、棚にしまった日記を取り出す。
 背後から小さなバイブ音が聞こえ、振り返ると、ファイノンが「嫌な予感……」と言いながら仕事用のスマートフォンを取り出していた。ファイノンは険しい顔をしていたが、文面に視線を動かしてすぐにその表情が緩み、高速で何かメッセージを返している。
「モーディス、ちょっと見てほしいものがあるんだけど」
「見てほしいもの?」
 にこにこと笑顔を向けてくるファイノンに首を傾げると、ファイノンが「アグライアが君なら大丈夫だろうから一部見せても良いって言ってくれて」と言いながら、仕事用のタブレットを鞄から取り出した。
「明日から展開予定の広告でさ、驚かせたいような驚かせたくないような……と思ってたんだけど」
 えーと、と画面に触れながら見せても良いものを選んでいるらしいファイノンの顔を見つめ、モーディスは「広告」と口に出す。
 先日雑誌で見たような「あれ」を、もしかするとファイノンが担当したと言うことだろうか。
 しかし、とモーディスはクローゼットの隅に置かれている、「外で着るな」と何度か言い聞かせたファイノンの「本当の」私服のことを考えた。少なくとも、なぜその業界で仕事ができているのかと疑問に思うほど、センスがいいとは言い難い。だからアグライアの下で事務方、もとい雑務全般を担当しているのだろうと思っていた。
 最近はマネキンごと服を買うことをようやく覚えたらしく、以前より突飛な色合わせや柄の服を買うことは無くなったが、今でも仕事着を買う際はモーディスが基本的について行ってやっているし、仕事で人前に出る機会が生じた際は、アグライアから色事細かく指定を受けているのを知っている。
 素材は悪くないのだが、とモーディスは室内灯に照らされたファイノンの新雪のような髪に触れる。
「ん?」
「気にするな」
 俺より適当にしているはずなのだが、と髪に指を差し入れて、少し冷たい、艶やかな指通りを確かめる。青い瞳がぱちぱち、と瞬かれ、眉を下げた苦笑に変わる。
「待ちくたびれた? 今見せるよ」
 これこれ、とタブレット画面をこちら側にひっくり返したファイノンに導かれるまま、モーディスは視線をタブレットに向ける。
…………………………
 瞬時には、そこに写っているのが誰なのかわからなかった。いや、わからなかったと言うより認識できなかったと言うべきかもしれない。
 モーディスは無言で画面と隣のファイノンの顔を見比べ、ファイノンの手からタブレットを取る。
「この日撮影予定だったモデルが事故に合っちゃってさ。元々僕と体格が似ているしイメージと齟齬もないからってアグライアがその、どうにかしてくれたというか」
……………………………
 モーディスはファイノンが照れ隠しのようにぺらぺらと続けている言葉を左から右に聞き流し、まじまじと画面に表示されている画像を見る。
 画面には黒いシャツの胸許をややはだけさせたファイノンが、椅子の背もたれに両腕を置いてこちらへ視線を送っている。どこか冷たい表情に冴え冴えと輝く青い瞳が恐ろしく綺麗で、髪の白さと肌の白さが黒いシャツのせいかいつもより際立っている。マット寄りの白い肌に、濡れたような唇の血色に目が吸い寄せられ、慌てて視線を下げ、動揺した。裸の襟口から覗くファイノンのゴールドラインのタトゥーと、黒いシャツを流れる細い金のチェーンネックレスが妙に煽情的で、ぎゅっ、と心臓を掴まれたような気がした。
 椅子を掴む黒いハーフグローブに覆われた手の甲に浮かぶ太い血管の無骨さに、モーディスはそういえば案外指が長い男だった、と普段、執拗に責めてくる手管をなぜか思い出してしまう。
 大股で開かれた太ももの筋肉が服の上からでもわかるほどはっきりと浮いており、普段は外にはねさせている後ろ髪を結び、露出させた右耳には黒い星を連ねたようなアクセサリーがついている。イヤーカフとピアスを組み合わせたようなそれを見、モーディスはもう一度隣のファイノンを見る。
 ピアス穴などあったか?
「モーディス? あの、一言ぐらい感想がほしいんだけど、なんて……
 ないな。となるとピアスに見えるだけか、とモーディスはピアス穴のないファイノンの耳を確認しながら考える。
 ふと、なにやら恥ずかしそうに照れて、いつも以上にへらへらした笑みを浮かべているファイノンの顔がようやく認識でき、もう一度画面を見る。
 思わず画面を右にスクロールしてしまい、あ、と小さく声が聞こえた。もしかすると見せていいのはこの一枚だけだったのだろうか、と冷静に考えているふりをしながら、モーディスは、そこに映るファイノンの瞳の冷たさ、と言うより、サディスティックにさえ見える無表情さで、グローブの指先を噛んで外そうとしている姿に小さく息を吸った。
 全く見たことのない表情だ、とまでは言わない。時折ファイノンがこんな風に、強烈な独占欲を丸出しにしたような冷たい表情をする瞬間を知っている。だけどそれは殆ど上手く隠されていて、例え浮かんでもすぐに消えてしまうものだった。だからこんな風に、青い瞳がまるでこちらを射抜くように強く見据えてくる顔をまじまじと眺めたことはなかった。
 普段人好きのする柔らかい顔をしているからだろう、冷たい表情をしたファイノンの知っているのに知らない表情に、モーディスは鼓動が跳ねるのを感じた。
 広告? ……これが? お前のこんな姿を不特定多数の人間が、例えば俺が流し見した雑誌の隙間に挟まっていたりするのか?
 頭の奥がかっ、と熱くなるような感覚がし、恥ずかしいような、誇らしいような、不思議な気分だった。こんな風に冷たい表情でこちらを責めるような顔をしているファイノンが嫌いかと問われればそんなことはなかったが、好きかと言われるとやや返答に困ってしまう。普段の何も考えていないふりをしている優しい顔は勿論好きだし、その方が「らしい」とも思う。
 こんな風に、安易に近づけば最後、両腕に捕えられて食い殺されそうな雰囲気をしているファイノンが常時隣にいるのは、きっと落ち着かないだろう。
「あの〜、モーディス……? そんな怖い顔しなくても……。そりゃ、アグライアとかトリビー先輩たちは褒めてくれたけど、実際はあんまり似合ってないかもとか思ってるよ……。サイズ直してる暇がなくてシャツのボタンも実はしまらなかっただけだったりするしね」
 モーディスはその言葉に、自分が画面の裸の胸許を無意識に指でなぞっていたことに気がつき、慌てて手を引いた。
 無言でファイノンにタブレットを返し、「そんなことは言っていない」とややぶっきらぼうに口にする。
「見慣れなくて驚いただけだ」
……君、もしかして」
 タブレットを傍に置いたファイノンはおろおろとモーディスの顔を覗き込んでから、あれ、と声を上げる。
 モーディスの少し赤くなった顔ににま〜、と口許を緩め、所在なさそうに膝の上でもぞもぞと指の動く手に片手を重ねる。
「ちょっとドキっとした? 惚れ直しちゃった?」
……………………………あれが広告になるのか、」
 質問に答えないモーディスの声は、彼にしては随分と小さい声で、その声音は尋ねているのか、独り言なのかいまいち判然としなかった。ファイノンは問いだと判断し、「うん、webと雑誌とSNSかな」と答える。
 今回はアグライアのアクセサリーブランドの新作の宣伝を兼ねていて、シャツとスラックスも販売される予定の一つだった。自分がモデルをする日が来るとは思いもしなかったし、向いてはいないな、とも思ったので二度としないだろうが、撮影直後にデータチェックをアグライアとしてOKももらっているし、見られる物にはなっているはず、と感じていた。
 ファイノンにモデルの経験はなかったが、今まで散々アグライアの作品を目にしてきたし、アシスタントの真似事でモデルに指示を出すこともあった。今回の撮影に関してもコンセプトは全て頭に入っていて、アグライアが「危険な香りのする男性の美しさ」だの、セクシーさとヴァイオレンスの中間を目指してください、だのと大真面目に練っていたのも聞いている。
 昔、ちょっとだけ演劇に興味があった瞬間があり、表情の作り方の基礎だけはなんとなく頭に入っていた。
 普段ならこんなキザったらしい仕草の全てに恥じらいが乗るだろうが、ファイノンは「これは仕事だ」と割り切った。そうすると、指示された通りに表情を作るのは意外と苦ではなかった。
 意外と僕ってちゃんとかっこいいんじゃないか? と自惚れそうになったりもしたが、果たしてモーディスもそう思ってくれるだろうか、と少しだけ不安だったのだが……、どうやらそれは杞憂だったらしい。
 モーディスはファイノンに手を握られたまま、自分から手放したくせにちらちらとタブレットに視線を送っていて、明らかにそわそわしている。
「僕がかっこよすぎて困ってる?」
「自惚れるのも大概にしろ、と言いたいところだが……そうだな」
 恥ずかしそうにはにかむモーディスを、ファイノンは口を開けてじっと見つめ返した。視線を合わせようとしてくれないモーディスの姿は付き合いたての頃によく見たそれに重なったが、けれどもあの頃と違い、握った手から逃げようとはしていない。
 それはそうだろう、あれからどのくらい一緒にいるって言うんだ、と思いつつ、モーディスの落ち着きのない様子がなぜか伝染し、ファイノンもなんとなく浮き足だってしまう。
 キスがしたい、とほんのり赤くなっている目許に唇を寄せると、びくっ、とモーディスの体が跳ねる。小さく息を吸うのが聞こえ、その反応は可愛すぎるだろ、とモーディスの体を抱きしめる。
 おい、と狼狽えたモーディスの声が耳を打つが、んー? ととぼけたふりをした。
 本当にこれが僕にできると思うのか!? 君の新作なんて荷が重すぎる! とアグライアと言い争って負けた時の不安な気持ちが一気に報われた気分だったし、なんなら怪我をしたモデルにちょっとだけ恨み言を考えていたファイノンだったが、今は彼にお礼をいいたかったし、傷ひとつなく無事に明日にでも仕事に復帰して欲しいと純粋な祈りの気持ちまで沸いた。
「さ、さっきの写真の実物はないのか?」
 モーディスの言葉に顔を上げると、モーディスはまだタブレットの方を気にしている様子だった。
「実物? えーと、掲載された雑誌なら事務所にあるけど、一般販売は明後日だったかな」
「どれだ?」
「欲しいならもらってくるけど、」
「もらってきてくれ」
 言葉尻に重ねるような速さで返された言葉に、ファイノンは「あ、はい」と思わず返事をしてしまう。
「どれに載るのか後で全て教えろ」
…………なんで?」
「? 保存するからに決まっているだろう」
「本物がここにいるのに?」
「あの服や装飾品を買い取ると言う話か?」
「そう言う話じゃない」と、ファイノンが口にした瞬間、期待に少し瞳を輝かせていたモーディスの表情が曇るのが見えた。本当にわずかな変化ではあったのだが。「そう言う話じゃなかったけど、……着てあげるのはまあいいよ」
 さっきまではモーディスのそわそわした浮ついた態度が嬉しかったくせに、今はもう、なんとなく面白くない気分になっていた。
 写真より目の前の僕の方がいいだろ。そう素直に言うのは流石に恥ずかしいと思いつつ、面白くない。
「いつもの僕よりあっちの方が好きなんだ」
「どちらもお前だろう。……惚れ直したのは事実だが」
 拗ねるな、と言いながら機嫌を取るように頬にキスをしてくるモーディスに秒で絆され、「嬉しいのになんかちょっと複雑……」とファイノンは素直に口にする。
「かっこよすぎて不安とか思ったりしない?」
「不安?」
「えーとほら、僕のことを好きになる人が増えたら嫌だなとか、そういう……
「お前が嫌いな人間の方が少ないだろう」
「いや案外そうでもないと思うけど、……そうじゃなくて」
「他人に好かれすぎるお前に不安になって欲しかったのか? するわけがないだろう、今更」
 モーディスは不思議そうに首を傾げつつも、ファイノンの左手に嵌った指輪を撫でる。ファイノンはそうされて、ようやく自分の問いの愚かさに気づく。
 多分これは以前、モーディスに「俺のことが好きか?」と聞かれたのを引きずっているのだろう。あの時は不安にさせるような態度を取ったっけな、と悩んでいたけれど、そう言えば、今は言われなくなったな、と気づく。
「俺がお前にしか興味がないように、お前も俺しか眼中にないだろう。だからお前が今後もどれほどの人間に好かれようと、不安に思うことはない」
……そんなかっこいいことさらっと言うなよ」
 は〜……、と脱力しながらモーディスを強く抱きしめたファイノンの背を撫でながら、モーディスがふ、と笑う。
「惚れ直したか?」
 飾り気のないファイノンの耳に音を立ててキスをすると、そのまま背中を掴んでソファの後ろに倒れて行く。
 左手をファイノンに取られて、ソファに縫い止めるように指を絡まされる。唇が重なり、すぐに離れて、顎から首筋、鎖骨へと唇が下りて行く。
 小さく息を吐きながら、モーディスは顔を横に向け、絡まされた手にキスをする。いつも自分を愛してくれる手だ、と少しだけ自分より長い指を見つめていると、こっち見て、と濡れた囁き声が落ちる。
 言われた通りに顔を戻し、胸に手を置いた男を見上げた。
 じっとりとした欲を孕んだ青い瞳と視線が合い、モーディスは体のうちに火が灯る感覚がした。
 青空と同じ色をしているはずのその瞳が、こんな風に、欲でぎらぎらと耀く様を見るたびに、体中をびりびりと電気が走って行くような感覚がする。は、とモーディスは慎重に息を吐き、握られた手を握り返した。
「毎日惚れ直してるに決まってるだろ。だって君はいつだってかっこよくて綺麗で可愛いから」
 可愛くはない、と言い返そうとしたが、シャツの裾から侵入してきた手の熱さに、モーディスの意識が途切れる。

   *

余談:

「店長!!!! あの!?」
「なんだ騒々しい」
 モーディスがバックヤードに顔を見せるなり、お喋り以外は問題のないバイトリーダーがスマートフォンの画面を見せてくる。
「これ!! 彼氏……じゃない、パートナーさんですよね!?」
 頭二つは小さい彼女の掲げてくる画面に視線を下げ、「そうだな」とモーディスは極力なんでもない顔と声のまま答えた。予想した通り、そこには先日見せられた姿のファイノンの画像があり、こちらを誘うような、挑発するような刺激的な表情をしている。
 少し濡れた前髪が完璧な角度で瞼に影を落としているのを確認して、モーディスはこっそり表示されているSNSのアカウント名を記憶した。
 どうやら新しくブランドのアカウントができていたらしい。後で保存しておくか、と思いながら「それよりあと五分で勤務時間だろう」と気のないふりをして、バックヤードに在庫をしまっていた予備のクロスを取るために彼女の脇を抜ける。
「えー、えー、モデルさんだったんですか? そんなの教えてくれなかったじゃないですか」
「モデルではない。聞いてはいないが、今回限りだろう」
「えー、勿体無い! あでもカッコ良すぎるし、こんなの一回外に見せれば十分って感じですか?」
「なんの話だ。別にあいつがやりたければやればいい話で、俺に止める権利はない」
「でた、店長の愛され自信の無自覚自慢。本当にずっとラブラブだし、最近羨ましい〜とかそんな気持ちもあたしちょっとなくなってきましたよ」
……あと一分で仕事だぞ」


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